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いいですねぇ、鳥スープ … 焼き鳥「鳥久(とりきゅう)」(阿佐ケ谷)

あったかい季節になってくると、なぜか食べたさ度合いが盛り上がってくるのが焼き鳥です。もつ焼きにはどことはなしに冬のイメージがあるのですが、焼き鳥のイメージは夏なのです。私の中では…。

明日の都内での仕事に備えて自宅に帰ろうと、阿佐ヶ谷駅に着いたのが午後9時。さぁ、焼き鳥をつまむぞ。横浜からここまでの電車の中で、「焼き鳥食べたい」という思いがむくむくとふくらんでいたのです。

阿佐ヶ谷といえば、以前は「バードランド」が有名だったのですが、その「バードランド」も現在は銀座に移転。しかしながら、この地にはそれ以外にも、昭和37年創業の南口一番街の「鳥平」(03-3315-3607、阿佐谷南2-17-1)や、焼き鳥好きな会社の先輩おすすめの「鳥正」(03-3316-3276、阿佐谷南2-16-9)。そして北口側では「鳥○(とりまる)」(03-3336-2486、阿佐谷北1-27-4)、「鳥一」(03-3336-7677、阿佐谷北1-37-6)と、意外と焼き鳥店が多いのです。

そんな中、今日向かったのは阿佐ヶ谷駅北口から徒歩2~3分のところにある焼き鳥屋さん、「鳥久(とりきゅう)」です。店正面の焼き台前はガラス張りながら、ずらりとメニュー短冊が並び、入口引き戸にも酒・鳥と筆書きされた障子紙が張られているため、店内の様子をうかがうことはできないのですが、かすかに見える焼き鳥の煙や、人影の動きから、いつもにぎわっているらしき雰囲気が感じとれるのです。

ガラリと引き戸を開けて、店内に入ると、外で感じたとおり、お客さんがいっぱい入ってにぎわっています。左手の8席程度の直線カウンターには、女性ひとりをふくむ、サラリーマンらしき人たちがずらりとならんでおり、かろうじて一番奥の2席が空いているといったところ。「いらっしゃいませ」の声に導かれながら、私も奥の2席に向かってすすみます。

店内右手はテーブル席が2卓ありますが、店の幅方向の広さもそれほどないために、テーブル席のお客さんも、テーブルの奥側の席に並んで座り、カウンターのお客さんたちと同じ方向を向いている状態です。テーブル席は、2卓とも男女のふたり連れが使っている常態です。

店はメガネをかけたサラリーマン風の店主と、かわいらしい感じ(←私より年上だろうと思うのですが、そう見えない感じ)のその奥さんらしき女性(以下、いつものように「おかみさん」と書きますね)の2人で切り盛りされているようです。

すぐにおかみさんがおしぼりを出してくれ、まずはビールを注文します。「生とビンとがございますが」という問いかけに、いつものごとく「ビンをお願いします」。生ビールは、なんだか店によってあたり・はずれがあるようで、店の状況がつかめるまではなかなか注文しにくいのです。ビアホールなどのビール専門店は別ですが…。

ビールはサッポロ黒ラベルの大瓶(550円)、お通しは短冊に切った山芋にトンブリをのせた小鉢です。店主は、先客たちからの注文をさばくべく、焼き台に向かって奮闘中。しばらくは、山芋をシャクシャクといただきながら、ビールです。

「はいっ。なんにしましょう」。焼き台が一段落したのか、店主が目の前に来て、笑顔でたずねてくれます。やぁ。こんなやさしそうな笑顔なんだ。焼き台にきびしい表情で向かっていたときとはうって変わった表情です。私も、さっきからカウンター奥の壁にずらりと並んだメニューを見ながら、注文するものを決めていたので、「それじゃ、焼き鳥、つくね、レバー、しんぞうを1本ずつお願いします。あと、くび肉があればそれも1本」「はい。くび肉も大丈夫です。タレ・塩は?」「全部塩でお願いします」。

本格的な焼き鳥屋さんにしては、価格設定は安いですね。「本格的な焼き鳥屋さん」と書いたのは、鶏肉だけのお店ということです。じゃ、本格的じゃないのは何かというと、いわゆるひらがなの「やきとり屋」さん。こちらは焼き鳥と焼きとんとを混ぜて出すお店です。本格的じゃないのがだめなのかというと、そうでもなくて、駅前の1杯飲み屋などは圧倒的にこのタイプが多い。オヤジの味方、オヤジ酒場の代表格的な存在なのが「やきとり屋」さんなのです。

逆に、鶏肉はやめて、豚・牛などの臓物だけに特化したのが「もつ焼き屋」さん。こうなると、これもこれでまた逆の方向に本格的になっていきます。足のはやい臓物だけに、鮮度が命ってとこがありますからね。極めればきりがない品のようなのです。

そろそろ焼き鳥もできてきそうなので、お酒をいきますか。「お酒をぬるめの燗で。大きいほうでお願いします」。お酒は、背後のテーブル席後ろの壁にずらりと短冊が並んでいて、そこに「久保田」「八海山」「北雪」「黒龍」などなどの地酒も並んでいます。店内を見渡してみると、これらの地酒を飲んでいる人も多い。ちょうど私の奥側の陳列用のガラス製の冷蔵庫に、一升瓶がずらりと並んでいて、注文のつど、おかみさんが注ぎに行っているのです。

燗酒のほうは「菊正宗」の上撰。小さい徳利が350円で、大きいほうは650円です。「お待たせしました」と出てきた燗酒。さっきたしかに一升瓶から注いでいたのに、口に含むとフッと樽の香りがする。

さあ出てきました。焼き鳥です。まずはその名も「焼き鳥」(110円)という串からいってみましょうか。これは、他の店では正肉(しょうにく)とかネギ間(ねぎま)という名前で出されていることが多いですよね。肉2切れと、ネギ2本を交互に刺して焼いた、焼き鳥屋さんの定番メニューです。

その「焼き鳥」を食べながら、このネーミングは、もしかすると考え抜かれたネーミングなのかもしれないなぁ、なんて思えてきました。たとえばグループで来るお客さん。メニューなんて何も見ないで「ビール2~3本と、焼き鳥を10本ほどね」なんて適当に注文して、会話に夢中になっているケースをよく見かけます。このとき、細かい名前設定をしているお店だと「お客さん。焼き鳥といっても、これだけ種類があるんだけど、何にしましょう?」なんてことになり、聞かれたお客の側も、たいていの場合は「適当に盛り合わせて」なんて答えたりしている。

ところが! ここに「焼き鳥」という名称の品物が1品あると、状況はまるで変わってきます。「焼き鳥10本ね」と適当に注文されても、「はい。焼き鳥10本ですね」と、まさに注文どおりに出していくことができるのです。すばらしいネーミングですね。(…って、深読みしすぎかなぁ。)

続いて「つくね」(110円)。カリッといい焦げ目がついたツクネが3個並んで1串です。ツクネ自体にはほとんど下味はつけていないようで、非常に淡白な味わい。これはタレ焼きのほうが合うかもしれません。

「レバー」(110円)がまたいい味わいです。大きな肝が3個、絶妙なミディアムレアの状態に焼き上げられていて、トロリととろけるのです。鶏の肝も、変なところで食べると苦かったり、臭かったりするのですが、このレバーはそんなところがいっさいありません。あぁ。いっしょにいただくお酒もよりうまく感じますねぇ。

そして「しんぞう」(110円)。私は、この鶏のハツっちゅうやつが大好物です。切り開かれた心臓が3個で1串なのですが、なにしろこれも1羽から1つしか取れませんからねぇ。品書きにない焼き鳥屋さんも多い品物なのです。

絶品なのは「くび肉」(120円)です。小さいながらも脂ののった肉がずらりと串に並んで、肉表面の脂もつややかに、まさにジュゥ~ッと音がしそうな感じの外見なのです。口に含めば、まさにこちらの期待どおりに肉のうまみがウァ~ッと広がります。他の品々もそうでしたが、なにしろ焼き加減がとってもいいですねぇ。

鶏肉に続いては、野菜も焼いてもらおかな。カウンター奥のホワイトボードに書き出されているのは、今日のおすすめメニューでしょうか。こちらには菜の花のおひたしなどの、いわゆる居酒屋メニューがずらりと並んでいます。その中から、「筍の子焼」(←メニュー表記どおり、400円)をもらいましょうか。

タケノコは、本当は「竹の子」と書くか、一字で「筍」と書くかのどちらかなんですが、この店のメニューにあるように「筍の子」と表記したほうが、いかにも季節物っぽいし、また若々しさも感じます。

待つことしばし。出てきた「筍の子」はうっすらと照焼風。高さが10センチあるかないかのものを丸ごと焼いて、一番下の部分は半月に切り分け、そして上の三角錐のところは真ん中から縦にふたつに割って、中ぐらいの小鉢に盛り付けられています。なにしろ焼き鳥屋さんならではの炭火で焼かれた「筍の子」がまずかろうはずがない。風味たっぷりで、実にお酒とぴったりマッチの一品です。今の季節しか食べられないというのが悔しいですねぇ。次はまた来年か…。

まん中あたりの2人連れが帰り、入れかわりに入ってきた男性ひとり客。まずは「鳥刺し」を注文しています。生ものとしては、その他に「鳥わさ」「鳥たたき」などがあって各580円。串焼き以外では「皮(大根おろし)」「砂きも」「鳥からあげ」などが各350円などなどで、他にもいろんな品が並び、一番高いのが「もも唐揚」の630円です。内容的には本格的な鶏料理店なのに、値段的にはまさにオヤジ酒場料金ですね。ありがたいお店です。

そのメニューの中に「鳥スープ」(250円)というのがあります。最後にこれをもらいましょうね。こういう汁物で日本酒をいただくというのが、これまた大好きなのです。そば湯で割ったそばつゆしかり、おでんのダシ汁しかり、そしてまた「武蔵屋」の湯豆腐の残り汁しかり…。

きたきたぁ。お椀側の陶器の湯呑みに、きれに透きとおった鳥スープです。浮いている実は干しシイタケを小さく刻んだものと、三つ葉。う~む。スープの表面には、鳥の脂がたっぷりと浮いているのですが、飲むとまったくしつこくありません。ほとんど味付けされてないぐらいの薄味なのに、旨みがありますねぇ。これはいい。

いやいや。どうもごちそうさまでした。とてもおいしくいただきました。お勘定は2,550円。初回の今日は1時間10分ほどの滞在でした。

夜は1時まで開いてるらしいので、かなり遅くに帰ってきたとしても楽しめそうですね。ただ、小さいながら人気があるお店のようなので、席を確保するのが大変かも…。

店情報

《平成16(2004)年4月12日(月)の記録》

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受信: 2004.07.04 16:00

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