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焼き魚もすごいぞ! … フランス料理「北島亭(きたじまてい)」(四ツ谷)

久しぶりの「北島亭」です。今日は15人ぐらいの団体のひとりとして入っているので、料理はアラカルト(1品ずつ選ぶスタイル)ではなくて、コース(定食)です。女性が多いので、基本的には3品コース(8千円)で、何人かの男性陣が4品コース(1万円)です。

いつもはアミューズ(突き出し)としてクロワッサン(アンチョビが入ってたりする)が出ることが多いのですが、今日は果物です。アミューズに続いての登場は、この店の人気のオードブル(前菜)である生ウニのコンソメゼリーです。

生ウニのコンソメゼリーは、ウニの殻で出てくるときと、お皿で出てくるときとがあるのですが、今日のはウニの殻に入ったもの。アラカルトで注文すると、1皿に3個のっているのですが、コース(定食)版では2個のようです。

おぉおぉ。ウニの棘(とげ)の部分が、まだウニョウニョと動いている。さっきまで生きてたんですねぇ。

「北島亭」のことを紹介した図書、“「北島亭」のフランス料理”(大本幸子著)によりますと、「北島は、食材は無限の力を秘めている、その力を引き出すのは人間であるとスタッフの彼らに言って聞かせる。畑に在るように、海を泳いでいるように、食材にナチュラルな力を持たせておきたい。だから、注文を受けるぎりぎりまで食材にナイフを入れさせない」のだそうです。このウニもそうやってぎりぎりで作られたんですね。

スプーンで殻の内壁についた身をこそぎ取るようにしながら、コンソメゼリーの部分といっしょに口に入れます。コンソメゼリーのとろりとしたやわさらかと、ウニの身のやわらかさとがほぼ同じ。これが「北島亭」の、この前菜の特徴なのです。噛むこともなく、舌と上あごの間でトロンととろけるウニとコンソメゼリー。口の中でコンソメの深い味わいと、ウニの甘さと磯の香りがフワァ~ッと融合します。すごいよなぁ。

ウニの天井付近についてる身を取り忘れないように気をつけなきゃね。ウニの殻は、てっぺんの部分(海の中では底になる、口のまわりの部分)だけを丸くくりぬいて、身以外の部分をきれいに取り除いたあとコンソメゼリーを入れています。その小さい穴にスプーンをつっこんで身をすくっているので、天井に近い部分にはスプーンが届きにくいのです。

1個目のウニを食べ終わり、中に微妙に残ったコンソメゼリーは、殻をひっくり返すようにして、2個目のウニの中に入れます。まるで出雲そば(割子そば)の薬味とそばつゆを、次の割子に移していくみたいな感覚ですね、これは。

そして「食いしんぼチーム」(4品コースの人たち)には、2品目の前菜であるフォアグラのソテーです。まわりで見ている「お上品チーム」(3品コースの人たち)から「ステーキかと思ったよ」という声がかかるぐらい、厚みもあり(2センチぐらいか)、そして大きさもある(10センチ四方ぐらいかな)フォアグラです。

まわりはカリッと、そして中身はトロッとしたこの焼き加減は、北島シェフならではのもの。大きなレストランでは、多くの料理人全体の動きを見ながら、全体の進行を指揮するのが料理長の役割らしいのですが、北島シェフは全体を見つつ、指示を出しつつ、自分で“ストーブ前”という料理人のエースの座もこなしているのです。エース兼監督ってわけですね。

厨房から若手料理人のひとりが出てきて「これからこのノドクロを焼きます」と、大きく美しいノドクロ(赤ムツ)を両手で抱えて見せてくれます。こうやって、客席に素材の紹介があるときは、よほど自身がある品物なのです。身の張りもすごい、いいノドクロですねぇ。実際、食事終了後に北島シェフ自らも、「今日、築地で一番いいノドクロでした」とおっしゃってたぐらいのシロモノだったのです。

シャンパンを飲み、談笑しつつ、ちょうどフォアグラを食べ終わった頃合い。いいタイミングで、その「ノドクロ(赤ムツ)の黒ごまつけ焼き」の登場です。皮の側には黒ゴマがまぶしてあります。この魚料理は「食いしんぼチーム」にも「お上品チーム」にも、全員に。

「北島亭」は、「肉を焼かせたら北島の右に出るものはいない」といわれるほどであり、肉は当然のごとく爆発的にうまいのです。しかし、その陰に隠れてはいますが、実は焼き魚も驚くべき逸品だと思うのです。私自身は、ほかの魚料理屋さんで食べたものなども含めて、「北島亭」で食べる焼き魚ほどうまい焼き魚は食べたことがありません。

なにしろ、魚のミディアムです。中まで熱が通ってアツアツなのですが、身はフワンととろけんばかり。熱が通りつつも、身は生ではなくなるぎりぎりのタイミングで仕上げられてるのです。こんな焼き方、ほかでは見たことないよなぁ。

件(くだん)の“「北島亭」のフランス料理”の中で、肉を焼いている間、どんなことを考えているのかということを聞かれた北島シェフが、どうすれば「肉がふわっと焼けるかと考えています」。「肉は温めるだけです。余熱で入っていきますからちゃんと焼けるのです」。「無理して火入れしてはいけません。じわーっと火を入れていく。だから急げといわれても無理です。私の腕はまだまだです」と答えています。このノドクロの焼き方も、明らかにその延長線上にあるのではないかと思うのです。熱々ふんわりと、ものすごい焼き魚です。

なにしろ材料もすごいですからね。“エピキュリアン(東京フランス料理店ガイド)”(見田盛夫著)によると、北島シェフは築地でも“いいもん買い”で有名で、いいものがあると採算も考えずに買ってしまうところがあるらしいのです。今でも、毎朝必ず自分で築地に仕入れに行くそうですからねぇ。そして日本料理屋だと、刺身の3~4切れで何千円も取れるような魚が、「北島亭」ではひとり150グラムは使って同じぐらいの値段で出てくる。実にありがたいことです。

肉が有名なお店ですが、魚もものすごいものであることを、前回の黒ムツ、そして今回の赤ムツ(ノドクロ)を通じて、改めて再認識した次第です。

さぁ、そして。「食いしんぼチーム」のメインは子羊の包み焼きです。この肉が、まったくピンク。まさにバラ色の焼け具合です。よくまぁこうやって焼けるよなぁ。途中でこうやってスライスしてみることができるのであれば、「今ちょうど全体がバラ色だ」と確認することができるのですが、そんなことはできないですからねぇ。さっきの魚といい、この肉といい、北島シェフには、焼いてる肉の内部を見通す“透視の眼”があるんじゃないかと思ってしまいます。

「お上品チーム」のメインは「ポトフ」です。「ポトフ」というのは、フランス語で「火にかけた鍋」という意味で、フランスの伝統的な家庭料理なのだそうです。フランスは畜産物のみならず、農産物にも恵まれた農業王国で、それらをひとつの鍋に入れて、コトコト煮込んだ鍋料理が「ポトフ」なのです。煮込んだあとは、スープと具に分けて食べるのが本場流なのだそうで、「お上品チーム」のみなさんには、「ポトフ」のお肉と野菜とがたっぷりとお皿に盛られて出されます。そしてスープのほうは、別途小さなスープ用のカップに入れられて、こちらは「お上品チーム」のみならず、「食いしんぼチーム」にもおすそ分けがやってきました。

うわぁ。そのスープのおいしいこと。肉や野菜のうまみの深さもさることながら、野菜の甘みがものすごい。野菜もすごいんだなぁ。

そう。この「ポトフ」。本来は冬の料理なのですが、この食事会のホスト(←いつもの旧友)の奥さんが、昔からこの店の「ポトフ」のファンであることを北島シェフが覚えていて、夏場なのに特別に作ってくれたものなのだそうです。北島シェフの信念であるらしい「愛情いっぱい」は、素材に対してのみならず、こういうところにもフッと現れてくるんですね。「ポトフだぁ!」と喜ぶ彼女に、「喜んでいただけてよかったです」と北島シェフも笑顔です。

ここ「北島亭」は、ボリュームの多さも有名で、アラカルトで食べるときには「もう食えんっ!」というぐらい満腹になります。今日はじめてコースをいただいたのですが、コースなら大丈夫かと思いきや、そんなことはなくて、こちらもボリュームたっぷりなのです。「お上品チーム」の3品だって、女性にとってはとっても多いようで、ホスト婦人も、最後は好物のポトフながらお腹がいっぱいの状態。「じゃ、ちょっとちょうだい」なんて、私もポトフの具も楽しむことができたのでした。

「食いしんぼチーム」のほうも、若い男性も数人いたのですが、彼らをして「もう満腹!」と言わせる量だったのでした。「たっぷりじゃないと、うまさもわからない」というのも北島シェフの信条のようですからね!

そしてデザート(ケーキとシャーベット)とコーヒー(エスプレッソ等)をいただいて、食事終了。一番最後に、シェフ婦人(マダム)のご実家(蒲郡)から送られたこつぶのミカンと、トリュフチョコが出てきます。このミカンがとっても甘くてびっくりでした。

そうそう。シェフ婦人は、何年か前から子育てに注力されていて、お店には出ていません。そのお子さんも、今、高校生だそうですので、もう少しすると復活されるかもしれませんね。

あ。食べもののことばかり書きましたが、もちろん今日も、シャンパンからはじまって、白ワイン、赤ワインと、たっぷりといただきました。大満足です。

店情報 (前回)

《平成16(2004)年6月19日(土)の記録》

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昨夜の大阪からの友人に続いて、今日は四国の友人が上京です。久しぶりに向かった先はフランス料理の「北島亭」。まずはいつものように「クリュグ」(シャンパン)をいただ... [続きを読む]

受信: 2004.11.21 23:02

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