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エビマヨとホウタレイワシ … おでん「いこい」(松山)

台風10号が、あろうことか東から近づいてきてるのです。台風といえば、南西からやってきて北東に進むもの。ずっと昔からそう思い込んでいたのに、まさか東京のほうから四国に台風が近づいて来ようとは!

現在すでに太平洋上を紀伊半島に向かって、歩くぐらいのゆっくりとしたスピードで進みつつあり、明日の午後にはこのあたり(松山付近)にやってきそうです。本当は明日の夜行バスで帰る予定だったのですが、急きょ予定を変更して今日の夜東京に向かうことにしました。

今日は金曜日なので、旧友たちが何人か集まってくれる予定だったのに残念です。

発行済のチケットは、現地窓口でないと変更ができないということで、早めの夕方にバス乗り場に出かけ、今夕出発の夜行バスに変更します。今日も松山はカンカン照り。ものすごく暑い1日です。本当に台風は近づいてるのかなぁ。

無事にチケットが変更できたあとは、午後7時過ぎの出発時刻までに腹ごしらえです。新宿思い出横丁の大衆食堂「つるかめ」で腹ごしらえをして、東京を出発したのがつい昨日のようです。さあて、今日はと。そうだ。先日お腹がいっぱいで、あまり食べることができなかった「いこい」にもう一度行っときましょうかね。

時刻は5時ジャスト。ぴったり開店時刻です。のれんをくぐり「こんにちは」と店内に入ると、店内はまだゆったりと開店準備中の様子です。おでん鍋の中のタネをちょいちょいとつつきながら、「いらっしゃいませ」と女将さんの笑顔に迎えられます。にっこりふくよかな女将さんは75~6才になったのではないでしょうか。いつも笑顔のイメージです。

先客はだれもいなくて、私が第1号です。東京あたりだと、開店を待ちわびるように呑んべが集まってくるのですが、ここはそこまでの出足はないんですね。住宅街じゃないからなぁ、この辺は。

カウンターのまんなか、ちょうどおでん鍋の前あたりに陣取ったところ、「そこは熱いよ。ふた~つぐらい入り口側に寄ったほうが涼しいかもしれん」と女将さん。そうかそうか。おでん鍋のまわりは熱いんだ。

女将さんのすすめにしたがって、少し入り口側にずれて、まずは生ビールを注文します。キリンのほうをくださいな。生ビールはアサヒとキリンが選べるのです。

ゴクゴクっと、ジョッキの3分の1ぐらいを一気に飲んで、ひと息つきます。バス乗り場の松山市駅前から、ここ二番町の「いこい」までは歩いて15分ほど。夕方5時とはいえ、まだまだ相当暑くて、汗をかきかきここまでたどりついたのでした。

「メニューがまだ昨日のままやからちょっと待ってね。おでんはもう全部できとるよ」と女将さん。「もうちょっと汗がひいてからたのむね」と私。おでん以外のメニューはカウンター内の壁、中央付近にある黒板に書き出されるのです。

小上がりの机を拭いたりしていたおねえさんたちもカウンターのほうに集結してきました。なるほど。若いおねえさんたちが3人と、それよりは年上のおねえさん(もちろん女将さんよりは若い)がひとり。若い3人はアルバイトのようです。

私のほうも、生ビールを3分の2ぐらい飲むころには暑さも落ちついてきて、まずは目の前のおでん鍋の一番近いところにあるジャコ天をもらうことにしました。「このジャコ天は八幡浜のよ。こっちが宇和島」。へぇ。ジャコ天も2種類あるんだ。じゃ、両方入れて。

八幡浜のほうは色が濃くて、1枚のジャコ天を1.5センチぐらいの幅にスライスして、串に刺してあります。いっぽう宇和島のは白っぽい色で、小判型に近い四角形。こちらはスライスしないで、1枚まるごとです。プリッとした身のおいしさの八幡浜のジャコ天、そして砕けた小骨の歯応えも心地よい宇和島のジャコ天。どっちもそれぞれにうまいですねぇ。カラシ味噌ともよく合います。

さあ、今日のメニューもできあがったようです。「マリちゃん、書いてくれる」と女将さん。マリちゃんがやってきて、黒板に書きはじめます。「マリちゃんは背が高いから、そのまま書けるんよ」。なるほど。それがマリちゃんが呼ばれた理由でしたか。たしかに黒板は少し高いところにあって、身長が低い人だと書きにくそうです。

じゃ、メニューの中からエビマヨをお願いします。「は~い。エビマヨ通しといて」と、女将さんが奥の厨房に向かって注文を通します。何人かの男性が奥の厨房で働いている様子が、ときどきかいま見えます。

そこへ、サラリーマンらしき背広姿の男性客が入ってきます。「あとでもうひとり来るけんの」といいながらカウンターの奥のほうへ陣取り、生ビールを注文します。「豆腐もらおかぁ」とお客さん。そう、このおでんの豆腐がうまいんですよね。私にも豆腐ください。

豆腐は、アルバイトのおねえさんが用意してくれます。おでん鍋から、少し深めのお皿に豆腐を移し、その上にカツオ節と刻みネギをたっぷりとのせ、おでんのダシをかけて完成です。こう書くと簡単そうですが、実は豆腐がトロンととろけるほどやわらかいので、それをくずさずに取るのがものすごく大変。女将さんが横で見ながら、気をつけなければいけないポイントを伝授しながらの作業なのです。

あぁ、うまいっ。この豆腐は、本当にうまいですよねぇ。女将さんによると、さすがに冬のほうが人気があるとのことですが、おでん鍋の中にも豆腐がずらりとスタンバイされているところをみると、夏でもかなりの数は出る品なんですね。

新しい男性客がふたり続けて入ってきました。ひとりは先ほどのお客さんの同僚のようで、そのとなりに座ります。もうひとりはちょっと年配のお客さんで「3人になるけど、あとは○○さんと、××さんよ。」「そしたら、奥の小部屋にする」。どうやら3人とも常連さんのようです。「そろうまで、ここで飲みよったら」と女将さん。「そうしょうわい」と、私のすぐ近くに座り、生ビールの小ジョッキ(アサヒ)を注文します。

女将さんに「前に、大学院にいってる女の子がいましたよねぇ」と聞いてみます。「あぁ。あの娘(こ)は神戸の大学院におって、同じ学生のご主人と結婚したらしいから、学生、奥さん、アルバイトの三役よ。がんばるねぇ。郷里(くに)に帰って先生になるんやて」。へぇ。そうだったんだ。

「今の娘(こ)らは、みんな地元の娘よ。ユカちゃんは宇和島の南の方。もうひとりのユカちゃん、ほんとうはユカリちゃんなんやけど、この娘は松山。ご両親は八幡浜じゃけどね」と女将さん。え。こっちもユカちゃんで、こっちもユカちゃん!? ふたりがこっちを向いてニコッとほほ笑みます。「最初は、別の曜日に来てたから、ま、いいかと思とったんじゃけどね。いつの間にか一緒の曜日になって、ユカちゃん同士になったのよ」。

「ええ娘(こ)ばっかりよ、ここの娘は」。私の横で生ビールを飲んでいる年配のおじさんから合いの手が入ります。「今の時代には珍しいぐらいええ娘らじゃ。ママさんの教育がしっかりしとるけんのぉ」と感心しています。そうかぁ。横浜の「武蔵屋」と同じ感じなんですね、この店も。

「エビマヨ、お待たせぇ」と、エビマヨが出てきました。なんと。注文したときの私のイメージとしては、ゆでたエビをマヨネーズで合えた、洋風にかっこよく言えばシュリンプ・カクテル風のものが出てくるのかと思っていたのですが、さにあらず。これは、フリッターと言うんでしょうか。裸の小さいエビを、ひとつひとつうす~く衣がついた天ぷら風に揚げて、その揚げたての熱々に、ちょっとやわらかめのマヨネーズがかけられている。その熱いのをホフホフとほおばります。うまいなぁ、これも。てっぺんには、彩(いろど)りのためかオクラのフリッターもひとつ添えられています。

ここはひとつ酎ハイをもらいましょうか。普通、酎ハイというと甲類焼酎で作ることが多いのですが、ここのはなんと「いいちこ」(乙類、麦焼酎)の酎ハイです。エビマヨともよく合いますね。

となりのおじさんが、おでんのジャガイモを注文したのですが、そのジャガイモのホクホクとでかいこと! なんだか、見るおでん見るおでんのすべてがおいしそうですねぇ。

しかし、もう6時を回っているので、そろそろ個人的にラストオーダーかな。最後は、なにしろ瀬戸内なので、ホウタレイワシの刺身をもらいましょうか。ホウタレイワシというのは、カタクチイワシのことなのですが、「頬(ほお)がたれるほどうまい」ので、この辺ではホウタレイワシと呼んでいるのです。

待つことしばし。長方形の刺身皿に5~6切れ(1尾が1切れなので5~6尾分)の輝く刺身が出てきました。「ごめんねぇ。新鮮すぎて、骨がうまくとれんのよ」とおねえさん。ほんと。身の回りに小骨が少~し残っている。しかし、もともとが小魚なので、大丈夫ですよ。横に沿えられているスダチ(徳島原産の小さい酢みかん)をちょいと絞って、しょうが醤油をちょいとつけて。…。おぉぉぉ。なんちゅう旨さよ。小さいのに、いっちょまえに脂がのって! ホントに頬がたれそう!

「美味しいですねぇ、この刺身は!」「ホウタレの酢漬けもあるけと、食べてみる?」「食べる食べる」「酸っぱいから、ちょっとだけにしとこうね」と、女将さんが小皿に2切れ(=2尾)のホウタレ酢漬けを入れてくれます。へぇ。見た目の輝き具合は岡山のママカリに似てるんだけど、表面の酢の部分がうっすらと濁っていて、いかにも脂たっぷりといった感じ。ど~れ。はぁぁ。これもまた酸っぱ旨いですねぇ!

本当は、日本酒をもらいたいところだけど、残念ながら時間がない。夜行バスは7時過ぎの出発だから、そろそろバス乗り場に向かいますか。どうもごちそうさま。1時間半の滞在で、今日は2,800円。女将さんの、あったかい笑顔に見送られながら、店をあとにしたのでした。

店情報 (前回)

《平成16(2004)年7月30日(金)の記録》

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コメント

初めてメールしますが、愛媛・松山在住の「居酒屋礼賛」ファンの門田と申します。この夏の帰省の折には、故郷の居酒屋を堪能された様子を拝見し、私も「いこい」や「露口」のファンであることもあいまって、共感すること然りでした。これからも末永く「居酒屋礼賛」を続けていってください。陰ながらエールを送っておりますので…。また、東京出張の折には中央沿線の名店を、いつか訪ねてみたいなあと考えております。ところで先日、久方ぶりに「いこい」をのぞいたところ、カウンターの中にいつもの名物ママの笑顔がなく、写真の張り紙がありました。そうなんですよ。ママが骨折で入院したそうなんです。交通事故とかではなく、単に転んだだけなんだそうですが、歳が歳だけに手術を受けることになったそうです。店の女の子いわく「秋祭りまでには店に立たせますよ。甘やかしたら寝たきりになってしまうかもしれんから。」と。ママのいない店はやはり気の抜けた何とかみたいで。早く元気になってもらって、あの笑顔に再会したいものです。

投稿: 松山の門田 | 2004.08.29 16:21

二番町の「いこい」は、2004年12月をもちまして閉店しましたが、2005年7月一番町に新店舗を開店しました。申し遅れましたが、私は、いこいのママさんの娘婿 竹田と申します。いこいで「ちこちゃん」と呼ばれていた女性がママさんの娘で、私の家内です。いこいの二階で料理していたのが息子(家内の弟)で、一番町の新店舗は、息子に任せています。ママさんとちこちゃん(家内)と私で松山の緑町(松山城の山のすぐ北の麓)で「つじがはな・いこい」という、おでん・料理の店を開店しました。2005年9月。
私も二番町で「つじがはな」という日本料理店をしていましたので、「いこい」との共通のお客様もあり、三人でのんびりやっています。
場所柄、忙しい店ではありませんが、「いこい」を再開してほしいという声があり、私の自宅兼店舗で再開しました。
お近くにお越しの節はお立ち寄りください。

投稿: おでん「いこい」 | 2005.11.24 22:35

一番町の新店舗開店ならびに緑町の「つじがはな・いこい」の開店おめでとうございます。>竹田さん
今年の夏に帰省したとき、「いこい」が閉店していたのが残念でしたので、とてもうれしいです。
帰省したおりにはぜひ寄らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

投稿: 浜田信郎 | 2005.11.27 22:00

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