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寒い日はおでん … 居酒屋「北国(きたぐに)」(中野)

寒い日はおでん。前回行ったときに入院していたママ(女将)さんのその後も気になって、向かったのは中野の古い酒場「北国」です。

店に着いたのは午後6時過ぎ。店内からは今日も「北国」らしいざわめきが聞こえてきます。ガラリと引き戸をあけて店内へ。「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれるのはカウンターの中のママさんです。やぁ。お元気そうで、良かった良かった。

8人座れる鉤(かぎ)形のカウンターにはすでに先客が6人と、一番奥にユミさん(店を手伝っている女性で、ママさんの姪)が座っているので、空席は奥から三つ目の席ひとつだけ。右側の女性ひとり客、左側の高齢の男性に「すみません」とあいさつしながらその席に腰をおろします。

入り口右手のテーブル席は(完全に)空いてるのでそっちでもいいんですけど、やっぱりカウンターでみなさんに混ざって飲むのが楽しいですよね。

今日はなにしろおでんが食べたいので、いきなり燗酒からスタートです。ここの日本酒は「八鶴」「桃川」「剣菱」など何種類かありますが、なにも銘柄を指定せずに「お酒を燗で」とお願いしたら「八鶴(はちつる)」(青森・八戸)でした。例の燗付け穴が6個くらい開いてる丸い燗付け器で徳利(とくり)ごと燗付けてくれます。

「お通しです」とユミさんが持ってきてくれたのはカボチャの入ったシジミ汁。「冬至だからね」とユミさん。そうか、今日は冬至だったか。こりゃまたあったまるなぁ。飲む席の一番最初のつまみとして、こういう汁物(味噌汁など)が出てくるのはいいもんですね。すきっ腹にもちょうどいいし、お腹もあったまるし、覚醒するしで、「さぁ、これからたっぷりと飲むぞ」という感じがします。神楽坂の「伊勢藤」や、広島ではありますが「爐談亭」などは必ず最初に味噌汁が出てくるタイプのお店です。横浜・新杉田の「鳥平」で一番最初に出てくる鶏スープもいいですね。からっぽの胃袋に急にアルコールが入ると、充血したり、場合によっては出血したりするらしいですから、その意味でも最初の汁物というのは理にかなっているのかもしれません。

「ママさん、ちょっとやせた?」「10キロ近くやせた」。でも、もともとちょっと太め(失礼!)だったので、今のほうが明らかに健康そうです。病院は比較的すぐに退院してたそうなんですが、11月いっぱいは大事をとって自宅で休養。12月に入ってからお店に出るようになったんだそうです。そのかわり、あまり無理をしないように、営業時間は17:30~22:00と、今までよりちょっと早めに変更したのだそうです。

さ。それじゃいよいよおでんをいただきますか。これを楽しみに来たんですよ。「玉子とぉ、大根とぉ。あとはねぇ、(魚の)スジをお願いします」。ママさんが1品ずつ器に入れてくれるタイミングを見ながら、1品ずつ順番に注文します。「とりあえず以上です」と1回目の注文を終えると、ママさんがちょいと昆布を入れて、お出汁をたっぷりと入れて、練りガラシをちょいとつけてくれます。

まず玉子。ここの玉子は特徴的で、殻付きのままのゆで玉子を鍋の縁にコツンとぶつけて殻にひびを入れてからおでん鍋に投入。ひび割れの殻付きのままで煮込んでいるのです。だから、玉子をたのむといっしょに殻入れ用の小皿も出してくれます。この上でアッチッチと言いながら、(自分で)殻をむいていきます。聞いたわけではありませんが、おそらく玉子が煮くずれてしまったりするのを防ぐためなんでしょうね。あぁ、うまい。おでん出汁のよく染みこんだ玉子は大好物のひとつです。(もつ煮こみに入ってる玉子や、ラーメンに入ってる煮玉子なんかも大好きです。)

そして大根。これはもう言うまでもなく最強のおでんだねですね。その店のお出汁の味がよくわかる一品です。

右どなりの女性ひとり客(Iさんだそうです)は、おでんの豆腐をもらっています。そうか。豆腐もあったんですね。「えぇ。お豆腐もおいしいんですよ。ところで、その丸いのはなんなんですか?」とIさん。「これは、魚のすじなんです」。

おでんで“すじ”というと、関西地方以西では“すじ肉”を想像される方が圧倒的に多いと思いますが、東京のほうでは“すじ”というと魚のすじ肉を形成して作った練り製品のことで、これを1センチくらいの幅にスライスしておでん鍋に入れるのです。食感はつみれよりもやわらかい感じなんですが、中に混ざった軟骨がコリコリして、実に呑んべ好みのおでんだねなのです。

この魚のすじのほか、ちくわぶ、はんぺんといったところが、こちら特有のおでんだねでしょうか。

向こうの男性客からは「がんもと、あとボール」という注文が入ります。Iさんと私とで声を合わせて「ボール?」。「ボールはね、ふだんはイカボール(イカの身の入った団子)のことなんだけど、今日はジャガイモボール」とママさんが教えてくれます。「じゃ、そのボールと豆腐。あとお酒もおかわりください」と追加注文です。

ジャガイモボールは、マッシュド・ポテトが中にたっぷり入った球形のミニさつま揚といった感じで、1串に3個刺さっています。まわりのさつま揚げ部分のおかげで、中のジャガイモは溶け出さずにどじ込められている。おでん鍋にジャガイモを入れると煮くずれるのがいやだという話もよく聞きますが、これなら大丈夫かも。ボリューム感もあっていいですね。

豆腐。湯豆腐も好きですがおでんの豆腐も好きです。四国・松山の「いこい」で出されるおでんの豆腐はカツオ節や刻みネギがたっぷりとのったタイプですが、こちら「北国」は極々シンプルに豆腐のみ。これに練りガラシをちょいちょいとつけていただくと、これまたお酒が進むこと。おいしいですよ。Iさんのおっしゃってたとおり。「でしょ」とIさんもにっこりです。

お酒をもう1本もらってと。あとユミさん、「まつも」(400円)をお願いします。新しいお客さんが入ってきて、ちょうど厨房にお通し(カボチャのシジミ汁)を取りに向かうユミさんの背中を追いかけるようにつまみの注文をします。

「まつも」は漢字では「松藻」と書き、三陸海岸の岩にしか生えない珍しい海藻なんだそうです。その名のとおりまるで松の葉のような針状の海藻が小皿にふわりと盛られています。ひとつかみとって口へ。まずパリパリッとした食感があって、噛むうちにじわりと海藻独自のとろみが出て、口の中にも旨みが広がります。そして燗酒。ん~。いいですねぇ、海藻に燗酒。旨みがふくらみます。

「昨日、夕刊フジの人が取材に来たのよ。ひとりで飲みながら写真も撮って」とママさん。なんだって、夕刊フジ? 「それはもしかするとこの人じゃないですか?」。たまたまカバンに入れていた「酒場歳時記」を取り出して、裏表紙の吉田類さんの写真を見せます。「そう。この人この人。そしたら今日ご本人からお礼の電話がかかってきてねぇ。いろんなところの取材を受けたけど、後からお礼の電話をもらったのははじめてだったわ。いつ載るのかしらね。楽しみ」とママさんもユミさんも喜んでいます。そうかぁ。翌日お礼の電話をされるところがさすが吉田さんですねぇ。

それにしても、日刊ゲンダイでも9月頃まで太田和彦さんが「太田和彦の今夜の居酒屋」をやっていたと思ったのですが、それに対抗するように夕刊フジでも吉田類さんの居酒屋紹介記事が出てるんですね。雑誌でもこのところ「散歩の達人」「東京人」と居酒屋特集が続いていて、われわれ呑んべにとってはうれしいかぎり。しかも、昔はどれを読んでも同じような記事が多かったのですが、最近は吉田さんが昨日ここに取材に来られたように、独自の取材に基づく独自の記事が多くて、読んでるほうも同じ店のことを書いた記事であっても、それぞれが楽しみになってきました。

さてと。実は先週土曜日くらいから風邪をひいたらしくて調子が悪く、昨日までお酒を控えていたので、今日はこの辺にしておきますか。お勘定をお願いします。今日は約2時間の滞在。燗酒3本(3合)におでん6品とまつもで2,500円でした。ママさんもお元気になったようで本当に安心しました。どうもごちそうさま。それじゃみなさん、お先に。

店情報 (前回)

《平成16(2004)年12月21日(火)の記録》

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コメント

浜田様、新年明けましておめでとうございます。
松山の「いこい」が登場すると、やはりママのその後をお伝えしなければと思います。現役復帰を無事果たされたそうですが、私が店を訪れた時は、閉店時間を過ぎていてご本人に会うことが出来ませんでした。たまに行くバー「露口」でも浜田さんの話題が出ます。一度お会いしたいですね。帰省の折にはよろしくお願いします。
ご実家の北条も元旦から松山市となりましたね。今後ともよろしくお願いします。

投稿: 松山の門田 | 2005.01.03 23:35

今年もよろしくお願いします。>松山の門田さん
そうですか。「いこい」のママさんの笑顔も戻ってきましたか! 年始早々、うれしいニュースを伝えていただき、ありがとうございます。
北条の知人たちからの年賀状も、住所が「松山市」に変わっていて、「あぁ、そうだったんだ」とあらためて合併を感じた次第です。
これで「露口」も同じ市内になったので、また帰省したときに行くのが楽しみです。マスターや朝子ママにもよろしくお伝えください。

投稿: 浜田信郎 | 2005.01.04 12:45

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金曜日です。今日は中野に出てみようかな。中央線沿線は駅の周辺に飲み屋街が広がっているところが多いのですが、そういう中にあって中野駅北口側、中野ブロードウェイ周辺... [続きを読む]

受信: 2005.02.13 22:06

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