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英国風パブの老舗 … パブ「ザ・ライジング・サン(The Rising Sun)」(四ツ谷)

大人の「教養」としてのBAR入門―いい店、いい酒の選び方ガイド」という森下賢一さんの著書があります。この本の中に「パブ入門 - 日本にいながら英国気分」という章があり、その中で『現在も残っている、最も古い東京の英国風パブに、創業から約4分の1世紀経つ四ッ谷駅近くの「ザ・ライジング・サン」がある。創業者のヘガーティさんはアイルランド系だがロンドン育ちで、この店を「外国人も安心して飲める酒場」として始めたという。まさに雰囲気はロンドンの小さいパブそのもののような店で、開店当時は生エールこそなかったが、缶入りエールや、シェパーズパイなどイギリス風自家製パブフードもあり、値段もリーズナブルで、毎日会社の帰りにはここに寄ってエールやジントニックを飲みながらイギリスの新聞を読んだり、世間話をしていく外国人の常連も多く、まさに「リトル・ロンドン」だった。』と紹介されているパブがあります。

今日はたまたま四谷界隈での仕事だったので、その「ザ・ライジング・サン」に行ってみようと思っているのです。

四ツ谷駅前の四谷見附交差点を渡り、新宿通り左側を新宿方向に向かって進み、左に曲がると立ち飲み「鈴傳」がある角を曲がらずに直進。角から4番目にある新盛ビルの上部に掲げられている太陽の顔をアレンジしたユニークな看板があるのが「ザ・ライジング・サン」です。階段を2階に上がると何軒かお店があって、「ザ・ライジング・サン」は一番奥です。

開けっ放しの入口からは店内は見えず、一歩踏み込むと左側に店内がひらけています。「こんにちは。いいですか」。午後6時の店内は他に先客はなく、カウンターの中で仕込みをしているらしい女性に声をかけます。「いらっしゃいませ。おすきなところへどうぞ」と声をかけてくれる彼女は、日本語は上手だけど日本人ではなさそうです。

店内はカウンターが5~6席程度に、フロアには大きなテーブルがふたつあってけっこう人が入れそうです。そのカウンターの中央部に座り「ビールは、ビターありますか?」と確認。「あります。ギネスの缶(950円)です」とおねえさん。そうか。缶ビールなんだ。「じゃ、ビターはやめて、スタウトのほうのギネス生をお願いします」。すぐにギネスの純正1パイントグラスに、ギネスがなみなみと注がれます。そのグラスを受け取りながら、「支払いは?」と聞いてみると、「その場でもいいし、あとでもいいです」とのこと。ほんじゃまパブらしく、とその場で支払い。ギネス生は通常は900円なのですが、開店後2時間(午後7時半まで)はハッピーアワーとして750円になるのだそうです。(ちなみに、あとで他のお客さんたちの様子を観察してみたところ、ほとんどの人は最後にまとめて支払ってるようでした。)

そのギネス生をいただきながら、あらためて店内を見てみます。昭和49(1974)年創業の店内は、家具もなにもかもが古い英国風。なんだか日本じゃないみたいな雰囲気ですよねぇ。

おねえさんはカウンターの中での仕込み作業に戻っています。さっきから四角いバットにマッシュポテトを敷きつめて、その上に鍋で炒めていた牛挽肉と野菜をのせていっています。「それは何ができてるんですか?」と思わず確認。「シェパーズパイを作ってるんです。これを楽しみにいらっしゃる方が多いので…」とおねえさん。最後の仕上げに、牛挽肉と野菜の上にもマッシュポテトを敷きつめ、フォークでツィーツィーと筋(模様)をつけていきます。

「あ。キタさん。いらっしゃい」。料理から目を上げて、入口に向かって声をかけるおねえさん。「よぉ」と年配の男性が入ってきて、カウンターの一番奥に陣取ります。「サッポロでいいの?」「あぁ」と返事をして荷物を置いたりしているうちにサッポロ生ビール(700円→550円)が用意されます。カウンターには椅子もあるんだけど、キタさんは椅子には座らずカウンターに向かって立ったまま。そしてカバンの中からなにやら瓶を取り出して、その中の液体をちょっと生ビールに注ぎます。サァ~ッとビールの中に褐色が広がります。まるでチューハイに梅シロップを入れたときみたいですねぇ。なんだろうなぁ。キタさんは立ったままそのビールをグィ~ッとまずひと口。

「キタさん、この間こんなことがあったの」と、カウンターの中のおねえさんが、ものすごく早口の日本語でキタさんに話し始めます。キタさんはやわらかい笑顔でウンウンとうなずきながらおねえさんの話を聞いています。よほどの常連さんなんですねぇ。

いろんなことを話している内容から、彼女はマレーシアの出身らしいこと。学生時代に日本に来て、それ以来日本にいるらしいこと。今ではこの店のキーマン(キーウーマン)で、料理を作り、バーマン(バーテンダー)もこなし、さらにはキャッシャーとホール係もこなすという、ま、言ってみればほとんど彼女ひとりでこの店を切り盛りしているらしいのです。アルバイトの学生もいるのはいるらしいんですけどね。それにしても、よくこんなに言葉が出てくるなぁ、と思うくらい機関銃のように言葉が飛び出してくる。

その機関銃の間隙をぬってキタさんが2杯目のビールを注文します。

そこへフラリと入ってきたのは、これまた常連さんらしき外国人男性ひとり客。そのまま店の奥まで進み、壁にずらりとかかっている金属性のジョッキをひとつ取ってカウンターの一番入口よりの席に戻り、おねえさんにそのジョッキを手渡します。「いつものようにサッポロでいいの?」「あぁ。それでたのむ」というやり取りを“英語で”行ったあと、おねえさんがそのジョッキを洗って生ビールを注ぎます。

そのビールを彼に渡したおねえさん。先ほどキタさんにしていたのとほぼ同じ内容の会話を、今度は英語でバリバリと彼に話しはじめます。す・す・す・す・すごぉ~~~いっ! 日本語も機関銃だったけど、英語もまた機関銃ですねぇ! 彼女の頭の中はどんなになってるんだろう。このスピードで話せるということは、日本語を話してるときは日本語で考えて、英語で話してるときは英語で考えてるんだろうなぁ。こんな勢いで話してたら、どっちかの言葉から翻訳するような時間はないからなぁ。外国人の彼はけっこうきびしい顔をして話を聞きながら、ときどきロジカルな回答を返している。ふ~む。キタさんの笑顔でフンフンと話を聞くやり方が日本風だとしたら、彼のはいかにも英語人(英語を話す人たち)風だなぁ。英語が言語的にロジカルなせいか、どうも英語人は考え方がとってもロジカルな感じがするんですよねぇ。(「ロジカル」=「曖昧さが少ない」程度の意味合いで使っています。)

おねえさんが彼と英語でバリバリ話している間に、私もキタさんと話をはじめます。「さっきの謎の液体はなんなんですか?」「あぁ。これ? これは黒酢なんですよ。」「え? 黒酢? それをビールに入れるとおいしいんですか?」「う~ん。どうかなぁ。おもしろい味にはなるけどね。お酒は楽しく飲めればいいんですよ。だからいろんなことをやってみてるんですよ」とニコニコと微笑むキタさん。ご自宅でもいろんなカクテルを試してみたりしてるんだそうです。

そのキタさんのおすすめにしたがって、ギネスのあとの2杯目は「ジェムソン(Jameson)」のソーダ割り(600円)をいただきます。「このウイスキーは安いけどうまいんだよ」とキタさん。中野駅南口からゼロホールに向かう途中にある「イリュージョン」(03-3384-7598、中野区中野2-12-11 飯尾ビルB1)っていうバーもいいよ、とご紹介いただきました。

ゆっくりと1時間半ほど過ごし、今日は1,350円でした。どうもごちそうさま。

そうそう。今日は(私もそうですが、途中でやってきたほかのお客さんたちも)飲むだけで全然食べなかったけど、食べ物メニューもけっこうあるようです。先ほどしたくしていたシェパーズ・パイ(Shepherd's Pie)は普通サイズが1,500円、ライトサイズが700円。英国風の朝食、オール・デイ・イングリッシュ・ブレックファーストは自家製グリルドソーセージ2本、焼きベーコン2枚、炒めたトマトときのこ、ベイクドビーンズと焼き卵が盛り合わされて1,500円などなど。ちょっと高いけど、なつかしの英国風朝食も食べてみたいですね。

店情報

《平成17(2005)年5月17日(火)の記録》

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コメント

浜田さん、お久し振りです。
Jemsonの名前を聞くと、懐かしくなりますね。以前、このアイリッシュ・ウイスキーが気に入って、1度に3本購入し、しばらく呑み続けたことがあります。
イギリスにも最近行っていません。またビターが呑みたいですね。

投稿: しんちゃん | 2005.06.14 07:56

私は生まれてはじめていただいた「Jameson」でしたが、とても飲みやすいウイスキーでした。
このお店、サーバーから注がれるビールはギネスとバスとサッポロ生の3種だけなのですが、それ以外に缶や瓶ではギネスビターやホブゴブリン、ボデイントン、オールド・スペクルド・ヘン、ヒューガルデン、コロナなどのビールも置いてあって、こういったビールが好きな方にも向いてそうです。

投稿: 浜田信郎 | 2005.06.18 21:08

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四ツ谷方面での仕事を終えて、久しぶりにやってきたのは東京で一番古い本格的英国式パブ「ザ・ラインジング・サン」です。店があるのは新宿通り沿いの小さなビルの2階。狭い階段を上がり、店内に入って驚いた! カウンターの中にいる店員さんは前回来たときと同じマレーシア人のおねえさん、そしてカウンターの外で飲んでるのは、これまた前回来たときと同じで、キタさんです! ほぼ1年半ぶりにやってきたというのに、店内の光... [続きを読む]

受信: 2006.10.22 16:07

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