松山一古いおでん屋 … おでん「赤丹本店(あかたんほんてん)」(愛媛・松山)
夜行バスに乗るため、早い夕方、松山中心部の市街地に出てきました。大街道(おおかいどう)で降りて、まずは東京にいるにっきーさんから情報をいただいた「蔵元屋」(←愛媛の地酒130銘柄が1杯100円~500円くらいでいただけるらしい)に行ってみるものの水曜日は定休日。そのすぐ近くにあるのが2004年12月に閉店したおでんの「いこい」の後継店。息子さんがやっているのだそうです。そこから二番町方面に入った老舗バー「露口」はまだ開いてなくて、営業中のどぜう汁の「由利」の前を通り過ぎて、鍋焼きうどんの「アサヒ」「ことり」へ。ところがこの2軒がともに申し合わせたように水曜日定休。野毛(横浜)の月曜日定休と同じく、松山は水曜定休日の店が多いのかもね。
そんなわけで大街道から銀天街(ぎんていがい)を抜けて夜行バスの出発点である松山市駅(まつやましえき)に到着したのは午後5時半。昨年もやってきたおでんの「赤丹」で一杯飲んで、今回の帰省を締めくくりましょうね。
ビンビール(キリンラガー大瓶)。食べ物も含めてメニューに値段は載っていない。
まずいただいたのはパッと目についたタコ。串に2匹刺さっており、上がイイダコ、下が手長ダコとのこと。手長ダコはかなり大きくて、注文すると板さん(←調理を担当している店のおにいさん。みんなが“板さん”と呼んでいる。)が食べやすい大きさにカットして出してくれる。
もうひとつ気になったのは串に刺さったダンゴ状のもの。「これは?」とたずねると、女将さんが「ツミレよ。ひとつひとつ私が作ったの」とニッコリ。なんとなんと。手作りとあっては、これはぜひもらわないといけないですねぇ。練りもの好きにはたまりません。
こちらではおでんはゆるく溶いた辛子味噌で食べるのが定番。たっぷりとお皿に入れてくれます。
板さんが常連さんのひとりにイワシ(カタクチイワシ。このあたりではホータレイワシと呼ぶ)を焼きはじめたのを見て、となりの常連さんも「私もそれを焼いてもらおうかな」。それじゃと私も便乗して「私もそれいただけますか?」とたずねたところ、板さんが困ったような顔をして「これで最後なんですよ」と言いつつも焼きあがったイワシは5尾が私のところへ。常連さんふたりには2尾ずつのイワシに、急きょ焼いたフグの身が二切れずつ足されます。「えぇーっ。いいんですか。すみません」と謝る私に、「私らはいつでも食べられるからいいんですよ。どうぞ食べてください」と常連さんたち。あまりなじみのない酒場での、お店の人や常連さんたちのちょっとした気遣いはとてもうれしいですね。どうもありがとうございます。
ホータレイワシは天ぷらや刺身(いわゆる「小イワシの天ぷら」や「小イワシの刺身」)でいただくことが多いのですが、こうやってサッと焼いただけで食べてもおいしいんですねぇ。小さいながらもアブラがのってるのがいいのかなぁ。
こいつはお酒をいただきましょう。燗をつけてください。
今回の帰省中は、ずっと冷酒ばかりいただいてたので、最後はちょっと燗酒です。この店ではステンレス製のチロリを、おでん鍋の横に設けられた燗付け用の穴に入れて燗がつけられ、それを「はいどうぞ」と湯飲み大の陶器のぐい飲みに注いでくれるのです。お酒は地元の「雪雀」。ホータレイワシともよく合いますねぇ。
常連のお客さんたちはそれぞれひとり客で来てるのですが、お互いによく知っていて、会話も盛り上がっています。右側の何人かは元々同じ職場の先輩・後輩のようです。先輩のほうはかなり年配なので、すでに退職されている様子。一番後輩と思われる人だけが現役さんなのかな。この店は松山市駅の目の前にあるので、仕事帰りにちょいと寄るのにも都合がいいんでしょうね。
ここ「赤丹」は昭和2年頃の創業だそうで、常連さんたちは「松山で一番古いおでん屋」と自慢されています。元もとは女将さん夫婦がやっていたらしいのだが、ご主人が亡くなって今は板さんと、手伝いのおねえさんの3人でやっているのだそうです。「女将さんはいまだに我われのマドンナだよ」と常連さんたち。
店内のメニューには価格表示がなくて、おでんや飲み物も含めてなにがいくらなのかはまったくわからないのですが、こうやって何十年も通っているような常連さんたちが多いということはそんなに高くないお店ってことなんでしょうね。
おでん以外の品物は黒板に書き出されていて、たとえば今日の刺身はハギ、赤ニシ貝、スルメ、釣アジ、シメサバ。そのほか、一品料理としてトマト、太刀魚塩焼、キス天、冷やっこ、揚げナス、ホゴ煮付、あさりバター・酒蒸し、皮ちくわなどが並びます。
板さんが刺身を引いたりするのに使っているまな板は、厚みが10センチくらいある銀杏板(いちょういた)。以前はもっと厚かったのに使っているうちにだんだん薄くなってきたのだそうです。
さて次はなにをもらいましょう。黒板メニューの中では皮ちくわが気になるところ。皮ちくわというのは、蒲鉾の材料であるエソという魚の皮を竹に巻いて焼いたもの。しっかりとした食感と豊かな風味が味わえるのです。しかし、せっかくのおでん屋さんなのでおでんももうちょっと食べたいなぁ。おでん鍋の中を再確認し、じゃこ天いただくことにしました。
ここのじゃこ天は宇和島産。こういう練り物系は宇和海の近くのがうまいんですよねぇ。宇和島産と八幡浜産とが有名です。四国全体で見ると、鳴門あたりのちくわも有名です。ちょうど四国の西の端と東の端というのがおもしろいですね。
最後はおでんの焼き豆腐でしめて終了。午後5時半から6時半まで、ちょうど1時間の滞在は2,090円でした。「どうもありがとうございました」という女将さんや、「また来いよ」と言ってくれる常連さんたちの笑顔に見送られながら、心地よく地元の老舗酒場をあとにしたのでした。

愛媛の地酒「蔵元屋」 / おでん「いこい」(新店) / バー「露口」(営業前)

酒亭「由利」 / 鍋焼うどん「アサヒ」 / 鍋焼うどん「ことり」

「赤丹」入口 / 女将さん / おでん鍋の中身

タコとツミレ / 焼きホータレイワシ / ステンレスのチロリで燗酒

おでん鍋 / じゃこ天 / 焼き豆腐
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コメント
いい店ですね。
私は7月の末にお邪魔し、釣鯖の刺身と鰻を頂いて至福の時を過ごしました。
大学時代から20年振りの松山は、あまり変わっていないと感じました。
水曜定休も相変わらずじゃないかな。
浜田さんの松山紀行、次も楽しみにしてますよ。
投稿: とんくし | 2006.08.30 22:55
今お盆は松山Bar巡りへ行って参りました。
露口、信天翁、ゆめまぼろし。
今回は徳島でもグッド・バーを巡り、幸せな旅行となりました!
四国はイイっすね~!!
投稿: ふる | 2006.08.31 18:46
コメントありがとうございます。>とんくしさん
松山には高校時代までしかいなかったので、酒場のことはほとんど知りませんでした。
帰省するたびにちょっとずついろんなお店に行きたいのですが、だんだんといい店を知るにつれ、それらの店に行くだけでも精一杯で、新しいお店が見つけられずにいます。
この夏は「露口」に行けなかったのが残念です。
ごぶさたしてます。>ふるさん
なんと「露口」、「信天翁」、「ゆめまぼろし」ですか!
今回の帰省では一度もバーに行くことができませんでした。
「Bar☆Compass」のすすきの編も充実してきましたね。いつも楽しみに拝見してます。
投稿: 浜田信郎 | 2006.09.03 13:23