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ぽつんと残った一軒家!? … 寿司「繁寿司(しげずし)」(荻窪)

毎日新聞火曜日夕刊に「今夜も赤ちょうちん」という記事を連載されている鈴木琢磨(すずき・たくま)さんから『荻窪におすすめのお店が2軒ある。1軒は「繁寿司」で、もう1軒は「播州」(03-3393-0856、杉並区荻窪4-31-12)だ』という話をうかがったのが6月のはじめ。ちょうどそのころ、鈴木琢磨さんご自身も件の「今夜は赤ちょうちん」の中で「のらくろと、うまい熱燗」と題した「繁寿司」に関する記事を書かれたばかりで、『特に「繁寿司」は店主がご高齢で後継者もいらっしゃらないようなので今のうちにいっておいたほうがいいよ』とのこと。

そんなわけで今日、早い夕方から荻窪北口の名店2軒をまわり、開店時刻である午後6時ジャストに荻窪駅南口の「繁寿司」に到着です。開けっ放された入口から中に入ると... だぁ~れもいません。まぁしかし、店は開いてることは開いてるしなぁ、と思いながら店の中や外を見渡していると、お店の人と思しき女性が出てこられて「いらっしゃいませ。すぐに準備ができますからどうぞ」と席をすすめられます。

まっすぐ奥に長い店内はL字カウンターのみで10人も入れないほどの小さいもの。そのカウンター長辺の中央に座り、奥の勝手口から「いらっしゃいませ」と入ってこられたご主人・早川繁男さん(常連さんたちは親しみを込めて“繁(しげ)さん”と呼ぶらしい)に、まずはビールを注文すると、すぐにキリンラガー中瓶とグラスが出され、追いかけるように醤油皿と割り箸が用意されます。

店は昭和23(1948)年の創業で、今年で58年目。ご主人は82歳になるのだそうです。先ほどの女性は、ご主人の娘さんなのでしょうか。今もカウンターの奥のほうにいて味噌汁の準備をはじめています。ご主人はカウンター上のネタケースに順番に、そしてていねいにネタを並べていきながら、その合い間にカウンター上段のつけ台のところにガリやキュウリのスライスを出してくれます。

準備をするご主人とおしゃべりしつつ、出されたキュウリをポリポリとかじりながらビールをいただいていると、シジミの味噌汁ができあがってきました。“まず最初にお味噌汁”というのがここの流儀のようです。できたての味噌汁のうまいこと。すでに2軒の酒場を回ってきて、ほろ酔い(それ以上か?)加減の口と胃に染み渡るようにシジミの味噌汁の味わいと温かみが広がります。

ネタの準備もすべてそろって、「さぁ、どうしましょう」と聞いてくれるご主人に、おつまみを適当に作ってもらうようお願いし、あわせてお酒(燗)も注文します。

つまみの1品目として出されたのはトコブシの刺身。蒸しアワビと同様、おそらく蒸したトコブシを食べやすい大きさにスライスしたもの。プリプリとした食感と、アワビ以上の旨みがトコブシですねぇ。

82歳のご主人は、まさに生き字引的な物知りさん。昔のこの界隈がどんな様子だったのかをたずねた私に、親切に、そしてまたおもしろいエピソードも交えながら話を聞かせてくれます。荻窪界隈からはじまった話題は、都内下町のほうの当時の様子にも広がり、そのお話が一番の酒の肴になるほどです。

話を続けながら、まな板の上でチョイチョイと支度(したく)して出してくれた2品目のつまみはタコの吸盤。こりゃまたいいつまみですねぇ。

このご主人のすばらしいのは、人が話しはじめると「へぇ。そうですか。」「ほぉ、ほぉ」と実に楽しそうに、そしてまるではじめてその話を聞いたかのように感動的に相槌を打ってくれるところです。おそらく経験豊かで、このカウンターの中でさまざまな人の話を聞いてきて、いろんなことをよくご存知のはずなのに、そんなことはおくびにも出さずに、人の話を一所懸命聞いてくれるのです。これだけ聞き上手だから、話し上手でもあるんでしょうね、きっと。

3品目のつまみとして大きい(太い)アスパラにマヨネーズを添えて出されたところで、常連さんらしき男性客と、さらにもうひとり女性客がやってきました。この女性は、ご近所に住んでて鈴虫を飼っているのだそうで、プラスチックのケースに入れた鈴虫を持参。リーンリーンと響く鈴虫の音は涼しげでいいですね。

お銚子をもう1本おかわりして聞くご主人の話題は、鈴虫のことから地域の話題などなどとますますもって幅広い。この店には近所に住んでいた井伏鱒二さんや田河水泡さんもいらしていたのだそうです。

ふと気がつくともう午後7時40分。すでに1時間半以上楽しんじゃいましたか。それじゃそろそろ握りをいただきましょうかね。

まずはさっぱりとコハダをお願いすると、ご主人から「大葉(おおば)は大丈夫ですか?」と確認が入ります。「はい。むしろ好きです」と返事すると、前述のコラムにも登場した大葉をはさんだコハダの握りが2個出されます。1回の注文で2個ずつ出されるスタイルのようですね。

ところでお寿司の数え方ですが、よく使われる「貫」という単位は、寿司1個ではなくて、2個セットになった寿司のことだと思っている人もいるため、誤解がないようにマスコミなどでは「個」という単位を使うことが多いのだそうです。(ちなみに本来は1貫=1個のことのようです。)

さてお寿司。続いては女性客がヒラメとコチを注文したのを聞いて、その白身魚に私も便乗。そしてラストは大好きな穴子の握り。胴体の部分を1個と、尻尾に近い部分を1個の2個セットで出してくれるのがまたうれしいじゃありませんか。

楽しい話に相槌を打ちながら最後のお茶も飲み干して、初回からじっくりと2時間を超える滞在は、ビール1本、お酒2本、お椀からはじまって、つまみ3種に握りが4種(8個)で、ちょうど4千円でした。どうもごちそうさま。またいろんなお話を聞かせてもらいに来なくちゃね。

あ。言い忘れてましたが、ここも野毛の「武蔵屋」や木場の「河本」と同様に、古い古い建物の中でネコが気持ち良さそうに眠っているお店です。なんだかこの三つの店に共通する居心地のよさを感じてしまうなぁ。。。

060722g 060722h 060722i
のれん / ビール / ガリとキュウリ

060722j 060722k 060722l
シジミの味噌汁 / トコブシ / タコの吸盤

060722m 060722n 060722o
ご主人・繁さん / アスパラ / コハダ

060722p 060722q 060722r
ヒラメ / コチ / 穴子

店情報

《平成18(2006)年7月22日(土)の記録》

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「やき屋」で一緒になった酒友たち(黒ブタさん、金魚屋さん、D介さん)とともに向かったのは、駅の反対側、南口にある昭和23(1948)年創業の老舗寿司屋、「繁寿司」です。 「こんばんは。4人です」と入ると、82歳になるご主人と、ニコニコ笑顔の娘さんが「いらっしゃいませ」と迎えてくれます。土曜日午後7時過ぎの店内には先客はなく、4人でL字カウンター長辺のところにずらりと並んで座り、燗酒を注文すると、カ... [続きを読む]

受信: 2006.10.01 15:45

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