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そしていよいよお勘定 … 「奇天烈な店」(4/4)

奇天烈な店』(村松友視・著)を読んで、ぜひ来てみたかった、このお店。

このゴールデンウィーク9連休のテーマを「近くの名店を探る」と決めたときにも、実は脳裏には、この店のことが浮かんでいたのでした。今日になってダメモトで電話をしてみたところ、すぐに入れることになって、やっと長年の課題が解消できたのでした。

ビール1本に、ぬる燗3本を飲みつついただいた、他の店では決して味わうことのできない12種類の品々。改めて並べてみると、次のとおりです。

  1. ホタテの上にウニをのせて焼いたもの
  2. ホッキ貝の白味噌和え
  3. 真鯛の胃と腸を煮たもの
  4. カレイの煮こごり
  5. マグロの皮の煮物
  6. 三陸産のノレソレ
  7. 厚岸産の白魚
  8. 石鯛のレバーの腸詰煮
  9. 塩でいただく本マグロの刺身
  10. カツオの酒盗
  11. アオヤギの水管の弁
  12. 石ガレイの胆汁(2年もの)

ひとつひとつ細心の注意を払って、ものによっては数年という単位の時間をかけて、一点の妥協もなく仕上げられた品々。そのすべてが感動的な料理でした。

さあ、そしていよいよ恐怖の(?)お勘定のとき。

「お勘定はこちらです」

おかみさんが小さな紙片を手渡してくれます。恐る恐るその紙片に目をやってみると……。

「9,870円」

どう少なく見積もっても2~3万はいるな、と思っていたので、ガクッと拍子抜け。がしかし、この値段で、あれだけのものが食べられたというのが信じられない。

改めて『奇天烈な店』を読むと、実はこの値段のことについても触れられていました。本文は会話形式なのですが、その中で親方(店主)の語りの部分をまとめると次のようになります。

『この店で出すものはすべて、ネタが最高じゃないと成り立たないでしょ。でもね、この店の値段はそんなに高くないでしょ。最高のネタとこの店の値段……これにはやっぱり手品がありましてね。仲買人の友だちなんですよ。イサムっていうんですがね。そのイサムが、バカ高いネタのすぐそばあたりの、本当に旨いところを、そっと取っといてくれるってわけでね。彼が、奇天烈な店の手品のネタですね』

とにかく刺身や塩辛、煮物といった、普通のものですら、ここの店主にかかると普通じゃなくなってしまうという、このお店。値段も普通じゃありませんでした。

支払いを済ませて出口へと向かうと、店主と、おかみさんが
「どうもありがとうございました。またお待ちしてます」
と笑顔で見送ってくれます。

入口近くの4人連れに「お先に」と声をかけ、いつも拒むように店の内側にかけられているノレンをくぐり、「ごちそうさま」と外へ出ます。最後にいただいた石ガレイの胆汁の甘みと旨みを余韻として楽しみながら店を後にしたのでした。

[→第1話に飛ぶ

《平成19(2007)年5月4日(金)の記録》

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コメント

面白かったです(^m^)

投稿: ここちき | 2007.06.01 10:45

すごいなぁ。
乱歩と魯山人を足して2で割ったようだ。

投稿: idj | 2007.06.07 03:15

知人のブログで噂を聞き、小説になっていると言うので検索した結果、このブログに行き着きました。実はこころ当たりがあったのです。5、6年前旨い店があると聞き尋ねましたが、灯は点いているのにのれんが中にあり、数度時間替えて行きましたが同じで諦めたことがあるのですが、その店だと確信しました。コースだけなんですか?その材料だと安いと思いますが、食いしん坊の割に胃が小さく食べ切れないのです。

投稿: まり | 2013.11.03 14:10

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