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オペレーションが確立 … 鯉とうなぎの「まるます家(まるますや)」(赤羽)

「久しぶりに赤羽・十条方面に出かけてみるか」

 ふと思い立って、早めの夕方に自宅を出て、「秋元屋」などのある野方方面へテクテクと歩きます。野方まで行くと、そこから環七にそって赤羽まで直通で行ける路線バスがあるのです。しかも赤羽は終点。ボォーッとバスに揺られていれば着くので、こんなに楽なことはありません。

 赤羽にも、たくさんの名酒場があるのですが、今日は夏らしく川魚をいただくべく、鯉(こい)とうなぎの「まるます家」をめざします。入れるかな? 店の前の行列はないようです。ヨイショっと店内へ。んー、残念。店内にはふたりほど待っているおじさんが居ました。ま、ふたりならばすぐでしょう。私も待つことにしましょう。

 入口横、壁際にある待ち合わせ用のイスは2脚。そのふたつに先に待っている、おじさんたちが座っていて、3人目となる私からは、その横に立って待たなければなりません。しかし、あっという間に席が二つ空いて、おじさんたちはカウンターへ。それではとイスに座った途端に、ひとつ空いたらしく、

「はい、おにいさん、こちらへどうぞ」と声がかかります。

 1階の店内は18人ほど掛けられるコの字カウンターが左右に2個並んでいて、それプラス、テーブル席が3卓ほど。都合45人ほどが座れるフロアになっています。「こちらに」と通されたのは、その左右のカウンターのちょうど真ん中。店内を取り仕切る女将さんの目の前というポジションです。ひぇ~っ。この店にも何度か来ましたが、この席に座るのは初めてだなぁ。

「何にされますか?」

 通常は、高く謳うようなトーンで話す女将さんですが、なにしろ目の前なので、普通の声で聞いてくれます。

「小瓶のビールと、鯉(こい)のあらいをお願いします」

 ビール小瓶(サッポロ黒ラベル、350円)は350mlと、ビアタンに2杯分ほど。飲みはじめの喉潤しにちょうどいい量なのです。

 そして鯉のあらい(400円)。いやいや、今日もシャッキリとピンクの身が美しいですねぇ。小鉢に盛られた千切りの大根(白)と人参(朱)の上にのっているということもあって、特にピンクの美しさが冴え渡ります。どーれ、まずひと切れ。添えられた酢味噌をちょいとつけて、口に含むと、コリコリと実にいい弾力感です。んー、やっぱり、この店の鯉はすばらしいなぁ。

「はい、8番さん、サメの煮こごり(300円)いっちょ!」

 左側のカウンターを担当している、おねえさんから歌うように注文が飛びます。

「はい。8番さん、サメの煮こごりがひとつ!」

 目の前の女将さんが、注文を復唱しながら、目の前に横2列に並んだ番号が書かれた板の、8番のところに立った棒に、赤いプラスチックの小札を刺します。札はあっちを向いたり、こっちを向いたりしている。しばらく観察していると、どうやらこっちを向いている札が、まだ出ていないものを、あっちを向いているものが、すでに出ているものを示しているようです。奥の厨房から、料理がトンと出されると、女将さんがちらりとその札を確認して、

「はい。ナマズの唐揚げ(500円)が出た。12番さん!」

 と、カウンターのおねえさんに声を掛けながら、12番の札を、くるりと反対に向けて、「まだ出ていない」という状態から、「すでに出た」という状態に変えます。札がこっちを向いたまま、なかなか出てこないものがあると、ときどき厨房に向かって、

「はい、エビステーキカツ(400円)が出る」

 と声を掛けて、「注文を通してるけど、まだ出てきてないよ」ということを再認識させます。なるほどねぇ。こういう定型的なオペレーションが確立しているから、注文ミスなどが少ないんですね。

 さぁ、飲み物はビールに続いて、燗酒にしますか。ここのお酒は「金升(かねます)」(300円)と「富久娘(ふくむすめ)」(350円)の2種類。今日も「カワイコちゃん」という符丁で呼ばれる「富久娘」のほうをいただきましょう。

「はい。カワイコちゃん一丁、お燗をつけてね」と注文が通ります。

 料理のほうは、鯉(こい)に続いて、もうひとつの名物、うなぎをいってみますか。うなぎも各種のメニューがそろっているのですが、その中でも、おそらくこの店にしかないだろうと思うメニューが、バラ身ポン酢和え(350円)です。これは、うなぎの下ごしらえのときに切り取られる、腹骨まわりの身を集めて茹で冷まし、紅葉卸を添えて、ポン酢醤油で和えたもの。なにしろ、この腹骨まわりの身や、ヒレまわりの身が美味しいのですが、食べられるところが少ないのです。

 ここで、店中央部の注文の仕切りが、女将さんから大女将さんに交代します。なるほど、この場所は常に店全体に注意を払っていないといけないので、ときどき交代し合いながら務めるんですね。引き継ぎなんて特になく、すっと交代する女将さんと大女将さん。なにしろ、こっちを向いてるものが出てないもので、その品物がなんであるかは、プラスチック札の色と形でわかるようですから、引き継ぎなんていらないんですね。すばらしくよくできた仕組みです。

 この席に座ると、厨房の中も比較的よく見えるのですが、せまそうな厨房に見えて、その中で男女合わせて7人くらいの人が働いてるんですね。びっくりです。

 早い夕食なのか、うな丼を食べている人も大勢います。なにしろ、ここのうな丼は肝吸い付きで750円ですからねぇ。1~2品、つまみながらお酒を飲んで、シメにうな丼を食べて帰るというお客さんも多いのです。

 お酒も、バラ身ポン酢もなくなって「ごちそうさま」とお勘定をお願いすると、私のところに重ねられたプラスチックの札をサササと数えて「1,450円です」と大女将さん。どうもごちそうさまでした。

070630a 070630b 070630c
赤羽1番街 / 「まるます家」 / 満席の店内

070630d 070630e 070630f
ビール小瓶と鯉のあらい / 富久娘(燗) / バラ身ポン酢和え

店情報前回

《平成19(2007)年6月30日(土)の記録》

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コメント

 かねてから行ってみたいと思っている酒場です。
この記事にドラマ仕立てを感じます。店に入るところから、ごちそうさままで。お客の様子、注文をとる店の人の動き、料理の姿、味、店の「おあいそ」のシステムまで・・
読んだ後、なにやら行ったような気分、少し酔ったような気分になるから不思議です。

投稿: 越村 南 | 2013.12.14 18:36

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