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2007年10月

真昼間から、つみれ鍋 … 大衆酒場「ふくろ」(池袋)

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 三連休の最終日。目が覚めると、すでに息子は部活へと出かけており、朝食が終わったところで、カミサンと娘も、

「お買い物に出かけてくるから、お昼は、どっかで適当に食べといてね」

 と出かけていきました。

 うーむ。昼ごはんかぁ。夕方ならば、いろんなお店が開いてるのに、真っ昼間というのはなぁ。……待てよ。今日は8日か。毎月8日は、「ふくろ」が料理全品半額の日じゃないか!

 そんなわけで、ちょうど昼どきにやって来たのは、池袋西口にある「ふくろ」です。

 3階建てのビル全体が大衆酒場という「ふくろ」は、2階以上は午後4時からの営業ながら、1階は早朝、午前7時から元気に営業中。真っ昼間にもかかわらず、すでに開店してから5時間が経過しているのです。

 祝日(体育の日)とあって、店内はもう大にぎわい。ほとんどの客が、中年以上の男性客という、昔ながらの大衆酒場は、すっかりできあがっているお客さんも多いようで、トロリとした目に、赤い顔で、なんだか時間が止まっちゃってる人。満面の笑顔ながら、ものすごい大声で、近くの人と話している人。「おーい、ねえさん!」と、酔っ払って回らぬ舌で、店のおねえさんに声をかけ続け、「今、忙しいから、後で聞くって言ってるでしょ!」と何度も怒られてる人と、とても真っ昼間とは思えないような状態です。

 予想以上の、ものすごさに店に入ったところで半ば呆然としていると、

「おにいさん、おひとり? こちらにどうぞ」

 と、店のおねえさんが、びっしりと人が埋まっている空間を指し示してくれます。「そんなところに空席があるのか」と思いながらも、示された場所に近づいてみると、おっさんたちに埋もれるように、せまーい隙間に、かろうじて空いているイスが1個。

「ひとり、入れたげてねーっ!」

 という、おねえさんの声に、その隙間がジワジワっと広がります。

「どうもすみません」

 両側に声をかけつつ、空けてくれた空間に滑り込むと、ホッピーと、海老のかき揚げを注文します。

 この店では焼酎と、割り物は別々に注文するのが本来のやり方。たとえばホッピーならば、1合瓶入りの焼酎(190円)と、瓶入りホッピー(いわゆるソト、190円)の両方を注文する。同様に、酎ハイならば瓶詰め焼酎(190円)に、瓶入りの炭酸(130円)をもらうのが本筋なのですが、実際には「ホッピー」あるいは「チューハイ」と注文しただけで、ちゃんとセットで持ってきてくれます。氷はサービスで出されます。

 ソト190円、ナカ190円で、セットだと380円というホッピーは、ちょっと高めに感じるかもしれませんが、なにしろ焼酎が正一合ありますからねぇ。氷を入れたジョッキだと、ちょうど3杯分のホッピーが作れてしまうのです。1杯あたり130円弱だと思うと、安い安い。

 お通し(200円)の佃煮をつつきながら、チビチビとやっているところへ、丸いお皿から、はみ出さんばかりの海老のかき揚げの登場です。このでっかい、かき揚げ。普段でも350円と安いのですが、今日は「料理全品半額の日」なので、これが180円。信じられない値段です。

 けっこうカリカリにできあがっているので、上から箸でバリッと崩して、ちょっとずつ天つゆにつけながら、いただきます。

 この海老かき揚げを前菜に、本日のメインディッシュとして、つみれ鍋を注文します。

 つみれ鍋をはじめとして、一人用の鍋物がたくさんあるのも、ここ「ふくろ」の大きな特長のひとつ。さすがに夏場は、たのむ気になりませんが、10月に入って、急速に鍋物が合うような季節になってきましたよねぇ。9月28日の最高気温が32度もあったのに、その二日後、30日には最高気温18度まで、14度も急落。それ以来、今日まで、最高気温22~26度くらいを維持しているのでした。

 すぐに固形燃料が2個入った簡易コンロが用意され、その上に、材料がすべて入った一人用の、つみれ鍋をトンと置いて、着火。あとはできあがりを待つのみです。

 この、つみれ鍋のほか、たらちり、かに鍋、はま鍋が、それぞれ600円(今日8日は300円)、かき鍋は650円(今日は330円)、そして、寄せ鍋が800円(今日は400円)といったラインナップ。今日は、まわりにも鍋物をたのんでいる人が大勢います。一番人気は寄せ鍋かな。次が、かに鍋か、つみれ鍋といったところ。

 しばらくすると、コトコトと鍋も煮立ってきました。たっぷりの豆腐に、ねぎ、はくさい、えのき茸。そしてメインの、つみれ団子が6個ほど。ちょっとずつ小鉢に取り分けて、ハフハフといただきます。

 それにしても、店はずっと満席ですねぇ。だれかが出ると、すぐにだれかが入ってきて、カウンターの中の、おねえさんたちも大忙し。それにもかかわらず、入口あたりで盛り上がっているグループ…。いや、もとい。もともと、ひとりずつで来たみたいなんだけど、飲んでるうちに、すっかり意気投合して、グループ客のようになっちゃった人たちの大騒ぎは止まらない。店中の空気を、すべて独り占めしたような音量です。

「すみませぇ~~んっ。すっ、みっ、まっ、せぇぇぇ~~~~んってば!!」

 と何度も何度も追加注文の声を張り上げますが、どのおねえさんたちも、みんな無視。これまでに、すでに何回か、

「おにいさんたち。今日は、もう帰ったほうがいいよ」

 と言われているのに、まったく聞く耳を持たないのです。みなさん、けっこういい年齢の人たちなのになぁ。まるで学生コンパのような盛り上がり方です。あぁ、まいった。

 本当は、もうちょっとゆっくりとしていきたかったけど、この喧騒ではくつろげません。残念ながら、今日はここまでとしますか。どうもごちそうさま。

 1時間ちょっとの滞在は、1,060円でした。

 人の振り見て我が振り直せ。何人かで店に行くときには気をつけなきゃ、と反省した次第です。

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ホッピーセットとお通し / 海老かき揚げ / つみれ鍋

店情報前回

《平成19(2007)年10月8日(月)の記録》

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ノドクロ尽くしで満腹 … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)

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「ねぇ、マスター。メニューにあるノドクロ(1,500円)って、1尾丸ごと?」

「そうですよ。ちょっと小さめですけどね」

 そう言いながら、冷蔵庫から取り出したノドクロを見せてくれる店主。

「小さいって言っても、これを1,500円で出したんじゃ、まったく儲けがないんじゃないんですか?」

「そうなんですけどね。うちの店で、なかなかそれ以上の値付けはできなくて」

 うーん。たしかに、そうかもなぁ。刺身の盛り合わせや、天ぷらの盛り合わせだって1,000円で、それ以外の品は、ほとんど3桁の値段ですもんね。千円を超えてるのは、ノドクロと、アンコウ鍋(1,500円)の2品しかない。

 そのノドクロは、姿焼きか、刺身にできるということなので、姿焼きで注文します。

 今日は日曜日ながら、三連休の中日(なかび)。なんだか刺身が食べたくなって、開店時刻である午後5時に、「竹よし」にやって来て、瓶ビール(キリンラガー中瓶、500円)と刺身の盛り合わせからスタートしたのでした。

 刺身を待つ間のお通し(200円)も、これまた大好物のアン肝。ビールを飲み始めた時点で、すぐに燗酒(菊正宗、350円)を注文したことは、言うまでもありません。このアン肝で燗酒を飲まなきゃ、なんで飲む! ってなもんですね。

 アン肝をなめなめ、お酒をやっているところに出された刺身盛り合せは、シマアジ、戻りガツオ、中トロ、生サーモン、そして関サバという豪華5品盛り。それぞれ3切れずつ盛られているので、通常はこれだけ注文したら、もう十分っていうほどの量なのです。

 この刺身盛り合せは、天ぷら盛り合わせと並ぶ「竹よし」の名物品のひとつ。

「ほっといても、どんどん出るんだから、もう少し値段を上げるか、刺身の量を減らせば?」

 と気遣う常連さんも多いのですが、店主はガンとして、この価格、この量を維持しているのです。

 そんなたっぷりの刺身に、やっと「刺身が食べたい!」という発作(?)もおさまり、おもむろに他のメニューを眺めているときに、冒頭に紹介したノドクロ(アカムツ)に気付いたのでした。

 焼き網を強火の遠火において、まずはノドクロの表面を焼き、あらかじめ予熱した魚焼きグリルに入れて仕上げていきます。

「業者さんからも、よくサラマンダー(上から加熱できる調理器具)をすすめられるんですが、なにしろ店が狭いので置けなくてねぇ」

 コンロやグリルを、うまく使い分けながら魚を焼いてくれるのは、そういう理由だったんですね。

 さぁ、できあがりました。ノドクロの姿焼きです。焼き魚の王者・ノドクロは、箸で持ち上げた身が、テカテカと照り輝くほどの脂ののりで、口に入れると、もうトロトロ。たまりませんなぁ。

「いやぁ、きれいに召し上がりましたねぇ。残った頭と中骨のところをスープにしましょう」

 と店主。しばらくして出された小鍋には、きのこや小柱なども追加されていて、それだけで何杯もお酒が飲めるようなスープに大変身。いやぁーっ。これは嬉しいなぁ。お酒も、おかわり、おかわり!

 口開けに、ひとりでやってきて飲み始めたのに、ひとり増え、ふたり増えと、お客さんも増えていき、すでにカウンターはいっぱい。午後8時過ぎに、近所に住む酒友、となおとんさんと、ふじもとさんの二人がやって来たところで、一緒に後ろ側のテーブル席に移動します。

 なおとんさん、ふじもとさん組も、さすがに目ざとくノドクロを発見し、「半分刺身で、半分焼き魚」というオーダー。他のお客さんもノドクロを注文したので、仕入れていた、すべてのノドクロが完売です。

 横から、ひと切れいただいた、ノドクロの刺身。これもまた脂がのりまくりで、トロトロです。なるほど。焼いても、生の状態のトロトロ感を失わないのが、ノドクロの特長なんですね。焼いて熱が通ることで、身の香りや味わいがふくらむから、ものすごく美味しく感じるんだ。

 さぁ、たっぷりと汁(つゆ)を残して、ノドクロのスープも食べ終わりました。さっき、これを出してくれたときに「汁が残ったら、あとで雑炊もできるからね」と言ってくれてたので、汁を大事にしながら食べてたのでした。今日は、まさにノドクロ尽くしですね。

 大満足、大満腹で、ノドクロ雑炊を食べ終わったのは、午後11時。シェーッ、三連休の中日とはいうものの、6時間も飲んじゃいましたか!

「あと1時間ほど飲んでれば、開店時刻から閉店時刻まで、ずっと居たことになるのに。今まで、そんな人はいなかったから、もうちょっと頑張ってみる? 新記録だよ」と店主。

 うーん。残念ながら、もう食べられないし、もう飲めません。

 たっぷりと6時間分のお勘定は4,800円。なおとんさんや、ふじもとさんをはじめ、店内のお客さんたちに「お先に!」と、あいさつして、フラリフラリと家路についたのでした。あぁ、美味しかった。

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アン肝 / 刺身盛り合せ / ノドクロ焼き魚

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ノドクロのスープ / ノドクロ刺身 / ノドクロ雑炊

店情報前回

《平成19(2007)年10月7日(日)の記録》

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秋鮭ときのこの包み焼 … 小料理「燗酒屋(かんざけや)」(阿佐ヶ谷)

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「この店は、熱燗屋(あつかんや)だったっけ?」

「もう。知ってるのに、わざと聞くんだから。燗酒屋(かんざけや)です!!」

 ぷんとホホを膨らませる女将。

 JR中央線・阿佐ヶ谷駅北口の荻窪寄りに広がるスターロード商店街。焼き鳥の「鳥久」や、おでんの「米久」、酒亭「善知鳥」、バー「アルフォンソ」などの名店が軒を連ねる中、2年ほど前(2005年末)にオープンしたのが、ここ「燗酒屋」です。

 名前のとおり、日本酒が売りの小料理屋さんなのですが、最大の特長は、ひとりで切り盛りしている美人女将が、年中、和服に割烹着姿であるということ。まだ三十台半ばという若さながら、その和服姿も板についていて、女将を目あてに通う常連さんも多いお店なのです。

「お店の名前がなかなか覚えてもらえないんですけど、よく『あぁ、あの和服に割烹着のお店ね』なんて言われるんですよ」

 と女将自身も語るほど、和服に割烹着は、この店のトレードマークになっているのでした。

 そんな「燗酒屋」の店内は、L字カウンター7席(手前の短辺に3席、奥に向かう長辺に4席)と、店の奥に2席分程度のミニ小上がり席という、小ぢんまりとした造り。

 なにはともあれ、まずは小瓶のビール(アサヒスーパードライ、500円)を注文すると、今日のお通しは酢の物。もずく酢を主体として、カニ(赤)、キュウリ(緑)、そして食用菊(黄)と、彩りも鮮やかです。

 ビールで喉を潤しつつ、1杯目の燗酒を選びます。メニューには本醸造550円、純米620円、吟醸/純米吟醸750円としか書かれていませんが、女将が、その日、用意されている日本酒を教えてくれるのです。

「今日の燗酒は、白鷹(はくたか、本醸造)と大七(だいしち、純米)、それと天穏(てんおん、純米吟醸)です」

 そう言いながら、1本1本の一升瓶を見せてくれる女将さん。まずは島根の「天穏」(純米吟醸・無濾過中汲み)からいただきます。

 毎日、黒板に書き出される料理は、ざっと20種類ほど。今日は青鯛刺(800円)やミンク鯨刺(880円)、ミル貝刺(880円)などの刺身類のほか、穴子の白焼(660円)、イカ肝焼(680円)、穴子と秋野菜の天ぷら(680円)、きのこの天ぷら(580円)、地鶏の竜田揚げ(650円)、牛スジの煮込(700円)、松茸と鱧(ハモ)の土瓶蒸風小鍋(960円)などなどと、心引かれる品々が並んでいます。

「居酒屋というよりは、小料理屋かな」

 女将自身が、そう語るとおり、日本酒のみならず、料理にも力を入れているのです。そんな料理の中から、秋鮭ときのこのホイル包み焼(680円)を注文します。

 ホイル包み焼ができあがるタイミングで、おかわりした燗酒は、今度は福島の「大七」(純米・生もと)です。

 「燗酒屋」という店名ながら、燗酒しかないわけではなくて、冷酒や焼酎(芋/麦、580円)や、生レモンサワー、生グレープフルーツサワー、ウーロンハイに、ソフトドリンクも置いています。燗酒を2本いただいた後は、「ひやおろし呑み比べセット」(800円)」を注文。目の前で注がれるのは、宮城の「墨廼江(すみのえ)」(限定純米・中汲み)、富山の「幻の瀧(まぼろしのたき)」(純米吟醸)に、最初に燗でいただいた、島根の「天穏」(純米吟醸・無濾過中汲み)の3種類で、それぞれ50mlずつ。今回は、秋らしく、ひやおろし3種のセットですが、前(今年の春)に来たときも、「春の新酒呑み比べセット」というのが、同じく3種800円でした。季節、季節に合わせたテーマで「飲み比べセット」を出してくれるんですね。

 冷酒を飲みつつ、料理のほうは、焼きたて玉子焼(480円)を注文します。熱々、ふわふわの玉子焼は、出汁(だし)がよく効いていて、とっても美味。

 最初は2~3人だったカウンターも、いまやもう満席。そのお客さんたちから、お酒に関する質問が飛ぶと、女将が真剣な表情で説明をしてくれます。

「私も勉強しているところなので、あまり詳しくはないんですが……」

 と遠慮がちながらも、「中汲みってどういうことなの」とか、お酒の味など、どんな質問に対しても、きちんと答えられるところは、さすがです。知識面での勉強もさることながら、店で出すお酒についても、自分で燗をしてみたり、冷してみたりと、いろんな飲み方を試されてるんでしょうね。

 最後に「白鷹(はくたか)」(本醸造・上撰)の燗酒をいただいて、ゆっくりと過ごした土曜日の日本酒タイムを締めくくります。

 午後5時過ぎから、たっぷり3時間半の滞在は、4,750円でした。あぁ、美味しかった。どうもごちそうさま。

 入口まで出てきてくれた美人女将に見送られながら、店をあとにしたのでした。

 冒頭にも書きましたとおり、お店は小規模で、おなじみのお客さんが多い状態です。足を運ばれるときには、できればひとり、多くても二人くらいで、静かに出かけるのが、いいのではないかと思います。

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「燗酒屋」 / ビールとお通し / 天穏・純米吟醸

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お猪口を選ぶ / 大七・純米 / 秋鮭ときのこのホイル包み焼

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ひやおろし呑み比べセット / 焼きたて玉子焼 / 白鷹・本醸造

店情報前回

《平成19(2007)年10月6日(土)の記録》

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初めての、ひとり串元 … やきとん「串元(くしげん)」(新宿)

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「一見(いちげん)さんは入れないんじゃないの?」

「この前、行ったら、入口で断られたよ」

 そんな話も聞こえてくる「串元」。私自身、常連さんのグループに混ざって行ってるので、ひとりだとどんな感じなのか知りません。金曜日の会社帰りの今日、そんな「串元」に、はじめて、ひとりで行ってみることにしました。

 いつものように半分シャッターが降りていて、やっているのか、いないのかも、よくわからない「串元」。それでも、入口から垣間見える店内カウンターには、背広の背中がずらりと並んでいて、今日も盛況な様子がうかがえます。

 入口のすぐ左手で、名物のもつ焼きを焼いているのが、ギョロリと、ものすごい目力(めぢから)の店主(マスター)です。この店に入るには、まずこの最大の関門を通過する必要があるのです。ドキドキ。

「ひとりですけど、入れますか?」

 「ん?」という表情で、大きな目をギロリと、こちらに向けた店主、振り返ってカウンター席を確認すると、

「そこに入って」

 と、かろうじて空いていた2席の内のひとつを指し示してくれます。

 よしっ。これで第一関門はクリアだ!

 次の関門は、注文だな。この店は、件の目力店主と、その奥さん、そして息子さんという、家族3人で切り盛りしています。店主は入口にある、もつ焼きコーナーに陣取り、息子さんは奥の厨房で、もつ焼き以外の料理を担当しているので、ホール内を動きまわるのは、基本的には、おかみさんひとりなのです。これだけ大勢のお客さんの中で、タイミング良く注文を繰り出さなければなりません。

 まずはビールを注文して、もつ焼きはレバーとタンかな……、なんて心の中で算段していると、

「飲み物は?」

 という、おかみさんの声。えっ、と思って振り返ると、おかみさんが注文を取りに来てくれてました。大勢お客さんがいても、新しく入ってきた客は見てるんですね。

「瓶ビールをお願いします」

 この店の瓶ビールは、店の入口横にある水冷の冷蔵庫で冷やされているのが大きな特長。そのため、ビールが冷えすぎることもなく、年中安定した温度でビールを楽しむことができるのです。ちなみにホッピー(外)も、こちらは店の奥の冷蔵庫で、同じように水冷で冷やされています。

 瓶ビールを持ってきてくれた、おかみさんに、

「レバとタンをお願いします」

 と、元気よく注文したところ、

「うちのは串焼きではなくて、お皿で出すんですよ。一人前が多いので、まず1つ食べてから、次にされたほうがいいと思いますよ」

 と、おかみさん。

「なるほど。それじゃ、レバをお願いします」

 注文も関門のひとつだと、かなり力が入っていたのに、おかみさんの優しい気遣いで、肩の力もすっかり抜けて、ゆったりと1杯目のビールを飲み干します。

 そして出てきたレバは、オニオン・スライスとともに皿に盛られた10切れほど。ひと切れ、ひと切れがけっこう大きいので、普通の串焼きに換算すると4本分程度あるでしょうか。

 さっそく、その熱々のを1個。プリップリのレバーの食感とともに、口の中に広がるタレの味と香り。ここのタレは、独特の中華風で、どのモツにもよく合うのです。

 となりのお客さんの前には、徳利(とっくり)と猪口(ちょこ)が置かれてる。へぇ、この店にも日本酒があるんだ。ビールの次は私も日本酒にしてみましょう。もつ焼きを1皿にしたから、もつ焼き以外のメニューも食べられそうですしね。ここは、もつ焼きもさることながら、それ以外の料理もおいしいのです。ちょうど後ろを通りかかった、おかみさんに、

「イワシの一夜干し(400円)と、お酒を燗でお願いします」

 と注文すると、

「お酒は常温しかないんですよ」

 と申し訳なさそうな表情の、おかみさん。

「じゃ、常温でお願いします」

「すみません。燗酒の注文が少ないもので……」

 なるほど、そうかもなぁ。さっきも書いたとおり、この店で、徳利が並んでいるところは、あまり見たことありませんもんねぇ。

 イワシは、メニューにも「特大」と注記されているとおり、長方形皿からはみ出すほどの大きさで、胴体もぷっくりと丸い。カリッと香ばしく焼けた頭のところから、バクッと丸かじりでいただきます。

 いやっ、これはうまい。

 こうなると、もう止まりません。焼きたての熱々の間に食べなきゃ。お酒もそっちのけで、一所懸命、イワシに取り組みます。いやいや、これじゃ、美味しすぎて、つまみになりませんなぁ。酒いらずです。

 そんなわけで、あっという間にイワシを食べ終えて、もう1品、今度は完全につまみになるようにと注文したのは、長芋千切り(350円)です。

 最近、なんだか山芋、長芋のたぐいで酒を飲むのが、すっかりお気に入りになっていて、そういうのがあると、ついたのんでしまうことが多いんですよねぇ。若いころは、腹の足しにならないようなつまみは、あまり注文しなかったのですが、年とともに、むしろ腹の足しにならないつまみのほうが、ありがたくなってきた。肉より魚。魚より野菜と、好みの幅が広がってきているように思います。

 出された長芋千切りは、てっぺんに紫蘇(しそ)漬けがトッピングされた珍しいタイプ。生卵(黄身)が乗ってるのは、よく見かけるんですが、これは珍しいですよね。

 紫蘇漬けの味わいに期待して、醤油をかけずに、そのままグリグリと混ぜ、まずひと口、ズズッとすすり込みます。おぉ。紫蘇漬けのしょっぱさに、全体のふんわり、ねっとりとした味わいが膨らんだあと、噛めば千切りのシャキシャキ感。日本酒(残念ながら常温)が、進むこと進むこと。

 この店のカウンターは、壁に向かって作りつけられていて、客はたくさんのメニューが張り出された壁と対峙して飲むことになります。ひとりで飲んでるときは、店の人が働いている様子や、他の人たちが飲んでる様子などを眺めたり、他の人たちの会話を聞くともなしに聞いたりしながら飲むことが多いのですが、こうやって壁に向かうタイプは、視覚的な情報がない状態になってしまいます。ひとり飲みに慣れていない頃は、ちょっと苦手だったタイプです。

 しかしながら、ものは考え様で、自分が見えないということは、人からも見られない。まったく無防備にボォーッとした表情でくつろぐことができるのです。それがわかってからは、このタイプも、それほど苦手ではなくなってきました。

 ゆっくりと1時間半の滞在は、ビール(大瓶)とお酒に、料理が3品で、2,300円。ドキドキしながら臨んだ、はじめてのひとり「串元」でしたが、拍子抜けがするほど普通に楽しむことができました。また来ようっと。

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イワシの一夜干し / 長芋千切り / トロトロに混ぜて

店情報前回

《平成19(2007)年10月5日(金)の記録》

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トマトの漬物でトモ酒 … 居酒屋「トモ(とも)」(横浜・桜木町)

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「お漬物メニューのところにある、トマトとか、タケノコって、それもお漬物?」

「そうよ。人気があるのよ。食べてみる?」

「食べてみるみる。両方ください」

 野毛の飲食ビルの2階にある居酒屋「トモ」は、お漬物の種類が多く、きゅうり、なす、カブ、大根、山芋、セロリ、ミョウガ、キムチなどが各100円。おくら、ねぎ、ごぼう、エシャレットなどが各150円。そして、件(くだん)のトマト、タケノコやミョウガ・キムチなどが各200円とラインナップされているのです。

 梅酒などを造るのと同じような、広口の瓶からママさんが取り出したのは、丸まる1個のトマト。これを放射状に櫛(くし)切りにして、トマトの形のまま小鉢に盛り、そのまわりに漬け込んでいた汁を入れたらできあがり。

 見た目は、そのまま普通のトマトじゃん。

 どーれどれ。さっそく一切れ口に運びます。

 おっ。うまぁーいっ。食感(歯応え)は普通のトマトながら、口に広がる味わいは、ちょっと塩っけも感じる、漬物のもの。これはおもしろいなぁ。いくらでも食べられそうです。

 今日の「トモ」は、とっても静かで、私が店に入った午後7時以降、客は私ひとりだけ。こんな「トモ」も珍しいなぁ。

「日曜日だからね。早い時間にお客さんが多かったのよ。夕方になって静かになったところ」

 と女将さん。日曜日の野毛は、競馬のお客さんが多いので、昼間ににぎわうんですよねぇ。そして、ここ「トモ」をはじめ、多くの酒場が、その翌日の月曜日を定休日にしているのでした。

 店に入って、まずいただいたのは瓶ビール(キリンラガー中瓶、450円)と、目の前の鉄鍋にあった和牛ホルモン煮(500円)。この鉄鍋から小鉢に取り分けてくれるのかと思いきや、その鉄鍋が丸ごと1人前だったのには驚いてしまいました。さすが「トモ」。私なんか、この1品で、つまみはもう十分といった分量で、その鍋を食べ終わったあとの料理を、トマトとタケノコの漬物にしたのでした。

 ビールに続く飲み物は、「野毛 とも酒」というラベルが貼られた、オリジナル日本酒で、1合が250円。これを燗酒でいただくと、トマトの漬物とも、よく合うこと。

 これまた人気だというタケノコの漬物も、タケノコの下のほうの、煮物なんかにしたら硬そうな部位ながら、よく漬かっていて硬くもなく、かといって軟らか過ぎもせず、絶妙な歯応えです。

 今日は、このまま単身赴任寮に帰っちゃうので、仕上げのご飯ものも、ここで食べていきましょうか。なにしろ、この店には名物の鉄火丼(味噌汁付きで400円)のほか、皿うどん、タイカレー、鍋焼きうどん、かき揚げ茶漬(以上、各500円)など、魅力あふれる食事メニューもそろってますからねぇ。

 そんな食事メニューを見ながら、「えーと…」と迷っていると、ママさんから

「ライスコロッケ(400円)もおすすめよ」

 と声がかかります。いいですねぇ、それをもらいましょう。

 出されたライスコロッケは、お皿にフライドエッグを乗せた上に、俵型のコロッケがふたつ。できたて熱々のコロッケを割ると、中はとろりとチーズも入ったチキンライスです。分量も、〆に食べるのにちょうどいい。

 ライスコロッケを食べている途中で、新しいお客さん(常連さん)も入ってきました。これで私も席が立ちやすいなぁ。

 安心してお勘定をお願いすると、約2時間の滞在は、2,250円でした。どうもごちそうさま。

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和牛ホルモン煮 / タケノコ漬物 / ライスコロッケ

店情報前回

《平成19(2007)年9月30日(日)の記録》

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アジの干物で燗酒一献 … 居酒屋「柳津(やないづ)」(横浜・洋光台)

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自家製干物(あじ)

 会社の帰りに、ふらりと立ち寄ったのは、JR京浜東北・根岸線は洋光台(ようこうだい)駅のすぐ近くにある居酒屋「柳津」です。

 この店に来るのは、今回で3回目。4年ほど前に最初に来たときは、魚中心のけっこう和風な感じの酒場だったのに、去年、飲み会のあと、何人かで立ち寄ったところ、魚介類もあるものの、洋風なメニューもあり、また日本酒や焼酎の品ぞろえもよくて、「今度また来てみよう」と思っていたのです。

 駅のすぐ近くにあるマンションの1階にある店は、平成12(2000)年の創業と言いますから、今年で7年目。店主夫妻と、その息子さんの、家族3人で切り盛りされています。店内は、右手のL字カウンター12席と、左手のテーブル席2卓。テーブル席にはゆったり座って2人、ギュッと詰めれば3人座れるベンチシートが、手前の卓に2個、奥の卓に3個並べられていて、テーブル席2卓を合わせると約15人ほど座れます。カウンター席の椅子12個が、2個ずつペアに並べられているところを見ると、カップルのお客さんが多いんでしょうか。

 水曜午後8時の店内は、テーブル席には会社帰りらしきお客さんがずらりと座り、カウンター席も夫婦連れや、女性ふたり連れでほぼ埋まっている状態。かろうじて空いていた、カウンター手前の角付近に座り、瓶ビール(アサヒスーパードライ中瓶、490円)をもらって、まず1杯。

 料理のほうは、テーブル席近くの壁に掛けられている、日替りの黒板メニューから、豊後サバ刺身(790円)を注文します。

 他の黒板メニューは、カツオ刺身(590円)、サンマ刺身(590円)、青柳ぬた(590円)、マグロ切り落とし(590円)、イカ刺身(390円)、とりわさ(390円)などなど。豊後サバなどの790円がメニューの中では最高値で、逆に最安値は枝豆の290円。高くもなく、かといってバカ安でもなく、といった感じですね。

 出された豊後サバ刺身は、プリッと美しい、大きなのが5切れ。うーん。こりゃ日本酒ですね。カウンター上に置かれた「柳津特選 日本酒」というメニューの中から、静岡の喜久酔(きくよい、550円)をもらうことにします。

「お酒は、お燗でお願いできるんですか?」

「はい。どれでも燗づけいたしますよ」

「じゃ、喜久酔を、ぬる燗でお願いします」

 個人的には、冷酒よりも、燗をつけたお酒のほうが好きなのですが、店によっては「燗酒は、これだけです」と銘柄が限定されている(しかも、あまりいい酒ではない)ことも多いので、こうやってどのお酒も燗をつけてくれるところは嬉しいですね。

「これくらいの温度でいいでしょうか」

 と、おかみさんが徳利を出してくれます。どーれどれ。あぁー、うまいっ。

「ちょうどいいです。美味しいです」

 そう返事して、サバの刺身をつまみます。んんんーーーっ。やっぱり合うなぁ。

 サバを食べ終えたあとは、カウンター上に置かれた定番のおつまみメニューから肴(さかな)を選びます。いかの沖漬け(350円)や、塩辛ジャガチーズ(490円)、つくねの梅じそ(400円)といった、日本酒に合いそうな品々にならんで、自家製干物(390円)もあり、「魚は日替りですので、おたずねください」なんて注意書きがある。

「今日の自家製干物はなんですか?」

 さっそく、たずねてみたところ、

「今日はアジとサンマができます」

 という店主の返事。

「アジをお願いします」

 季節柄、サンマにも引かれたのですが、このところサンマの塩焼きをいただく機会が多かったので、今日は干物の定番、アジの開きにしてみました。

 アジの干物が焼きあがったところで、燗酒(喜久酔、550円)もおかわりです。

 店内のひとり客は私だけだったのですが、となりに座っていた女性二人組みが帰ったのと入れ代わりに、会社帰りのサラリーマンらしき男性ひとり客が、その場所に座り、ビールと料理を注文すると、カバンの中から文庫本を取り出して読み始めます。

 店内にはBGMとしてジャズが流れているものの、テレビやラジオは置かれていません。店を切り盛りする3人は寡黙で、聞かれたことには笑顔で答えてくれますが、他のお客さんたちに話しかけたりすることはないようです。ひとりで静かに過ごしたいときに、いいお店ですね。

 ゆっくりと2時間弱の滞在は、2,770円でした。どうもごちそうさま。

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「柳津」 / 豊後サバ刺身 / 「喜久酔」ぬる燗

店情報前回

《平成19(2007)年9月26日(水)の記録》

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店情報: 居酒屋「柳津(やないづ)」(横浜・洋光台)

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  • 店名: 居酒屋「柳津」
  • 電話: 045-833-3993
  • 住所: 235-0045 神奈川県横浜市磯子区洋光台3-13-2-102
  • 営業: 16:30-23:30(土祝は16:00-23:00)、日休
  • 場所: JR根岸線・洋光台駅の改札(1ヶ所)を出て右へ。高島屋の先を右に入ったマンションの1階。改札から徒歩1分以内。
  • メモ: 平成12(2000)年創業。店主夫妻と、その息子さんの、家族3人で切り盛り。店内はL字カウンター12席、テーブル席2卓約15席(ベンチシート)。
    定番メニュー:〔野菜〕ゆでたて枝豆290、なすの1本漬け300、ねぎねぎサラダ490、シーザーサラダ590、鶏刺しサラダ590、〔揚げ物〕おっきいメンチ450、父ちゃんの唐揚&ポテト490、肉じゃが風コロッケ(2ヶ)490、〔麺類〕ぶっかけおろしそば590、アサリの辛い焼きそば590、〔珍味〕いかの沖漬け350、まぐろのタレ390、とろ馬刺し&こうね790、〔チーズ〕スモークチーズ450、塩辛ジャガチーズ490、シラスとニンニクのピザ790、〔ご飯物〕鶏雑炊600、仕上げ飯600、ケイジャンライス690、酢〆のお魚サンド690、〔焼き物〕自家製干物390、手作り餃子(6ヶ)390、つくねの梅じそ(5ヶ)400、さんまのガーリックバター590。
    飲み物メニュー:〔ビール〕生小グラス290、生中ジョッキ430、瓶ビール(中瓶)490、〔ソフトドリンク〕コカコーラ200、ジンジャーエール200、ウーロン茶(アイス/ホット)200、緑茶(アイス/ホット)200、〔ワイン〕サンタ・ヘレナ(赤)ハーフボトル1,100、振るボトル2,000、ツェラー・シュバルツェカッツ(白)ハーフボトル1,200、〔サワー〕ウーロンハイ350、緑茶ハイ350、レモンサワー350、巨峰サワー350、アプリコットサワー350、グァバサワー350、生グレープフルーツサワー450、梅干サワー450、〔その他〕梅酒ロック480、ウイスキー水割り580、〔ボトル(キープ2ヶ月)〕純(甲類)1,700、いいちこ(麦)1,800、財宝(麦)2,300、〔ボトル割り物〕温泉水・氷・お湯・トニック各200、緑茶・ウーロン茶各300、梅干100、レモン200、〔カクテル〕サンライズルビー380、ジントニック500、ジンライム500。
    特選焼酎(120ml):〔麦〕杜谷(もりや)480、一粒の麦480、兼八(かねはち)600、〔黒糖〕まんこい550、ルリカケス550、壱乃醸 朝日(いちのじょうあさひ)650、〔芋〕富乃宝山(とみのほうざん)550、吉兆宝山(きっちょうほうざん)550、日南娘(ひなむすめ)550、佐藤黒(さとうくろ)680、〔米〕蔵の隠き魅やげ(くらのおきみやげ)。
    特選日本酒:栄川(えいせん)450、喜久酔(きくよい)550、〆張鶴(しめはりづる)550、八海山(はっかいさん)550、久保田 百寿550、越乃寒梅(こしのかんばい)550、飛露喜(ひろき)680、雪中梅(せっちゅうばい)680、田酒680。
    日替り黒板メニューの例:豊後さば刺身790、金目刺身690、かつお刺身590、さんま刺身590、青柳ぬた590、まぐろ切り落とし590、〆さば590、いか梅しそあえ590、いか刺身490、いか納豆390、いかわさ350、とりわさ390、ぶりかま塩焼490、ゆば刺身390、もつ煮込み590、あじフライ300、寄せ豆腐350、レバーカツ450、げそきも焼き350、トマト390、〔日本酒〕三十六人衆(純米大吟醸)800、飛露喜(純米吟醸)800、玉の光(純米大吟醸)990、〔焼酎〕栄花(麦)550、喜六(芋)550。(2007年9月調べ)
  • HTML版(2003年以前): (03.06.26)

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鍋焼きうどんで麦焼酎 … 居酒屋「さぬき亭」(野方)

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 そば屋で一献というのは、よくあるけれど、うどん屋で一献というのは、あまり聞いたことがない。最近はラーメン居酒屋なんてジャンルも出てきているので、うどんだけが遅れをとってるのかなぁ。

 よーし、それなら今日は、うどんで酒を飲んでみようじゃないか。

 やって来たのは、先日、「焼きうどん」をつまみに一杯飲ませてもらった、手打うどん酒房「さぬき亭」です。

 日曜日、午後8時過ぎという時間帯ながら、明日の月曜日が、今日「秋分の日」の振り替え休日とあって、店内は7人掛けのL字テーブルの長辺に4人。奥にふたつある4人掛けのテーブル席も、1卓が埋まっている状態と、店のキャパシティの、ちょうど半分くらいの客の入りです。

 私もL字カウンターの短辺のところに座り、

「ロックで飲むのに、おすすめの麦焼酎をお願いします」

 と、焼酎の選択を店主(マスター)にお任せします。

「それじゃ、これにしてみますか」

 焼酎棚から店主が持ってきてくれたのは「ちくご胡座(あぐら)」という麦焼酎。焼酎棚に並ぶ焼酎には値段は書いていませんが、メニューに載っている芋焼酎「千鶴」は450円、「松露」は500円、麦焼酎の「つくし」も500円ですので、その前後の価格帯なんだろうと思います。

 今日のお通しは小鉢の海鮮サラダ。これをつまみに「胡座」ロックをいただきつつ、「鍋焼きうどん」(700円)を注文します。

 「さぬき亭」という店名のとおり、この店では、讃岐うどんが出されるのですが、「ぶっかけ」(500円)や「釜玉(かまたま)」(550円)などの定番に加えて、同じ讃岐うどんの麺を使った「焼きうどん」(650円)や「カレーうどん」(700円)、そして今たのんだ「鍋焼きうどん」といった、「本格的な讃岐うどん屋には置いてないだろうなぁ」というようなメニューも並んでいて、そこがまた面白いところなのです。

「麦焼酎で、他におすすめは?」

 最初の麦焼酎を飲み干して、2杯めも店主に下駄をあずけると、ニヤリと笑って、店主が出してくれたのは「佐藤」です。あれっ? 「佐藤」って、芋じゃなかったっけ?

「その「佐藤」から、麦焼酎も出てるんですよ。これは「佐藤」の麦です」

 と店主。へぇ、そうなんだ。芋焼酎の「佐藤」は白いラベルと、黒いラベルの2種類がありますが、この「佐藤」の麦は、ちょっと薄茶の麦色。口に含むと、煎った麦の、こうばしい香りが、鼻の奥からフワァーッとあがってきます。こいつはまた、おいしい麦焼酎ですねぇ。

 さぁ、出てきました。「鍋焼きうどん」です。

 なにしろ、焼酎ロックの肴(さかな)として、熱々の「鍋焼きうどん」をいただくわけですから、うどんはさておき、油揚げや椎茸などの具の部分だけをつまみながら飲まなきゃね。うどんは讃岐麺なので、伸びても、あまりクタクタにならず、おいしくいただけますもんね。

 そうやって自分自身に言い聞かせながら、チビチビと具をつつき始めたものの、ツヤツヤとおいしそうな熱々うどんを見ているうちに、「熱いうちに、ちょっと一口だけ」と、ついつい麺をすすってしまいます。一度、麺を食べ始めると、もう止まらない。

 ズズッ。はふはふ。ズズッ。はふはふ……

 気がつくと、もうほとんど「鍋焼きうどん」が残ってない状態です。

 あぁーあ。やっちまった。飲むのを忘れて、しっかりと食べてしまいました。

 洋食屋で飲むときも、よく同じ状態になるんですよねぇ。洋食をつまみに、ゆっくりとお酒を飲もうと思うんだけど、熱々の状態で出てきた料理を見ると、つい「熱いうちに食べなきゃ」って気持ちがわいてきてしまって、食べるのに夢中になってしまうんですよねぇ。

 反省しつつ、「佐藤」の麦の残りを飲み干して、残しておいた「鍋焼きうどん」の汁(スープ)をつまみに、最後の1杯をいただくことにします。店主が出してくれたのは、麦焼酎「凪海(なぎうみ)」です。

 「鍋焼きうどん」にトッピングされていた生卵を溶きこんだスープは、それだけで、とてもいいつまみになります。惜しむらくは、すでに麺を食べ終わっていて、けっこう満腹だということ。あまりお腹がいっぱいになると、お酒を飲もうという勢いが出ませんねぇ。

 「鍋焼きうどん」をヌキ(=ネタものの具だけ残して、麺を抜いたもの)にしてもらえば楽しめるのかもね。あっ。それじゃ、居酒屋で普通にひとり用の鍋物を注文するのと変わりがないじゃないか。残念!

 午後11時過ぎまで、ゆっくりと3時間ほどくつろいで、今日のお勘定は3,100円でした。どうもごちそうさま。

店情報前回

《平成19(2007)年9月23日(日)の記録》

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和服で蕎麦を愉しむ会 … そば「和邑(わむら)」(目白)

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 先日、「井のなか」で飲んでいたときに、いずへいさんからお誘いを受けたのが「和服で蕎麦を愉しむ会」。その名のとおり、和服を着てお蕎麦を食べることを愉しもうという集まりなのだそうです。しかし、残念なことに、私は和服は持っていません。

「大丈夫です。和のモノを取り入れた服装であればいいんです」

 という、いずへいさんの言葉で、扇子(せんす)をパタパタさせながら参加することに決定。会場は、目白からも、池袋からも歩くと15分ほどかかる路地の中にある蕎麦屋「和邑」です。

 集まったのは、「和服で蕎麦を愉しむ会」のみなさんに、「江戸ソバリエの会」のみなさんの合わせて15人ほど。本格的な和服姿の方も半数くらい居て、和食(蕎麦)を楽しもうという雰囲気たっぷりです。

 店内は左手のテーブル席2卓と、小上がりの座敷2卓の、合わせて20席ほどという、比較的小さな造り。お店の方は「座敷の2卓をくっつけて10人。残りはテーブル席で」ということで、ゆったりとした空間を用意してくれていたのですが、

「詰めれば、みんな座れそうですよ。乾杯だけでも全員そろってやりましょう」

 と、最初のビール(エビス中瓶)で乾杯。その後も、そのままみんなで座敷席に落ち着きます。狭くても、みんなで1個所に居たほうが話もはずみますもんね。

 今回の「和服で蕎麦を愉しむ会」の会費は、料理に乾杯のビールが付いて、ひとり5千円。それ以降の飲み物は追加で支払う仕組みです。

 まずはあらかじめテーブル上に並べられている料理に手を伸ばします。

 笊(ざる)に持られているのは、そば屋の定番のつまみ、揚げそばです。細切りのそばを、そのまま油で揚げたもので、お通しとして出されることも多い一品です。ポリポリと香ばしい歯応えにビールも進みます。今日の揚げそばは、芥子切り(芥子を練り込んだ蕎麦を細切りにしたもの)なんだそうです。

 板わさも、これまた、そば屋の定番。元々、そば屋のつまみは、そばの具を流用するところから始まったんだそうです。この板わさの蒲鉾は「おかめそば」の具です。他にも、たとえば焼き海苔は「花まき」や「ざるそば」の具だし、天ぷらや鴨肉だって、それぞれ「天ぷらそば」や「鴨南蛮そば」の具。こういうのを肴(さかな)に、そば前の酒をチビリといただいて、しめに「もり」でもサッとたぐる、というのが昔からの飲み方だったんですね。

 ひとりが「お酒(日本酒)をもらおうか」と言い始めると、他のみんなも、ワレもワレもと日本酒の注文です。別に用意された日本酒のメニューから、「久保田・千寿」に「越の方舟」「雪中梅」を選ぶと、それぞれ違う形の酒器に入れて、どのお酒か分かるようにしてくれます。

 蕎麦味噌も、そば屋ならではの肴で、しゃもじに塗り付けた蕎麦味噌に、斜め斜めに筋目をつけて、うっすらと焦げ目がつく程度に炙ったもの。これを箸でちょっとずつ、つまんでは、お酒をチビチビといただくのです。

 まるで寒天か蒟蒻(こんにゃく)かといった感じの、うす灰色っぽい色合いで、つややかに光るのは蕎麦豆腐なんだそうです。

「稲荷(いなり)かと思ったら、蕎麦寿司だよ」

 という感歎の声に、私もさっそく1個、その稲荷寿司を。パクリとかじると、たしかに中は蕎麦寿司だ。これもいいですねぇ。

 続いて出されたのは、クレープ?

「そば粉で作ったクレープです。一緒に盛ってある具をくるんで、お食べください」

 へぇ。これは初めてですねぇ。クレープの横には鴨のローストやプチトマト、レタスや細長い状態で切られたネギなどが添えられています。これらを、そば粉のクレープでくるんで、いただきます。和服のみなさんがクレープをかじってる姿も、なんだか楽しいですねぇ。

 玉子焼きもまた、「そば屋の玉子焼き」とも言われるほど、そば屋の看板メニューのひとつ。これまた、お酒が進んで仕方がない一品です。

 集まったメンバーの中には、年間の外食軒数が千軒以上で、しかもその千軒が、人もうらやむ店ばかりという方や、年間4~500軒ものそば屋に行き、パラオやボルドーでも、そばを打ったというソバリエの方。さらには、いろんなものを自分で作るのが好きで、ウイスキーやビールなども自分で作ってしまうほか、そばも、普通のそばでは飽きたらず、バニラ切りやモルト切り、ビール切りといった珍しい変わりそばを作っている人などもいて、個性豊かです。

 登場したのは、鴨肉の串焼き。鴨肉、ネギ、鴨肉の3つが1本の串で焼かれています。「鴨ネギ」とは、よく言ったもので、これがまた合うんですねぇ。

 みなさん、お酒も猛烈に強くて、出してもらった徳利が、あっという間に空いていく。

「めんどくさいから、一升瓶のまま出してくれてもいいんだけど」

 なんて声も聞こえてきます。

 最初のうちは、どれがどのお酒か、しっかりと判別できてたんだけど、すでに自分の盃(さかずき)に、どのお酒が入っていたかも定かではない状況。「まぁまぁ」と勧められるままに、どのお酒だって「いやいや、こいつはどうも」と盃を差し出しているので、いろんな名酒のブレンド状態になってるに違いない。

 どーんと大皿で出されたのは天ぷらの盛り合わせです。内容は海老、しめじ、さつま芋、ししとう、など。しめじの天ぷらって、珍しいなぁ。

 鴨も天ぷらも、そば屋の肴の高級品。まさに、盆と正月とが、いっぺんにやって来た状態です。

 そして最後はもちろん、新そばの「せいろ」です。北海道空知地方でとれた新そばなんだそうです。「おかわりは、ないのー!?」という声も飛び交いますが、残念ながら、「せいろ」は今出されている分(ひとりあたり2盛り分)だけで終了だそうです。あとを引く美味しさですねぇ。

 つけ汁を、そば湯でのばしたものを肴に、残ったお酒を全部いただいたら終了です。

 おいしい料理、楽しい時間も、もちろんですが、和服のみなさんの出で立ちも、とてもいい肴になった、今宵の「蕎麦の会」でした。どうもありがとうございました。

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蕎麦味噌 / 蕎麦寿司(いなり風)と枝豆 / 芥子切りの揚げ蕎麦と野沢菜漬

070922d 070922e 070922f
板わさ / 蕎麦豆腐 / 蕎麦粉のクレープ

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玉子焼き / 鴨ネギ(串焼き) / 天ぷら盛り合せ

  他の関連ブログ記事へのリンク:
    ・「いずへいのうまいもん日記」(1) (2)
    ・「江戸ソバリエ 霞の会
    ・「佃の旦那

店情報

《平成19(2007)年9月22日(土)の記録》

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店情報: そば「和邑(わむら)」(目白)

  • 店名: 蕎麦「和邑」
  • 電話: 03-3987-5136
  • 住所: 171-0032 東京都豊島区雑司が谷3-12-3
  • 営業: 11:30-15:00(14:30LO) & 17:00-21:00(20:00LO)(土日祝は12:00-20:00)、火水休
  • 場所: JR目白駅の改札を出て右へ。目白通りにそって7分(360m)ほど歩き、左手の目白小学校(右手は学習院大学の門)の先を左へ。道は狭くなるが、道成りに5分(270m)ほど進むと、明治通りに突き当たるので左へ。その先(75mほど先)はじめての信号(鬼子母神入口)を渡って商店街に入り、すぐ先の路地を左に入った右手。目白駅からの全行程は徒歩14分(740m)ほど。
    池袋駅からは、明治通りにそって南下すること16分(850m)ほど。都電荒川線・鬼子母神前からは7分(350m)ほど。
  • メモ: 平成8(1996)年創業。店主は「一茶庵」伊東教室の出身で、脱サラして、この店を開いた。せいろ1,000、田舎/白雪1,200、変わりそば1,500、三色1,500、鴨せいろ 1,800、天せいろ2,500、蕎麦豆腐300、蕎麦みそ300、玉子焼き(甘・中・辛)500、そばがき800、鬼柄焼き500、そばがき800、合鴨焼き1,500。

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金曜の夜はたっぷりと … バー「ピュアー(PURE)」(野方)

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「ピュアー」のマティーニ・オンザロックとお通し

 夕方から、都内に住んでいる故郷(いなか)の級友たちとの飲み会で新宿です。私以外のふたりは、ほとんどお酒が飲めないのだそうで、私が乾杯の生ビールの後に、瓶ビールを1本もらい、さらに日本酒(冷酒)を2杯いただいたら、「強いねぇ!」と目を丸くして驚かれて、こっちがビックリです。

「また近いうちに飲もうね!」

 と言いながら、みんなと別れたのは午後11時。みんなからは「強い」と言われながらも、個人的にはちょっと飲み足りないので、ちょっと寄って帰りましょうか。

 そんなわけで、西武新宿線は野方(のがた)駅で途中下車。向かった先は、野方駅から徒歩10分ほどのところにあるバー、「ピュアー」です。

「こんばんは」

 と入った店内には、先客はひとり。カウンター9席のみの店内の、ちょうど真ん中に座っています。そのお客さんから、1席分を空けた、こちら側に座ると、

「いらっしゃいませ」

 と、店主(マスター)がお絞りを出してくれます。店は、店主ひとりで切り盛りされているのです。ゆっくりと手を拭きながら、バックバー上部の「今月のおすすめ」と書かれた飲み物メニューを確認し、1杯目の飲み物として、マティーニ・オン・ザ・ロック(630円)を注文します。

 マティーニ・オン・ザ・ロックは、その名のとおり、カクテルの王様・マティーニを、氷とともにロックグラスに入れていただくもの。氷の入らないマティーニは、遅くても20分くらいでは飲み終えなければ、ぬるくなってしまいますが、オン・ザ・ロックにすると、いつまでも冷たくいただくことができるのです。

 なんと、今日のお通し(310円)は、芯のところにアンチョビを詰めたオリーブ。もともとマティーニの中にオリーブが入ってるくらいだから、マティーニに合わないはずがないですよねぇ。

 マティーニを飲むときに、1個だけ入っているオリーブを、いつ食べるかというのが悩みの種なんですが、これだけオリーブがあると、好きなときに好きなように食べられますね。うれしいっ!

 先客のおにいさんが食べているのは秋サンマのガーリック焼き(500円)かな?

 この店は、料理が美味しいことでも有名。店主はもともと、レストランで料理人として働いていたそうなので、料理はまさに、お手のものなのです。この店のサンマも、ぜひ食べてみたい一品ですねぇ。

 料理メニューは、そのときの仕入れによって書き直されます。たとえば今日のメニューは、アンチョビのキュウリカナッペ(600円)や、白エビのボイル(600円)、帆立貝のタルタルソース冷製(750円)、手羽先の柚子胡椒焼き(520円)、ゴルゴンゾーラ・ブルーチーズ(500円)、ラム肉とゴーヤのチャンプル(650円)、ショルダー・ベーコン・ステーキ(800円)、ニョッキとチキンのグラタン(700円)などなど。

 料理も、飲み物も、すべて店主ひとりでやるので、お客さんが多いときには、とても大変そう。それでも、メニューの品数は決して減らないところに、店主の料理に対する意気込みを感じますね。

 今日は、すでにお腹がいっぱいなので、料理はやめておいて、2杯目の飲み物としてアクアビット(630円)をもらいます。なぜ、これにしたかというと、メニューの説明書き(手書き!)に、「デンマークの国民酒。ビール添え」と書かれていたからです。

「ほんとにビールが添えられるんですか!?」

 と確認してみると、

「えぇ、付きますよ。グラスですけどね」

 と言いながら、まずは冷凍庫から取り出したアクアビットを、ストレートグラスに注いでくれます。そして、グラスに生ビール。ふっふっふ。この生ビールがチェイサーですよぉ!

 アクアビットは、じゃが芋から作られた蒸留酒。度数はジンなどと同じく45度くらいなので、度数の高い、じゃが芋焼酎って感じですね。ふんわりと甘みを感じる飲み口で、だれにでも飲みやすいお酒です。

 アクアビットと生ビールで勢いがついて、最後にもう1杯と注文したのは、これまた「今月のおすすめ」の中から、カナディアンクラブ・ロック(580円)です。

 先客も腰を上げ、店内は店主と私のふたりだけ。ゆっくりと語らいながらカナディアンクラブを飲むうちに、もう閉店時刻の午前2時です。今日のお勘定は2,150円。

 ジン(マティーニ)、アクアビット、ウイスキー(カナディアンクラブ)の3杯で、すっかりヘロヘロになって家路についたのでした。金曜日の夜は、おもいっきり飲むことができて、うれしいなぁ。

店情報前回

《平成19(2007)年9月21日(金)の記録》

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囲炉裏を囲んで(2) … 田楽「でんがく屋」(鎌倉)

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 ホクホクと里芋を食べ終えて、次は何を焼いてもらおうかなぁ、と考えていると、

「今日は秋刀魚もあるわよ」

 と女将さん。

「えっ。そうなんですか。いつもは置いてないのかと思ってました。ぜひ秋刀魚をお願いします!」

「いい秋刀魚があったときだけ仕入れてくるのよ」

 もともと秋刀魚の塩焼きは大好物なのですが、中でも、この店でいただいたのが、とても美味しかったのです。なにしろ口を下にして串に刺し、炭火の輻射熱で焼くので、余分な脂は、口から串を伝って灰の中に落ちていく。いい脂の加減で、全体がほっこらと焼き上がるのです。

「脂がたくさん落ちたりする割りには、囲炉裏の灰はきれいですよねぇ」

「毎日、ふるいにかけて、きれいにしてるのよ。商売にしようとしたら、それくらいの努力は必要だわ」

 と女将さん。美人だし、言葉遣いは丁寧なものの、考え方はビシッと一筋通っていて、いい加減なことは許さないという、凛(りん)としたオーラを、たっぷりと出している女将さんなのです。

「こんばんは」

 そこへ入ってきたのは、これまた常連さんらしき、ご夫妻。先客の男性とも親しげに言葉を交わしています。

「それじゃ、私はボチボチと帰りますか。今日は何ももらわなくて悪かったね。昼に親戚と外食したのが、まだ残ってて…」

 と申し訳なさそうに席を立つ先客の男性。たとえ、お腹がいっぱいでも、この店に来ないと1日が終わらないのかもしれませんね。今日はビール2~3本とお通し(枝豆)で終了のようです。

 秋刀魚も焼き上がってきました。添えられた大根おろしに醤油とレモンをかけてスタンバイしたら、まずは秋刀魚の腸(はらわた)の部分からガッツリといただきます。ックゥ~ッ。やっぱり、うまいなぁ、ここの秋刀魚は。

 先ほどのご夫妻も、豆腐、里芋、茄子(なす)と食べ進んだあとは、秋刀魚の塩焼きと、鮎の塩焼きを注文です。

 ちなみに魚田(ぎょでん、魚の田楽)や、魚の塩焼きは、それぞれ1,500円からの時価です。

 秋刀魚も食べ終わり、3本目となる燗酒をもらうとともに、香のもの(700円)を注文します。香のものは、いぶりがっこに、白菜、きゅうり、山芋、茗荷と、酢漬けの生姜という6点盛り。

 そこへ男女ふたりずつの4人連れと、男性ひとり客が相ついで入ってきて、あっという間に囲炉裏端の椅子席は満席です。こうなると、ゆっくりとした展開の店内だけに、なかなか席が空かない状態になるんですよね。タイミングが非常に重要です。

 ご夫妻のところには、奥の厨房から炊き込みご飯が出されます。

「いつもこれが楽しみでねぇ」

 と、とても嬉しそうな笑顔のご夫妻。なるほど、こういう名物もあるんですね。冬場の鍋物も名物らしいので、それらもぜひ食べてみたいところです。

 さてさて。みなさんの焼き物が、炭火の周りにずらりと並んだところで、私は終了としますか。今日のお勘定は6,080円。1万円札で支払うと4千円のお釣り。端数部分を負けてくれたんですね。ありがとうございます。

「どうもありがとうございます。またいらして下さい」

 と店の出口まで出てきてくれた女将さんに見送られながら、静かなるくつろぎの店を後にしたのでした。

店情報(1)前回

《平成19(2007)年9月19日(水)の記録》

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囲炉裏を囲んで(1) … 田楽「でんがく屋」(鎌倉)

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「囲炉裏を火をながめながら、ゆっくりと燗酒でも飲もうかなぁ」

 そんな思いで、やってきたのは、鎌倉にある田楽料理の店、「でんがく屋」です。

 店に着いたのは午後6時。白地に黒で「でんがく屋」と書かれた暖簾(のれん)をくぐり、開けっ放しの入口から店内に入ると、なんと先客は年配の男性ひとりだけ。

 この店に来たのは、これで2度目。最初にきてから、途中でもう1度やってきたのですが、囲炉裏端10席、後ろの小上がり3席だけの小さな店内は、満席だったのでした。今回も「満席だったらどうしよう」と心配しながら来ただけに、すっと入れることは嬉しいものの、ちょっと拍子抜けです。

「いらっしゃいませ。どこにでもお掛けください」

 うーん。どこにでもと言われると、迷うなぁ。じゃ、入口すぐ右手の席にしましょう。

「そこが一番いい席なんだよ。後ろの柱にもたれられるだろう?」

 と先客の男性。なるほど。たしかに背中のところに、入口すぐ横の柱があって、寄りかかることができる。こりゃいいや。

 腰を落ち着けたところで、まずは麦酒(サッポロ黒ラベル中瓶、600円)をもらうと、お通しとして出されたのは、前回と同じく枝豆です。この枝豆が、ものすごくコクがある味で、ビールが進むこと進むこと。

「なにから焼きましょうか?」

 囲炉裏の炭を調整した女将さんから声がかかります。この店は、この女将さんと、娘さんのふたりで切り盛りされているのですが、娘さんは、もっぱら奥の厨房にいて、囲炉裏の間に顔を出すことは、ほとんどありません。

「豆腐(600円)を、山椒味噌で焼いてください」

 この店は、田楽料理の専門店。囲炉裏で、豆腐や里芋、茄子、鶏肉、さらには地魚などを焼いてくれます。味付けは、基本的に味噌なのですが、シンプルな味噌のほかに、山椒味噌と柚子味噌とがあって、好みで選べるのです。

 煌々(こうこう)と熾った炭火の周りの灰のところに、食材を刺した串を突き刺して、炭火の輻射(ふくしゃ)熱で焼いていくのが、この店の調理法。火の上ではなくて、火の横で焼くので、時間は長くかかりますが、食材の中まで、じっくり火が通るのです。

「これが日本に昔からある焼き方なのよ。世界に誇れる調理法だわ」

 と言いながら、串を刺し直して、火に当たる豆腐の面を変える女将さん。ゆっくりと、ゆっくりと焼き上げていってくれます。

 豆腐ができあがったところで、飲み物を燗酒(500円)に切り替えます。

「燗づけ、ひとつぅーっ」

 と注文を通す女将さん。燗酒は、囲炉裏端でつけるんではなくて、奥の厨房でつけてくれるんですね。

 先客の男性(大常連さんの様子)と女将さんは、先ほどから美術館談議。中央線沿線も、けっこう高尚な話題のときがあるのですが、さすがに鎌倉も高尚ですねぇ。音楽も、もちろんテレビもない静かな空間で、おふたりの話も肴にしつつ、炭火を眺めながらいただく酒のうまいことよ。

 豆腐に続いては里芋(600円)を注文します。

「今度は柚子味噌にしてみましょうか?」

「いいですねぇ。柚子味噌でお願いします」

 里芋は1串に4個。さっきの豆腐もそうだったのですが、里芋も注文を受けてから厨房で準備され、湯気が上がりながら出てきます。これらは、あらかじめ下茹でされているものを、ここで味噌を塗りながら焼き上げてくれるんですね。それら以外の、たとえば茄子(600円)や椎茸(650円)、そしてもちろん鶏肉(650円)などは、生の状態から焼き上げていきます。

 年とともに、豆腐や、里芋や山芋などの、古来から続く酒の肴が、ますます好きになってきて仕方がない。もつ焼きで焼酎も大好きなんだけど、同じくらいの頻度で、豆腐や芋で燗酒でもいいかもなぁ。

つづく

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できたて絶品シメサバ … 居酒屋「鳥八(とりはち)」(鷺ノ宮)

070917z

「今日はマスターが釣ってきた釣りサバがあるんですよ。今、ちょうどシメ終わったところですけど、いかがですか?」

 瓶ビール(サッポロ黒ラベル中瓶、530円)を飲みつつ、メニューを選んでいると、おかみさんから、そんな声がかかります。なんと、なんと。釣りサバですか! それはぜひ、いただきましょう。

 うちの近所にある居酒屋「鳥八」は、外から見ると、まるであばら家ながら(失礼!)、一歩店内に入ると、凛(りん)とした空気が漂う、この地域の名店なのです。今日も、カウンターのこの1席を除いて、すでに予約でいっぱい。ふたりで切り盛りする店主と、おかみさんも、予約客の食事の支度に、おおわらわの状態です。

 シメサバも、そんな準備の一環として作っていたもののようです。予約のお客さんたちは、まだ誰も来ておらず、店内の客は私ひとりの状態。みなさんに先んじて、まっ先に今日の釣りサバのシメサバをいただくことになりました。

 出されたシメサバは、大きな6切れ。中心はピンクで、そこからグラデーションで白くなる美しさ。皮の厚みもしっかりとしていていいですねぇ。ちょいと山葵(わさび)をのせて、醤油をちらりと付けて口に入れると、ウワァーッと広がるサバのうまみ。ックゥーッ。たまりませんなぁ。

「日本酒を、今日は冷酒でください。どれがいいですかねぇ」

 この店では、燗酒(小360円)を飲むことが多いのですが、今日のこのサバには、冷酒のほうが合うように思えたのです。冷酒は「八海山」、「久保田・千寿」、それと「越後杜氏(純米)」の3種で、それぞれ1合650円。

「この「越後杜氏(えちごとうじ)」は、店主の故郷のお酒なんですよ。いかがですか」

 と、おかみさん。寡黙な店主は、いつもと同じように、一所懸命調理している顔をちょっとあげて、ニコニコと笑顔を向けてくれます。

「じゃ、それをお願いします」

 冷酒は冷蔵庫で冷しているのではなくて、室温で保存しているものを、注文を受けてからガラスの徳利に注ぎ、その徳利ごと、氷水が入った小さなバケツに入れて冷やしてくれます。

「冷やしすぎると味がわからなくなるでしょう?」

 と、おかみさん。そうそう。私も、そう思います。キーンと冷えた冷酒は、どのお酒も、同じような味に感じてしまって、ダメなのです。もっと味に敏感な人であれば、この状態でもわかるんでしょうが、私は燗酒なんかのほうが、わかりやすくて好きなのです。

 こうやって冷水で冷してくれると、室温よりはちょっと低いくらいの状態で、お酒が楽しめていいですよね。なるほど、この「越後杜氏」はマイルドな口あたりだけど、日本酒らしい(麹っぽい)香りと味わいで、魚にもよく合います。

 店主ご夫妻は、もともと赤坂にあった飲食店で働いていたそうなのですが、バブルがはじけた頃に、その店が閉店。そのときのメンバーが各店の商号を継ぐことになり、店主は「鳥八」という屋号をもらって、ここに店を構えたのだそうです。

 名前のとおり、もともとは焼き鳥屋だったのですが、魚好きの店主が魚を釣ってきたり、おかみさんの田舎から野菜を送ってもらったりするうちに、自然と今のように、魚も野菜も出すようなお店になっていったのだそうです。

「でも、創業の原点である焼き鳥とウナギは、今も必ず置いてるんですよ」

 と、おかみさん。なるほど、ウナギも創業時からあるんですね。今日のメニューの中ではウナギが最高値で、「浜名湖産・うなぎ蒲焼(大)」が1,400円です。

 「越後杜氏」をおかわりして、

「今まで食べたことがないもので、おすすめのものはないですか?」

 と、たずねてみたところ、

「鳥皮ネギ塩炒め(700円)なんてどうでしょう。人気がありますよ」

 ということで、そのおすすめに従います。

 この店は、魚は店主が、その他の炒め物などは、おかみさんが調理してくれるので、今日は店主のシメサバと、おかみさんの鳥皮ネギ塩炒めをいただく、ということになりますね。

 鳥皮ネギ塩炒めは、その名のとおり、鳥皮とネギを炒めて、塩で味付けしただけというシンプルなもの。ネギに加えて、ミョウガも入っていて、これがまたいい味を出しています。ミョウガって、炒めても美味しいんですね。

 午後6時半になって、予約のお客さんたちが来はじめたところで、私はボチボチと腰をあげることにします。開店の5時から、1時間半の滞在は3,830円でした。

 お通し(今日はイワシの生姜煮)が、たしか500円なので、釣りサバのシメサバは800円だったんですね。今まで食べたことのあるシメサバの中で、一番おいしいと思ったシメサバでした。どうもごちそうさま。

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「鳥八」 / お通しのイワシ / 「越後杜氏」冷酒

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キノコの煮物 / 店内の様子 / 鳥皮ネギ塩炒め

店情報前回

《平成19(2007)年9月17日(月)の記録》

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深化した居酒屋(2) … 居酒屋「井のなか(いのなか)」(錦糸町)

070914z かくま豚の鍋

 濁り酒の燗に続いて、次々に出してくれる燗酒も、それぞれしっかりとしていて、ワインで言えばフルボディといったタイプ。レバーにもけっして負けなかったし、刺し盛りのときに出してくれた燗酒もまた、刺身といいバランスです。燗の温度も、お酒によって微妙に変えてくれているようです。

 そして出されたのは、暑い日なのに鍋!

 中身は12時間煮込んで作ったという、豚肉の骨付きブロックです。本当に大きなひと塊(かたまり)が鍋の中央にドーンと鎮座しています。たっぷりの空芯菜が一緒に茹でられている外観は、まるで常夜鍋のよう。

「こういうのをバラすのが好きなんですよ」

 と言いながら、築地王・小関さんがナイフとフォークを器用に使って、豚肉の塊をバラしてくれます。スープの味がよく染み込んだ豚肉は、脂肪のプリプリのところも実にうまいっ。これはまさに和風アイスバインですね。豚肉は、茨城の鹿熊さんが育てた「かくま豚」という豚のものなのだそうです。

 さらには、同じ「かくま豚」のローストです。

「100度で1時間くらい焼くと、きれいなピンクに焼きあがるんですが、豚肉でピンクだと嫌がるお客さんもいるので、もうちょっと火を通しています」

 と店主の工藤さん。それでも十分きれいなピンク色ですけどねぇ。添えられたニンジンがまた、野趣あふれてて、いいのです。

 たっぷりと食べたあとは、まだまだ燗酒をいただきながらの歓談タイム。

「築地の店もいろいろと行ってみたいんですけど、有名店は、ものすごい行列になっていることが多くて」

 と語る、利き酒師・いずへいさんに、

「行列の店は、それでも行列して入ってみて、はじめてその店のことを語ることができるようになるんです。築地には、人が行列するだけのことはあるなぁ、と思わせてくれるお店が多いので、行列しても行ってみるべきだと思いますよ」

 と答える、築地王・小関さん。

 そういえば、ここ「井のなか」も、今や非常に予約が取りにくい店なのだそうで、今日も、カウンター席、テーブル席ともに、ずっと満席状態です。

 そうやって歓談している間も、燗酒はいろいろと銘柄を変えながら次々に出続け、料理のほうもカマンベールチーズフライ(1人前730円)や、子うるか(アユの卵巣の塩辛)、ゲンゲ(幻魚)の干物を炙ったもの、さらには黄色いジャガイモ(インカのめざめ?)のフライなどを出してくれます。なんと大贅沢な飲み会でしょう。

 そろそろ時刻も午後11時半が近くなり、ラストオーダーとして注文したのは、シメの能代(のしろ)うどんです。刻みネギ、刻み海苔がトッピングされた、極細麺の能代うどんは、まるで冷麦のような感じ。冷たい出汁もおいしくて、満腹以上に満腹の状態なのにスルスルと食べることができてしまいます。

 この能代うどんは、稲庭うどんや本庄うどんなどと同じく、秋田のうどんのひとつだそうです。秋田のうどん文化もすばらしいですね。

 その能代うどんも食べ終えて、お勘定は4人で32,460円(ひとりあたり8,115円)。あんなに食べて、あんなに飲んだ割りには安いなぁ、という印象です。(確実に、ひとり1万円は超えるものと思ってました。)

 深化した居酒屋は、呑ん兵衛が軽く飲み食いするにしては高いので、あまり足を踏みいれたことがなかったのですが、和食の店やレストランなどで飲み食いするよりも、はるかにコストパフォーマンスがいいんじゃないかと思います。そういうところが、「深化した居酒屋」に人気が集まっている主要因なのかもしれませんね。今日、「井のなか」の料理と、お酒をいただいて、改めてそう感じました。

 どうもごちそうさま。ご一緒いただいたみなさん、楽しい時間をありがとうございました。また次の機会を楽しみにしています!

070914g 070914h 070914i
かくま豚のロースト / カマンベールチーズフライ / 子うるか

070914j 070914k 070914l
ゲンゲの干物 / ポテトフライ / 能代うどん

店情報 (同じときの「いずへいのうまいもん日記」)

《平成19(2007)年9月14日(金)の記録》

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深化した居酒屋(1) … 居酒屋「井のなか(いのなか)」(錦糸町)

070914y 薩摩豚レバ刺し

 8月の築地「やまだや」に続いての、築地王・小関さんくにさんとの飲み会は、錦糸町の居酒屋「井のなか」です。

 錦糸町は、WINS(場外勝馬投票券発売所)のある街でもあります。WINSのある街は、いい酒場があることが多いのです。浅草しかり、新橋しかり、野毛(横浜)しかり。WINSの存在を許すような街の空気が、大衆酒場の存在も、おおらかに許してくれるんでしょうね。

 「井のなか」は、そんな大衆酒場の街、錦糸町に昨年(2006年)の3月にオープンした、いわゆる「深化した居酒屋」。この「深化した居酒屋」というのは、太田和彦さんの造語で、これまでのオヤジ居酒屋とは一線を画した「モダン和風の店内でおいしい日本酒と創作料理を味わう」という、レストラン感覚の居酒屋のことです。

 「井のなか」については、「日本酒ソムリエが通う東京のizakaya」の著者・神沢柚実子さんが、その開店までの記録を、ご自身のブログの1カテゴリとしてご紹介されていますので、そちらをご覧ください。

 そして、今日、紅一点で参加してくれたのは、神沢さんと同じく、開店前からこの店に関わっていて、開店日には店のお手伝いもされたという、利き酒師・いずへいさんです。

 店内は、入口の正面から左手にかけて、コの字カウンター20席ほど。そして右手に掘りごたつ式の座敷席が14席ほど。掘りごたつ席は2人用テーブルがずらりと並んだ形になっていて、予約人数に応じてそれを組み合わせていく仕組み。今日は手前から6席、4席、4席にセットされていて、我われ4人は、まん中のテーブルを囲みます。

 席の予約とともに、お料理のほうもお願いしてくれているのだそうで、あとは何も考えずに、楽しく飲んで食べるのみ。まずは生ビールで乾杯です!

 あらかじめ席上に用意されていたのは、青のり豆腐やポテトサラダ、野菜煮、アボカドとトマトのサラダなどの小鉢物9点。その中のひとつ、鮑(アワビ)の肝の即製塩辛は、ものすごく濃厚で、ぜひ日本酒に合わせたい味です。

 前菜9種に続いて出されたのは、この店の名物のひとつだというレバーペースト(1人前650円)です。一緒に出されたバケットに塗りつけるようにしていただくと、これがまた、いいつまみになります。

 さっきの前菜9点盛りのときにも、「私なんか、この9品で十分なくらいだなぁ」と思ったものですが、このレバーペーストも、バケットがたっぷりと(15切れほど)付いていつので、これだけでかなり長く飲めるほどです。

 しかし、今日はグルメ系ブログを書かれている健啖家がそろっているので、これだけの食べ物も、あっという間になくなっていきます。見ていても気持ちいいですねぇ。

 生ビールを2杯ほどいただいたあとは、燗酒に切りかえます。銘柄は、店主の工藤さんにおまかせすることとして、おすすめの燗酒を出してもらいます。

 最初に出してくれた濁り酒(燗)は、静かに注ぐと荒々しい味に、高いところから注ぐとマイルドな味わいになるのが、私が飲んでもわかるくらいのお酒。「どうですか!」と言いながら、両方を並べてくれた工藤さんは、「どう飲めば美味しいかと、いろいろとやってみてるときに気づいたんですよ」と、その発見ができたことが、とてもうれしそうです。本当に日本酒が好きなんですねぇ。

 続く料理は、深紅のレバ刺し。かけられたオリーブオイルの淡い緑色とも相まって、とてもきれいです。

「薩摩の黒豚のレバーなんですよ。残念ながらレバーがいい豚は、肉はあまり良くないんですねぇ。あとで肉もお出しする予定ですが、それは別の豚のものです」

 と説明してくれる工藤さん。このレバーは、本当に濃厚そのものです。

 里芋は、皮ごと焼いた大ぶりのものが、ひとりに1個ずつ。皮を剥いて、塩をつけて食べるだけというシンプルな料理なのに、焼きたてホクホクの里芋のうまいこと。

 続いて出された刺身盛り合わせは、サバ、カツオ、カンパチ、サンマの炙りの4点盛り。

「やっぱりなぁ。築地の市場でも、今はマグロが良くないんですよ」

 と築地王・小関さん。刺身盛り合わせの中に、東京の酒場の華であるマグロが入ってないのは、そういう理由なんですね。あとで店主の工藤さんも「マグロは今、ダメですねぇ」と同じことを話してくれました。

070914a 070914b 070914c
「井のなか」 / 前菜9点 / レバーペースト

070914d 070914e 070914f
里いも / 薩摩豚レバ刺し / 刺身盛り合せ

店情報 (同じときの「いずへいのうまいもん日記」)

(つづく)

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店情報: 居酒屋「井のなか(いのなか)」(錦糸町)

    070914a
  • 店名: 純居酒屋「井のなか」
  • 電話: 03-3622-1715
  • 住所: 130-0013 東京都墨田区錦糸2-5-2
  • 営業: 17:00-23:30(23:00LO)、日祝休
  • 場所: JR錦糸町駅北口を出て、バスのロータリーを左側に回りこんで、信号交差点を道路の向こう側に渡って左へ。次の角を右に折れた先、右手。駅から、徒歩3分かかるかどうか。
  • メモ: 平成18(2006)年3月31日オープン。店内は、コの字カウンター20席、掘りごたつ式座敷席15席の計35席。公式サイトあり。

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昔懐かしのナポリタン … 洋食「センターグリル洋光台店」(横浜・洋光台)

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 今日は戸塚方面での仕事だったという、にっきーさんと洋光台駅前で合流したのは午後7時半。駅近くの「センターグリル洋光台店」へと向かいます。

 店頭にタバコ売場もあって、まるで喫茶店のような外観の「センターグリル洋光台店」。店内もやっぱり喫茶店のような感じで、テーブル席がずらりと並んでいます。

 今日は、安部首相が突然退任を表明したため、世の中はその話題で持ちきりの状態。うって変わって、こちら「センターグリル」の店内は、そんなことはどうでもいいかのように、サッカー放送(北京五輪アジア最終予選、日本対カタール)が流されており、おかみさんも、ひとりだけ居る先客も、その画面に釘付け。タバコカウンターのところに、洋光台サッカークラブのポスターが張ってあるくらいなので、おかみさんをはじめとして、サッカーファンの多いお店なんでしょうか。

 我われは奥のテーブルに座り、最初は瓶ビール(キリンラガー大瓶、682円)をもらって乾杯です。ビールを飲みながら、じっくりとメニュー選択。メニューを見ると、この店が喫茶店ではなくて、りっぱな洋食店であることがわかります。にっきーさんはグラタンが好物なんだそうで、まっさきにマカロニグラタン(819円)を選択。

満月でも、いつもグラタンをたのんでるでしょう?」

 と、にっきーさん。そういえば、そうですねぇ。

 最初は2品くらいたのみましょうか、と話したものの、その2品目の選択で迷いに迷います。串カツ(766円)もいいし、若どりのから揚げ(819円)も捨てがたい。レバーベーコン(819円)なんてんもあるし、洋食屋の定番メニューであるポークチャップ(976円)もいいですよねぇ。迷って迷って選んだのは、ミックスグリル(819円)です。

 店は、もっぱらホールを担当する、おかみさんと、もっぱら厨房を担当する、ご主人の二人で切り盛り。奥の厨房からは、ご主人の振る鍋がカタカタとコンロに当たる音が聞こえてきて、期待が高まっていきます。

 ミックスグリルは、短く千切りに刻まれたキャベツの上に、ハンバーグ、ベーコン、ポーク、ウインナーがずらりと盛り付けられ、横にはマカロニサラダと、ナスのフライが添えられています。ひとりなら、この一品にライス(157円)でも付ければ、もう満腹、といった量です。

「熱いので気をつけてくださいね」

 と出てきたマカロニグラタンを、一緒に出してくれた取り皿にとりわけて、ハフハフと口に運びます。

「うーーん。このベシャメルソースが素晴らしいですねぇ。ベシャメルソースには白ワイン。白ワインをもらってもいいですか?」

 グラタン好きの、にっきーさんから、そんな提案が飛び出します。白ワイン、大賛成です。ボトル(2,310円)でもらいましょう。

 白ワインは、甲州産の塩山(えんざん)ワイン「甲州ゴールド」。

「他ではあまり見かけないと思いますよ。うちは30年間、ずっとこのワイン。野毛はもう60年になります。直接産地から仕入れてるんですよ」

 よく冷えたワインを持ってきてくれた、おかみさんが、そう説明してくれます。どーれどれ。

 いやぁ、これはまた、しっかりとした白ワインですねぇ。ずっしりと重さを感じます。日本酒に例えれば、まるで「住吉」のような…。ボトルには甘口と書いているけど、それほど甘口には感じないなぁ。ベシャメルソースには、もっと軽い口当たりのワインのほうが合うのかもしれませんが、お酒としては、こういうしっかりとしたのが好きですねぇ。

「もう1品、なにかもらいましょうか」

 という話になり、メニューから選び出したのはミックスフライ(819円)。

 さっきのミックスグリルと同じ皿、同じ付け合せに、揚げたて熱々のカキフライ(2個)、アジのフライ、海老フライ、魚(カジキかな?)のフライが盛り付けられます。これもまた、ミックスグリル同様、ひとりなら、この一皿で今日の夕食は十分ですね。

 ひとりで食べると、料理1品くらいで、もう満腹なのに、ふたりでワイワイとしゃべりながら食べると、どんどん食べられますねぇ。中華料理は大勢で食べるほうがいいと言いますが、洋食もそうですね。いろんなものを食べることができます。

「おいしいですねぇ」

 と、おかみさんに感想を述べると、

「うちの主人は、料理を作るのが大好きなんですよ」

 とニコニコ顔です。好きこそ物の上手なれ、といいますが、料理は、まさにそれが顕著に表れる世界じゃないかと思います。

 ミックスフライの終了とともに、白ワインのボトルも終了。時間に余裕があれば、もう1軒行きましょうか、なんて話していたのですが、すでに午後10時を回っています。なにしろ、にっきーさんはこれから西武線沿線まで帰らないといけないですからねぇ。

「それじゃ、シメの料理も、ここでいきましょう」

 そう言いながら注文したのは、洋食屋のシメタン(シメにいただく炭水化物)として、絶大なる人気を誇る、スパゲッティ・ナポリタン(714円)。この店のナポリタンは、どんな味なんでしょうねぇ。

 待つことしばし。「お待たせしました」と出てきたナポリタンは、ケチャップ色に真っ赤に染まった太麺に、タマネギ、ピーマン、マッシュルームにベーコン。見た目からすでに嬉しいではありませんか! クルクルッとフォークに巻いて取り皿に分け、ひと口含むと、ケチャップの甘みもよく効いて、これぞまさにナポリタン。

「いやいや。やっぱりナポリタンは、こうでなくっちゃ。最近は、ポモロード風のナポリタンが増えてますからねぇ。しっかりとしたケチャップ味がうれしいなぁ」

 サッカーは、1対0で日本の勝ち。これで日本はC組首位に立ったのだそうです。

 午後11時まで、気付いてみれば3時間半近くも楽しんで、今日のお勘定は、ふたりで6,845円(ひとりあたり3,420円ほど)でした。いやぁ、美味しかった。どうもごちそうさま。

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センターグリル洋光台店 / 店内の様子 / ミックスグリル

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マカロニグラタン / 白ワイン「甲州ゴールド」 / ミックスフライ

店情報前回

《平成19(2007)年9月12日(水)の記録》

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毎月第2土曜は夕食会 … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)

070909z カワハギ刺身

 近所にある、魚料理と天ぷらの店、「竹よし」では、毎月、第2土曜日の午後5時から夕食会を開催しています。その日は、通常の営業はやめて、予約があったお客さんたちだけの会となるのです。

 参加資格は特になく、会費はひとり5千円。この会費には、その月ごとに決められる料理代のほかに、飲み物代も含まれています。飲み物は、店にあるものならなんでも飲み放題です。

 人数にも制限はなくて、店の着席キャパシティ(14席)を超えた場合には、立ち飲みになったり、天候によっては、店の外にオープンエアの臨時テラス席が用意されたりするのです。

 今月の夕食会は、昨日(8日)開催され、ちょうど着席キャパシティいっぱいの14名の参加があったのだそうです。今回のテーマ食材はカワハギと関サバ。先日、ここ「竹よし」に来たときに、店主(マスター)が、

「今年は、もうカワハギが市場に出てるんですよ。次回の夕食会は、カワハギでいってみようと思ってまして」

 なんて話をされていたのでした。店主によると、冬場はブリ、タラ、アンコウなど、夕食会の食材としてはずせない魚が多くて、カワハギなども美味しいのに入る隙(すき)がないのだそうです。

「だからねぇ、この時期にカワハギが出てきてくれると、ありがたいんですよ。仲買さんにお願いしてるんだけど、どうなりますかねぇ」

 そう店主が心配していたとおり、先週、関東地方を台風9号が直撃。本当は佐島(神奈川県横須賀市)あたりのカワハギをねらっていたらしいのですが、もちろん漁はなし。これはダメかもしれないということで、代わりの食材として関サバを仕入れて準備していたところ、ギリギリになって四国は鳴門産のカワハギを仕入れることができたのだそうです。

 そんなわけで、今回の夕食会参加者は、ラッキーにもカワハギと関サバという、四国の東側と西側からやってきたダブル食材を楽しむことができたのだそうです。

 そして、今日、日曜日。夕食会の翌日の「竹よし」には、昨日の夕食会の食材が残っている(店主が残してくれている?)ことが多いので、夕食会で出されたメニューを味わうことができるのです。

 夕食会は予約制、会費制なので、歩留まりよく高級食材を入荷することができる。その食材を、普通営業のときに食べることができるんだから、ありがたいではありませんか。

 今日のホワイトボードメニューにも、カワハギ(950円)と、関サバ(900円)がラインナップされています。どっちにしようかなぁ、としばらく考えて、結局は両方とももらうことに決定。この機会(夕食会の翌日)じゃないと食べられませんもんねぇ。

 活けじめのカワハギは、注文してからビビビッと皮を剥(は)いで造ってくれます。

「この皮が剥ぎやすいからカワハギというんでしょうが、実はこの剥ぎやすい皮の下に、もうひとつ薄い皮がついていて、これがけっこう硬いんですね。これをとらないと美味しい刺身にならないんですよ」

 と説明してくれながら、まっ白なカワハギの造りができあがっていきます。

「やはりまだ季節が早いんでしょうか。肝は冬のものよりは小さいですね」

 そう言いながら添えてくれる肝も、なかなかどうして、たっぷりとしたいるではありませんか。さっそく肝醤油にして、プリッとした刺身にたっぷりと絡めていただきます。んー、いい歯応えですねぇ。

 合わせるのは、今回の夕食会用に新たに仕入れたという、新潟の地酒、「麒麟山(きりんざん)」の純辛(純米吟醸辛口)です(1合500円)。

 そして関サバ。この店では、普段から豊後水道産のサバは、よく入荷されているのですが、関サバは久しぶりです。同じ豊後水道のサバでも、佐賀関(さがのせき)漁協で取り扱うものだけが関サバ。水産物では全国で初めて商標登録された品なのです。

 他にも、鯨の竜田揚げ(600円)をいただいて、最後はカワハギの吸い物でしめて終了。ゆっくりと2時間の滞在は4,250円でした。どうもごちそうさま。

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夕食会メニュー / お通しの湯葉と瓶ビール / 鳴門のカワハギ

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関サバ刺身 / カワハギの肝 / 麒麟山・純辛

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高清水・氷温生貯蔵酒 / 鯨の竜田揚げ / カワハギの吸い物

店情報前回

《平成19(2007)年9月9日(日)の記録》

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毎月8日は全料理半額 … 大衆酒場「ふくろ」(池袋)

070908b

 池袋駅西口で、毎朝7時からやっている大衆酒場「ふくろ」。しかも、毎月8日は、料理全品が半額になると言うんだから、うれしいではありませんか。

 そんなわけで、土曜日で8日の今日、その「ふくろ」にやってきました。店に着いたのは午後3時半過ぎ。

 入口引き戸を開けて店内に入ると、ズドーンと、店の反対側にある入口までを結ぶ長ーいカウンターには、人、人、人。普段でも、お客さんがいっぱいのこの店。さらに料理半額となると、人が来ないわけがないですよねぇ。

 店のおねえさんがいると、「こちらにどうぞ」と空いてるところを指し示してくれるのですが、料理でも取りにでもいってるのか、この付近には、たまたま誰もいない状態。もう一度、ゆっくりとカウンターを見渡して、カウンターの端っこがJの字に回り込んだところに、ひとり分の空席を発見。両側の先客に声を掛けて、その真ん中に入れてもらいます。

「いらっしゃいませー」

 このカウンター担当のおねえさんも戻ってきました。

「瓶ビールください。あと、刺身の盛り合わせ」

「はーい」

 と返事したおねえさん、まずはお通し(200円)の空豆をトンと置き、カウンター下の冷蔵庫から出した瓶ビール(アサヒスーパードライ大瓶、450円)の栓を、ポンッと抜いてくれます。

 刺身盛り合わせは、この店の最高値メニューで、普段は800円。それが、料理半額の今日は400円なので、まわりのお客さんたちのところにも、ずらりと刺身盛り合わせが並んでいます。店の側も、注文の多い料理は、あらかじめ用意しているらしく、私の刺身盛り合わせも、あっという間に出てきました。四角いお皿には、大きく切られたタコとブリが3切れずつ。そして赤身のマグロが4切れに、10切れほどの細く切ったイカ。紅白、鮮やかですねぇ。

 瓶ビールを飲み終わると、メニューに「清酒(正一合)260円」と書かれた、日本酒を、燗(かん)で注文します。すぐに出されたのは、徳利型のガラス瓶入りの「大関」。なるほど、これは確かに正一合(180ml)だ。ちなみに、料理は全品半額ですが、飲み物は普段どおりの料金です。

 それにしても、この刺身盛り合わせ、けっこうなボリュームです。これは、普段の800円でも、十分お得な一品だと思います。しかし、せっかく料理半額の日なのに、刺身盛り合わせ1品で退散したのでは、もったいない。がんばって、もう1品、いただきましょう。

「すみません。柳川鍋(やながわなべ)をお願いします」

 柳川鍋は、定価700円のところ、今日は350円。この店で2番目に高い料理です。なにしろ、この夏は、1度も「どぜう」を食べないまま9月を迎えてしまったので、遅ればせながら、ここで「どぜう」を食べられるのが、うれしいですねぇ。

「柳川鍋、これで終わりましたー」

 という声が、店の中央部から響きます。やぁ、よかった。最後の1人前だったんですね。

 まだ4時半過ぎなのに、続々と売り切れの品が出てきます。カウンターの中にいる、おねえさんは、「終わりましたー」という声が響くたびに、手の甲に、売り切れた品名を、ボールペンで書き加えています。お客さんからの注文を受けたときに、ちらりと手の甲を見て、売り切れてないかどうか確認するんですね。

 柳川鍋が出されたところで、2本目の燗酒をもらいます。

「この店には、よく来るんですか?」

 左どなりに座っている、おにいさんから声がかかります。

「いやぁ、普通に移動する経路からは、はずれているので、めったに来れないんですよ。今日は8日(料理半額の日)なんで、出かけてきたんです」

「そうなんですか。ボクは、前はよく来てたんだけど、最近は週に1回くらいかなぁ。毎月8日は、人が多いから来ないようにしてるんですよ。今日は、今日が8日だということを、すっかり忘れちゃってました」

 このまわりに座っている人たちは、みなさんそれぞれ独り客。しかしながら、ほとんどの人が常連さんらしく、それぞれ名前で呼び合いながら、親しげに会話を交わしています。かといって、常連ではない客に阻害感があるわけでもない。この微妙な距離感が、おもしろいですね。

 本当は、この辺(5時半過ぎ、店に入って2時間ほど)で切り上げる予定だったのですが、両側のお客さんとの話も弾み始めたので、もうちょっと腰を落ち着けることに決定。3本目となる燗酒をおかわりし、つまみにはお新香(キュウリ、大根、ニンジンの、ぬか漬け3点盛りで、普段360円のところ180円)をもらいます。

 右どなりのおじさんは、この店で飲むために埼玉から出てきたんだそうです。

「この店に来て、もう40年以上になるかなぁ。仕事をしてるときは、帰り道に寄ってたんだけど、今はわざわざ出てきて飲んでるんだよ」

 と楽しそうに語ってくれます。京成立石の「宇ち多゛」なんかもそうですが、いい店は、常連さんたちが、電車代をかけても、わざわざ通ってきてくれるんですよねぇ。すごいことだと思います。

 そのおじさんに、昔の池袋のことをうかがったりして過ごすうちに、もう6時半過ぎ。話は尽きませんが、私はそろそろ腰を上げますか。3時間の滞在。お勘定は普段なら3,290円となるところ、料理半額日なので2,360円でした。どうもごちそうさま。みなさん、お先に!

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ビールと空豆 / どぜう柳川鍋 / お新香と燗酒

店情報前回

《平成19(2007)年9月8日(土)の記録》

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サイドメニューも充実 … もつ焼き「ホルモン(ほるもん)」(沼袋)

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 もつ焼きの名店には、もつ焼き以外のサイドメニューも充実しているお店が多いように思います。ここ、沼袋の「ホルモン」も例外ではありません。サイドメニューは、お新香に、冷奴、トマト、月見と4品しかないものの、その4品が、それぞれ秀逸なのです。

 お新香(100円)は、ほとんどのお客さんが、店に入るなり注文するほどの人気の品。メニューのところに、日替わりで「今日のお新香は白菜とキュウリ」と、その内容が書き出されるのが、いかにも自家製の品っぽいですよね。醤油皿のような小皿に、こんもりと盛って出してくれるのですが、最初から「ダブルで!」なんて注文してる人もいます。ダブルの場合は、小鉢で出してくれるようです。

 今日も、店に入るなり、お新香を注文したのですが、おかみさんからは、

「ごめんなさい。今日はお新香、売り切れました」

 という残念な返事。金曜日の8時半近い時間ですもんねぇ。この店は午後10時までの営業なので、この時間だと売り切れてても仕方ないよなぁ。

 冷奴(250円)も、この店の名物メニューのひとつ。大きな塊のまま、丸ごと出される、しっかりとした豆腐は、この店のすぐ近くにある、明治30(1897)年創業の手造り豆腐の店、「尾張屋豆腐店」のものらしいのです。残念ながら、冷奴もすでに売り切れで、札が裏返っています。

 いつも真っ赤に熟れてるトマト(250円)。この店に来ると、まずまっ先に、このトマトを食べるおじいさんもいて、その人が店に入ってくると、注文も聞かずにトンとトマトが出されるほどなのです。

 そのトマトを注文すると、おかみさんから

「トマトは塩ですか?」

 という確認が入ります。もつ焼き屋さんだけに、思わず「タレで」なんて答えちゃいそうですが、トマトの場合は、きっと醤油とか、マヨネーズといった答え方をするんでしょうね。私は、ここのトマトはシンプルに塩で食べるのが一番合うように思うので、

「はい。塩でお願いします」

 と答えます。

 トマトは大きな丸1個が一人前。まん中で二つに切ったものを、縦方向にスライスして出してくれます。けっこうボリュームがあるのに、スルリスルリと、あっという間に食べ終えちゃうのが不思議なり。こういう品質のトマトを、定常的に仕入れることができるというのが、素晴らしいことですよねぇ。

 これまた今日はすでに売り切れてますが、絶妙な食感を与えてくれるのが、月見(250円)です。山芋をすりおろした月見を出す店は、よくありますが、この店の月見は、山芋を細く千切りにしたものを出してくれるのです。トッピングの、うずら生卵、青のりとともに、グリグリグリとかき混ぜると、すりおろした月見と同じようにドロリとしたトロロ状になっていきます。しかしながら、なにしろ元が千切りなので、このトロロをズズズッとすすり込んで噛みしめると、トロトロっとやわらかい口内の感覚と、シャキッとした歯応えとを同時に楽しむことができるのです。

 この4品。毎回、すべてを食べたいくらいのものですが、そうすると、それだけで満腹になってしまって、もつ焼きを食べることができないのでした。

 今日は4つのサイドメニューのうち、3品までが売り切れてたので、迷うこともなく残りの1品(トマト)を注文し、あとはいつものようにレバとコブクロのちょい焼き(2本ずつ)からはじまって、アブラ、カシラ、タンシタ、オッパイの塩焼き(1本ずつ)、そして、ウズラ、シイタケ、テッポウ、ガツの醤油焼き(1本ずつ)をいただきます。

「最近、醤油で、と注文される方も増えてますよ」

 と店主。私自身、テッポウ、ガツは、よく醤油で焼いてもらってましたが、ウズラ(玉子)や、シイタケまで醤油焼きにしてもらったのは、今回がはじめて。シイタケは、注文したときから、絶対に醤油に合うはずだという確信がありましたが、ウズラ玉子も合いますねぇ!

 飲み物のほうは瓶ビール(サッポロラガー大瓶、490円)を1本いただいた後は、今夜は燗酒(金寶、260円)を3杯。

 ゆっくりと10時前まで楽しんで、お勘定は2,520円でした。どうもごちそうさま。

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レバ、子袋 / アブラ、カシラ、タンシタ、オッパイ / うずら、椎茸、テッポウ、ガツ

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《平成19(2007)年9月7日(金)の記録》

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目から鱗のメカブ茶割 … 焼き鳥「川名(かわな)」(阿佐ヶ谷)

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 しばらく前から、「川名」の飲み物に加わった、焼酎のメカブ茶割り(正式には“めかぶ茶焼酎お湯割”、336円)。一度だけ、試してみたのですが、あまりパッとしない印象で、それ以来、飲んだことがなかったのです。

 ところがっ!

 先日、入口の近くで飲んでいたところ、テーブルのひとつを囲んでいた常連さんたちが、みなさんメカブ茶割りを飲んでいたのです。しかも、その飲み方がおもしろい。みなさん酎ハイとメカブ茶割りを同時に注文。出てきたメカブ茶割りはそのまま置いておいて、酎ハイをゆっくりと飲み終えてから、おもむろにメカブ茶割りに向かうのです。しばらく置いたメカブ茶割りは、ちょっぴり緑色に変化して、いかにもおいしそうです。

「なるほど。メカブ茶割りは、こうやってしばらく置いてから飲むのが正解だったか。今度、ああやって飲んでみよう」

 その日は、そう思いながら店を出たのでした。

 そして今日。いよいよ、そのメカブ茶割りに再チャレンジする機会がやってきました。飲み仲間たちと3人でテーブルを囲み、最初の瓶ビール(大瓶、504円)と同時に、メカブ茶割りも注文します。

「熱いですから、気をつけてくださいね」

 そう言いながら出されたメカブ茶割りは、かたわらに置いておいて、まずはビールで乾杯です。

 最初にメカブ茶割りを飲んだときは、こうやって出されたものを、すぐに飲んじゃったんですよねぇ。やたらと熱い焼酎の湯割り、という印象で、海藻らしい旨味はほとんど感じなかったのでした。

 じっくりと置くこと10分ほど。じわりじわりと変化しているため、ちょっと目には変わったように見えないのですが、よく観察すると、透明だったメカブ茶割りが、うっすらと色づいています。あらかじめ撮っておいたデジカメの画像と見比べると、ジョッキの底のメカブ自体も、ふくらんだ感じになっている。

 どーれどれ。

 満を持してジョッキに口をつけると、口の中に広がるのは、かなり上品な海藻の旨味。これはすごいぞ。

 「上品な」と感じたのは、同じ海藻ということで、昆布茶のような強烈な旨味を想像していたからです。こちらメカブ茶は、そういった強烈さではなくて、じわぁーっとくる旨さなのです。コンソメスープで作る、ブルショットというカクテルがあるのですが、このメカブ茶割りも、スープ系のカクテルのような味わいです。

 常連さんたちは、ジョッキの底にしずんだメカブそのものも、つまみとして食べてたなぁ。よーし、それもやってみましょう。箸(はし)でつまみ上げたメカブは、ねっとりと糸を引きながら出てきます。コリッとした弾力感と、広がるうまみ。そのままでも十分うまいけど、ちょっと醤油を垂らしても、おいしいかもね。

 見直したなぁ、メカブ茶割り。1杯で、飲み物から、つまみ(=底のメカブ)まで、すべてを完備してるんですね!

 3時間ほどの滞在。まぐろブツ(294円)や、サンマ炭焼き(294円)、豚ロース焼き(294円)、さつま揚げ串(1本168円)などをたっぷりといただいて、今日は3人で4,867円(ひとりあたり1,620円ほど)でした。

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今日のメニュー / まぐろブツ / 豚ロース焼き

店情報前回

《平成19(2007)年9月2日(日)の記録》

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讃岐の麺で焼きうどん … 居酒屋「さぬき亭(さぬきてい)」(野方)

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 金曜日の帰り道は、西武新宿線・野方(のがた)駅で途中下車して、「手打うどん酒房」を標榜(ひょうぼう)する酒場、「さぬき亭」です。

 店内はL字カウンター7~8席ほどと、奥に4人掛けテーブル席が2卓。この空間を、店主ひとりが切り盛りしています。

 午後9時前の店内には先客はなし。カウンターの奥のほうに腰をおろし、瓶ビール(アサヒスーパードライ中瓶、500円)からスタートすると、お通し(300円)として出してくれたのは、コーン、グリーンピースなどの入った磯辺揚げ。ここの店主が作る料理は、どれもちょっと工夫のある創作料理で、おいしいのです。

「刺身が食べたいんですけど、今日のおすすめは?」

 黒板には、マグロづけ、ぶつ山かけ、キハダ、アジ、イワシ、シメサバと刺身メニュー(各500円)が並んでいますが、決めきれず、店主に下駄(げた)をあずけます。

「アジは、どうですか」

 と店主。おすすめにしたがってアジを注文すると、出てきたのは海鮮サラダ風のアジです。ひと口大に切り分けられた、プリッと美しいアジの身と、キュウリ、トマト、シラガネギにミョウガを、醤油系のドレッシングで和えています。これはまた、さっぱりとしていていいですねぇ。

 これはやっぱり日本酒でしょう。何種類かある日本酒の中から、「飛良泉」山廃(550円)を冷酒でいただきます。

 日本酒でアジをいただいた後は、飲み物を焼酎「きろく」のロックに切りかえて、肴(さかな)には、うどんメニューの中から焼きうどん(650円)を注文します。

 店名からもわかるとおり、この店は、さぬきうどんが食べられるお店なのです。それにもかかわらず、これまで何度か来てるのに、うどんを食べたことがない。ぜひ一度、食べてみようと、つまみにもなりそうな焼きうどんを注文してみたのでした。

「酒の肴に焼きうどんを注文される方は多いんですよ。さぬきうどんの師匠には怒られそうですけどね」

 と笑う店主。たしかに、さぬきうどんで焼きうどんというのは見たことがない。これまた店主の創作料理なんですね。

 うどんは、注文を受けてから茹で上げるようで、ちょっと時間がかかります。その分、しっかりとした腰のある、さぬきうどんならではの焼きうどんができあがります。

 うどん用の丼に盛られた焼きうどんは、キャベツ、ニンジン、玉ネギ、インゲン、シイタケ、ベーコンに、薄く輪切りにされたチクワや細切りの油揚げと、けっこう具だくさん。さらにカツオ節と、刻みネギがトッピングされています。味つけは塩か薄口醤油がベースなのか、黒い丼に、まっ白い麺が引き立ちます。

 おかわりした焼酎は、奄美の黒糖焼酎「高倉」のロックです。30度あるという、この焼酎は、うっすらと琥珀色。焼きうどんも進みます。

 ゆっくりと3時間弱、楽しんで、今日は3,650円でした。ごちそうさま。

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「さぬき亭」 / アジ / 芋焼酎「きろく」

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《平成19(2007)年8月31日(金)の記録》

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プリッとアサリ酒蒸し … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)

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 毎週日曜日は、図書館の日。わが家の近くには、中野区立鷺ノ宮図書館と、杉並区立阿佐ヶ谷図書館の2軒の図書館があります。今週は鷺ノ宮図書館、来週は阿佐ヶ谷図書館と順番に本を借りるようにすると、ちょうど貸し出し期間の2週間ごとに、それぞれの図書館に行くことができるのです。

 もちろん、ただ単に図書館通いだけで終わるはずはなく、鷺ノ宮図書館に行った日は、その足で「竹よし」や「秋元屋」にまわり、阿佐ヶ谷図書館に行った日は「川名」に行くという、日曜日の流れができあがっているのでした。

 今週は鷺ノ宮図書館の日。借りていた本を返し、新しい本を何冊か借りたあと、トコトコと歩いて「竹よし」です。

 あったかい、おしぼりで手を拭いつつ、まずは、いつものように瓶ビール(アサヒスーパードライ中瓶、500円)を注文。仕事のない日曜日でも、クゥ~ッと最初の1杯は最高です。今日のお通し(200円)は、ナスの煮びたしと、ヒジキの炒め煮の2品。ヒジキのほうは「ちょっと食べてみる」と出してくれたサービス品です。

 ホワイトボードに書き出された、今日の刺身メニューは生クジラ(650円)、新サンマ(650円)、豊後水道のサバ(600円)と、盛り合わせ(1,000円)。刺身以外のホワイトボードメニューは、芝エビかき揚げ(700円)や穴子白焼/蒲焼(750円)、クジラ竜田揚げ(650円)のほか、アサリ酒蒸し(550円)や深川鍋(アサリ剥き身の鍋、700円)も並んでいます。

 アサリ! いいですねぇ。今日はアサリにしようかな。鍋もいいけど、シンプルに酒蒸しでいってみましょう。

 アサリをはじめとする貝類も、ときどき無性に食べたくなる肴(さかな)ですよねぇ。貝料理が売りの酒場もあるようで、ちょっと気になっているところ。たとえば、茅場町の「和光」や、新宿の「はまぐり」、高円寺の「あぶさん」、本所吾妻橋の「海作」などなど。ただし、貝類はちょっと高いのが玉に瑕なんですよねぇ。

 さぁ、アサリの酒蒸しができあがってきました。蒸し器から出された熱々に、三つ葉がちょいと添えられています。どれどれ、まずはスープから。

 んー。アサリのいい出汁(だし)が出てますねぇ。

「冷酒(高清水350ml瓶、600円)をお願いします」

 飲み物も日本酒に切りかえて、プリッとふくらんだアサリの身を、ひとつずついただきます。

 最後は、マスターの手作り水羊羹で、お茶を飲んで、夕食前の酒場散歩を終了します。2時間弱の滞在は、1,850円でした。どうもごちそうさま。

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ナスの煮びたし / ヒジキの炒め煮 / 手作り水羊羹

店情報前回

《平成19(2007)年8月26日(日)の記録》

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