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かぶおろぬきおひたし … 大衆酒場「坂戸屋(さかとや)」(横須賀中央)

横須賀湯豆腐 & 横須賀ホッピー


 先週末は「酔わせて下町」のFさんに、酒場の密集する葛飾区は立石の町をご紹介いただいたのですが、ここ横須賀中央駅界隈も酒場が多い町のひとつ。これまでに何度かやって来ているのですが、行くことができたのは、まだまだほんの一部分のお店にしか過ぎません。

 今日の1軒目は、創業90年を超えるという老舗大衆酒場「坂戸屋」です。

 店は15年ほど前に建て替えたのだそうで、外観からは残念ながら超老舗であることはうかがえません。

 店内は、左手にL字カウンター10席ほどと、右手壁際に4人掛けのテーブル席が3つ並び、奥には小上がりの座敷席もあるようです。左手のL字カウンターの入口側、L字の短辺のところは非常に短く、しかもカウンター上に一升瓶などが並んでいるので、実際にカウンター席として使えるのは、店の奥に向かって伸びるL字長辺の部分のみ、席数にして8席程度です。

 水曜日、午後5時半の店内は先客はひとり。かなり厳(いか)つい感じのジャンパー姿の中年男性が、カウンター中央部分でホッピーを飲んでいます。

 ちょっと怖いので、席ふたつ分くらい離れた、一番入口側の席に座り、注文を取りに来てくれたおねえさんに、ホッピーと湯豆腐を注文します。店は女将さんと、このおねえさん(お嫁さんらしい)のふたりで切り盛りしているようです。

 すぐに出されたホッピーは、横須賀にしては珍しく、あらかじめ作られたもの。横須賀では、ホッピーは生ビールジョッキで出すのが標準なのか、ここ「坂戸屋」のホッピーも、サッポロビールのロゴマークが入ったジョッキに、氷なしでなみなみと注がれています。

「おにいさんもホッピーですか。ホッピー、美味しいですよねぇ」

 厳つそうに見えた先客が、そう言いながら満面の笑みを投げかけてくれます。なんだ、いい人じゃん。なんだかひと安心で、肩の力もスゥ~ッと抜けます。

「ほんとですねぇ。特に横須賀のホッピーは、焼酎が濃くて飲み応えがありますよね」

 と答えながら、軽くジョッキを持ち上げてご挨拶し、ひと口目のホッピーをゴクリ。ッカァ~~ッ。効くなぁ。

 ホッピーに使う焼酎は、甲類焼酎といって、純粋アルコールを水で割った状態に近い飲み物であるため、無味無臭に近いのです。しかし、その無味無臭であるはずの焼酎がどのくらい入っているかで、ホッピーの味がまるで変わってしまうのが不思議なところ。試しに瓶入りのホッピー(いわゆるソト)だけを飲んでみると、ちっともうまいと感じない。これに焼酎が入れば入るほど、どんどんうまくなってくるんだけど、あるところを過ぎると、焼酎が勝ちすぎてホッピーらしい味わいはなくなってくる。

 ちょうどいい味わいが楽しめる分量の中で、一番焼酎が濃いのが、横須賀あたりの酒場で飲めるホッピーではないでしょうか。だいたいの店で焼酎が120~180mlほど入っているようです。

 そういうホッピーのことを、最近は「横須賀ホッピー」というように「横須賀」の名を冠して呼び表したりしますが、もうひとつ、「横須賀」の地名を冠して呼ばれる、この地の名物が湯豆腐です。

 「横須賀湯豆腐」の特徴は、湯豆腐の上になる面にベッタリと練り辛子が塗られているところ。この店の湯豆腐は、練り辛子を塗った上に、刻みネギ、カツオ節、刻み海苔をトッピングして、醤油をかけたものです。

 我われ首都圏に住んでる人間から見ると、このスタイルの湯豆腐がまさに「横須賀湯豆腐」というイメージなのですが、全国を飲み歩かれている太田和彦さんによると、練り辛子を塗った湯豆腐は、東北あたりでも普通に食べられているものなのだそうです。横須賀だけの特産品(?)ではないんですね。

 この店には、壁などに張り出された短冊メニューと、ホワイトボードに書き出された手書きメニューの、2種類のメニューがあるのですが、ほとんどの品物には値段が表記されていません。値段が書かれているのは牛煮込み(850円)、牛半煮込み(450円)、ぬか漬け(300円)と、サワー類各種が400円であることくらい。ホワイトボードに並ぶ地ダコ刺、真鯛塩焼、子持ちカレイ煮、カキフライなどの品々には値段は書かれていません。『お客さんのほとんどが常連さんだから、値段なんて書く必要ない』ということなのかもしれませんね。

 そんなメニューの中に「かぶおろぬき」という品名が書かれています。なんだろう? さっそくおねえさんに聞いてみると、

「カブが成る前に、葉の部分をお浸しにしたものです」

 とのこと。「おろぬき」というのは、間引きのことなんだそうです。さっそくいただいてみると、細い茎の部分もシャキシャキとおいしくて、いいつまみです。

 おもしろいのはお手洗い。目の前に「急ぐとも、心静かに手を添えて、外に散らすな松茸の露」という狂歌のある店はよく見かけるのですが、この店ではその横に、ひと回り小さな文字で「手を添えてやれども萎えし吾が息子、君が情を今や待たなん」と書き添えられているのです。どなたかもう一首、歌を詠んで、三部作にしてみませんか?

 1時間ほどの滞在は1,100円。値段表記はないけれど、大衆酒場という看板に偽りのない値段でした。どうもごちそうさま。

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「坂戸屋」 / かぶおろぬき / トイレの狂歌

《平成19(2007)年12月26日(水)の記録》

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