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冬だけの名物・しし鍋 … おでん「赤丹本店(あかたんほんてん)」(松山)

しし鍋


 松山の老舗「赤丹」の名物は、定番のおでんと瀬戸内の魚に、冬の時期は、ふぐと猪鍋が加わるんだそうです。今日のホワイトボードメニューには残念ながら「ふぐ」の文字はありませんが、ボードの真ん中あたりのよく見えるところに「しし鍋」と載っています。

「しし鍋は、ひとりでも注文できるんですか?」と確認してみたところ、

「一人用の小さい鉄鍋で作るけん、大丈夫よ」という返事。

 さっそくそのしし鍋を注文し、できあがりを待つ間に、おでんの湯葉(ゆば)をもらいます。湯葉は5~6本のインゲンを湯葉でクルクルと巻いたもの。もっちりとした湯葉の食感と、さっくりとしたインゲンの食感のバランスがいいですね。

 午後5時を回るころにはお客さんもどんどん増えてきて、カウンターはほぼ満席状態。客層は中年以上のお客さんが多く、夫婦連れらしきカップルも2組ほどいらっしゃいます。

 私のとなりにやって来たご夫婦は「とりあえず、おでんを全種類、出してや。全部で20種類くらいじゃろ?」と、なんとも豪勢です。「お皿に載るように、1回に5~6種類ずつ入れよわいね。そのほうが冷めんでよかろ」と、ひとまず最初の5品ほどを皿に盛る女将さん。

「毎日、寒うて、かなわんねぇ」

「椿(つばき)さんまでは、いっつも寒いのよ」

 おぉ、懐かしいなぁ。「椿さん」というのは、市内にある椿神社(正式名称は伊豫豆比古命神社(いよずひこのみことじんじゃ))のことや、その神社で旧暦正月7~9日(今年は2月13~15日)の三日間行われる椿祭(つばきまつり)のことです。つまり神社そのものも「椿さん」だし、その神社で年に1度行われるお祭りも「椿さん」。前後の文脈によって、どちらか判断するわけですね。今回の場合は、後者の椿祭のことを指しています。椿祭が終わると、徐々にあたたかい季節に入ってくるのです。

「熱いから気ぃつけてねぇ」と、煮え立つしし鍋が出されます。

 ぎっとり、こってりの鍋を想像していたのですが、表面をたっぷりの刻みネギがおおったしし鍋は、すっきりと透明に近い汁(つゆ)。へぇー、と思いながら、さっそく小鉢に取り分けて食べてみると、これがものすごくさっぱりとした味です。たっぷりの刻みネギの他にも、ゴボウ、モヤシ、シラタキ、豆腐と、猪肉以外の具材も多くて、健康的。

「うちでは北条(ほうじょう)の奥で獲れた猪しか使わんのよ」と女将さん。

 北条というのは、松山市内東北部にある地域の名前で、まさに私の生まれ故郷。海と山とに囲まれた、自然豊かなエリアなのです。これは燗酒もおかわりですね。このお酒「雪雀」も、実は北条のお酒。生まれ故郷の酒と肴だと思うと、美味しさもまたひとしおです。

「今日はホータレの刺身はないの?」

 入口近くにいるお客さんから質問が飛びます。

「昨日はあったんじゃけど、今日は一夜干しかないのよ」

「ほぉかな。そらしょうがないねぇ。ほしたら一夜干しを炙ってや」

 ホータレというのはカタクチイワシのこと。広島では小イワシ、横須賀あたりではシコイワシと呼ばれているものと同じで、こちら松山方面では、頬が垂れるほど美味しいので、ホータレとかホウタレと呼ばれているのです。刺身で食べたり、天ぷらにして食べると美味しいのですが、一夜干しは食べたことがないなぁ。

「私もホータレの一夜干し、お願いします」

 せっかくなので便乗注文すると、

「そんなに食べれる? 残ったら包んであげるからね」

 と女将さん。そう。大きな大根と里芋をいただいた上に、釣りサバの刺身、おでんの湯葉、そして一人用鍋にたっぷりのしし鍋をいただいて、もうお腹は満腹なのです。でも、ここでホータレの一夜干しを食べておかないと、次はいつ食べられるかわからない。ちょっと無理しても頑張るぞ!

 ホータレが出されたところで、3杯目となる燗酒をもらい、ホータレを齧りながら、ちびりちびり。

 1人前のホータレ5尾を食べ終わり、お酒も飲み干してお勘定をお願いすると、

「あら。ちゃんと全部食べられたんじゃねぇ」とニコニコと笑いながら計算してくれます。

 ゆっくりと2時間弱の滞在は、これまでこの店に来たなかで最高価格となる5,550円。昨夜の「あわもり」に引き続き、まわりのお客さんたちからは「おぉーっ、よく飲み食いしたなぁ」という目で見られながら、「ごちそうさま」と店を後にします。

 たっぷりと故郷の味に包まれた一夜でした。

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湯葉 / 小鉢のしし鍋 / ホータレ一夜干し

店情報前回

《平成20(2008)年1月26日(土)の記録》

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コメント

 博多からの記事、いつもにまして楽しみに拝読しております。
赤丹!! 何年か前から縁あって松山には年に何回か行くようにしています。 浜田さんのブログを知っておととしから赤丹にも
いくようになりました。まだ冬には行ったことがなかったんですが、この記事を読んでますます行ってみたくなりました。
 今年はもう無理だけど機会を狙ってみます。出張される場所がなにげに造船関係ゆえの地名でうふふと思ってしまいます。
 わが社にも機会がありましたら是非ともおいでくださいません。熊本から長崎に渡るフェリー乗り場の近くの造船所です。

投稿: ajari | 2008.02.14 09:19

>ajariさま
コメントありがとうございます。
私も、冬場の「赤丹」は初めてで、しし鍋もはじめていただきました。
ぜひ熊本にも行ってみたいのですが、なかなか機会がありません。とても残念です。

投稿: hamada | 2008.02.17 21:50

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 呉(くれ、広島県)まで出張してきたついでに、週末の三連休を利用して、対岸の松山(まつやま、愛媛県)に帰省します。酒場詩人・吉田類(よしだ・るい)さんも、NHKの俳句王国収録のため松山にいらっしゃってるんだそうで、その収録終了後に「蔵元屋」で待ち合わせて、ちょいと一献です。  「蔵元屋」は、愛媛の地酒約140種類を、なんと1杯100円から立ち飲むことができる、愛媛の地酒のアンテナショップなのです。... [続きを読む]

受信: 2008.08.31 07:28

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