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古典酒場巡り・3軒目 … 大衆酒場「兵六(ひょうろく)」(神保町)

「兵六」


 「TOKIO古典酒場」の美人編集長と巡る、東京古典酒場ツアー。3軒目は神保町(じんぼうちょう)に移動して、1軒目の「河本」で合流した荒木又右衛門さん、呑んだフルさん、おふたりが行きつけの「兵六」です。

 「兵六」もまた、昭和23(1948)年の創業以来、今年で60年になるという老舗です。

 「兵六」の歴史については、前回の記事に書いたとおりで、現在は三代目となる柴山真人氏が店を引き継いでいます。

 そろそろラストオーダーという、午後9時半の店内は、月曜日ながらお客さんが多く、我われも、又右衛門さんと、残る3人に分かれて、丸太棒を2本渡した長椅子に腰をおろします。

 飲み物には芋焼酎(薩摩無双)のお湯割り(650円)をもらい、つまみにはオニオンスライスや、つけ揚げ、赤かぶ漬けなどをもらいます。フルさんがオニオンスライス好きなので、先ほどの「大坂屋」でもそうでしたが、オニオンスライスがある店ではほぼ必ずといっていいくらいオニオンスライスを注文するのでした。

 ここ「兵六」には、初代店主・平山一郎氏が作ったという「兵六憲法」があります。

一.居酒屋兵六に於いては店の女がお客にお酌する事を厳禁す。

 今も、酒を注いでくれるのはカウンター中央部にある店主席に座る三代目店主であるように、「兵六」では、女性客が来店することがあっても、客に応対するのは男に限られているのです。

一.葷酒山門に入るを許さずとは反対に、居酒屋兵六の山門内ではアルコール抜きの飲物は一切売るを許さず。

 これについては、平山一郎氏自らが書かれた文章(心意気)が素晴らしいので、そのまま引用させていただきます。

『お茶やお冷やと同様、御代さえ頂かなければジュースやサイダー等サービスすることは自由という訳です。商売というものは、絶対売買してはならぬものがある事を知らない商売人は、必然社会の痛烈な侮りを受ける事を覚悟せねばなりません。その店の風格を決定するものは案外無料サービスの一杯のお茶であることが多いかも知れません。』

一.宣伝広告は必要止むを得ざるもの以外厳に慎む様心掛ける事。

 自己宣伝はすべきでなく、いかに商売とはいえ過大広告はしてはダメだというもの。

一.兵六店内の大掃除は遠慮す可き事。

 これもおもしろくて、実は昭和23年創業の「兵六」は、『何とかして神田の下町の一軒の居酒屋に大正時代の雰囲気を残したい』というコンセプト(平山氏は「念願」という言葉を使っています。)で、店内では蛍光灯を使用せず、不便でも電話は置かず、また冷暖房等は一切使用禁止ということを守り続けているんだそうです。『大掃除はするな』というこの憲法は、その『大正時代の雰囲気を壊すな』という意図のようです。

 今、平成の世の中に、昭和レトロをねらった酒場が出てきているのと同じように、創業当時の「兵六」は大正レトロをねらった酒場だったんですね。しかしながら、それを60年も貫くうちに、これが「兵六」独自のスタイルとして、きっちりと定着しています。

一.清酒は地酒の二級酒に限り特級や一級酒は絶対に置かぬ事。

一.洋酒、泡盛等は御遠慮申上げる事。

一.日本の代表的な酒である蒸留酒の焼酎を皆に再評価して頂く様大いに宣伝する事。

 この3つの条項に従って、今も「兵六」では、芋・麦・米の3種類の焼酎のほか、日本酒は「美少年」の普通酒(昔の二級酒)とビール(キリンラガー大瓶)を置いているのみです。

 『清酒は地酒の二級酒に限り』というのも時代を反映していておもしろいですね。当時は一級以上は自己申告制で、認められれば等級が与えられる代わりに税金も高くなるという世の中だったので、「そんなくだらないもののために、高い酒を入れるな」ということだったんだろうと思います。今の時代なら、どういう条項にしていたでしょうか。

一.居酒屋兵六は半分は店主のものであるが半分は社会のものと心得置く事。

 この最後の条項が素晴らしいですよねぇ! 長らく海外(上海)で生活してきた平山一郎氏ならではの酒場感だろうと思います。英国のパブなどと同じように、「酒場はパブリックスペースである」という考えが根底にあっての、この条項なのではないでしょうか。

 そしてまた、これら「兵六憲法」の各条項が、今も守られ続けていることがすごいことだと思います。

 そろそろ閉店時刻(午後10時半)も近くなって、このあたりでお勘定をすると、こちら側に座った3人の分は3,250円(ひとりあたり1,080円ほど)でした。どうもごちそうさま。

 さて、せっかく編集長とご一緒させていただきましたので、「TOKIO古典酒場」の情報も少し。昨(2007)年4月に、第一弾の「TOKIO古典酒場」が登場して以来、数ヶ月ピッチで、第二弾「TOKIO古典酒場-昭和下町和み酒編」、第三弾「TOKIO古典酒場 闇市・横丁編」、第四弾「TOKIO古典酒場 沿線酒場〈京成・世田谷線〉編」と続編が出版され、通算5巻目となる次号は、今年9月に発売予定だそうです。その中で「ホッピー酒場の南限・北限を探る!」として、北限・北海道でホッピーが呑める酒場情報も募集しているそうですので、情報をお持ちの方はご協力をお願いします、とのことでした。(詳細はこちら。)

080526g 080526h 080526i 080526j
芋焼酎「無双」 / オニオンスライス / つけ揚げ / 赤かぶ漬

店情報前回

《平成20(2008)年5月26日(月)の記録》

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 横浜での仕事を終えて、都内に着いたのは午後8時前。この時刻であれば、久しぶりに「兵六」に行くことができそうです。  「兵六」は平日(月~金)の午後10時半までの営業。ラストオーダーは9時半なので、平日、横浜で勤務している私には、「河本」(午後8時までの営業)ほどではないものの、なかなかハードルが高いのです。  火曜日とは言え、祝日前の「兵六」の店内はゆるやかに満席状態。店主を囲むコの字カウンター... [続きを読む]

受信: 2009.06.14 11:31

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