« 〔この一品〕 下井草「御天」のせん菜炒め | トップページ | 〔この一品〕 阿佐ヶ谷「川名」の焼き鳥 »

〔コラム〕 日経MJ「若者はしご、町酔わす」

日経MJ「若者はしご、町酔わす」


 先週、7月7日(水)付けの日経MJ(流通新聞)に「若者はしご、町酔わす」という記事が掲載されました。

 日経MJの記者さんから、

「飲み歩きが東京をはじめ全国的に広がっているといった記事をまとめたいので、コメントをいただけないでしょうか」

 というご依頼があったのが1ヶ月ほど前のこと。ちょうどその週末に帰京する予定があったので、日曜日に近くの喫茶店でお会いすることになりました。

- 「東京飲み歩き手帳」(2010年3月23日、ぴあ、1,000円+税)出版の経緯を教えてください。

 これまでの4冊(酒場百選、東京居酒屋名店三昧、ひとり呑み、もつマニア)は、それぞれ出版社から企画をもらって書かせていただいたものですが、今回の「東京飲み歩き手帳」は、はじめて自分で企画を出して出版していただいた本です。自分自身が一番欲しい(金を出してでも買いたい)と思う本を提案しました。

 わざわざ出かけて行っても飲みたいのが、その地域に昔から根付いている大衆酒場ですが、名店と呼ばれる大衆酒場のほとんどは予約ができなくて、行ってみると満席で入れないなんてことも多いのです。そんな時に、その近くにある他の名店が、サッと簡単に調べられるポケットに入るサイズの本があると、とてもありがたい。

 目指す酒場に入れた場合でも、2軒目、3軒目のハシゴ酒コースを検討するのにも役に立ちます。

 特定の店をピンポイントで探すにはネットが便利ですが、その地域全体をざっくりと把握するには印刷された媒体が向いています。なので各店の記述は営業時間や定休日など、必要な最小限度にとどめ、掲載軒数を多くして、その地域の名店はできるだけ網羅することを重視しました。

- 大衆酒場などの飲み歩き(はしご酒)が人気を集めるようになったのはなぜだと思いますか?

 長引く不況で接待や社内宴会などの場が減ってきて、自分の小遣いで、自分の楽しみのために飲むことが増えてきてるのではないでしょうか。不況になると立ち飲みが流行ったり、大衆酒場が流行ったりするようです。

 これまでは、その地域に住んでいる人しか知らないような存在だった大衆酒場が、インターネットという『大きな口コミ媒体』を通して、広く知られるようになったのも大きいのではないかと思います。店の存在だけではなく、その店でオススメの料理や値段、その店での過ごし方なども含めて紹介されることによって、大衆酒場の敷居の高さが下がってきたんではないでしょうか。

 実際に大衆酒場に行ってみると、店の人や周りのお客との適度な距離感がとても心地いいんです。放課後の部室のような、フッと気が抜ける空間。利害関係のない人たちの中で、黙っていてもいいし、話してもいいし。その気楽さがいいんです。

 最近は世の中の移り変わりも激しく、仕事でも常に変化、革新を求められます。そんな中にあって、変わらないのが酒場の魅力。何ヶ月ぶりにいっても、何年ぶりに行っても、いつもと同じ人がいて、いつもと同じ料理があって、いつもと同じ酒がある。ものすごく安心できる空間なのではないでしょうか。

- 大衆酒場の魅力はなんでしょう?

 「東京飲み歩き手帳」の中では、大衆酒場の魅力として次の4点を取り上げました。

(1)値段が安い … 2品と2杯で、客単価1,500円未満。毎日のように出かけることができる。

(2)料理がおいしい … 人気の大衆酒場では安い素材に、手間ひまをかけることによって、呑兵衛好みの安くてうまい料理を出してくれる。

(3)ひとりで行ける … 大衆酒場は基本的にひとり客を対象として作られている。店内もカウンター席主体だし、料理もひとりで食べるのにちょうどいい分量である。

(4)気楽に行ける … 仕事が終わった後、予約も必要なく、普段着のままでもふらりと立ち寄れるのが大衆酒場のいいところ。何十年も続く老舗酒場であっても、普通にふらりと入ることができる。

- 最近ホットなエリアや個店の情報を教えてください。

 このところのホルモンブームもあって、老舗のもつ焼き店で修業した人が独立して、新しいもつ焼き店を開く例が多くなっています。これらの店では、修業先の老舗と同じクオリティの料理が、比較的安く味わえたりするのもうれしいところ。

 北千住「ささや」(平成19年創業)は銀座の老舗「ささもと」で、野方の「すっぴん酒場」(平成18年創業)は神田の老舗「三政(さんまさ)」で、同じく野方の「秋元屋」(平成16年創業)は埼玉・蕨(わらび)のみそ焼きで有名な「喜よし」(←こちらも大衆向けのお店です。)で修業をして、それぞれの老舗の流れをくんで開店したもつ焼き店です。

 去年から今年にかけては、その「秋元屋」で修業した若手の店も続々とオープンしていて、それぞれ店も新しくて、女性でも入りやすい造りになっています。中板橋の「万備(ばんび)」(平成20年4月開店)、富士見台の「くろちゃん」(平成21年6月開店)、上板橋の「ひなた」(平成22年1月開店)、沼袋の「たつや」(平成22年3月開店)などが、「秋元屋」出身者の店です。

 立ち飲みで、和の料理が安く楽しめる酒場も人があふれています。東の「徳多和良」(北千住)、西の「おかやん」(中野)などがその代表格。八戸直送のイカ料理の数々が1品170円で並ぶ荻窪の「やき屋」も相変わらず人気店です。

 もともと人気があった老舗酒場は、どこもますます人気が出てきているらしく、店の前に行列があることもしばしばです。立石の「宇ち多゛」「江戸っ子」「ミツワ」、四ツ木の「ゑびす」、八広の「丸好酒場」、北千住の「大はし」「酒屋の酒場」、町屋の「ときわ食堂」、日暮里の「いづみや」、南千住の「大坪屋」「丸千葉」、浅草橋の「西口やきとん」「やまと」、木場の「河本」、門前仲町の「魚三酒場」「大坂屋」、豊洲の「山本」、月島の「岸田屋」、新橋の「大露路」、浜松町の「秋田屋」、三田の「たけちゃん」、恵比寿の「たつや」、渋谷の「富士屋本店」「細雪」、祐天寺「ばん」、世田谷「酒の高橋」、水道橋「うけもち」、四ツ谷「鈴傳」、新宿の「つるかめ食堂」、阿佐ヶ谷「川名」、練馬「金ちゃん」、池袋「ふくろ」、東十条「斎藤酒場」、赤羽の「まるます家」「いこい」、王子の「山田屋」「平澤かまぼこ」、武蔵小山「牛太郎」、蒲田「鳥万本店」、雑色の「三平」などがその好例です。

- 飲み歩きの流行に伴い生じている課題と初心者へのアドバイスをいただけますか。

 大衆酒場の作法について、「東京飲み歩き手帳」の中では以下の4点を挙げました。

(1)おじゃましますの気持ちで臨むこと … どの大衆酒場も、その地域の常連さんにとっては毎日の日常の場。予約を取って行くような、ハレの空間としてのレストランとは違って、まったくのケの空間であることを認識して、その空気(雰囲気)を壊さないように、「ちょっとだけお邪魔します」という気持ちで臨むことが大事です。「うまいうまい」と大騒ぎをしたり、あちこちにカメラを向けたりすることはご法度です。

(2)一人か二人で行くこと … 3人以上で出かけると、その酒場ならではの雰囲気がわかりにくいばかりか、他のお客さんにもご迷惑をかけてしまいます。一人か二人でその酒場そのものを楽しむのがいいのではないでしょうか。

(3)たのみ過ぎず、たのまな過ぎずを心がけること … 大衆酒場は薄利多売をむねとしているところが多いのです。喫茶店とは違うので、飲み物を目の前に置いたまま話し続けるのはNG。店に居るならしっかり飲み食いするし、飲み食いしないならサッと席を立って、待っている人たちに場所を譲りましょう。たのみ過ぎるのもまた迷惑。目の前に常に1~2品の料理とお酒があるのがちょうどいい状態だと思います。

(4)まわりの空気にゆっくりと浸ること … 温泉に浸かって身体の疲れを取るのと同じように、心地よい酔いに身をまかせながら、その酒場の空気にどっぷりと浸かって、「酒場浴」を楽しむのがいいですね。

            ◇   ◇   ◇

 思いつくままにそんな話をさせていただいたものを、記事の一部分として載せていただいたのでした。10日ほど前の新聞なので、入手するのが難しいかもしれませんが、裏1面の大きな記事なので、ぜひご笑覧いただけるとありがたいです。

|

« 〔この一品〕 下井草「御天」のせん菜炒め | トップページ | 〔この一品〕 阿佐ヶ谷「川名」の焼き鳥 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11427/48892674

この記事へのトラックバック一覧です: 〔コラム〕 日経MJ「若者はしご、町酔わす」:

« 〔この一品〕 下井草「御天」のせん菜炒め | トップページ | 〔この一品〕 阿佐ヶ谷「川名」の焼き鳥 »