« 〔コラム〕 四国にわたって、うどん三昧 | トップページ | 蒸して焼くのが骨付焼 … 活魚・やき鳥「本家鳥好(ほんけとりよし)」(呉) »

釣りメバルを活造りで … 活魚・やき鳥「本家鳥好(ほんけとりよし)」(呉)

活メバルの造り


 「本家鳥好」の二大看板メニューは活魚と焼き鳥。今日はその活魚をいただきます。

 店内の生け簀(いけす)で泳いでいる魚は、すべて店主・上瀬弘和(かみせ・ひろかず)さん(74才)がご自身で船を出して釣ってきたもの。今日の生け簀はメバルとアジが多いのかな。私はメバルを造ってもらうことにします。

 店内のメニューでは、焼き鳥類はすべて値段明記なのですが、活魚はそうはいきません。アジ(春~夏~秋)は1匹1,500円からで造り、たたき、塩焼き、天ぷら、フライなどで。メバル(秋~冬~春)は1匹800円からで造り、煮物、唐揚げなどで、という表記。すべて倉橋・鹿島沖で獲れた天然ものなので、大きさもまちまちなのです。

 メバルは注文を受けてから生け簀からすくいとり、その場でお造り(刺身)にしてくれます。

 魚の刺身については「とれたその場で活け締め(いけじめ)して、しばらく寝かして旨味を出してから食べたほうがうまい」というようなことがよく言われますが、エサが違うのか、瀬戸内海の地魚は味が濃厚。寝かさなくても大丈夫というか、寝かさないほうが美味しいかもしれません。

「とれてすぐよりも、生け簀で2~3日泳がして、余分な脂が抜けたくらいのときが一番うまいんじゃ」と店主。

 ここの店主は、とにかくアイデアマンで工夫(くふう)好き。前回も書いたとおり、上下から一気に焼き上げる独自の焼き台も、今から50年ほど前に「なんとか早く、確実に焼ける方法はないか」と工夫して作り上げたものなのです。

 この工夫好きは釣りの面でも十分に発揮されていて、自分の船で沿岸のあちこちを移動しながら、島の周りがどういう潮の流れになっているのか。どういう潮の状態のときに、どこに、どんな魚が集まるのか、といったようなことをご自身で一所懸命調べて、やっと今のようなメバルやアジが釣れるようになったんだそうです。

 野菜についても同様で、畑の状態から始まって、種のまき方、育て方、収穫の時期などを、いろいろと試行錯誤で工夫して、自分でもおいしいと思えるような野菜が収穫できるようになり、今では近隣の農家の人から逆に相談されるほど。

 メバルの刺身の下に敷かれている大根のツマも、ご自身が育てた大根とのこと。刺身もツマもおいしくて、すっかりすべてを完食です。

 さて、今でこそ活魚と焼き鳥が二大看板の呉の“とり屋”ですが、元はと言えば普通の焼き鳥屋。最初から活魚があったわけではありません。

 もともと呉では、魚は自宅でさばいて食べるもの。高級な料亭などはいざ知らず、大衆的な飲食店で調理して出してもらうようなものではありませんでした。

 うちの田舎(松山市の端っこのほう)もそんな感じだったので、呉に限らず、瀬戸内海沿岸の町では、魚は自宅で食べるもの、というのは当たり前だったのかもしれませんね。

 その概念をコロッと覆(くつがえ)したのが、昭和50年代に呉にも進出してきた「養老乃瀧(ようろうのたき)」をはじめとする大衆居酒屋チェーンでした。そこが地魚がたくさん獲れる呉であることなんかおかまいなしに、東京や大阪などと同じような魚のメニューを展開します。

 これに喜んだのが呉の呑兵衛たち。もともと魚は好きなので、居酒屋チェーンの魚メニューも大人気になりました。

「えぇ~~っ? 外食(料理屋)でも、魚料理は売れるんだ!」

 目からウロコが落ちるとはまさにこのこと。それに気がついた呉の焼き鳥屋のほとんどの店主は、瀬戸内海の地魚の宝庫・鹿島の出身。島に戻れば魚なんて、文字どおり売るほどあります。

 そこで鹿島出身の店主のひとりが、生け簀のついたトラックで、鹿島から生きたままの魚を運び、店内の生け簀で活魚としてお客に出し始めました。そのやり方が大ヒットし、他の焼き鳥屋にも次々に伝搬。最終的に今の“とり屋”のように「呉の焼き鳥屋には生け簀があって活魚も食べられる」という状態になったんだそうです。

「生け簀を入れたんは、うちが最後じゃなかったかのぉ。その代わり、全部、自分で釣ってきた魚を入れるようにしたんじゃ。魚みたいに生で出すもんは、なるべく人手を介さんほうがええけえのぉ。」

 焼き鳥や、味噌炊き、スープ豆腐など、呉の“とり屋”のほとんどの品は、ここ「鳥好本店」が元祖ですが、生け簀についてはそうではなかったんですね。

後編に続く)

120126a 120126b 120126c
「本家鳥好」 / 店内の生け簀 / 水龍の燗酒

店情報前回

《平成24(2012)年1月26日(木)の記録》

|

« 〔コラム〕 四国にわたって、うどん三昧 | トップページ | 蒸して焼くのが骨付焼 … 活魚・やき鳥「本家鳥好(ほんけとりよし)」(呉) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11427/54069559

この記事へのトラックバック一覧です: 釣りメバルを活造りで … 活魚・やき鳥「本家鳥好(ほんけとりよし)」(呉):

» 蒸して焼くのが骨付焼 … 活魚・やき鳥「本家鳥好(ほんけとりよし)」(呉) [居酒屋礼賛]
(前編からの続き)  骨付焼(ほねつきやき)も、呉の“とり屋”の名物料理のひとつ。親鶏(おやどり)のもも肉を、骨付きのまま焼いたもので、たれ焼きと塩焼きが選べて、それぞれ1本600円。メニューには「たれ焼は柔らかく、旨みをぎゅっとひきだし、塩焼は親鶏ならではの味わいと歯ごたえを楽しめます」と書かれています。  「たれ焼きと塩焼きは、違うものなんですか?」と確認してみると、たれ焼きが蒸して柔らかくし... [続きを読む]

受信: 2012.02.26 06:55

« 〔コラム〕 四国にわたって、うどん三昧 | トップページ | 蒸して焼くのが骨付焼 … 活魚・やき鳥「本家鳥好(ほんけとりよし)」(呉) »