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ドンカクは元祖酎ハイ … 居酒屋「どん底(どんぞこ)」(新宿三丁目)

ドンカクとお通し


 この店もまた、『店の存在はずっと前から知ってたんだけど、なぜか今まで行ったことがない』店の1軒。

 昭和26年の創業。三島由紀夫や黒澤明など、数多くの文化人が通った酒場としても有名です。

 実はつい最近、新宿の「池林房」などの居酒屋を経営している太田篤哉とくやさんの書かれた、「新宿池林房物語」を読んだのです。

 東京オリンピックの年、昭和39年に、北海道から予備校に通うために上京してきた太田さんは、アルバイトで新宿のキャバレーで働き始め、その後「どん底」に出会う。その「どん底」でしばらく働いて、昭和53年、太田さん33歳の時に、自身の店「池林房」を開店したのでした。

『「どん底」はそれまで見たことのないような飲み屋だったんだよ、新宿の文化を一身に背負って立ってるようないろんな人が来てたし。あそこで俺の人生変わったよね。こんな店をやりたいって思った。』

『それまで俺が知っていた飲み屋って(中略)キャバレーとバーでしょ。どっちも女の人が働いている店だよね。「どん底」はさ、働いている人に女性はいなくて、飲みに来ている客層も、男と女のグループとかさ、何かこうフリーな雰囲気が溢れていたわけさ。』

『飲み屋っていうと、その当時は他には焼き鳥屋と一杯飲み屋みたいなとこだったからさ、とにかく「どん底」に行ってみて、びっくりしたんだよね。』

 「新宿池林房物語」の中で、太田さんはそう書かれています。

 今では、男と女のグループで飲みに来るなんて、いたって普通のことなんだけれど、当時は珍しかったんでしょうねえ。

 三島由紀夫氏は、この状況を次のように書かれてます。

『ある歌を一人が歌い出すと、期せずして若人の大合唱となる。喚声と音楽が一しょになって、なまなましいエネルギーが、一種のハーモニィを作り上げる。何んとも言えぬハリ切った健康な享楽場である。』

『ワビだのサビだのといっていた日本人が、集団的な享楽の仕方を学び、とにもかくにも一夕の歓楽の渦巻を作りうるようになったのは、戦後の現象で銀座の恒久バアーでコソコソ個人的享楽にふけっている連中にくらべると、焼鳥キャバレーやどん底酒場のほうが、よほで世界的水準に近づいているように、私には思われるのであった。』

 老若男女がひっくるめて、みんなで一緒に盛り上がるなんてことは、それまでにはあまりなかったのかもしれませんね。

 創業60年を超える老舗なのに、店内の雰囲気は今もなお現代的で若々しい。建物と、カウンターなどの調度品が歴史を感じさせるくらいです。

 私は2階に通されたのですが、ここは天井が低くて、まっすぐに立っては歩けません。ちょっと背をかがめて、カウンター席の一角に腰を下ろし、カウンターの中の若いおにいさんに、名物のドンカク(650円)を注文します。

 ドンカクは、「どん底カクテル」の略称で、元祖酎ハイといわれているんだそうです。

 すぐに出されたお通し(チャージとして300円)は生ハムのカナッペ。それを出してくれたおにいさんが、食べ物メニューを渡してくれながら、「ピザが名物なんです」と教えてくれます。

 なるほど、ミックスピザ(1,200円)は2~3人前と書かれています。ひとりじゃちょっと厳しいなあ。おっ。ドライフルーツ(650円)発見、これにしましょう。

 ドンカクは意外に甘くて、これまた甘いドライフルーツとは残念ながら相性がよくない。

「シーバスリーガルをシングル(750円)で、水割りでお願いします」

 やっぱりドライフルーツにはウイスキーが合うなあ。

 午後6時が近くなって、お客が増えてきました。そのほとんどが若いカップル。カウンターの前の椅子(空席)も、2個ずつを1ペアにして、寄せ合って並べているところを見ると、この店はいつもカップルが多いんでしょうね。

 さすがに今は「歌声喫茶」のように全員で歌ったりすることはないんだろうなあ。

 外装・内装は老舗なんだけど、店の雰囲気は現代風の、なんだか今までに経験したことがない感じの酒場です。

 1時間半ほどの滞在。お勘定は2,350円でした。

「どうもごちそうさま」と席を立つと、頭が天井のはりにガツン! そうだ天井が低いんだった。背の高い人は気を付けてくださいね。

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「どん底」 / ビル全体をツタが覆う / 店頭の案内看板

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ドライフルーツ / シーバスリーガル水割り / 歴史を感じるカウンター

店情報

《平成25(2013)年6月29日(土)の記録》

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