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白子と白魚 … 居酒屋「丸福(まるふく)」(恵比寿)

午後からの恵比寿での仕事が、午後6時ごろに終了しました。恵比寿といえば、塩コショウ味のもつ焼きで有名な立ち飲みの「縄のれん」、文人が集っていたという古い居酒屋「さいき」。太田和彦氏説くところである『深化した居酒屋』のひとつ「和(なごみ)」。さらには信州料理で酒がのめる「なゝ樹(ななき)」、徳之島料理の「大吉」もいいですねぇ。おっと忘れてならないのはもつ焼きの「たつや」とホルモンの「徳ちゃん」です。

そんな名店がひしめく中、今日向かったのはJR恵比寿駅東口の向かい側の大黒ビルの1階にある居酒屋「丸福」です。

恵比寿駅前のいかにも大衆酒場風の店構えが、前々からなんとなく気になっていたことに加えて、最近「居酒屋紀行掲示板」に、居酒屋のオヤジさんの「丸福」での『白子体験記』(1/9付け、第1153番発言)が載ったこともあって、グゥ~ンと惹かれていたところだったのです。

その駅前ビルの、魚屋さんのとなりにある入り口をガラリと開けて店内へ。うわぁ。けっこう人が入ってますねぇ。「おひとりさん? こちらへどうぞ」という、店のおばちゃんの声にしたがって、店の奥へと向かいます。

「丸福」の造りおもしろいことにこの店は、その形自体がL字型をしているのです。Lの右側がJR恵比寿駅。L字型に欠けている右上の部分が魚屋さんです。四角形の右上の部分四角形のところだけが魚屋さんになっているような造りと言えばわかりやすいでしょうか。

そのL字型の店内の壁に向かって、L字型になるようにカウンターが配置されています。店のおばちゃんに案内されるまま、奥のカウンターの左のほうに腰をおろします。

目の前のカウンターの中にいる男性が、ここの店主でしょうか。店は、この男性と、この男性の奥さんといった感じの女性、さらに、先ほどこちらの席を指し示してくれた年配の女性の3人で切り盛りしているようです。もしかすると、この年配の女性がここの大女将(おおおかみ)、つまりは店主のおかあさんなのかもしれませんね。もっとも、そんな風に見えるものの、実はまったく赤の他人同士がやっている店なんてのもありますから、断定はできませんが…。

その大女将らしき女性は、向こう側のカウンターを担当していて、もうひとりの女性が、ちょうどL字のカウンターの角のところにいて、全体に目を行き届かせているようです。

さてと。まずはビールをもらいましょうか。目の前にいる店主から、お通しのチリメンジャコの皿が手渡されます。追いかけるようにして出てきたビールはサッポロ黒ラベルの大瓶です。ビールは小瓶も選べます。

つまみ類は、壁にずらりと貼られた短冊(たんざく)の他、L字カウンターの角のところにある黒板にも書き出されています。金額は書いてあったり、なかったり。

なにはともあれ、「マダラの白子ポン酢」(600円)をもらわなきゃね。

私とほぼ同時に店に入ってきた右どなりの男性は、ビールの小瓶(こちらもサッポロ黒ラベル)を飲みながら、ヤリイカの刺身を注文しています。刺身は、値段が書かれているものだけで類推すると800~1,000円ぐらいのようです。湯豆腐やおしんこ、にこごりなんかが500円ぐらい。

来ましたよぉ。白子ポン酢です。丼タイプの器に、だし汁が張られ、白子のかたまりが4~5切れ泳いでいます。ズズッとまずはそのだし汁をすすってみると、柑橘(かんきつ)系のお酢の味が広がります。これに醤油をちょいとおとして、白子をパクリ。ん~。とろけますなぁ。ちょっと温めた白子は、トロントロンにやわらかくなるんですよねぇ。

となりの男性からも「オレも白子もらおうか」の声が飛びます。たしかに、見るからにうまそうですよねぇ、これは。

客層としては、界隈のサラリーマンといった風情の人たちが多いようですね。ほとんどの人が、仕事を終えて、帰宅前の一杯といった感じです。こちら側(店の奥側)のカウンターの背後には、テーブル席も3卓ほどあるのですが、そこにもサラリーマンのグループ客が座って盛り上がっています。

空いていた私の左側にも、若いカップルが入ってきました。へぇ。こんな若い人たちも気軽に入って楽しめるお店なんですね。そのカップルの男性は、いかにも慣れた感じで「小瓶のビールと、お酒を1本。あと、アン肝をください」なんて注文をしている。女性が小瓶のビール。男性がお酒を飲むようですね。アン肝(800円)は、平皿にスライスされた大ぶりの肝が何切れか並んでいて、これもおいしそうです。

私も、お酒を1本と、つまみには「初物」と書かれている「白魚(しらうお)」をもらうことにしました。白魚には値段が書かれてないんですが、ま、これだけ界隈のサラリーマンや若いカップルなどが気軽に入れるお店であれば、ビックリするようなこともないでしょう。800~1,000円ぐらいじゃないかな。

お酒は、徳利型のガラス瓶(1合)に入ったもので、瓶ごと燗付けされていて、注文すると、燗付け器の中から取り出して、栓を抜いて渡してくれるのです。銘柄は、京都・伏見の「富翁(とみおう)」です。

ひやぁ、この白魚もきれいですねぇ。透き通った白魚を2~3尾箸にとって、ポン酢醤油でツルンといただきます。

「後ろの魚屋さんとは関係があるんですか」と店主に聞いてみたところ、まったく別の店であるということでした。ここ「丸福」は「丸福」で、独自に築地で魚を仕入れてきてるんですって。

右どなりのおじさんが、「ごちそうさん」と席を立ちます。ビール(小瓶)に酒1本。ヤリイカ刺身と白子ポン酢で2,400円。続いて、左のカップルもお帰りです。こちらはビール(小瓶)に酒2本、それにアン肝で2,300円です。みなさん、なかなか粋(いき)な飲み方をしますねぇ。まさに、サッと飲んで、スッと帰るといった飲み方です。

そして、入れかわるように新しいお客さんが入ってきます。ほぼ満席の状態がずぅ~っと続いてるって感じです。それでいて、入れない人がいたり、待ってる人がいたりということはないようです。ちょうどいいバランスで人が入ってるんですね。

さて、白魚も食べ終わり、お酒もちょうどなくなったので、私も席を立ちますか。ごちそうさん。約1時間の滞在で、お勘定は2,600円でした。

まさに、古い時代の大衆酒場そのものといった感じのお店でした。魚もおいしいですよ。

店情報

《平成16(2004)年1月23日(金)の記録》

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受信: 2005.12.11 14:34

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