ホタテの肝はプリンプリン … 居酒屋「川名(かわな)」(阿佐ヶ谷)
昨日(土曜日)、図書館帰りにいっぱいだった「川名」に再挑戦です。しかし、今日も思い立つのが少し遅れてしまい、店についたのは4時半。ど~れ。
わ。今日も、もう満席じゃないですか。カウンターの7席はおろか、テーブルB卓、C卓も2人ずつ。A卓も「予約」という札が立っている状態。店主が、「う~ん。予約の××さんには、座敷に入ってもらうか。じゃ、そこにどうぞ」と、かろうじてA卓に入れたのでした。
この時間、やはりまだ今日のおすすめメニューのボードは出てないですねぇ。タネケースを見てみると、赤々とおいしそうなマグロが目に飛び込んできます。ちょうどそこへ、「いらっしゃいませ」とおねえさん。「ホッピー(336円)とマグロ(294円)ください」「は~い」。今日もお通しは2切れのオレンジです。
ホッピーを2口、3口飲んだところで、マグロブツが出てきました。おぉ。今日はまた一段と大盛りですねぇ。あとで、メニューボードが出てからわかったことなのですが、今日はマグロの山かけもあって、こちらもマグロブツと同じく294円。この両者の差をはっきりさせるためにマグロブツのほうは、特に大盛りにしたのかなぁ。
その量の多さといったら、ホッピー1杯飲み干す間に、まだ3分の2ぐらいしか食べられないぐらい。「ナカ(336円)くださぁい」。ちょうどカウンター1番さんの注文を取りにきたおねえさんに、焼酎のおかわりをお願いします。
そこへ、年配のひとり客がやってきて、「はい、ごめんよ」と私の向かい側に相席です。これで、カウンターのあるこちら側の部屋は満席。あとは奥の小上がり部屋だけです。そのおじさんは、燗酒の大徳利(504円)と竹の子を注文しますが、「今日は竹の子ないんです」という返事に、冷奴(294円)に切り替えます。
このおじさんも、ここの常連さんのようで、カウンターに座っている他の常連さんたちと、「昨日のアジは、アブラがのっててうまかったねぇ。今日はないの」なんて会話を交わしています。ちなみに、この時点(4時45分ぐらい)でも、まだメニューボードは出ていない状態です。これだけ満席になると、5時過ぎぐらいでしょうか。ボードがでるのは。
「はい。ホッケ焼きお待たせぇ」とカウンターのお客さんにホッケ焼きをのせた大きな丸皿が出されます。「おぉ。ホッケは生かぁ!」とまわりのお客さんたちから声があがり、「じゃ、オレもホッケもらおう」「オレも」「コッチも」と、一気に3~4尾分のホッケの注文が入ります。いや、生といってもね。焼いていないんじゃなくて、「干物ではなくて、生のホッケを焼いた」っていう意味ですよ。念のため。
「生のホッケは、今日獲れたヤツが、今日しか食べられないんだよね。明日になるともうダメになる」と事情通らしきカウンターのお客さん。へぇ、そんなもんなんだ。
おかみさんからは、「焼き台に2つずつしか乗らないから、順番に焼きますからねぇ」と、注文したみなさんに声がかかります。
私も思わず心をひかれた一品だったのですが、1尾のあまりの大きさに、このあとの家族との楽しい夕食(笑)のことも考えて断念したのでした。
しかし、ちょうどここでメニューボードが出され、もう一度びっくり! なんとこの大きな生ホッケ。189円なのです! 生というだけでも貴重品らしいのに、こんな値段で出すとは! やるなぁ、「川名」。
さあて。私のほうも、次をたのみますか。今度は焼き物にするかな。このシーズン、貝類が出ていて、以前も食べたサザエつぼ焼き(189円)のほか、今日はホタテ貝焼き(294円)もあります。ちょうど、おねえさんが近くの注文を取りにきたので、ホタテをお願いしました。
しばらくして、カウンターの中から店主の「ホタテは刺し? 焼き?」という声が聞こえてきます。「刺しです!」 きっぱりとおねえさん。そうかぁ。ちょうど同じときに、カウンターからはイサキ刺し(294円)の、そして私の前に座っているおじさんからはイワシ刺し(294円)の注文が連続して入ったために、「ホタテ」としか言わなかった私の注文も、「刺し」としてとらえられちゃったんですね。しかし、結果としてはこの「刺しです!」というおねえさんの判断(?)がよかったのです。
出てきたホタテは、長方形の刺身皿の上に、大きな貝柱は8つぐらいの縦切りに、ヒモは分けてかたわらに、そしてなんと肝(きも)はさっとゆでて、3つぐらいに切り分けられて添えられているのです。とても294円とは思えない! しかも、これでホタテは終了(売り切れ)となったのでした。
絶品は、なにしろこの肝! まだ熱々の湯気が立っている状態で、見た目も、箸先から伝わってくる感触もプリンプリン。オレンジ色も鮮やかです。口に含むと、表面のプッツンと破ける弾力に続いて、トロォ~リと肝の甘さが口の中いっぱいに広がります!
「すみません。お酒。小さいほう(273円)でいいですよ」。あまりのホタテのおいしさに、思わず燗酒を注文。まだホッピーも少し残っているのですが、これはやっぱり日本酒でしょう!
縦に切った貝柱もいい弾力です。以前、「ためしてガッテン」(NHK)で、「漁師直伝! ホタテの極意」という放送があり、「ホタテの貝柱の筋肉繊維は縦に走っているため、その繊維にそって縦に切ったほうが弾力が出る」ということが紹介されていたのですが、まさにそのとおりですね。これはうまい!
私の前に座っているおじさんも、すでに大徳利(504円)が3本目。強いですねぇ。つまみも、冷奴からイワシの刺身に移っています。酒場での相席の常で、なんとなく、どちらからともなく話しはじめます。
このおじさんも常連さんで、普段はカウンター4番の席に座ることが多いらしいのですが、「土日はダメだねぇ。普段の席順(!?)じゃなくなっちゃうよ。(すぐ横の、カウンター2番のお客さんを背後から指差しながら)このイトウさんだって、普段は7番だからねぇ。役者(6番)や棟梁(5番)は、だいたいいつもと同じかな」なんて教えてくれます。
みなさん、席順が決まってしまうほど毎日毎日いらしてるんですねぇ! それはそれですごいことです。「店主が一所懸命だからね。だから通ってんだよ」とおじさん。たしかに。ここの店主は、仕事も一所懸命だし、値段を下げようという努力も一所懸命ですからねぇ。この値段だから、毎日通っても大丈夫ってなところもありますよね。
この点が、年に数回行くかどうかという料理屋と、できれば毎日でも行きたい居酒屋との大きな違いだろうと思います。毎日でも行けるぐらいの値段の中で、おいしさと量のバランスを上手にとっていくことができているというのも、いい居酒屋の条件のひとつだと思います。「毎日行ける値段なんだけど、料理は少なくてまずい」なんてところは、あまり人気店にはなりませんもんね。
このおじさんは、現在67歳で、去年の11月に胃がんの手術をしたそうなんですが、実にお元気。とてもおいしそうに酒肴を楽しんでいます。こういう飲みっぷりの方と同席すると、こちらも気持ちよく飲むことができますね。
おっと。楽しんでいるうちに、もう6時です。今日は1時間半も長居してしまいました。どうもごちそうさま。お勘定は1,533円。「それじゃ、お先に失礼します」とおじさんにも声をかけて、店を後にしたのでした。おいしかったなぁ、ホタテ。
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