その場で串刺し!! … もつ焼き「春(はる)」(中野)
横浜での仕事を終えて、JR湘南新宿ラインで東京へ。中野駅に着いたのは午後7時過ぎです。明日からはゴールデンウイークの7連休。気分も軽やかに、この界隈で飲んで帰りますか。さぁて。どこにするかなぁ。
まずは南口側に出て、丸井裏手にある酒場が連なる横丁へ。「北国」の前まで来ると、中からはザワザワと居酒屋らしい喧騒が響いてきます。入口のすりガラス越しにもわかるほどの満席状態。こりゃ入れそうにないですねぇ。
北口側にまわって、「第二力酒蔵」を皮切りに、各酒場の様子をながめつつ「中野ふれあいロード」を北していきます。こうやって、酒場街をフラフラと歩くのも好きなのです。
もうそろそろ早稲田通りに抜けるかというあたり。ちょうど左手には西友があるところの右手の路地にあるのが、もつ焼きの「春」。メッセージボード(掲示板)に、「秋元屋」店主のばけつさんから「今まで行った中ではナンバーワンか、少なくともベスト3には入ります」という書き込みがあり、気になっていたお店です。
あれ!? 看板に灯がついてる。掲示板には「開店は8時か9時」と書かれていたので、この時間(午後7時半)にはまだ開いてないだろうと思っていたのに…。よ~し。決定。「春」に入ってみましょう。
「こんばんはぁ」。店内は直線カウンターのみで、全体で7~8人も入ればいっぱいという広さしかありません。そのカウンターの手前に男女2人連れ。一番奥には男性1人客が座っており、私はその間にある2席の空席のうち、奥のお客さんに近い側の席に陣取ります。
カウンターの中には、おにいさん風の男性と、年配の男性。パッと見て、この年配の男性が店主かと思ったのですが、最初の飲みもの、黒ホッピー(380円)を注文してみて、実は逆でおにいさん風の男性のほうが店主。年配の男性が手伝っていることがわかったのでした。
お通しとして出てきたのは、なんと豚耳の小皿です。さっと茹でた豚耳を、千切りにスライスし、酢味噌をちょいとつけていただく一品。中のナンコツのコリコリ感と、その外側を取り巻くゼラチン質のプリプリ感がいっぺんに味わえるのです。こりゃうまいなぁ。
今は、先客たちの注文をさばくので店主が忙しそうなので、しばらくはこの豚耳でチビチビとやっておきますか。
カウンターの中の壁の上部に、ずらりとメニュー短冊が並んでいます。焼き物は1本が100円、120円、150円、180円といった段階的な価格設定になっていますが、レバー、カシラ、シロなどの、いわゆるもつ焼き類はほとんどが100円です。豚もつのみならず、鶏肉や鶏もつもあるようです。
焼き物のほかには、ガツ刺(380円)、豚足(280円)、豚耳(280円)などのメニューも並んでいます。新鮮そのもののレバ刺もおすすめらしいのですが、これは月・水・金しかないメニューなのだそうです。あれっ? 今日は水曜日なのに、レバ刺がメニューになかったような?? 見落としたかなぁ…。
なぜ月・水・金かというと、ばけつさんの情報によれば、月・水・金と店主自身が品川の食肉市場(屠殺場)に行っていて、レバ刺はその日にしめたものしか出さないからなのだとか。店が開くのが遅いのも、食肉市場から帰ってきてから開けるからなのだそうです。
やっと店主の手も空いてきたようで「なににしましょう」と聞かれます。「1本ずつで、レバーと、コブクロと…」とたのみ始めたところ、「あ。今日はコブクロの仕入れがないんですよ」と店主。「ほんじゃ、オッパイと砂肝(すなぎも)。それと、ナンコツもお願いします」と、レバーと合わせて4本を一気に注文します。この4本はすべて1本100円です。
なんと、この店では、注文を受けてから、冷蔵庫の内臓肉をかたまりのままで取り出してきて、それから1本分を切り分けて、下ごしらえし、串に刺していくのです。食肉市場から帰ってきてからでは、下ごしらえをする時間がないということもあるのでしょうが、なにしろこの新鮮さにかなうものはない。
魚の刺身にしても、刺身に引いてからおいておく(いわゆるスーパーの刺身パック状態)よりも、注文を受けてからサクから刺身を引いたほうが刺身の表面がつややかですからねぇ。内臓肉だって同じことが言えるのではないかと思います。
その場でカットして、その場で串に刺していくにもかかわらず、できあがった串は重心がちゃんとしていて、焼き台の上にのせてもクルクル回らず、安定しているのです。さすがですなぁ。
「レバーはタレですか、塩ですか」と店主。「塩でお願いします」。
まずはレバーと、しばらくして砂肝が出てきました。う~む。うわさどおりの美味しさですねぇ。
オッパイは、串焼きではなくて、網焼きしたものが皿に盛られて出てきます。なるほど。個人的には「ホルモン」のオッパイが好きなのですが、ここのオッパイも、それと匹敵するか、それ以上のものだと思います。オッパイは脂肪分がおおいためか、ちょっと鮮度が落ちるとすぐに臭みが出てくるのです。「ホルモン」のもの同様、ここのオッパイも、まったく臭みがなく、オッパイの食感と、脂の甘みが十分に堪能できます。
そしてナンコツ。骨の硬い部分は切り砕かれて、食べやすく下ごしらえされています。これもうまいなぁ。
振り返ってみると、味を聞かれたのはレバーだけでした。他は、全部塩焼き。それがデフォルトなのか、「レバーを塩で食べるぐらいだから、他も塩だろう」と見透かされちゃったか…。
「すみません。ナカをお願いします」と、ホッピーの焼酎もおかわりです。
右どなりのお客さんは、キープの焼酎をウーロンハイにして飲んでいます。ボトルキープは宝焼酎とキンミヤ焼酎が各1,500円。麦焼酎(いいちこ)は2,500円。そして、割るためのお茶(ウーロン茶)は、カウンターの上にどかんと置かれています。これを勝手に使って割っていいのかなぁ?
右どなりのお客さんが「ニンニク(180円)を1本焼いてもらえるかなぁ」と注文。そうそう。左の男女2人連れがさっき食べてたニンニクがおいしそうだったんですよね。「私も1本お願いします」と便乗します。
ニンニクは、丸ごと電子レンジでチンしたあと、ひと房ごとに分けて3個1串で、皮が付いたまま串に刺し、焼き台で焼いていくのです。
右のお客さんは、カウンター上の大きな味噌容器から、味噌をひとかたまり、自分のお皿に取り分けます。そのお客さん、こっちを向いて「ニンニクにつけて食べるんだけどねぇ、この味噌だけでもつまみになるんだよ」と教えてくれます。へぇ、そうなんですか。どれどれ、私も。と小皿に取り分け、箸先にちょいとつけてペロリ。な~るほど。これはおいしい味噌ですねぇ。ガーリック味噌かな、もしかすると。
ニンニクも焼きあがってきました。1個を串からはずし、皮をとると、中からホコホコに焼けたニンニクが出てきました。さっきの味噌をちょいとつけてホクッとひとかじり。いいですねぇ、これも。
このあたりで、左側の男女2人連れが席をたち、入れかわるようにサラリーマン3人連れが入ってきました。そのうちのひとりは、大の常連さんらしく、店主との話を聞いていると、昨夜もここに来ていたようです。どの店も常連さんというのは二日とあけずにどころか、1日もあけない勢いで通ってるんですねぇ。
その常連さんがリードして、3人連れの注文を決めていきます。何本かのもつ焼きのほかに注文したのはガツ刺し(1人前380円)です。
さっき、もつ焼きを注文を受けてから下ごしらえする話をしましたが、なんとガツ刺しも注文を受けてから作るのです。とはいえ、こちらはさすがに下ごしらえというか、茹でそのものは終わっているようですが、それでもほぼ丸ごとに近い胃袋がどかんとまな板の上に出てきて、それをガツ刺しの状態にスライスしていくのです。なんともねぇ。もつ好きにはたまりませんなぁ。
こういう光景、他でも見たことあるなぁ。どこだっけ。そうだ、そうだ。業平(なりひら)の「まるい」だ。あそこも、大きな内臓のかたまりから調理するんですよねぇ。しばらく行ってないなぁ、「まるい」も。
さあて。9時前になってきたので、ボチボチと腰をあげますか。まだいろいろと食べてみたいのですが、なにしろ小さい店ですから、あんまり長居すると、これから続々とやってくるであろう常連さんたちにも悪いですよね。1時間半程度の滞在で、今日は1,360円でした。(ここから逆算して類推するところでは、お通しが200円、ナカも200円というところでしょうか。)
帰りぎわに、「実は、秋元屋さんにうかがって来たんですよ」と話すと、店主は「今日(水曜日)は秋元屋さん、お休みですね」。それを受けて、入口側のサラリーマン3人連れも「そういえば、今日は、ここに来ないところをみると四文屋にでも行ってるのかなぁ」と、みなさん、秋元さんのことをよくご存知の様子でした。
このお店ですが、実は2年ほど前にも、ある方からメールで「マスターがあらゆる残り物をいれて作る煮込みは最高です。でもいつでもあるわけではない上に、中身も毎回違います」とご紹介いただいていて、それも気になっていたのです。次回はぜひ煮込みも食べてみたいですね。
・店情報
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コメント
初めまして。隣りで座っていたサラリーマン3人連れの一人です。
いつも「居酒屋礼賛」は参考にさせていただいてます。
そういえば「ホルモン」でも昨年12月10日に隣りに座って
呑んでるはずです。(日韓戦の日ですね)
トラックバックさせて頂きました。今後ともよろしくお願いします。
投稿: カリビアン | 2004.05.10 22:34
はい、その3人連れの中で一番太いオヂさんです。いゃあ、まさか見られてるとワ(^^;・・・ちなみに今日も「春」していたのでしたぁ(^^ゞ
投稿: BUSH | 2004.05.10 23:28
いつも楽しく拝見させていただいています。はじめて書かせていただきました。会社の異動で、三鷹勤務になり中央線沿線のお店にいけるのを楽しみにしていました。今回はこの記事を見て「春」へ行ってきました。(5月10日)うわさにたがわぬ美味しいお店でした。自分も初めてなので、周りの常連さんたちの注文を聞いて同じものを頼んでいたのですが、レバ刺しありましたよ。確かにメニューの短冊にはなかったのですが、マスター曰く「豚のレバーは表立って生で食べさせることが出来ないから、あえてメニューに載せてない」とのことでした。月水金に行ったら、たのんでみてください。とても甘くて美味しいレバーでした。また、参考にさせていただいて、美味しいもの行脚をしていきたいと思います。
投稿: べろんべろん | 2004.05.11 19:33
コメントありがとうございます。>みなさん
トラックバックをいただいたブログ(レバサシ日誌)の写真を見ると、たしかにレバ刺しが写ってますねぇ!!
次回はメニューになくても店主に確認してみて、ぜひレバ刺しも食べてみたいと思います。
投稿: 浜田信郎 | 2004.05.15 12:12