懐かしの「鳥芳」風ガツ酢! … 居酒屋「ぜん」(鷺ノ宮)
都内での仕事が終わりました。ちょっと飲んで帰りたいけど、あいにくの雨。台風2号が近づいてきてるのです。こういうときは自宅の近くの居酒屋がいいですね。
そうだ。「鳥芳」のあとにできた居酒屋「ぜん」に行ってみましょうか。この店は先日ちょっとだけ様子をのぞいてみたのですが、そのときは、「あぁ。ここが鳥芳だったのになぁ」という懐旧の念のほうが強くて、「ぜん」自体の印象をつかめなかったのでした。今日は、「鳥芳」のことは忘れて、新しい居酒屋として再訪してみることにしましょう。
「こんばんは」。傘をたたんで、開けっ放しの入口から店内に入ったのは午後6時半。
店内は、並行する2本のカウンターをはさんで、右側の空間と、左側の空間に分かれています。左側の空間には、その左側の壁のところに作りつけのカウンターがあるので、都合3本のカウンターが並んでいる形になります。
左側の空間には、同一グループの人らしい6人の男性客が陣取り、すでに盛り上がっています。右側のカウンターには、奥のほうに先客が2人。私はその手前側に陣取ります。
「飲みものはなににしますか」と店主。「ホッピーをお願いします」「はい。ホッピーひとつ、お願いします」と、カウンターの奥の厨房部分にいるおねえさんに注文がとおります。
このふたりは夫婦かと思っていたのですが、地元の居酒屋フリークHsさんの話によると、違うとのこと。ここの店主のお父さんが、以前は喫茶「郷」の近くで「善九郎」という居酒屋をやっていたらしいのですが、今の店主の代になって、ここ「鳥芳」の跡地に移ってきた。そして、このおねえさんは、先代の「善九郎」のころからお店を手伝っていた方らしいのです。
そのおねえさんが、ホッピーにはやや小ぶりのグラスに焼酎と氷を入れ、栓を抜いたホッピービンと一緒に出してくれます。トクトクとホッピーを注ぎ込み、まずはひと口。あぁ、うまいっ。このホッピーが350円です。サワー各種が300円なので、ホッピーはやや高めの価格設定でしょうか。いや、「ホッピー 350円」という価格設定は普通なんだけど、その量がやや少な目なので高く感じちゃうんですね。
さあて。つまみは何にするかな。この店のメニューは、その日の日付入りで、筆書きされています。このメニューを書くのも、実はさっきのおねえさんなんですね。前回この店に来たときに、まだ店が開いてすぐの時間だったので、ちょうどおねえさんがメニューを作っているところに居合わせたのでした。店主と、今日はなにが出せるのかを打ち合わせながら、その場で筆を走らせていくのです。
一番安いメニューは、生キャベツ、温キャベツの各150円。その次は、一気にエゾカマボコの300円や、ラッキョウ漬の350円といった300円クラスに飛びます。そしてビントロブツ、メカブトロロ、焼チョリソーなどが500円、あさりバターやしめじバターが600円と、500~600円クラスが多いのは、前身である居酒屋ゆずりなんでしょうね。大衆酒場にしてはやや高めという価格設定だろうと思います。
おぉ~っ! ガツ酢がある! メニュー上の名前は「ガッツ(ガツ酢)450円」と、カッコつきの表現になっていますが、これをもらってみましょうか。「ちょっと時間がかかると思いますので、これでもつついててください」と店主が落花生を出してくれます。
この落花生は、店内では箸置き代わりにも使われているもののようです。そういえば、十条の「斎藤酒場」も落花生の箸置きでしたね。
その落花生をポリポリとかじりながら、ちょうど1杯目のホッピーを飲み終えるタイミングでガッツ(ガツ酢)が出てきました。ほんじゃ、ナカをお願いします。ナカはホッピーの焼酎部分のおかわりのことで、180円です。
なんと! このガツ酢は! ちょっと食べて確認してみましょ。どれどれ。あ、やっぱり。これは「鳥芳」のガツ酢(ショウガ味)とほぼ同じ内容、ほぼ同じ味付けなんですね。この店を引き継ぐにあたって、肉の仕入先なんかも「鳥芳」から引き継いだらしいので、もしかするとガツ酢の味付けなんかも引き継いだのかもしれませんね。あるいは、「鳥芳」の常連さんの指導によるものなのかも…。いずれにしても、懐かしいし、うれしいですね、これは。「鳥芳」のことは忘れて、新しい居酒屋として再訪したつもりが、思いっきり「鳥芳」に引き戻されちゃいました。
じゃ、次はもつ焼きにしましょう。まずはレバーとタンを1本ずつお願いします。タンは塩でくださいな。
もつ焼きはタン、ハツ、レバー、シロ、ナンコツ、コブクロが各1串120円。ネギマ、ツクネ、コメカミ、黒いも、ピーマン、しいたけ、うづら卵、肉巻は各1串220円です。1串220円というのは、世間のもつ焼き水準から考えるとずいぶん高いかもしれませんね。もしかすると、量がすごいのかな。
となりの2人組からは「割り水焼酎を燗で。あとマルサヤね」と注文が飛びます。なんだなんだ。飲みものも食べものもどっちもわかんなかったぞ。なんなんだろう。
見ていると、黒ジョカ(鹿児島の焼酎用の酒器)が焼き台にのります。うわぁ、この光景も懐かしいなぁ。私は学生時代に博多にいたのですが、そのころ焼き鳥屋さんに行くと、焼き台の端っこのほうによく黒ジョカがのっていたものでした。
「それが割り水焼酎ですか」と店主に聞いてみると、「そうなんです。芋焼酎2種類をブレンドして、海洋深層水で割って、そこの甕(かめ)で寝かしてるんです」とのこと。メニューによると1合が700円、2合が1,300円。もちろん燗だけでなく、ロック(といっても、すでに水割りになっている)などでも飲むことができるようです。
その黒ジョカの横には、大ぶりの魚の干物がのります。う~ん? この香りはもしかして? そうかぁ、クサヤなんだ。再度メニューを確認してみると、「○サヤ(八丈島産) 800円」と、1文字目を伏せ字にしてある。これをそのままマルサヤと呼んでるんですね。
マルサヤは、焼きたてのアツアツが、店主の手でサッサッとほぐされて、皿に盛られて完成です。やぁ、おいしそう。しばらく食べてないですねぇ、マルサヤも。しかし、大ぶりのものが、まるまる1尾分ですからねぇ。いくら好きでも、ひとりじゃもてあましそうです。
え~と。私のほうはナカ(180円)をもう1杯もらって、焼きものはコブクロとハツをください。どっちも塩でお願いします。
「特製塩ダレというのを作ってみたんですけどいかがですか」と店主。え。そりゃぜひ試してみましょう。お願いします。
店主は、カウンターの下からなにやら取り出して、小皿に入れてくれます。「基本的にはゴマ油と塩なんですけどね。ちょっとつけて食べてみてください」。ほぉ。なるほどねぇ。ハツやコブクロは、もともと脂分が少ないので、こうやって油をつけると味が変わっておもしろいですねぇ。
いやいや。どうもごちそうさまでした。1時間弱の滞在で、今日は1,640円。なにしろガツ酢が懐かしかったですねぇ。
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