締めの黄金スープ … 焼き鳥「鳥久(とりきゅう)」(阿佐ケ谷)
金曜日です。首都圏だけの販売だろうと思うのですが、「散歩の達人」という雑誌がありまして、その今月号(2004年7月号)が、なんと高円寺・阿佐ヶ谷特集。6月21日(今週の月曜日)に発売されたばかりのこの雑誌を、湘南新宿ラインの車内で読みながら帰ってきたのでした。
特集の中では、高円寺・阿佐ヶ谷界隈の飲食店も何軒か紹介されているのですが、そのうちの1軒が先日はじめて行ったばかりの焼き鳥屋さん、「鳥久」だったのです。記事の中では、店主が団扇(うちわ)であおぎながら焼き鳥を焼く姿や、伊達地鶏やさつま地鶏の焼き鳥、さらには鳥スープなどが写真付きで紹介されています。
特に、前回最後にいただいてとってもおいしかった鳥スープについては、記事の中でも「締めの一杯は黄金スープだ!」「丸々仕入れるからできる鳥スープ」「脂ののった伊達鶏のガラで取った鶏スープは黄金色に光り、スープで鶏の甘さとすっきりとした後味を味わうもよし、ぞうすいや茶漬けにして締めるもよし」と、まさによだれが出そうなコメントがついているのです。
新宿で中央線に乗り換えて、阿佐ヶ谷駅に到着したのは午後10時。よ~し。「鳥久」だ。もしかすると、雑誌発売後初の週末なので込んでるかもしれないけど、ひとまずのぞいてみるか。
店の前まで行くと、ちょうど店内から3人組のグループ客が「ごちそうさまぁ」と出てきたところ。やったね。確実に3人分は空きがあるということですね。その3人と入れかわるように、傘をたたんで店内に入ります。
「いらっしゃいませ」。店主とおかみさんから声がかかります。左手の8席程度の直線カウンターには、奥に若い男女、手前に若い男性ひとり客がいるだけで、後は空いてます。右手にふたつあるテーブル席は、手前側にサラリーマンらしき男性3人連れ、奥はさっき出てきた3人組が使っていたらしく、おかみさんが片づけているところです。
カウンターの中央あたりに座ろうとすると、おかみさんから「傘とおかばん。おあずかりしましょうか」と声がかかります。「あ。お願いします」。そうそう。普段でもカバンの置き場には困ることが多いのですが、今日のように雨の日は、さらに傘まであるのでなかなか大変なのです。こうやって、すっとあずかってくれるとありがたいですね。
カウンターの中から、笑顔でおしぼりを渡してくれる店主に、まずは瓶ビールを注文します。ビールはサッポロ黒ラベルの大ビンで、550円。生ビールもあります。
ビールといっしょに、すっと出てきたお通し(たぶん150円)は、切干大根を煮たものです。前回のトンブリといい、呑んべ好みのする和風のお通しが出てくるんですね。
この席は、ちょうど左手にガラスのタネケースがあって、材料がよく見える場所です。私に一番近い側に、串に刺されたレバー、心臓がならび、その先にバラの砂肝(すなぎも)が置かれています。赤は赤なりに、ピンクはピンクなりに、いずれもいかにも新鮮といったつややかな輝きをはなっていて、見るからにおいしそう。その先に並ぶ、地鶏の串も、皮の部分が黄色っぽくて、身もしっかり。これまたうまそうですねぇ。ブロイラーの白っぽいい皮とはまるで違います。
となりから心臓の注文がはいり、タネケース内の心臓はあと1本となりました。鶏の心臓は大好物なので、これは押さえとかなきゃね。私も大あわてで「レバーと心臓。それと砂肝をお願いします」と、こちらに近い側の3つを注文します。
メニュー上は、「れば」「しんぞう」が各110円。「砂きも」は350円となっています。値段から考えると、「砂きも」はバラで別に焼いて、お皿に盛ってくれるのかな。そう思いながら見ていると、店主が砂肝をチャチャッと切り分けて、串に刺してくれました。なるほど。レバーや心臓といっしょに注文したので、同じように串焼き版にしてくれたんですね。メニューにはありませんが、串の「砂きも」は110円のようです。
その3本が、備長炭(びんちょうたん)の焼き台の上にのると、カウンターの下から新たな心臓が何本か取り出され、タネケースに入れられました。なぁ~んだ。あわてることはなかったのか。タネケースの中で表面が乾いてしまわないように、すぐに使う何本かだけを出してるんですね。
来た来たぁ。レバーです。う~む。前回もそうだったけど、この大き目のレバー。いい焼き加減で、口の中でとろりととろけるのです。これを110円で出されると、まわりの焼き鳥屋さんはたまったもんじゃないですね。この一品だけとっても、いつもお客さんが多いのがわかるような気がします。
心臓や砂肝も言わずもがな。プリプリ、クリクリと実にいい食感、味わいです。
さてと。今日はなんだか燗酒の気分ではないので、ウーロンハイ(370円)をいただきましょうか。つまみは「かわ焼おろし付」(350円)にしてみるかな。
鳥皮は、バラのままで焼き台上の網(あみ)にのせられます。なるほど。本当は砂肝もこういうスタイルで焼かれるんだったんでしょうね。焼きあがった皮は、お皿に盛られ、大根おろしが添えられます。「はい。カワオロシです」。なるほど、「かわ焼おろし付」は、店の中では“カワオロシ”と呼ばれてるんですね。
やぁ。脂のうまみたっぷりのいい皮ですねぇ。
空いていた奥のテーブルには男女ふたり連れが入りました。「おまかせで何本か焼いてください」と男性が注文します。なるほど、こういう注文の仕方もあるのか。店主は、焼き鳥(正肉)、レバー、つくねなど4~5種類をみつくろって焼きはじめます。
ガラリと入口引き戸が開き、「今日は空いてるね」と男性ひとり客が入ってきて、私の横に座ります。「いつもいっぱいで入れないからねぇ」とその男性。そうかぁ。私が、これまで2回来て、2回とも入れたというのは、もしかするとラッキーなのかもしれませんね。「遅い時間帯なら大丈夫ですよ」と店主。そういえば、私が来たのも1回目は午後9時過ぎ。そして今日が午後10時過ぎです。夜は1時まで開いてるみたいですので、遅く来たほうが入りやすいのかもしれないですね。
さぁ。いよいよ「鳥スープ」(250円)いってみますか。「はい」と返事した店主、大きなスープ鍋から少量のスープを小鍋に取り分け、火にかけます。けっこうグラグラ沸くぐらいまで火を入れた後、再度スープ鍋からスープを足して、再加熱してできあがりです。
「熱いので、気をつけてくださいね」と出てきたスープ。さっそくズズゥ~ッとひと口いただきます。なにしろ香りもいいので、蕎麦をすするときのようにズズゥ~ッと空気といっしょにすすり込むのがいいのです。ふわぁ~っと口の中、鼻の奥にいい香りが広がります。うまいなぁ。日本酒(燗酒)が飲みたくなるなぁ。たしかに、このスープで作る雑炊(ぞうすい)や鳥茶漬け(どちらも480円)ならうまいだろうなぁ。
いやいや。おいしかった。どうもごちそうさまでした。今日のお勘定はちょうど2千円。1時間の滞在でした。
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