持ち帰り専門。10貫500円! … すし「花すし(はなすし)」(阿佐ケ谷)
うちの近所に不思議な寿司屋があります。基本的には持ち帰り専門ですが、持ち帰りを待つためのカウンターで立ち食いすることもできる。
おどろくのはその値段で、1パック10貫で500円(もちろん税込み)なのです。
10貫の内容は、マグロ(インドマグロ)が5貫(トロが3貫に赤身が2貫)に、エビ、タイ(真鯛)、イカ(モンゴウイカ)、玉子、穴子が各1貫。何度かの変更をへて、最近はこの内容で安定してきているようです。
店は早稲田通りに面していて、アルミサッシの入口の店舗は、電光掲示の「持ち帰り寿司」の表示がなければ、とても寿司屋とは思えない。入口には、「1人前(10ケ)500円」と書かれた怪しげな張り紙まであるし、なんだかとってもうさんくさいのです。
そのアルミサッシの引き戸をガラリと開けて店内へ。店に入るとすぐに持ち帰り用のカウンターがあって、その奥が寿司の握り場兼、店主の生活の場(?)になっています。
店主は、たいていは握り場の奥にひとつ置かれたひとり用のソファーに座って、テレビを見ています。そして、お客さんが入ってくると、おもむろに「いらっしゃいませ」と腰をあげて、右手側にある水道で手を洗い、握り場にやってくるのです。
さっそく2人前をお願いします。
冬場は握り場のところにタネが置かれていることもあるのですが、さすがにこの季節は握り場下の冷蔵ケース内に置いていて、握る直前に出してきます。なにしろ、(よく言えば)オープンキッチンなので、やってることが良く見えるのです。
そして、この店主は話し好き。握りながら、たいていの場合は、この店のお寿司の自慢話を聞かせてくれるのです。(笑)
自慢のマグロは、インドマグロ。この値段でトロが3貫入ります。さらには赤身も2貫入って、マグロだけで1人前10貫の半分を占めるのです。なにしろ、東京地方ではマグロがとってもありがたがられますからねぇ。
そしてタイは活ジメの真鯛。「お客さん、活ジメってわかりますか?」と店主。「えぇ、なんとなく」とあいまいに答えると、「活きてる魚をスパッと締めて血抜きしたもので、市場でも上ものなんですよ」と説明してくれました。
「エビはね」と店主。「自分のところでゆでて作ってます。今どき、自分でゆでる寿司屋も少なくなってるんだけどね。サッとゆでてるから、いいエビの味が楽しめますよ。この玉子焼きもそう。自分で焼いてるんですよ」と、でっかい玉子焼きを取り出して、スイィ~ッと1人前を切り取ります。
こうやって、まずはタネの部分を10貫×2人前分、握り場の上に用意した上で、おもむろに握りはじめるのです。
「この米だってねぇ。魚沼産のコシヒカリで、5キロで5千円するものなんですよ。ワンコイン(500円玉のこと?)で出してるんで、変なものを使ってるように思ってる人もいるみたいだけど、全部いいのを選んでるんですよ」。
いつ来ても、だいたいこんなような会話をくりひろげながら、最後にパックに詰められた寿司が出てくるのでした。(笑)
子供といっしょに行ったりすると、「待ってる間にこれでもつまんどきな」なんて、1貫サービスで出してくれたりする、憎めない店主なのです。
はい、じゃ2人前で千円ね。「どうもありがとうございます」という声を背に受けながら、店をあとにしたのでした。実におもしろいお寿司屋さんです。でも、おいしいですよ!
・店情報
| 固定リンク | 0
コメント
今日行ってみましたが、居酒屋礼賛さんの情報の正確さに驚きました。店に入ると奥のソファーに座っていた大将がのっそりと「いらっしゃ~い」…。でも、お寿司は本当においしかった。トロ3貫、自前のアナゴ、海老のほかに、マダイも今日築地から仕入れたものをさばいたばかりとのことで、コリコリとして美味でした。これで500円は安い。
あ、もれなく自慢話もついてきます(笑)。
投稿: beaver | 2004.09.21 12:47
コチラの記事を読んで、よだれを抑えながら今日(5002/01/30)行ってみたのですが、昨年12/30をもって閉店されてしまったようです。張り紙がありました。
残念です。
投稿: わをん朝 | 2005.01.31 02:33
>わをん朝さん
今月号(2月号)の「散歩の達人」に「花ずし」店主からのお便りが載っているのですが、体調を崩されたのだそうです。
早く良くなるといいですね。そうなるとお店も再開かなぁ。
投稿: 浜田信郎 | 2005.02.01 13:00