地酒でいただく地の魚 … 居酒屋「富屋勧商場(とみやかんしょうば)」(北条)
楽しい夏休みも、もう週半ば。水曜日になってしまいました。仕事のときも、1週間、1週間が飛ぶように流れさりますが、休みのときも速いですねぇ。仕事のときは、1日1日がとっても速い感じ。休みのときは1日1日はけっこうのんびりゆったりなのですが、振り返ってみると「もうこんなに経っちゃったか」という感じです。
「今日は近場に行ってみよう」と、友人と連れ立って出かけた先は、「富屋勧商場(とみやかんしょうば)」という居酒屋です。
「こんばんは」と店に入ると、店の人はもとより、店に来ているお客さんたちから、友人に声がかかります。なにしろ小さな町なので、この町で暮らしている友人は、どこへ行っても知り合いばかりなのです。
店内は、左手に直線のカウンター席、まんなかにまるで中の島のような小上がり席があり、さらに右手にも小上がりの座敷があります。われわれは入口のすぐ左手、カウンター席の一番手前に陣取ります。
ここはちょうどおでん鍋の前。ここ松山・北条界隈に限らず、四国地方のうどん屋さんや食堂、そしてもちろん居酒屋にはおでんを置いてあるところが多いのです。われわれも「生ビール2つね」とビールをたのみ、まずはおでんでスタートします。「玉子とぉ、チクワとぉ…」と思い思いに注文。夏でもおでんは人気ものです。
この店の名、「富屋勧商場」というのは、早坂暁の私ドラマ(?)「花へんろ」に出てくる商店の名前です。「勧商場」というのは「百貨店」のこと。元々は普通の商店だった「富屋」さんが、大正15(1926)年に木造建築3階建ての、今でいう百貨店に建て替えるのにあたって付けた名前が「富屋勧商場」。実際に、この場所に存在していたお店の名前なのだそうです。
私が子どものときには、ここにこんなお店はなかったような気がするのです。子どもだから、お酒を飲む場所が目に入らなかっただけなのかなぁ。もしかすると、これがいわゆる「バカの壁」?
せっかくの北条なので、魚を食べようよ。イカ好きの友人は、まず「みずいか糸造り」(700円)を注文。そんならオイラは「たこぶつ」(500円)だい。夏場の瀬戸内のタコは、毎日食べても食べ飽きないんだから。あとはぁ。「青ぎぞ活造り」(700円)と「どんこ活造り」(600円)! どうです! こんなの食べたことないでしょ!?
なにしろ、私自身「青ぎぞ」や「どんこ」を刺身で、それも活造りでなんて、生まれてこのかた食べたことがありません。
子どものころ、この辺の海岸で釣りをするとあがってくるのが、このギゾやドンコ。あ。もうひとついた。カラコギという、赤い小さい毒をもった魚です。あんまり「食べたい」って魚じゃなかったし、食べなかったよなぁ…。
まず出てきたのはミズイカとタコです。ミズイカの正式名称はアオリイカ。「イカの中で一番おいしい」という人も多いイカで、うまみ、甘みが味わえます。
そして青ギゾとドンコ。活造りというだけあって、どちらもまだピクピクと動いています。青ギゾの正式名称は、ベラ科のキュウセンです。メスは赤色、オスが青色で、このオスのほうが青ギゾと呼ばれます。実にサッパリとした刺身ですねぇ、これは。感覚的には、小さいヤガラの刺身に似てるかなぁ。ドンコはハゼ科の魚。これもほとんどクセのない白身です。
お酒も、地元の「雪雀(ゆきすずめ)」に切りかえます。
向こうの男女ふたり連れがつついている「にし貝刺身」(800円)もおいしそうです。
この北条という土地は、昔は愛媛県風早郡(かざはやぐん)北条村から、明治30年に愛媛県温泉郡(おんせんぐん)北条村に編成替えとなり、昭和33年の市制施行により、現在の愛媛県北条市になりました。来年度には松山市との合併により、愛媛県松山市北条になるのだそうです。時代の流れとはいえ、風早という名前がなくなり、北条も市でなくなってしまうということには一抹の淋しさを感じますね。昨日乗ったタクシーの運転手さんは、「この北条の白い砂浜が松山市の一部になると思うと、うれしいですねぇ」と話してましたが…。
愛媛といえば、高校野球の盛んな土地。私も昼間は親父といっしょにビールを飲みながら高校野球を見て過ごしていたのですが、昨日、(愛媛県大会の)決勝戦も終わってしまいました。一昨日の準決勝が「済美(10) VS 宇和島東(0)」と「新田(7) VS 松山商業(0)」。そして昨日の決勝が「済美(4) VS 新田(2)」(それぞれカッコ内は得点数)と、どの学校が代表になっても知名度が高い中、春の選抜大会優勝校である済美高校がみごとに代表の座についたのでした。
済美の上甲監督が、もともと宇和島東の監督として選抜で優勝していたり、新田の監督が、松山商業出身であったりするところも、なにやら因縁めいておもしろいですね。それにしても、準決勝がそれぞれ10対0、7対0と、古豪・宇和島東、松山商業をそれぞれコールドゲームで打ち負かしての決勝ですからねぇ。私立高校同士の決勝戦は、愛媛大会はじまって以来、はじめてのことだそうです。
済美高校は、私が高校生だったときは女子校だったのです。というか、明治34(1901)年にその前身である「松山裁縫傳習所」を開設以来、平成14(2002)年に共学に移行するまで、100年間の間、ズゥ~ッと女子校。だから今年度になって、やっと男子の3年生ができたところなんですね。それなのに春の選抜に優勝したり、夏の代表校に登りつめたりできるというのもすごいですよねぇ。
そんな地元話で盛り上がりつつも、「さぁ、今夜もちょっと露口をのぞいとこうか」という話がまとまり、席を立ちます。お勘定は2人で6,000円。ちょうど1時間の滞在でした。
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