インタビュー演習 … 「吉祥寺ビアホール」(吉祥寺)
小金井市在住のEさんと吉祥寺で待ち合わせです。待ち合わせの時刻は午後8時。少し早めに行って吉祥寺界隈を散策してみましょうね。
吉祥寺駅南口(井の頭公園口)を出て、右手の路地を「丸井」のほうに抜ける角にあるのがもつ焼きの「カッパ」。開けっ放しの入口からは、満員のお客さんがもつ焼きをつまみながら飲んでる様子がうかがえます。なるほどコの字のカウンターをメインとして、壁際にもいくつかのサブカウンターがあるんですね。店員さんも何人かいて、荻窪の「カッパ」よりも新しく、かつ規模も大きい。
その「カッパ」の角を右折して井ノ頭通りにそって次の大きな交差点まで進み、そこを左折して吉祥寺通りに入ると、右向こうの角にあるのが「吉祥寺の代名詞」とまで言われるやきとりの「いせや」です。やぁ。さすがに今日も歩道まではみ出して行列ができるほどの人気ですねぇ。
再び吉祥寺通りを引き返し、JRのガードをくぐって駅の北側に出ます。吉祥寺駅の北側にあるゴチャゴチャっとした横丁群が、人呼んで「ハモニカ横丁」です。横丁に沿って小さい店がずらりと並ぶようすがハモニカの吹き口に似ていることからこの名がついたと聞きます。正式名称は「北口駅前商店街」。ここも昔の闇市の名残なんですね。
入り口角にうなぎの「串の坊」があるこの路地。ここがそのハモニカ横丁の中でも「のれん小路」という横丁の入り口です。ここを入るとやきとりの「大衆」、和風スタンドの「里」、居酒屋「ささの葉」と続き、路地の突き当たりの居酒屋「千鶴」まで、古くて小さい酒場が並びます。そういえば、ハモニカ横丁内で突き当たりになってしまう路地はここしかないんじゃないかなぁ。ほかは縦横に走る路地が反対側まで突き抜けてますもんね。
少し戻って、横丁内を真横に貫く通りを路地2本分ほど東向き(荻窪・新宿側)に進むと、その路地には昔から続く居酒屋「美舟」などと並んで、とっても今っぽい雰囲気のやきとり「てっちゃん」やキッチン&バー「ハモニカキッチン」などが現れます。この横丁も、少しずつリニューアルされてきてるんですね。古い居酒屋ファンの私にとっては、ちょっと悲しいことではありますが…。
と、そこへEさんから電話です。「今、北口の改札にいるよ」とのこと。さっそく私も、ここからだと歩いて1分もかからない改札口へと向かい、Eさんと落ち合います。
阿佐ヶ谷から吉祥寺は3駅、150円区間。Eさんが住む東小金井から吉祥寺も3駅、150円区間と、ちょうど両者の中間地点なのです。しかしながら、品川に勤務されているEさんにとっては、吉祥寺は途中下車できる駅。界隈の飲み屋事情には詳しいのです。
同じくらいの距離でも、自宅に帰る途中にある駅と、自宅最寄り駅を通り過ぎる駅とでは、圧倒的に途中の駅のほうが引っかかる可能性が高くなる。私にとっての中野駅と同じ感覚が、Eさんにとっての吉祥寺駅なのかなぁ。
そのEさんに、これまでほとんど知らなかった東急裏手のおしゃれな飲み屋ゾーン(こじゃれたバーなどが多いのです)や、駅北口右手側の客引きのおにいさんが多いあやしい地帯などをひと回り説明してもらいながら駅前まで戻ってきました。
「喉も渇いたし、ここに入りますか」と階段を下りて地下へ。ここが「吉祥寺ビアホール」です。今は夜ですが、ビアホールと蕎麦屋は昼間っからお酒が飲める貴重なお店ですね。ここ「吉祥寺ビアホール」も、午前11時から真夜中の午前0時まで中休みなく営業しているのだそうです。ビアホールといいつつも、店内は大規模チェーン店の居酒屋風。カウンターあり、テーブルあり、さらには座敷席まであるみたいです。
われわれも6人用のテーブルに案内されます。6人用とはいえ、本当に6人で使うとかなりギューギュー詰めといった大きさ。しかし2人で使うには十分です。
まずは生ビール(スーパードライ、中ジョッキ、567円)をもらって乾杯。おつまみには地鶏のおすすめ串(1,350円)、大根のさっぱりサラダ(350円)、じゃこ天(235円)、そして海鮮ビーフン(580円)を注文します。
今日の目的は編集教室の通信講座を受けているEさんの「インタビュー記事をまとめる演習」のお手伝い。私はインタビューされる役です。テーマは「私の趣味」。
ビールを飲み、つまみをつつきながら「どうして居酒屋をテーマに、自分のホームページに記事を載せるようになりましたか?」とインタビューが始まります。
もともと森下賢一さんの「居酒屋礼讃」(1992年出版)や、太田和彦さんの「精選 東京の居酒屋」(1993年出版)などに出会ったのが、“古くから続く居酒屋”に興味を持つきっかけでした。以来、仕事で近くに行ったりするとちょいと寄ってみたりしました。
そんなことから、ニフティでホームページサービスが始まったとき(1997年末)に、自分のホームページの一部として「居酒屋礼賛」という、森下賢一さんの著書の名前そのままのコーナーを設けたんです。
ところが、平成11(1999)年頃に勤務先の工場ごと東京から横浜に移転する計画が明らかになってきた。そうなると、東京都内の居酒屋にもあまり行くことができなくなるだろうなと思って、それ以来、自分でも意識して精力的に名店と言われる居酒屋を回ってみるようにしたんです。そして、その訪問記を自分の覚えのために「居酒屋礼賛」のコーナーに記録し続けてきた。
工場は予定どおり平成13年の秋に横浜に移転したのですが「居酒屋礼賛」のコーナーは、なんとなく今もまだ続いているのです。以前ほど都内のいろんな店には行けませんけど…。
「なるほどねぇ」とEさん。ボイスレコーダーで録音したり、かたわらのメモ用紙にさらさらと鉛筆を走らせたりと、なんだか記者みたい(笑)。「すみませ~ん」とおにいさんを呼んで生ビールを2つ、おかわりです。「飲んでるときにメモを取っていないのに、たのんだメニューや値段なんかを覚えているのはなぜ?」
これはよく聞かれるんですが、たぶんひとりで飲んでるからだろうと思います。会社の仲間たちとド~ンと繰り出していったりすると、話したり笑ったりするのに夢中で、何をたのんだか、それがいくらだったかなんてことはまったく覚えていない。ひとりでチビチビと飲んでいると、他にすることもないので店内をながめたり、メニューを確認して「おっ。こんなものもあるのか」とか「この店のヤッコは安いなぁ」「次はどれをたのむかなぁ」なんてことを考えている。
本当はその場でメモが取れると楽でいいんですけど、私が好きな「ほとんど毎日通って来る常連さんが多い大衆酒場」では、そういう常連さんを中心として店の空気ができあがっているところが多いので、メモを取ったり、ましてやデジカメで写真を撮ったりというのはすっごくむずかしい。
ただ、頭の中で覚えているだけでは、すぐに忘れてしまうので、店を出てから移動する電車の車内なんかでキーワードを手帳にメモするようにしています。あとで訪問記を書くときにこの手帳を見ると、そのキーワードをもとにしてそのときの様子が思い出されてくるんです。
なんてことを話しているうちに、だんだんとアルコールも回ってきて、いつしか雑談モードへと切り替わっていきます。
「そのメモの取り方、おもしろいですねぇ。なんていう方法なんですか」。今度は私から質問です。「これ? これはマインドマップというやり方。脳の思考方法にそってまとめ方なんだって」とEさん。
もともとEさんとはニフティの「知的生産の技術フォーラム」で知り合ったので、ふたりともこういう「まとめ方」だとか、そのための道具だとかには目がないのです。ビンビール(サッポロラガー、中ビン、504円)も追加して、話はどんどんと横道にそれていきます。
「さあ、せっかくの吉祥寺なのでもう1軒行きますか」と席を立ちます。お勘定は2人で5,287円(ひとりあたり2,600円強)でした。
・店情報
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コメント
横丁に言及されていたので、ついつい見入ってしまいました笑。
投稿: 横丁調査人 | 2005.01.08 14:43
コメントありがとうございます。>横丁調査人さん
古くから続く横丁に、いい酒場があることが多いので、横丁歩きは大好きです。
「東京裏路地〈懐〉食紀行」に出ているお店なんかもいいですね。まだ行けていないお店のほうが多いですが…。
投稿: 浜田信郎 | 2005.01.10 15:49