燗酒でウナギ串焼き … うなぎ「川二郎(かわじろう)」(中野)
先日食べたばかりなのに、またウナギです。でも今日は白焼(しらやき)や蒲焼(かばやき)ではなくて串焼き。こうやって食べるウナギの各パーツがまたうまいのです。
ウナギ串焼きの「川二郎」は、中野駅の北側に広がる飲み屋街の一角、それもかなりマニアっぽい一角にあります。小さい店内はいつも満席のことが多いのですが、どういうわけだか金曜午後8時半の店内は、先客はカウンターの2人だけ。
だいたい週末は都心部(山手線の内側あたり)で飲んでる人が多いようで、中央線のこっちのほうは遅い時間にならないと込まないことが多いのですが、それにしてもこんな「川二郎」はじめて見ました。先客の二人がL字カウンターの縦棒のところに座っているので、私はバランスをとって横棒のところ、入り口のすぐ右手に座ります。この横棒の部分の内側がちょうど焼き台になっているので、ウナギを焼いてる様子をよ~く観察することができます。(だからってどうということはないのですが…。)
まずはビール(キリンラガー、大ビン、500円)をもらい、いつものように「ひと通り」を注文します。「ひと通り」というのは、文字通りウナギの各パーツをひと通り焼いてくれるもので、通常は八幡巻(やわたまき、250円)、串巻(くしまき、200円)、キモ焼き(200円)、ヒレ焼き(150円)、エリ焼き(150円)、レバ焼き(170円)の6本、金額にして1,120円です。「今日はレバーが売り切れたんですけど、いいですか」と店主(マスター)。遅い時間(この店は午後10時まで営業)になると売り切れの品も多くなってしまうのです。
お通し(サービス)のキャベツの漬物を、串で突っつきながらビールを1~2杯飲んだところへ「ひと通り」が焼きあがってきました。私は「ひと通り」と呼ぶことが多いのですが、みなさん「セット」とか「ひとそろえ」とか「一人前」とか、いろんな呼び方をされてるようです。
なるほど、レバ焼きの代わりに串巻になりましたか。もともとの「ひと通り」の中にも串巻が入っているのですが、今日のは1本は塩焼き、もう1本はタレ焼きと、味にもバリエーションをつけてくれています。まずはこの2本の食べ比べからいきますか。(ちなみに、普段は塩焼きのほうが出てきます。)
串巻というのはウナギの身を縦に細く切って、クネクネと身をよじらせながら串に刺したもの。なにしろウナギの身そのものですから、うまくないわけがない。塩もタレも、それぞれにホッコラと実にいい味わいです。鶯谷(うぐいすだに)の「鍵屋」などで出される「くりから」なんかもこのスタイルですね。なお「くりから」というのは「龍が剣に巻きつく様子」のことなんだそうです。
次はキモ焼きかな。レバ焼きは文字通りレバー(肝臓)だけを串に刺して焼いたものですが、こちらキモ焼きはレバー以外の内臓全体を焼いたものです。レバーのほうが貴重そうに感じますが、実は値段はこちらが高い。レバ焼きの170円に対して、キモ焼きは先ほどの串巻と同じく200円なのです。うなぎ屋さんで「肝吸い」になるのも、この内臓全体の部分のようですね。内臓らしい歯ごたえ(もつ焼きの“シロ”なんかと共通するタイプの歯ごたえ)の上に、ちょっとした苦味もあって、酒飲みにはぴったりの1本です。
そんなぴったりの1本にあわせて、今日は日本酒(260円)をもらいましょうか。燗でお願いしますね。
目の前には、受け皿とコップが用意され、あらかじめ燗がつけられてポットに入れられている日本酒がつがれます。ここの日本酒は秋田の「新政(あらまさ)」。店主が仕事の合間合間に湯のみでチビチビやっているのもこのお酒です。「1日じゃかなりの量になるんじゃないの」とカウンターの常連さんがからかいますが、「そんなことはない。3合くらいだよ」と店主。う~む。私が来てからだけでもそれくらいいったような気がしますけどねぇ。(笑)
続いてはヒレ焼き。ウナギの背びれや腹びれをニラやバラ(腹骨)といっしょに巻いたものです。ヒレという言葉だけを聞くと骨々した食感をイメージするかもしれませんが、そんなことはまったくありません。これも大好きな1品です。
そしていつもはエリ焼き(首まわりの肉。いわゆるカブト)が出ることが多いのですが、今日はバラ焼きが出ているようです。腹骨、牛肉でいえばカルビにあたる部分ですね。
最後は八幡巻。この店の串焼きの中でも、短冊とならんで1本250円という最高価格の品です。ゴボウのまわりに、串巻と同じ細く切った身をくるくると巻きつけたもので、ウナギとゴボウの相性も非常にいいことをわからせてくれます。
お酒(260円)おかわりお願いします。あと、カルシューム(300円)ください。
カルシュームというのはウナギの中骨を油で揚げて塩をふりかけたもので、ポリポリとした歯ごたえも爽快で、いいつまみになるのです。
私以外のお客さんふたりは相当な常連さんのようで、いつもは比較的無口な店主も、おかみさんも気楽に会話を繰り広げています。お客さんが少ないから、それほど忙しくないということもあるんでしょうが、こういう空気(雰囲気)ははじめてですねぇ。話の内容(この地域の昔の話や今の話などなど)もおもしろいので、もうちょっと聞いて帰ることにしましょう。「短冊(たんざく、250円)とエリ(150円)を1本ずつ焼いてください。塩で」。
短冊は、蒲焼なんかにするのと同じ身を、串にさせるくらいの大きさにカットして串焼きにしたもの。それを塩で焼いてもらうとウナギの「白焼」に近い感覚で楽しめるのです。タレ焼きにしたら「蒲焼」風になるんでしょうね、食べてみたことがないですが。
さらにお酒(260円)をおかわりし、お新香(300円)を注文しますが、これまた売り切れとのこと。じゃ、キャベツ(200円)ください。キャベツは、お通しとして小皿で供されるものを別注するもので、小鉢にたっぷりと出てきます。
焼きものはバラ焼き(150円)とヒレ焼き(150円)をお願いします。「バラは、今度は塩で焼いてみましょうか」と店主。へぇ。バラも塩焼きができるんですねぇ。ぜひそうしてみてください。
ウナギは身もうまいですが、こういう腹骨の部分や、ひれの部分もまたうまいですよねぇ。堪能いたしました。
今日は閉店の10時まで、じっくりと1時間半楽しんで3,650円。今までで最高の支払額になりました。ちなみに、これまでの最高額は、一番最初にこの店に来たときの2,280円でしたから、いっきに60%アップとなっちゃいました。大満腹、大満足でした。
| 固定リンク | 0
コメント
こちらの川二郎さんも、拝見してからずっと気になっていましたが、ようやく先日おじゃましてきました。
あの雰囲気、あのうまさ、あの安さ(笑)に感激です。
いつも情報ありがとうございます!
投稿: M | 2008.09.20 06:02
>Mさま
こちらこそ、いつも貴ブログ「東京グルメ 居酒屋訪問記 ~銀座 六本木 赤坂 恵比寿などのレストランめぐり~」からリンクを張っていただき、ありがとうございます。
うなぎの串焼きでお酒が楽しめるお店は、私が知っているだけでも、ここ「川二郎」の他に、「川勢」(荻窪)、「カブト」(新宿)、「ほさか」(自由が丘)、「むら上」(大井町)、「丸富」(青物横丁)などがあって、どこも常連さんたちでにぎわっているようです。
そういえばうなぎ串焼きもしばらく食べてないなぁ。近々出かけなくっちゃ!
投稿: 浜田信郎 | 2008.10.05 11:26