古き良き横浜バー … バー「スリーマティーニ」(横浜・元町中華街)
職場の忘年会で横浜・元町で飲んだ後、せっかくの元町なので近くのバーに足をのばしてみます。向かったのは中華街東門(朝陽門)やホテルニューグランドのすぐ近くにあるバー「スリーマティーニ」です。(ホテルニューグランドのバー「シー・ガーディアン」にも引かれてるんですけどね…。)
「スリーマティーニ」はマンションの1階にあります。この船の絵のある灯り看板がいいですね。横浜港の近くらしくて。店はマンションの1階ながら、扉を開けて店内に入ってみると天井も高くてとてもゆったりとした感じ。すぐにホール担当のおにいさんが「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれます。「ひとりです」「はい。それではこちらにどうぞ」。案内してくれたカウンターにはちょうど1席分の空きしかない状態。金曜日の9時なので、バーとしてはもっともお客さんが多いときなのかもしれませんね。
とはいえ、長いL字型のカウンターは8席しかなくてゆったりとした造り。店内の広さともあいまって、本当にゆったりと感じますね。このゆったり感は非常に重要です。これだけでくつろいだ感じになりますもんね。
カウンターもスツール(バーの椅子)も高いのですが、カウンターの下には足乗せ台があって足はちゃんと地面につくようになっている。よっこいしょと座ろうとすると、ホール担当のおにいさんが後ろからスツールを押してサポートしてくれます。
ここのカウンターは、ホテルオークラのバー「ハイランダー」と同じく、ひじ乗せの部分がやわらかいクッションになっている。ただし、「ハイランダー」が黒いクッションなのに対して、こちら「スリーマティーニ」は赤茶系のクッションです。このクッションにもたれているだけでくつろぐんですよね。
「いらっしゃいませ」と目の前に来てくれたカウンターの中のおにいさんに、まずは「ジントニック(Gin Tonic)」を注文します。個人的に、あまり頻繁(ひんぱん)にジントニックを飲むことはないんですが、今日のように元町(JR石川町駅南口近く)からトコトコと20分近くかけて歩いたあとは、ビールかジントニックのような爽やかな喉越しの飲み物がほしいですね。ゴクゴクッと2ゴクン(ふたごくん)分くらいいっぺんに飲んでしまいます。あぁ。うまいっ。
私の右側は若い女性のふたり連れ。本やインターネットなどの情報では、この店はフードメニューも自慢なのだそうで、右の女性たちも料理をつっつきながら話に花を咲かせています。左側は会社員らしき男性ふたり連れ。店内を見渡すと、いろんな年齢層の男性ひとり客や、荘年のご夫婦らしきお客さんなど、まさに老若男女さまざまなお客さんがいます。後ろのテーブル席にはグループ客。こうやってひとり客も居て、夫婦客もいてという幅広い客層の店はだいたい安心できるお店が多いように思います。
そうこうするうちに右手一番奥(L字の右下の端っこ)のところにいた男性ひとり客がお勘定を済ませて席を立ちます。すると、マスターと思しき男性が「もしよろしければ、端のお席に移りますか。向こうのほうが落ち着くでしょうから」と声をかけてくれます。たしかに。ふたり連れ同士のまん中に座るひとり客というのは、なかなか落ち着きが悪いんですよね。なにしろどっちにも声もかけれらないですからね。でもいいのかなぁ、初回でいきなりLの短辺端っこ。ま。でもせっかくおっしゃっていただいてるので、移らせていただきましょう。
L字カウンターの短辺端っこというこのポジションは、カウンターの中での仕事の様子がつぶさに見えてしまう席。たいていのお店では、大の常連さんが座ることの多い席なのです。この店の場合も、カウンターの中に男性がふたりと女性がひとり、そしてホール側に男性がひとりいて、カウンターの一番向こう側(入口側)のカーテンの奥に厨房がある様子が、ここの席からはうかがうことができます。しかも、店内にやわらかく流れているジャズのレコードは、目の前のターンテーブル(レコードプレイヤー)で回っている。
2杯目は「ハイボール(Whisky Soda)」をいただきましょうか。マスターからは「スコッチですか。バーボンですか」と確認が入ります。そうか。この店はスコッチやバーボンの品ぞろえも有名なお店でしたね、たしか。しかし、スコッチやバーボンのハイボールとは考えてなかったなぁ。う~ん、とちょっと悩んでいると、マスターから「角のハイボールもあります。」「あ、角がいいですね。それをお願いします」。なにしろ心の中で思い描いてたのは、まさに角のハイボールでしたから、これでぴったりです。
ちょっとつまみをもらうかな。ハイボールが出てきたタイミングで「チーズがあればお願いします」とチーズを注文。
出てきたお皿には穴の開いたチーズ(エメンタールっていうのかな?)やカマンベールなどが2切れずつくらい5種類。これはまた見た目も美しくて、さすがはフードメニューも自慢のお店ですね。あれ。このブルーチーズにはなにかかかってる。「イギリスのスティルトンに蜂蜜をかけてるんですよ。ブルーチーズの塩辛感と蜂蜜の甘みを合わせてみました」とマスター。ど~れ。口に含むとまず蜂蜜の甘みが広がって、その下からブルーチーズの塩辛味が出てきます。ほぉ。これはいいですねぇ。自宅でブルーチーズで飲むときにもやってみよ。
テーブルにいるグループ客を中心に、カクテルの注文もひっきりなしに入り、カウンターの中もシェイカーをふったり、ミキシンググラスをバースプーンでくるくると混ぜたりとすごい勢いでカクテルができあがっていきます。ものすごいスピード感なのに、見た感じはそれほど忙しそうには見えないところもプロですねぇ。
目の前のターンテーブルの上も仕上げ台に使って、お酒をツツゥ~ッと注いでいきます。いやぁ、このターンテーブルも相当な重量なんですね。うちのターンテーブルでこんなことをやったら、針が飛んじゃうか、少なくとも音が揺れてしまいますよ。「本当はダメなんですけどね。ちょうどいい大きさの台になるんで、つい使っちゃうんですよ。よく聞くと音も揺れてるんですけどね」と言いながら次々にカクテルを仕上げていくマスター。
それじゃ私もハイボールのおかわりをお願いします。
おかわりのハイボールを出してくれながら、「お客さん、この店は初めてですよね」とマスター。そうなんです。以前、「続全国居酒屋紀行」でこの店のことを見たり、その番組担当の小川洋一さんにおすすめいただいたりしたこともあって来てみたんです。「ああ。そうだったんですか。太田和彦さんにも年に3~4回くらいいらしていただいてるんですよ」。
番組の中で太田さんは、横浜の誇る(日本産まれのカクテルの中でおそらく最も有名な)カクテル「ミリオンダラー(Million Dollar)」を飲み、「古き良き横浜を再現した、涙の出るような素晴らしいバー」と絶賛されています。
さあて。それじゃボチボチと東京の自宅に向かいますか。どうもごちそうさま。約1時間半の滞在。ロングカクテル3杯にチーズの盛り合せで、今日は3,900円でした。
それにしても、ここのお客さんたちはごく普通にバーを楽しんでるなぁ。まるで東京での居酒屋のよう。横浜は居酒屋というよりもバーを巡ってみないと呑んべの本質はつかめないのかもなぁ、なんて思ってしまいました。
・店情報
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コメント
中華街の老舗に事務職で勤務していた頃、あちこち飲みに歩いたのですが、この店は入ったことがないですね--。一番行きたい雰囲気の店なのに、惜しいことをしてしまった。
投稿: 無限 | 2004.12.30 16:35
この「スリーマティーニ」はもともと野毛にお店があって、平成13(2001)年の3月に現在の山下町に移転してきたんだそうです。
店内はものすごく(いい意味で)古びた感じなんですけど、実は新しいお店なんですね。
投稿: 浜田信郎 | 2004.12.31 11:46
浜田さん、明けましておめでとうございます。
実は、私も12月15日に中華街で忘年会があり、その日はバラ荘に寄ろうと思ったのですが、連日の忘年会で疲れていたため、そのまま東横線で帰宅しました。
この記事を事前に読んでいたら、是非お邪魔させて頂いたところです。残念。
投稿: しんちゃん | 2005.01.04 14:24
今年もよろしくお願いします。>しんちゃんさん
私も、あらためて「横浜のバーはいいなぁ」と痛感した次第です。今年は横浜のバーもいろいろと覘(のぞ)いてみたいと思っています。
投稿: 浜田信郎 | 2005.01.04 15:08