昼から燗酒たっぷりと … 寿司「久兵衛(きゅうべえ)」(虎ノ門)
田舎の友人との昼食は、ホテルオークラ内の寿司屋「久兵衛」です。「電話したけど、いっぱいだったんでテーブル席になるよ」と友人。へぇ。テーブル席ははじめて座るので、それも楽しみです。
店に入ったのはちょうど正午頃。昼食を食べるお客さんたちでカウンター席はいっぱいです。この店にはいろいろと著名人の来店も多いのですが、今日は孫正義氏とそのご家族がカウンターでお寿司をつまんでいます。奥さんとお嬢さん(本当はふたりお嬢さんがいるらしいが、そのうちのひとり)かな。お嬢さんもけっこう大きくてびっくりです。あ。「大きい」というのは年齢的なことで、けっして体形のことではありません。体形は奥さんもお嬢さんもすらりです。なんだかとってもいいパパって感じで、ほほ笑ましい光景ですね。
こういう様子が観察できるのもテーブル席ならではです。カウンター席だと、ずらりと横に並んで座るので、自分のまわりの状況しかわかんないですから。
まずはビール(エビス、小瓶、800円)をもらってカンパイです。ッカァ~ッ、うまいっ! 昼間っから飲むビールのなんとうまいことよ。「つまみを適当にお願いします」と友人。「はい」と和服姿の店のおねえさんが注文を通してくれます。
お通しは白魚の小鉢に、白子の小鉢。白子はあっためたばかりでホンワリと温かくて、これが実にいい。白子はさっと湯をとおしたり、あるいは焼いたりしてあっためると、冷たいときとは違った甘みを感じますよねぇ。大好きです。これは燗酒(銘柄不明、1合徳利が850円)をもらわなくっちゃ。
大きなまな板皿に美しく盛られた刺身が出てきました。ずらりと並ぶのは赤貝、マグロ(中トロと大トロ)、ヒラメ、サヨリ、アジ、カンパチ、カツオ、イカ、タコなどなど。なるほどねぇ。カウンター席だと1品1品順番に出てきますが、テーブル席は全部が盛り合わされてど~んと出てくるんですね。こうやっていっぺんに出てくるととっても豪勢に感じます。
お酒をおかわりしながら、美しい刺身を1片ずつ取り崩すようにしながら食べていきます。カツオがまた立派な戻りガツオで、よくアブラがのってますねぇ。
出てきたのは焼きタラバです。カニの苦手な友人には、タラバのかわりに大トロの炙り。苦手なものをよく覚えてますね。しかし、ここまで覚えられるほど、このホテルの寿司屋に通っている友人もすごいっ。彼は昔から店の浮気はしないタイプで、ここと決めたお店に徹底して通うタイプなのです。寿司ならここ「久兵衛」、フレンチは「北島亭」、天ぷらは「いわ井」、中華だとこれまたホテルオークラ内の「桃花林」、そしてバーなら「グレース」。それぞれもう20年近く通っているのです。(「北島亭」や「いわ井」など、店の歴史がそれほど古くない店は、その店主が前の店でやってた時代に、そちらの店に通っていた分を通算しての話です。)
次はヒラメの縁側の炙り。これがまた、ウナギの白焼よりも上品で、ウナギの白焼よりもジューシーな一品に仕上がっています。いいですねぇ、これも。
こうしてお酒を飲みつつ過ごすうちに、カウンターのほうにも空きが出てきました。孫さんファミリーも、今日いっしょに来ることができなかったもうひとりのお嬢さんのためにお土産のお寿司を作ってもらって席を立ちます。
カウンターの中のおにいさんが出てきて、「にぎりはカウンターで召し上がりますか」とカウンター席へさそってくれます。そうしましょう、そうしましょう。
カウンター席に座り、新しく出してくれたおしぼりで手を拭きながら、まずはイカ(スミイカ)から握ってもらいます。「にぎりは2貫ですか。それとも1貫ずつにしますか」とたずねてくれます。「2貫ずつでお願いします」。2貫ずつとはいっても、2貫いっぺんにではなくて、こちらの食べるスピードも見ながら1貫ずつ2つ出てくるのです。
さらにはコハダ。握ってもらうやいなやといった感じで、戦うように食べないとおいしくないんですよねぇ。特にここ「久兵衛」のお寿司は、ほんのりと人肌のあったかさを保ってますから、ネタが冷たく、ごはんがほんのりあったかい間にパクリといかねばなりません。パクリ、パクリと続けさまに2貫食べておいて、おもむろに燗酒です。あぁ、おいし。
ちょいとつまみにホタテ貝の磯辺巻きを作ってもらいます。これは貝柱を薄く切って付け焼きしたものを、海苔でくるむように巻いたもの。パリッとした海苔の食感のあとに、しっかりとした貝柱の肉感が口に入ってきます。
次はなんにしようかな。マグロのヅケはありますか。「ヅケはこれから漬け込むので、少し時間をいただくようになります」。じゃ、普通の赤身でお願いします。「はいよっ」。
昔は、ヅケは保存用の意味合いが強かったようなのですが、最近は保存とは無関係にその味わいのよさがヅケの身上になってきているようです。居酒屋で、注文を受けてからしめたシメサバがうまいのと同様に、ヅケもその場で漬け込むのがいいのでしょうか。
さらにはシャコ、イクラといただきます。イクラはちょうど今がおいしい時期ですねぇ。
ここで口直してきなタクワンが2切れ、トンと付け台の上に置かれます。ポリッとかじりながらいただくお酒のうまいこと。
最後はアナゴをいただくとして、その前に巻き物をもらおかな。干ぴょう巻きをお願いします。え? ワサビ? 入れてください。
巻き物も目の前でクルクルっと巻かれて、サクッ、サクッと包丁で切ってできあがり。適当に包丁を入れてみたいに見えるのに、きっちりと高さがそろってるところがさすがにプロですなぁ。
そして満を持してアナゴです。1貫はタレで、1貫は塩でお願いしますね。炙られた表面はサックリと、そして中は噛まないでもとろけるくらいのやわらかさです。
最後にシジミの味噌汁をもらって終了。約1時間半の昼食タイムでした。
友人も、握ってもらった内容こそ異なるものの、数はだいたい同じくらい。ここは昼も夜も、飲み物を除いて、だいたいひとりが2万5千円くらいだそうです。
| 固定リンク
コメント