横浜バー初め … バー「パパジョン」(横浜・桜木町)
よく飲んだ冬休み(?)も今日(1月4日)で終わり。明日(5日)からは仕事再開です。久しぶりの出勤で早起きするのがつらいので、今日のうちから横浜の単身赴任寮に移動します。
自宅を午後7時過ぎに出発して、京浜急行・日ノ出町駅に到着したのは午後8時半。なんで日ノ出町で降りたかというと、この駅からほど近い野毛町にある年中無休のバー「パパジョン」での『横浜バー初め』をやってから寮に入ろうと考えているからなのです。
まだ酔客は少ないだろうと思いながら野毛の町に繰り出してみると、あにはからんや、路地という路地に酔っ払いの群れ。さすがにいつもよりは少ないものの、酒場もかなり開いています。なんとねぇ。1月4日になると、もう比較的普通に戻ってるんですね。
さぁ、到着。よっこいしょと扉を開けて「こんばんは」と店内へ。「いらっしゃいませ」と白髭の店主が迎えてくれます。
店内はL字カウンター10席程度のみ。Lの左下の位置が入り口で、縦の辺にも横の辺にも5人ずつくらい座れます。先客はLの右下のところに3人だけ。あんまり間をあけて座るのもなんなので、その3人から1席あけた場所。ちょうどLの下の辺の左端の角のところに陣取ります。
「なんにしますか」と店主。「角瓶のハイボールをお願いします」。ウンというように大きくうなずいて、グラスに氷を入れ、角瓶のウイスキーをトトトッとそそぎます。炭酸をシュワァ~ッといれて、軽くかき混ぜるとできあがり。
店はこの年配の店主と、もしかすると息子さんなのかなという感じのおにいさんの二人で切り盛りしており、ゴクンとハイボールの一口めを飲み込んだくらいのタイミングでおにいさんがお通しのプレートを出してくれます。プレートの上には皮付きのピーナッツと柿の種、そして干コンブの3種がたっぷりと盛られています。
聞くともなしに聞いていると、右の3人は実は向こうに座っている大阪から来た女性ふたり連れと、それとは別にひとり客としてやってきたこの店の常連客らしき男性であることがわかりました。女性二人は雑誌の記事でこの店のことを読んできたのだと話しています。男性のほうは、もう相当飲んでるようで、すでにろれつが回りにくくなった舌でカクテルのおかわりを注文しています。
「はい」と返事して、そのグラスを受け取るおにいさん。氷を追加し、トクトクとジンを注いでライムをちょいと入れてかき混ぜます。ほとんどジンのストレートといった感じのジンライムです。見れば右の男性はウイスキーの水割りも目の前に置いています。なぜこの男性が常連さんだと思ったかというと、角瓶のキープボトルを目の前に置いているからでした。
「すごいっ。ジンライムのチェイサーがウイスキーの水割りですか!?」「いやっ。まあね」とニコニコしながらジンライムを口に運んでいます。
「お客さんは、ここはじめて?」と店主(マスター)。「いや。前に1度来たことがあるんですよ。今日が2回目。前に来たのはちょうど(連続営業)8千日をちょっと過ぎた頃だったかなぁ」。「そりゃずいぶん前だねぇ。今日で9,051日目だよ」と店主。えっ!? そんなに来てなかったかなぁ。
この記事を書くのにあたって調べてみたところ、前回来たのが平成15(2003)年3月6日で、そのときには8,010日目とうかがいました。これが正しいとすると、記録の開始日は昭和56(1981)年4月1日で、今日は8,680日目だったことになります。一方、今日の9,051日目が正しいとすると、記録の開始日は昭和55(1980)年3月26日で、前回は8,381日目だったということになります。約1年の違いではありますが、どちらにしてもものすごい記録であることには間違いありません。もしこのあたりの事情をご存じの方がいらっしゃったらコメント等お願いします。
「おめでとうございます」と入ってきた男女のふたり連れは、今までだれも座っていなかったL字の左上あたりに入ります。この場所に音声を絞って画面だけ映しているテレビや、オーディオ装置などがあるのです。なにしろ店の看板にも「ジャス&演歌 パパジョン」とあるとおり、この店はいつもレコードでジャズが流れてますからね。ちなみに演歌というのは横浜出身の歌姫、美空ひばりのことなのだそうです。演歌全般というわけではありませんのでご注意を(ただし、天童よしみはOKという噂もあり)。オーディオ装置の近くには美空ひばりの銅像のミニレプリカも置いてあります。
通常のバーではバックバーという、カウンターの反対側の壁(カウンターに座ると真正面に見える壁)のところにずらりとボトルがならんでいることが多いのですが、この店ではその場所はLPレコードの置き場になっている。まさに壁いっぱいにずらりとレコードが並んでいるのです。店主(店名にちなんでか、常連さんたちは“パパ”と呼ぶ)は、その中から無造作に次の1枚を選択して店内に流すのです。(無造作に見えるけど実は意図を持って選択しているのかもしれませんね。)
それじゃボトルはどこに置いているかというと、L字カウンターに囲まれたフロアの奥にボトルタワーのようなのがあって、そこにサントリー角瓶などのボトル群がずらりと円柱状に並べられているのです。常連さんたちはほとんどキープのボトルを飲んでるようです。先ほどの男女ふたり連れにも、その中から1本のボトルが出されますが、これがまたとっても時代を感じるようなサントリー・ホワイト。ボトルのまわりには千社札なども貼ってあります。きっとキープをしなおしても、中味だけ入れ替えてもらって、ボトルはずぅ~っとこれを使ってるんでしょうね。
「じゃ、パパも飲んでよ」とそのふたり連れから店主にも1杯。「どうもありがとう」と、まず自分のグラスにある水割りを飲み干して、そのお客さんのホワイトで水割りを作ります。
そういえば、店主は毎日1本ずつ角瓶を空けるという話を聞いたのですが、今もそうなんですか? 「今もそうですよ。毎日1本。たぶん日本で一番、ということは世界で一番角瓶を飲んでると思うな。サントリーの社長はお礼に来ないけどね(笑)」と店主。そうですよねぇ。連続営業9千日で毎日1本だと、ひとりで9千本は角瓶を飲んじゃったってことですもんね。
男女ふたり連れからは「半分ずつね」とトーストの注文が入ります。半分ずつってなんだろう。料理の注文が入るとおにいさんが奥の厨房に向かいます。基本的に店主はカウンターの中で飲みながらお客さんたちと話をしたりお酒を作ったりしていて、つまみの準備などはおにいさんがやると分担しているようですね。出てきたトーストは、フランスパンをスライスしたトーストで、見た目にはチーズトーストが半人前と、ガーリックトーストが半人前で、合わせて1人前になっているようです。これを「半分ずつ」って注文してたのかな。
このあたりで大阪からの女性二人が席を立ちます。お勘定は二人合わせて3,900円。右どなりの男性もお勘定です。「今日は新しいボトルが入ったから8,200円ね」と店主。ほぉ。新しいボトルを入れて、それとは別にカクテルを数杯飲んでこのくらいの費用なんですね。
書いてはないですが角瓶のボトルは5千円くらいだろうと思います。というか、店内には値段表示はいっさいないのです。メニューはといえば、L字の右側の壁にかけられたボードに書かれてるものだけなんですが、ここにあるのはフードメニューのみで、これにも値段は書かれていません。ま、しかし、上にあげた程度のお勘定ですので、わりと標準的なのではないかと思います。
「ありがとうございました」とカウンターの中でお客を見送り終えた店主に、ハイボールのおかわりをお願いします。
角をはさんだ左どなりにも新しい男性客が入ってきました。キープボトル(角瓶)を出してもらうと同時に「冷しトマト」を注文しています。この「冷しトマト」がまたおもしろい。スライスされたトマトが、長方形の大皿にきちんと整列して1枚ずつ寝かして並べられているのです。いっしょに出てきた瓶はバジルソルトって言うんですって。それをシャッシャッとふりかけて、おいしそう。
右側にも新しい男性客が入りますが、この方も常連さんのようで座ると同時にキープボトルが用意されます。なるほど、午後9時をまわったあたりでみなさん徐々にやってくるんですね。この人は「ネバネバ納豆」を注文。常連さんたちは、なんだか必ず1品ずつつまみを注文してるようですねぇ。(いつもそうかどうかはわかりませんが…。)
「ネバネバ納豆」は納豆にオクラ、山芋、そして卵黄を入れたもの。まさにネバネバ・ファミリーといった感じですね。作るときに「抜き?」「うん。抜きでお願い」と言ってたのは、もしかすると卵白のことかなぁ。
それはそうと、すごくいい音ですねぇ。「サンスイの一番初期のスピーカーなんだよね」。へぇ、この古びた(失礼!)スピーカーは名品なんですね。
さあて。明日の仕事始めに向けてそろそろ退散しますか。約1時間半の滞在。角のハイボール2杯とお通しで、お勘定はちょうど2,000円でした。
「今度はもっと早く来るように、年始用のタオルを渡してプレッシャーをかけておこう」と笑いながら年始用の「パパジョン」と書かれたタオルをくれました。どうもありがとうございます。このタオルを見るたびに「そうだ。パパジョンに行かなきゃ」とプレッシャーを感じることにしますね。(笑)
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