ブツの石井バージョン!? … 豚の「味珍(まいちん)」(横浜)
「キンパイ酒店」を出て、すぐとなりの崎陽軒(きようけん)本店のところからポルタ(横浜駅東口地下街)に入ります。「ここを通ってくると雨の日でも濡れることなくキンパイまでたどり着けるんですよ」と伊東さん。今日は地元の酒場通・伊東さんに船頭役をお願いして、横浜の酒場に漕ぎ出そうとしているのです。とはいえ横浜地区も相当広い。とても1日やそこらでは回ることはできないので「1回に1~2軒くらいずつ、気長に行きましょうや」とおっしゃっていただいているのです。
「これから向かおうとしてるのは「味珍(まいちん)」です。もちろん何度かいらっしゃったことがあるのは知ってますが、今日は常連しか知らない「味珍」の味を知ってもらいたいんです」と伊東さん。これはまた楽しみですねぇ。
「味珍」は横浜駅きた西口にある狸小路(たぬきこうじ)という飲み屋街の中にあります。店は狸小路をはさんで両側にあり、それぞれ1階と2階に店があるため、全部で4店の「味珍」があるのです。今日は横浜駅側から見て右手1階の店舗(本店1階)に入ります。
店内は“Γ”型のカウンター(内側は厨房スペース)だけで12人入れます。入口近くはけっこうお客さんが入っており、われわれは“Γ”の一番奥の短辺の部分に腰をおろします。
伊東さんはヤカンとウーロン茶を注文。私も同じくヤカンとウーロン茶をもらいます。ウーロン茶は温かいのをお願いします。
ヤカンというのは焼酎(350円)のことで、いつも金属製の注ぎ口の付いた容器に入れられていて、注文するとこの容器から注いでくれるので、この容器のことを指してヤカンと呼ばれるようになったようなのです。
常連さんたちは焼酎と同時に缶入りのウーロン茶(130円)をもらって、ウーロンハイにしたり、あるいはチェイサーとして焼酎と一緒に飲んだりすることが多いようです。通常は冷やしたのが出てくるのですが、「温かいの」とお願いするとそのウーロン茶に燗をつけてくれることも今日はじめて知りました。
さぁ。そしていよいよ伊東さんがつまみを注文します。「カシラ(頭、700円)をブツで。石井バージョンにしてください」。「はいよ。石井バージョンね」と店長。おぉ。これはさっぱりわからんぞ。なんだろうなぁ。
カシラは通常はチャーシュー風にスライスするようにカットされるそうなのですが、“ブツ”という注文にしたがって今日はぶつ切りに仕上げていっています。カウンターの短辺に座っていると、目の前が調理場なので作っていく様子がよく見える。いい席に座ったなぁ。
カシラのブツの上に、煮こごりを小さく砕いたようなものをパラパラっとかけてできあがり。さらに腐乳(ふにゅう、150円)に刻みネギをたっぷりとかけた小皿が出てきます。
「これが石井バージョンなんですよ」とその腐乳にお酢をかけてかき混ぜながら伊東さんが教えてくれます。「これをカシラブツにからめて食べるとうまいんです」。へぇ、そんな食べ方があるんだ。ど~れどれ。あ。ほんと。これはおもしろいなぁ。しかもそのままだとけっこう脂っこいカシラが、腐乳+酢の影響なのかさっぱりとした味わいになって実にうまい!
伊東さんは2杯目の飲み物としてお酒(日本酒)を注文。「平日に焼酎を2杯やっちゃうとちょっときついですからねぇ」。きちんと自己制御をしながら飲んでられるんですね。それがなかなかむずかしいんですよね。特に複数人で飲んでるときは。私はヤカン(焼酎、350円)をもう1杯お願いします。
入口近くのお客さんから辣白菜(ラーパーツァイと読み白菜の漬物のこと、300円)の注文が入ります。店長がその辣白菜を用意しながら「伊東さんも辣白菜食べる?」と確認。「はい。お願いします」と伊東さんが答えると、もう1人前辣白菜を用意してくれます。これも今日はじめて見ましたが、辣白菜は白菜の大きな葉のまま漬け込まれていて、注文を受けてから食べやすい大きさにカットしていくんですね。
辣白菜は、いわゆる和風の白菜漬けとは違い、やや甘い感じの漬け物。これがまた不思議とクセになる味わいなのです。
目の前では、今度は内臓肉がスライスされ始めます。「チュウトウですね」と説明してくれる伊東さん。「チュウトウってなに?」「胃袋のことなんですよ。」「へぇ。どうしてチュウトウって言うんですか?」「どうしてでしょうねぇ。私もよく知らないんですよ」。(後日、伊東さんからこの件に関して追加情報をいただきました。豚の胃袋を意味する「猪肚」の中国語読みが「チュウトウ」なのだそうです。)
7時半から9時まで。カシラのブツで「味珍」を堪能して今日はふたり分でちょうど3千円(ひとりあたり1,500円)でした。
これにて第1回「伊東さんと行く横浜酒場紀行」(仮称)は終了。どうもお忙しい中ありがとうございました。また第2回以降もよろしくお願いします。>伊東さん
そうそう。横浜駅の地下街(成城石井ルミネ横浜店、045-461-5551)で、伊東さんおすすめの「山崎蒸溜所“仕込水”割り オン・ザ・ロック ウイスキー」(225ml、380円)というのを買って帰ったのですが、これがまたバカうま! キー・モルトは「山崎蒸溜所シェリーカスク1991」で年数表示は12年となっています。これを仕込み水でアルコール度数が12%になるように割った状態で売っている。(サントリーの記事、All Aboutの記事)
「やき屋」で出されるブラックニッカの水割りボトルもそうですが、メーカーであらかじめ水割りの状態にまでして売っている水割りのウイスキーは本当にうまいんですよねぇ。やっぱり水が違うからかなぁ。そういえば、焼酎を売り物にしている店でも、その焼酎の仕込み水で焼酎を割って、何日か寝かしたものを燗づけてくれたりしますよね。おそらく「仕込み水で割る」「割った状態で十分に寝かせる」という2点が秘訣んでしょうね。
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コメント
ヤカンの容器、中東風で美しい形ですよね。
以前は、本当のヤカンを使っていたそうなので、その名残でしょうか。
投稿: 吉田 | 2005.03.02 19:16
どっかに写真があったなぁと探してみたら、「味珍」のホームページの一部でした。
http://www.maichin.co.jp/tenpo_aji.html
おっしゃるとおり、中東風の美しい形ですね。>吉田さん
投稿: 浜田信郎 | 2005.03.06 20:34