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根っこが甘いホウレン草 … 居酒屋「北国(きたぐに)」(中野)

金曜日です。今日は中野に出てみようかな。中央線沿線は駅の周辺に飲み屋街が広がっているところが多いのですが、そういう中にあって中野駅北口側、中野ブロードウェイ周辺の飲み屋街の広がり、奥深さは他を圧するものがあります。このあたり、住所で言うと中野5丁目。私が行ったことがあるお店の中では「ブリック」「」「第二力酒蔵」「川二郎」「路傍」「羊仔」「らんまん」などがこの地域のお店ですが、それこそ星の数ほどあるのではないかというような5丁目飲み屋街の中のほんの一部でしかありません。

今日はそんな北口飲み屋街ではなくて南口側。「北国」のおでんからはじめましょうか。なにしろ寒いので、つい「おでんに燗酒」といったコースにひかれちゃうんですよね。

「こんばんは」。金曜日だから多いかなと思いながら入った午後7時半の「北国」の先客は3人。これは意外ですねぇ。「お断りしなけりゃならないくらいいっぱいのときもあれば、ガラガラのときもあるのよ。うまくバランスが取れてくれればいいんだけど、こればっかりはねぇ。水商売とはよくいったもんだわ」とお通しのお吸物を出してくれながら笑うユミさん(←店を手伝っている女性で、ママさんの姪)。ほんとにねぇ。

「なんにする?」とカウンターの中のママさん。「お酒ください。」「熱いの?」「そう」。カウンターの後ろ、バーで言えばバックバーの部分には日本酒の一升瓶が4本並んでいます。「剣菱」「八鶴」「桃川」、そして「新政」です。前の3種はいつもあるけど、「新政」ははじめて見たなぁ。振り向いたママさんの手はその「新政」に伸びます。

柚(ゆず)の香りのよく効いたお吸物をズズッとすすりながら待っているところへお酒が出てきました。「はい、どうぞ」。最初の1杯はお酌してくれます。「どうもありがとうございます」とお猪口で受けてツツゥとひと口。あぁ、うまいっ。あったまるなぁ。このお吸物の中に入っている大きなしんじょがまたいいつまみになります。

さて先客の3人。カウンターの奥に陣取るのは以前「わびしいひとり暮らし」の件で大笑いさせていただいた男性客。そしてカウンター中央は女性ひとり客。このお店も女性のひとり客が非常に多いのです。このカウンター中央は背後に大きな柱があり、だれも通らないときにはその柱にもたれて座ることができるという特等席なのです。その昔、井伏鱒二氏もこの席がお好みだったと聞きました。その女性客の入り口側が私。カウンターの角を曲がってL字(左右は逆)の短辺には男性ひとり客。このお客さんもよく見かけるお客さんで、私が見かけるときはいつも焼き魚をつっつながら燗酒を飲み、文庫本を読んでいるのです。どっちかというとほの暗い店内なので、本を読むには照度が足りないんじゃないかなぁ、なんて心配してしまいます。

さぁ。じゃいよいよおでんにいきますか。え~と。玉子とぉ、がんもとぉ。あと、イカボールください。「はぁ~い」と目の前のおでん鍋からひとつずつお皿に盛ってくれて、最後にコンブを1個入れてくれます。

ここの玉子は殻付きのままのゆで玉子を、おでん鍋に投入する前にコツンと鍋の横にぶつけてヒビだけ入れて煮込まれています。理由は聞いてませんが、こうすることで玉子が煮くずれたり、それによっておでんの汁が濁ってしまうことを防いでるのかなぁ。そのかわり、こうやってお皿に盛られてからアッチッチと殻をむかなければなりません。おでんとともに煮込んでいるせいか、すぐにクリンとむけるんですけどね。

「はい。こんばんは」。ひとり、そしてまたひとりと常連さんたちが顔を出しはじめます。なるほど、みなさん今日は遅め(現在8時を回ったところ)の出陣なんですね。

お酒(「新政」の燗)をおかわりし、2回目のおでんとして大根、スジ(魚のスジ)、厚揚げ(+最後にコンブ)をもらうころにはなんとカウンターは満席で、後ろのテーブル席にもお客さんがふたり(男性ひとり客×2)入っている状態。ユミさんが「今日はガラガラ」なんて言ってたのが嘘のようなにぎわいになってきました。

やはりおでんはとっても人気の品。みなさんまずはおでんからスタートです。「玉子の浅いのね」。常連さんたちの注文はおもしろい。「浅いのって?」思わず質問します。「入れてからあんまり時間がたってないののこと。出汁が染みこんだのはいやなんだよ」とお客さん。へぇ。私なんか染みこみすぎくらいになってるほうが好きなのになぁ。

「ほらっ。ママッ」とビール瓶を差し出す常連さん。「ありがとう」とグラスを差し出すママさんにトトトッとビールを注ぎます。「ほらっ。ユミちゃんも」とユミさんにも。鷺ノ宮の「ペルル」でも、お客さんがマスターにワインを注いだりしてますが、ここではそれがビール。この光景はよく見かけます。ママさんは先日入院して以降、ビールは1日3杯までと決めているのだそうで、今日はこれで3杯目。「これが最後の1杯だわ」とおいしそうに口に運んでいます。

「そういやその後の体調はどうなの」なんて話からママさんの病気のその後の話になります。「なぁに。ママが出られなくなってきたら、かわりにユミちゃんがやればいいじゃないか」というお客さんに、「だめよ。私はやれないわ。ここは叔母一代のお店なのよ。叔母は叔母の人生。私は私の人生だもの」と静かに、でも真剣に語るユミさん。たしかに、手伝ってるという状態と、自分が主(あるじ)として切り盛りしていかなければならないという状態とはうんと違いますもんねぇ。ちょっと残念な気はするけど…。

向こうのお客さんから「れん草おひたし、ちょうだい」と注文が飛びます。「それ、私も。あとお酒もおかわりください」と便乗注文。「れん草おひたし」(280円←壁のメニューに書かれている品物は値段明記。それ以外の飲み物やおでんは値段は特に書かれていません。)はホウレン草のおひたし。小鉢にたっぷりと盛られたホウレン草に、カツオ節がこれまたたっぷりとかけられています。醤油をササッと回しかけてまずひとつまみ。秋から冬(11月~1月ごろ)はホウレン草本来の旬の時期。緑色も鮮やかでとってもおいしいのです。ここの「れん草おひたし」にはホウレン草の根っこの赤い部分も入っている。これがまたほんわり甘くて、ポパイじゃないけど力がわいて出そうです。(笑)

やぁ、おいしかった。私はそろそろ腰をあげますか。午後9時過ぎまで約1時間半楽しんで、今日は2,630円でした。それじゃみなさん、お先に。どうもごちそうさまでした。

実は、これと同じときに「寄り道Blog」の寄り道さんも、同じ中野の「八千代」でおでんに燗酒を楽しんでおられたのだそうです。またまたニアミスですね。詳しくは「寄り道Blog」のそのときの記事をどうぞ。

店情報 (前回)

《平成17(2005)年1月21日(金)の記録》

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「おでんが食べたいなぁ」。先日、「ナポリ」でおでんをつついたせいか、今日はなんだか無性におでんが食べたい気分。となると「北国」かな。都内の仕事からの帰り道、中野駅で途中下車します。 「こんばんは」と「北国」の引き戸を開けたのは午後8時半。店内左手のカウンター席は常連さんたちでうまり、かろうじて一番手前、L字(左右逆)の短辺の角付近があいているのみ。その席にママさんが「いらっしゃい」とおしぼりを置い... [続きを読む]

受信: 2005.06.05 22:19

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