アードベッグ白ラベル … バー「赤坂グレース」(赤坂見附)
「北島亭」を出て、友人とふたりで赤坂見附のレストラン・バー「赤坂グレース」へと向かいます。彼はここ「赤坂グレース」も20年以上の行きつけなのです。
「こんばんは」と店に入ったのは午後10時。土曜日ということもあってか、店内は他のお客さんはなし。まずは「ザ・マッカラン(The Macallan)」(ヴィンテージ[1964年])からスタートです。
今日も最後の最後はなにしろ「アードベッグ(Ardbeg)」でしめたい。しかし、このアイラのお酒はものすごく個性が強いので、最初にこれを飲んじゃうとほかのお酒が弱々しく感じてしまう。
逆に「ザ・マッカラン」は、シェリー樽の香りも華やかな、キラキラ輝くような味わいのウイスキー。一番最初にいただくのに向いているように思います。だからこのところ最初は「ザ・マッカラン」。そしてほかのお酒をいただいたりして、最後に「アードベッグ」にたどり着くという飲み方になってきているのでした。お寿司のときに白身魚から入って、じわりと大トロに向かっていくような感じかなぁ。
店主の久保村さんは今日もカウンターの中でいろんなお酒の話を聞かせてくれます。
2杯目はコニャック「ボルドリ(Borderies)」をいただきます。この店は、特に古い洋酒を中心に品ぞろえが豊富で、この「ボルドリ」も100年くらい前、明治33(1900)年ころに瓶詰めされたもののようです。いわゆるカスク(樽出しそのまま)の状態で、加水されていないこのお酒はブドウのこくがたっぷり。とても力強いブランデーなのです。
肴のほうは、厨房を担当しているカツ子さん(久保村マスターの奥様)が、鴨のスモークや野菜とソーセージのスープなどを出してくれます。洋酒の場合にもスープがつまみになるのがおもしろいですね。
さぁ、そしていよいよ「アードベッグ」です。アードベッグ(Ardbeg)というのはゲール語で「小さな岬」という意味なのだそうです。もともとピート(草炭)の香りが強いアイラ島のウイスキーの中でも、この「アードベッグ」はその度合いがもっとも強い。まさにヨードチンキ風とも言われる風味でいっぱいのお酒なのです。アードベッグ蒸留所は1815年に創業したのですが、その後浮き沈みを繰り返し、休業したりしていた。現在の「アードベッグ」はグレンモーレンジ社が買収した1997年以降のもので、黒いラベルの10年ものが市場で最もよく見かけるタイプです。(もちろん、買収した時点でそれより以前に貯蔵されている樽なども含めて買収してますので、現在でも1970年代の「アードベッグ」などを市場に出すことができるわけです。)
ここ「赤坂グレース」にも、その黒ラベルの「アードベッグ」はたくさん置いてあるのですが、このところ飲んでいるものはグレンモーレンジ社が買収する前の、白いラベルの「アードベッグ」なのです。これは市場にはほとんど出てないんじゃないかなぁ。
この白ラベルの「アードベッグ」を飲むと、普通の黒ラベルの「アードベッグ」がプレーンにさえ感じてしまうからおもしろい。とんがった感じは黒ラベルの方が強いのですが、深みがまったく違う。同じ蒸留所で同じように造ってるはずなんですが、なにかが微妙に違うんでしょうね。
「アードベッグ」のおかわりをお願いします。
そして最後にカツ子さんが出してくれた料理はカニ雑炊です。「北島亭」であんなにたくさんのフランス料理を堪能したというのに、カニ雑炊はカニ雑炊で、また美味しくいただけてしまうのが不思議なり。
約2時間の滞在で、ちょうど日付けが変わるころに店を後にしたのでした。
そうそう。「北島亭」も、ここ「赤坂グレース」も、宮下裕史さんの書かれた「職人で選ぶ45歳からのレストラン」に出ていることを、今日知りました。「北島亭」にこの本が置いてあって、それを見せてもらっていたら、なんと「赤坂グレース」も出ている。こっちのお店に来てからその話をしたら、この店にもちゃんとその本がありました。「赤坂グレース」はあまり本に出ることがない店なので貴重かも。
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