『たこちく』って!? … 立ち飲み「武蔵屋酒店(ムサシヤ)」(大井町)
うなぎの「むら上」を出るとまだ5時。なにしろ大井町ですからねぇ。次いってみましょう!
「むら上」のある平和小路を抜け東小路へ。洋食の「ブルドック食堂」やもつ焼き屋さんなどの並ぶ路地を通過すると小さな交差点に出ます。ここを右に曲がるとすぐ左手が立ち飲みができる肉屋、「肉のまえかわ」です。5時を回ったばかりなのにもう大盛況ですねぇ!
「肉のまえかわ」を横目に見ながら右手を見ると、今度は立ち飲みのできる酒屋、「武蔵屋酒店」です。今日はこの「武蔵屋酒店」に引っかかってみましょうか。
「武蔵屋酒店」は普通の間口の広い酒屋さんなのですが、その酒屋の右手に細長~い通路のような部分があり、そこに立ち飲みカウンターが用意されているのです。入口には扉もなにもなく、そのまま通路の奥に進みます。通路は4~5メートルほどあるでしょうか。まさに人ひとりがやっと通れるくらいの幅しかなくて、その左手側に立ち飲みカウンターがあって、店との間はガラス窓で仕切られていますが、窓はもちろん開けっ放し。でなきゃ品物の受け渡しもできませんもんね。カウンターの奥には先客の男性が2人。その2人の次くらいの場所に陣取ります。
「お客さんだよぉ」。一番奥のお客さんが店のおねえさんに声をかけてくれます。「はい。なんにしましょう」と窓の向こう側に来てくれたおねえさんに「ビールの小瓶をお願いします」と注文します。
さっきもビールを飲んだばかりなので、本当は違うものをたのもうと思ってたのですが、おねえさんが注文を取りに来てくれるまでに飲み物のメニューを見つけられなかったのでした。スッと飲んでサッと帰るが身上の立ち飲み屋で、パッと飲み物の注文ができないとカッコ悪いですもんねぇ。あわてて必ずありそうなビールを注文してしまった次第です。(涙)
酒屋さんの大きな冷蔵庫から小瓶のビール(スーパードライ)を取り出したおねえさん。ポンッと栓を抜いて、コップとともに窓越しに渡してくれます。「230円です」。なるほどここはキャッシュ・オン・デリバリー(受け取り時点払い)なんですね。「はい」と千円札を差し出します。「770円お返しします」とカウンター上に置いてくれたおつり。このまま置いておいていいのかな。チラッと右の先客ふたりの前を確認。う~む。飲み物とつまみは置いてるものの、小銭は見あたりません。私も770円を手にとり、そのままズボンのポケットにジャラリとしまいます。
釣銭をそのままカウンター上に置いておいて、次の注文のときにお店の人にそこから勝手に取っていってもらうスタイルのお店と、毎回その時点でお金を取り出して支払うスタイルのお店とがありますが、このふたつは特に明示されてるわけではない。そのお店がどっちのスタイルなのかは先客たちの様子を観察するしかないんですよねぇ。
トクトクトクっとビールを注ぎ、ググゥ~ッとまず1杯。あぁ。これで落ちついた。はじめての店は、やっぱりちょっと緊張するんですよねぇ。
ところでお酒のメニュー、どこにあるんだろうなぁ。キョロキョロ。ないじゃん。目の前の壁にはおつまみメニューが張ってあるんだけど、これがまた安いこと。50円くらいのものから始まってたいていのものが100円とか200円とかそんなもん。窓越しに店内を見ると、缶詰や袋菓子もた~くさん並んでいる。おろっ。「たこちく」(120円)なんつうのがある。こりゃきっとタコの入った竹輪だな。すみませ~ん。「たこちく」をひとつくださ~い。
「は~い。120円です」とビニール袋に入った竹輪を1本窓越しに手渡してくれます。「なにぃ。たこちくぅ」。となりで飲んでたおじさんがこっちをジロリ。「竹輪にタコが入ってんのかい」とおじさん。「そうみたいです」と言いつつ袋をピッと裂いて、パクリとひと口。「オレはいつもタコ塩辛(100円)なんだけどよ。タコの竹輪もあるんだなぁ。甘くねぇか。だいたい竹輪は甘いからあんまり好きじゃないんだよ」とおじさん。「なるほど。そう言われてみれば竹輪ってちょっと甘みがありますね。この竹輪もたしかに甘い。でも私なんか練りものが大好きなもんで」なんてことで、となり近所との会話も始まってまたひと安心。地域の立ち飲み屋さんにくると、なかなかそのコミュニティにとけ込めないことがありますからねぇ。こうやってすっと入れるとゆったりと楽しむことができます。
一番奥のおにいさんはビールを飲み終わって焼酎とウーロン茶を注文。なるほど、こうやって自分でウーロンハイにしちゃうんですね。
新しいお客さんが入ってきて私の左どなりへ。チューハイとチーズを注文しています。チューハイはなんと缶チューハイそのまま。そうだよね。酒屋さんだもんね。チーズは6Pチーズの1切れ。このなんでもないチーズがまたうまそうに感じてしまうんですよね。あ。飲み物メニュー発見。左どなりのおじさんの横の柱。私のほうから見ると、ちょうど柱の反対側にあるではありませんか。ビールや日本酒、焼酎のほかワインや朝鮮人参酒なんてのも並んでいる。220円ものが多いかな。
そんじゃ、お酒(220円)と私にもタコ塩辛(100円)ください。
右どなりでタコ塩辛をつっついてたおじさんが「おっ」という感じでこっちを見ます。こっちもニッと笑い返して「たのんじゃいましたよ。タコ塩辛」。「うまいよ。オレなんかいっつもこれ」とおじさん。タコ塩辛は小さい器に入って、爪楊枝が1本刺さって出てきます。塩辛をひと切れひと切れ爪楊枝でつっつきながら食べるのもおつなもんですねぇ。
お酒は銘柄不明の冷や酒。いわゆる常温ってやつですね。化学系の人たちに言わせると「常温ってのは摂氏0度のことを言うんだ。冷やしてない酒のことは室温と言え、室温と。だいたい昔は室温の酒のことを冷や酒(ひやざけ)って言ったもんだ」なんてことらしいのですが、いまやすっかり常温という言葉が定着してますよね。冷や酒なんて、もはや死語!?
その冷や酒がタコの塩辛といいマッチングなのです。うまいよなぁ。
「だめだ。負けちゃったよぉ」と大声で今日のギャンブルの結果を口にしながら入ってきた新しいお客さん。私の後ろを通って奥のふたりと私の間に。みんながちょっとだけつめればいくらでも入れちゃうのが立ち飲みのいいところです。「いつものね」みたいな感じで注文するお客さんに、ワンカップのお酒がトンと出されます。
そうかぁ。柱のメニューには「日本酒 220円」なんて書いてあるけど、なにしろ酒屋さんだから、店の中にあるお酒ならなにをもらってもいいんだ。自分の好きな銘柄のワンカップがあれば、それをもらうのが一番いいですもんね。これは気がつかなかったなぁ。
さっきから窓の向こう側に男性がいて、お店のおじさんかなぁと思っていたのですが、なんとこの人もお客さん。立ち飲みカウンターの反対側の店内で立ち飲んでいるではありませんか。よく見ると他にも何人かが店内側に立って飲んでいる。なんだ、向こう側でも立ち飲みできるんですね。
どうすっかなぁ。大井町だから、さらにもう1軒行ってみますか。だとするとこれくらいで切り上げとかなきゃ後がもたないなぁ。よ~し、おしまい。どうもごちそうさん。それじゃみなさん、お先にぃ!
約35分の滞在。2品と2杯(ビール小+お酒)で670円でした。1軒目と合わせて、この時点で1,420円。安いぞ、大井町!
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