鯉と鰻とたぬき豆腐 … 居酒屋「まるます家(まるますや)」(赤羽)
息子のサッカーの試合があり、江戸川の河川敷にあるグランドで応援です。残念ながら1試合目で負けてしまい、昼12時半ごろには応援も終了。最寄り駅である浮間船度(うきまふなど)駅から帰りの電車に乗り込みます。浮間船度から都心に向かって2駅行ったところが赤羽です。昼ごはんも食べていないので、ちょっと寄り道して帰りましょうね。
実はこの寄り道は当初から予定の行動だったという説もありまして、うちのカミサンなんて、私がわが家を出るときから「昼間から飲み過ぎないように。ちゃんと帰ってきてよ!」なんて言ってましたもんねぇ。なんで行動パターンを読まれちゃったかなぁ。
ま、なにしろ赤羽ですからねぇ。朝から飲めるお店がけっこうあるんです。たとえば立ち飲みの「いこい」。たとえば鯉とうなぎの「まるます家」。この2軒が有名ですが、駅を降りてその辺の商店街をフラフラしてると他にも開いているお店に出くわします。朝から飲んでることを容認するような町の寛大さがあるのかもねぇ。なにしろ旧街道(中山道)沿いですもん。
今日は応援の間ずっと立ってたので立ち飲みはパスして1番街商店街を「まるます家」のほうへと向かいます。大型連休初日の祝日(みどりの日)とあって休みのお店も多いなか、かなたに見える「まるます家」のずらりとならんだ提灯にひと安心しながら店に着いたのは1時過ぎ。なんとねぇ、店内はほぼ満席じゃないですか。ダブル「コ」の字のカウンターには、それぞれのカウンターに空席が1~2席ずつ。左手のテーブル席はすべて埋まっています。
私もダブル「コ」の字の左側のカウンター、そうあの歌うように注文のやり取りをしてくれるおねえさんのカウンターのかろうじて空いていた1席に陣取ります。ここは「コ」の字で言うと下の辺の真ん中あたりというポジション(お店の呼び方では4番の席)なのですが、ちょうど左側に金属製の丸い柱があって、そこにもたれることができるのです。ある意味一等席かも!
「ビールと鯉のあらいをお願いします。」「アイヨッ。はい、ご新規4番さん、おビールと鯉のあらいです」と歌うように注文を通します。この声は奥の厨房とダブル「コ」の字の中央にいる女将さんらしき女性(年齢は目の前のおねえさんといっしょくらいかなぁ)に届きます。「はい。ご新規4番さん。おビールと鯉のあらいね」と女将さんが復唱。最後のお会計はこの女将さんがしてくれるので、どうやらこのときにレシートにつけられているようですね。
ビールはサッポロラガービール(いわゆる赤ボシ)の大ビンが500円。このほかに生ビール(大が650円でと小が350円)や黒ビール(エビス)などがあります。
なにしろ「鯉とうなぎのまるます家」と看板にも書かれているくらいで、鯉はこの店の看板商品のひとつ。鯉のあらい(350円)もあっという間に出てきます。どうよこのきれいな刺身。さっと冷水であらわれた鯉の薄い切り身は表面が白っぽくなってみるからにしっかりとした感じ。これを一緒に出される酢味噌でいただくのです。1枚持ち上げるとその大きいこと、きれいこと。ちょんと酢味噌をつけて口中へ。ん~。涼やか。
今日の東京地方、気温が30度になろうかというくらい暑い1日。おそらく今年に入って一番高い気温をマークしたんじゃないかなぁ。そんな中でのサッカー観戦とあって、とにかく冷たいものを口に入れたくてしかたなかったのです。このビールと鯉のあらいですっかり満足です。
私の正面に座って、生ビールの小を飲んでるおじいさんのところへウナ丼が届きます。ここはウナ重は1,000円からですが、ウナ丼だけはサービス品なのか750円で肝吸いもついているのです。おそらく量は違うんでしょうけど、肝吸いは単品だと250円ですからいかにお得なサービス品かってとこですね。先ほどからウナ丼の注文はひっきりなしに入っています。
店内のお客さんは例によって老若男女まんべんなく。ありゃ。ちょっと気づかぬうちに満席になってすみっこの待合用の椅子で待ってる人もいるんですね。こりゃ昼から大盛況だ。食事だけの人も何人かはいるのかもしれませんが、私のまわりはほとんど飲み物をもらって飲んでいる。正面のおじいさんのように飲み物とつまみを何品かもらって、最後にウナ丼でしめるってなパターンが多いようですね。
さて私も2品目はウナギにしてみようかな。なにしろ「鯉とうなぎ」のお店ですからね。さっき左のおにいさんが「肝焼きはまだ?」と聞いたら「肝焼きは夕方になってからです」って答えてたなぁ。ということはこの時間帯うなぎの肝焼きはないんだ。かといって蒲焼き、白焼きというのもなぁ。お。「うなぎのバラ身ポンズ合え」(350円)なんてのがある。値段から見てもかなりつまみっぽいので、これにしてみるか。「アイヨッ。バラ身いっちょう、4番さん」とリズミカルに注文を通すおねえさん。
このバラ身ポンズ合えもあらかじめ用意されているらしく、すぐに出てきました。なぁるほど。バラ身というのはウナギの骨ぎわの身みたいですね。小鉢の中には細長い身がた~くさん入っていて、上に紅葉おろしと刻みネギがのっかっています。グリグリっとかき回して、全体を均等な味にしておいていただきま~す。うん。いいねぇ、これも。もともと「川二郎」なんかで食べてもバラ身のところはおいしいもんねぇ。
よしっ。それじゃ燗酒いきますか。「すみません。」「アイヨッ。」「お酒。富久娘をお願いします。」「温っためる。」「えぇ。温っためてください。」「アイヨッ。はい、4番さん、カワイコちゃんホットでいっちょう!」「はいっ。カワイコちゃんホット、4番さんね」と注文が通ります。
ここのお酒は「金升(きんます)」(300円)と「富久娘(ふくむすめ)」(350円)の2種類があって、富久娘のほうは「カワイコちゃん」という符丁で呼ばれているのです。今回はその「カワイコちゃんいっちょう!」という通し符丁をぜひ聞きたくて、あえて富久娘を注文してみたのでした。ちなみに「金升」のほうが徳利の形をしたガラス容器に入っていて、それがそのまま出てくるのに対して、「富久娘」は陶器の徳利に入れられて出てきます。
ックゥ~ッ。お酒といっしょにいただくと、バラ身ポンズ合えはますますいいつまみになりますねぇ。
バラ身をつつきながらも、目は壁にずらりと張られたメニューを追っかけて次のつまみを選んでいます。牛スジ煮込み(450円)も捨てがたいなぁ。お。向こうのおにいさん、スッポン鍋(700円)を注文したぞ。このスッポン鍋も一度食べてみたい品物なんだけどなぁ。いかんせん今日は暑いよなぁ。ナマズ唐揚げ(500円)にもひかれるなぁ。あれもこれも食べたいものばかり。
出てきた出てきた。スッポン鍋だ。人の注文品ながら気になって仕方がない。「はい、スッポン鍋お待たせしました。スープが残ったら雑炊にできますからね」。ぬわにぃ。スッポン鍋が700円と言うだけで「ん? ゼロの数が足りないんじゃないの?」みたいな状態なのに、これでさらに雑炊まで楽しめちゃいますか!? う~む。「まるます家」おそるべし、赤羽おそるべし。
満席状態はずっと続いていて、待ってる人がいる状態もずっと続いている。回転してないわけではなくて、次々と新しいお客さんに切り替わってはいるんですが、さらに新しいお客さんがやってきて、ちょうど2~3人が待ってるという状態でうまくバランスしているようです。というか、他にものぞいていく人は多いんですが、何人か待っているのを見て、あきらめて去っていくのでした。
メニューだけだとどんなものが出てくるのかわからない品も何品かあるので、そのうちの一品、「たぬき豆腐」(450円)を注文してみましょうか。「アイヨッ。4番さん、たぬき豆腐いっちょう!」
御徒町の「佐原屋」の湯豆腐のようなものが出てくるんじゃないかなぁ、というのが私の予想なんだけどどうかなぁ。「佐原屋」の湯豆腐というのは、温められたお湯なし湯豆腐の上に天カスがたっぷりと乗せられた一品で、「佐原屋」の名物でもあるのです。
「はい。たぬき豆腐のお客さま。お待たせしました」と出てきたのは丼鉢。えぇっ。これがたぬき豆腐。心の中ではすっかり「佐原屋」の湯豆腐イメージだったので、熱いことを想定しながら手を伸ばして受け取った丼は冷たい! しかもツユがたっぷりと張られていて、その上にこれでもかというくらい天カスとワカメがてんこ盛り。さらにカニカマものっかって、チリレンゲが添えられています。こいつはすごいボリュームだなぁ。チリレンゲを手にとってエイッと丼の内部につきさすと、大きな豆腐のかたまりにあたります。なるほど、ちょうど丼と同じくらいの大きさに切られた四角い豆腐が2段重ねになってるんですね。単純に言えば冷やしたぬきソバのソバが冷やっこに変わったものといった感じかな。これはつまみとしてもおもしろいけど、単に食べ物として食べてもうまいなぁ。
私の斜め後ろの待合席で順番待ちをしていたおにいさんも、席に着くなりチューハイとたぬき豆腐を、そして右どなりのおにいさんもたぬき豆腐を注文して、こちらのカウンターは一躍たぬき豆腐ブームが訪れています。このたぬき豆腐、温っためて食べてもうまいかもね。
最後にウナ丼でも食べてしめようかと思っていたのですが、このたぬき豆腐ですっかり満腹。もうこれで十分な状態になってしまいました。どうもごちそうさま。「はいっ。4番さん、お会計。ビールとカワイコちゃんです」と飲み物だけをカウンター中央に連絡。カウンター中央の女将さんから「ちょうど2千円です」という声が返ります。「はいはい。どうもごちそうさまでした」とお勘定をすませます。午後2時半過ぎまで1時間半の滞在。「どうもありがとうございました」の声に見送られながら、まるで真夏のような暑さの赤羽の町へと踏み出したのでした。
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コメント
こんにちは。
まるます家のたぬき豆腐ですが、たしか温冷を選べたような気がします。
以前に注文時に、「温かいのにする?冷たいのにする?」と聞かれたことがあります。
ただ結構前のことなので、あやしい記憶ですが...。
歌うように注文を通すおねえさんですが、おそらく小柄な方だと思います。
私はついつい、このおねえさんが担当しているカウンターへ座ってしまいます。
投稿: 梅ちゅー | 2005.05.16 00:34
やっぱり温かいのもありますか。>梅ちゅーさん
おっしゃるとおり、歌うように注文を通すおねえさんの側が人気が高いようで、こちらのカウンターから先にいっぱいになっていくようです。
元気がよくて、対応が早く、飲んでて気持ちがいいですもんね。
投稿: 浜田信郎 | 2005.05.22 12:05