おでんの季節終了 … 酒亭「北国(きたぐに)」(中野)
「おでんが食べたいなぁ」。先日、「ナポリ」でおでんをつついたせいか、今日はなんだか無性におでんが食べたい気分。となると「北国」かな。都内の仕事からの帰り道、中野駅で途中下車します。
「こんばんは」と「北国」の引き戸を開けたのは午後8時半。店内左手のカウンター席は常連さんたちでうまり、かろうじて一番手前、L字(左右逆)の短辺の角付近があいているのみ。その席にママさんが「いらっしゃい」とおしぼりを置いてくれます。
「ウイスキーをお願いします」。ここのウイスキーはホワイトの水割り。ここではウイスキーの水割りにも、焼酎の水割りにもレモンスライスが入れられます。このレモンスライスは1杯いただくごとに1個ずつ追加されていくので、グラスの中に入ってるレモンスライスの数で何杯飲んだかがわかるようになっているのです。
水割りだけしかないかというとそうでもなくて、私の右側、L字長辺の一番下のところに座っている常連のアオちゃんはハイボールが好き。いつも「ウイスキーと炭酸」とたのんでいます。そうすると、水で割る直前の状態まで準備ができたウイスキーのグラスと、ペットボトル入りの炭酸水が渡されるので、自分でハイボールにするのです。
「はい、どうぞ」とウイスキーの水割りが出てきました。奥の厨房からはユミさんがお通しの空豆を持ってきてくれます。
クッとひと口目のウイスキーをいただいて、さぁ、おでん。あれっ!? ここにあるはずのおでん鍋がない! そうかぁ。空豆も出る季節になって、もう今シーズンのおでんは終了したんだ。残念だなぁ。でも、気分はすっかり「おでんモード」なので、何かおでんに近いつまみを選ぼっと。え~と。お。「あつどーふ」(380円)か。きっと熱い豆腐なんでしょうね。これにしましょう。
左どなりにいるのは常連のナカちゃん。いつも大体この席に座って本を読みながら静かに飲まれてるんです。今日もアジの干物をつっつきながら、燗酒を飲みつつ読書中。そういえば、いつも焼き魚を召し上がってますねぇ。
「あつどーふ出るから、みんな動かないでね」とユミさんから声がかかり、湯気の立ちのぼるひとり用土鍋を持ったユミさんが、カウンターに並ぶみなさんの後ろを通って私の席へ。「熱いからね」といいながら、カウンター上に裏返して置かれた土鍋のふたの上に土鍋を置いてくれます。カウンターの中のママさんからはつけツユが渡されます。なるほど。「あつどーふ」は湯豆腐なんですね。大好きです、湯豆腐。
ウイスキーの水割りもおかわりをもらいましょう。
カウンターの長辺やや奥にいる常連のテラちゃんは、となりの常連のご老人と昔の酒場について話をしています。この店の常連さんは、アオちゃん、ナカちゃん、テラちゃんといったように、それぞれが「ちゃん」付けで呼び合ってるのがおもしろいですよねぇ。
「昔はカフェーといって、ちょっとエロチックな店があったんだなぁ。我われもよく通ってたんだよ」と懐かしげに語るご老人。その話を聞くともなしに聞いていたとなりのナカちゃんも、ふと読んでた本から目を上げて、「懐かしいなぁ。カフェー↑って尻上がりに発音するんだよね。フランスのカフェ↓とは全然違うんだ」と会話に加わります。へぇ。それにしても「エロチック」という言葉自体もなんだかノスタルジックですよねぇ。
この店は地元の年配のお客さんも多くて、昔の懐かしい話をいろいろとうかがうことができるのです。年齢的には毎度のことながら40代半ばの私が一番若いくらいで、上は80代くらいのお客さんまでと、平均年齢は上めですが、年齢の幅は広いのです。ここは店中で同じ話題で盛り上がっていくようなタイプの酒場なのですが、こうやって年もいろいろ、職業もいろいろな人が集まってるので、話題も広がっておもしろいんです。
まだ火曜日なので、サックリと切り上げますか。どうもごちそうさま。「はい。今日はイチ・サン・パ(1,380円)」とママさんが計算してくれます。1時間強の滞在でした。
| 固定リンク
コメント