“みそだき”に“生簀の活魚” … 呉の「とりや」
広島から通勤ライナーで30分。呉(くれ)に到着です。駅前のホテルにチェックインして、さっそく夜の街に出かけます。
呉は就職直後の6年間、年齢でいうと24才から29才までという、まさに20代後半の遊び盛りの時期を過ごした思い出の土地なのです。当時は会社の独身寮に住んでいたのですが、会社の帰りにはたいてい呉の飲み屋街に引っかかってしまう。たまに引っかからない日があっても、独身寮の中でも「ひふみ」というスナックが営業していたこともあって、まさに飲まない日はないほど呑んだくれてたのでした。
呉で飲むときはだいたいパターンが決まっていて、1軒目は地元の人たちが“とりや(鳥屋)”と呼ぶ、焼き鳥屋に行くのが定番です。「とりや」という名称の酒場があるわけではなく、実際には「鳥八」だとか「三とり」「鳥好」といった名前で、それぞれ第1、第2、第3なんて何軒か店舗があったりするのです。どの店の看板にも「焼き鳥と活魚」とあることからもわかるとおり、焼き鳥屋といいつつも、その実態は新鮮な魚が手軽に食べられるお店なのです。
数ある“とりや”の中の1軒に入ります。店は右手に直線カウンター、左手が小上がりの座敷になっていて、先客は5~6人。カウンターの中ほどに腰をおろし瓶ビール(キリンラガー、大ビン、600円)と「みそだき」(200円)を注文。この「みそだき」が、これまた“とりや”の特徴のひとつなのです。店によって「みそだき」とか「みそ煮」「みそ煮込み」と名称はさまざまですが、どの店に入っても「“みそ”ください」と言えば通じる一品。その内容は“鶏の皮の味噌煮込み”なのです。東京で食べる“もつ煮込み”と同じようなものかな。ビールとともにまず一品って感じの品物なのです。
店の入口近くには大きな生簀(いけす)があり、アジ、カワハギ(地元の人たちはハゲと呼ぶ)などが泳いでいます。生簀の底のほうにはヒラメの姿も。この生簀がまた“とりや”の特徴。どの店にも必ず生簀があるのです。音戸の瀬戸の向こう側の島々から届く新鮮な魚を、この生簀に入れておいて、注文を受けてさばいてくれるのです。アジなら900円前後、カワハギは1,300円くらいで活造りです。メバルの煮付けなんかも800円くらいからありますよ。
寒い冬の時期というと食べたいのがカキ酢(400円)やナマコ酢(400円)です。個人的にはカキは焼きガキでいただくのが好きだったので、“とりや”ではよくナマコ酢をいただいてたなぁ。毎日毎日ナマコ酢を食べても飽きないほどでした。燗をつけた日本酒ととってもよく合うんですよね。
よーし、今日もナマコ酢を! と意気込んだのですが、残念ながら今日は店に入るのが遅かったのか、もう店内は片付けに入ってしまいました。この店は午後10時に閉店しちゃうんですね。11時まで営業している“とりや”も多いので、事前に調べてきておけばよかったですね。残念でした。
そんなわけで、今日は“とりや”の雰囲気を味わっただけで、ビールとみそだきの都合800円で終了となったのでした。
そうそう。なにしろ“とりや”なので、焼き鳥ももちろんあります。私の座ってる席の目の前がちょうど焼き台だったのですが、これがまたおもしろい。“サラマンダー”と呼ぶんでしょうか、上からも火が入るタイプのガスの焼き台。一般的には焼き魚を焼くのに使われることが多いように思うのですが、この店では焼き鳥もサラマンダーで焼くんですね。ガスを使って焼く場合、ガスに含まれる水素が酸化して水蒸気となって焼き物に当たってしまうらしいのですが、サラマンダー式に上から火を通すことで、この水蒸気の問題を回避できるんでしょうね。今日はもう後片づけ中でしたが、このサラマンダーで焼いた焼き鳥も食べてみたかったですねぇ。
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