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おでんにラーメン … 呉の「屋台」

“とりや”、“スタンド”とハシゴして、ここで帰ることも多いんだけど、まだまだ余裕がある場合は中通りに平行して流れる堺川沿いの“屋台”です。

屋台というと博多の屋台が有名ですが、実はここ呉市も市をあげて屋台に力を入れている街なのです。もともと私が呉に住んでたころは、ほっといても屋台が多かった。堺川あたりにくると、そこここに屋台があって、みんなから名店と噂される店もあるくらいでした。私が東京に転勤してしばらくしてから、市の美化のような観点から、一度屋台が規制されたことがあったのだそうです。そのときに屋台の数が一度減っていたらしいのですが、その後、市の観光資源として見直されたのか、平成12年ごろに増加して現在にいたっているのだそうです。

呉の屋台今は全部で15軒の屋台が川沿いに並んでいるそうなのですが、今日はウイークデイ(水曜日)だからか、そのうちの半分も店が出ていない状況です。やはり屋台はずらっと並んでないと調子が出ないですね。そのうちの1軒に入ってみす。

「こんばんは」。風よけの厚手のビニールカーテンをかき分けて屋台の中へ。「いらっしゃいませ」と元気な声が返ってきます。屋台は比較的若めの男性二人で切り盛りしているようです。6~7人も入るといっぱいになりそうな屋台まわりには左側に男性ひとり客が、右側にはカップルが座っています。私もその間に陣取ります。

「飲み物は何にしましょう?」と店のおにいさん。「お酒をお願いします。燗で」。東京、横浜ほどではないにしろ、呉も呉でこの時期はやっぱり寒いのです。1軒目も、2軒目も冷たい飲み物だったので、ここらでそろそろ燗酒であったまりたい。屋台という半分屋外に近い環境であればなおのことそういう思いが強まります。

お酒は地元の「音戸の瀬戸(上撰)」(400円)。これをチロリであたため、グラスにたっぷりとついでくれます。うまみもあったかいのにしましょうね。目の前のおでん鍋から平天(100円)と玉子(100円)を取ってもらいます。おでんに燗酒。完璧な冬の態勢です。

屋台の中にはテレビや暖房機もあって、予想以上に快適です。市が屋台に力を入れるのにあたって、水道やガス、電気などの設備を完備したのだそうです。こうなるともう“店の形が屋台である”というだけで、普通の店舗と変わりませんね。良くも悪くも。

もうちょっとおでんをもらおうかな。今度はシウマイ(100円)とキンチャク(150円)をください。シウマイは串に2個。おでんのシウマイというのははじめてかもなぁ。キンチャクの中身はお餅。アツアツです。

左側のおとうさんは豚足(550円)を食べている。このあたりの屋台は、昔からおでんに豚足、ラーメンなどを出してきた。豚足は昔からの定番なのです。しかし、この豚足はでかいなぁ。食べ終わった大きな骨が2本あって、まだ食べてない豚足が3個あるので、全部で5個だったんですね。すごいボリュームだ。このおとうさん、お酒を飲んでたらしいのですが、今はもうからっぽ。たっぷりの豚足を目の前に、とてもお酒どころではないようで、必死の形相で豚足に取り組んでいます。

右のおじさんとおねえさんのカップルもなにやらわけありげ。おねえさん、けっこう派手な出で立ちなので、もしかすると界隈の飲み屋(まさに“スタンド”)のおねえさんなのかな。おねえさんはラーメン(500円)を食べ、おじさんはおでんで焼酎を飲んでるようです。むずかしい顔付きでときどきボソボソっと話し合ってるのが、他人ごとながらなんだか気になるよなぁ。そんなにゆっくりと食べてると、ラーメン伸びてしまうし...。

さーて。私もそろそろ仕上げに入りますか。とはいえもうちょっとお酒も飲みたいので、つまみにもなるようにラーメンではなくて、ワンタン(500円)にしましょう。お酒(400円)もおかわりをお願いします。

ワンタンは注文を受けてから皮に具を包みはじめます。ふたりのおにいさんの共同作業で、ひとりが皮を1枚ずつ渡すと、もうひとりがそれに手際よくスプーンで具をのせ、ワンタンの形にしていく。しかるのちにさっとワンタンをゆであげて、その横で準備したスープの中に解き放ちます。チャーシューやモヤシ、刻みネギなどのトッピングをしたらできあがり。「ワンタンです」と目の前に出てきます。

ワンタン私はこのワンタンって食べ物が意外と好きなんですよねぇ。ワンタン麺ではなくて、ワンタンが好きなのです。ワンタン麺は食事だけど、ワンタンはどっちかというとスープ。つまみになるからかなぁ。

これと同じようにつまみになる汁物として、天ぷらそばからそばを抜いた「天ぬき」などのもあるのですが、これはややマニアックな部類に入るらしく、店によっては注文しても「はぁ? なにそれ?」みたいな反応になってしまうのです。しかしワンタンの場合は、最初からしっかりとメニューに登場していることが多くて、間違いなく「なにそれ?」みたいなことにはならない。安心の“スープつまみ”なのです。

ワンタンまずはそのスープをレンゲですくってひと口すすり、口の中がうまーなところへお酒をちびり。くくっ。これがいいのだ。そしてスープの中にフワフワと漂うワンタンをレンゲで追いかけながらすくいとりパクリ。あちー。ワンタンを漢字で書くと“雲呑”。まさにスープの中に漂う雲を呑んでる感じですね。アチチだけど。

“とりや”→“スタンド”→“屋台”という、呉の典型的な飲みパターンを懐かしくなぞった今回のツアー。シメの屋台は1,750円でした。

あ。そうそう。大量の豚足に悪戦苦闘してたおとうさんは、私がワンタンを食べ終わるころには無事に完食をはたし、怪しいカップルもラーメンを食べ終えて、少し前に怪しく出ていきました。しかしながら、日付が変わった屋台街はまだまだ大勢の酔客で盛り上がっているのでした。呉の夜も長いのぉ!

    【参考】
  • 店名: 屋台「八起(やおき)」(呉)
  • 住所: 呉市中央3丁目周辺の蔵本通り沿い
  • 営業: 18:00-03:30、日休
  • メモ: 昔ながらのあっさりラーメンとおでん、一品料理の屋台。ラーメン(500円)、ワンタン(500円)、おでん(100円~)、焼き鳥(3本、350円)、豚足(550円)など。日本酒(400円)。
  • 関連: 過去記事、「呉市の屋台」、「屋台のはなし
《平成18(2006)年1月25日(水)の記録》

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