連休初日の4月29日(土、みどりの日)はたっぷりと休息し、連休二日目の今日(日曜日)からいよいよ活動開始です。なにしろ「地域を広げる ~ 西へ、東へ、まん中へ ~」が今年の酒場巡りの個人的なテーマ。こういう長い連休を利用してあちこちと行っておきたいのです。
ちなみにサブタイトルの「西へ、東へ、まん中へ」の“西”は湘南・横須賀エリアを、“東”は立石・千住などに代表される、いわゆる「酔わせて下町」エリアを、そして“まん中”は大井町・蒲田・川崎・鶴見など品川~横浜の間に広がる京浜工業地帯エリアを指しています。これらのエリアは首都圏の中でも古くていい酒場がたくさん集まっている地域です。これまで東京西部と、横浜中心部を中心に飲み歩いていたものを、横浜中心部よりさらに西側、そして東京西部より東側、そしてその両者の中間的なエリアに広げていこうというものなのです。
それじゃ今日は西か、東か、まん中か。検討の結果、出した答はそのどこでもなく“北”でした(爆)。なにしろ今日は日曜日ということもあってやってないお店も多いんですよね。しかし、他がやってない曜日にやってたり、他ではやってない時間帯にやってたりする呑んべの強い味方的な場所が、赤羽を中心とする北区エリアなのです。
ま、サブタイトルは「西へ、東へ、まん中へ」ながら、メインテーマは「地域を広げる」なので、“北”も“南”もありでしょう!(なんか言い訳っぽいけど……。)
そんなわけで、早めの夕方に自宅を出発し赤羽に到着てみると、赤羽は大赤羽祭りのまっ最中。駅前広場は人でごった返しています。
赤羽に来ると「いこい」か「まるます家」というのがパターン化しているのですが、今日は駅から「まるます家」に向かう途中を左に折れてOK横丁へと入ります。OK横丁は赤羽を代表する飲屋街で、わずか80mほどの横丁の中に、なんと26軒もの酒場が軒を連ねているのだそうです。この横丁でも最も老舗であり、そして夕方3時から店をあけているのが「八起(やおき)」。この店は、戦後の闇市の名残が残る裏路地を食べ歩いた「東京裏路地“懐”食紀行」にも登場していて、ぜひ一度来てみたかったのです。
店の正面から見て左手と右手の両側に入り口があるので、駅に近い左側の入り口から店内に入ります。「いらっしゃーい!」とややかん高い声で向かえてくれる店のおにいさんに「ひとりです」と人差し指を立てると、「こちらへどうぞ」と左側カウンター中央やや奥側の席を指し示してくれます。
日曜、午後5時前の店内はすでにほぼ満席。カウンターで空いていたのは、一番入り口に近い1席と、私が今座った席の合わせて2席のみ。そういえばここに来る前にちらりと見えた「まるます家」にも待ち行列ができてました。こんな時間からみんなが酒場に集まってくるとは、やっぱり赤羽はすごい町ですねぇ。
店内は真ん中に奥行きが深いコの字型のカウンターがあるのですが、出入口に一番近いコの字で言うと右側の辺の場所には席はないので、直線平行カウンターのように感じます。その平行カウンター席の両側にテーブル席があって、そちらも全卓うまっている状態です。
席に座るなり「なんにしましょう?」とたずねてくれるおにいさんに「瓶ビールください。あとチャーメンもお願いします」と注文。この店の名物のひとつがチャーメンであるということは件の「東京裏路地“懐”食紀行」にも載っていたのです。
カウンターの中は厨房スペースになっていて、そろいの青いTシャツをきたおにいさんたちが忙しそうに料理を作ったり、皿を洗ったりしています。そのおにいさんのひとりが冷蔵庫からビール(キリンラガー大瓶、540円)を取り出し、ポンっと栓を抜いてカウンターの外を担当しているおにいさんに手渡します。カウンター外のおにいさんは、カウンターの上にずらりとスタンバイされているコップをひとつ取って、ビールとともに「はいどうぞ」と出してくれます。
トトトトトッとビールを注ぎ、まずはクィ~ッと1杯。4月最終日の今日は、日中の気温も25度近くまであがり、上着いらずの1日だったのです。
チャーメン(370円)はやはり人気の品のようで、他からも次々に注文が飛び交っています。カウンター内の炒め物担当らしきおじさんが、中華鍋で何人か分のチャーメンを一気に作り、平皿に盛り分けてくれます。

店の外観 / 瓶ビールとチャーメン / チャーメンのアップ
「はいっ。チャーメンね」と出された料理は、平皿におたまの形に丸っこく盛りつけられていて、ちょっと見た目はチャーハンのよう。メニューではチャーメンのところに「特製肉入りモヤシ炒め」と注記があります。丸っこく盛りつけられているのはモヤシ炒めなのでした。その中にニラ、玉子と挽き肉状の「特製肉」が混ざっていて、ご飯にも合いそうです。それにしてもチャーメンというのはおもしろい名前ですね。チャーハンのようでいて、モヤシが麺のようにも見えるからチャーメンなのかなぁ。真相は定かではありません。
右どなりのおとうさんは瓶ビールに焼き鳥をもらっている。焼き鳥は5本一人前で370円。1本あたりだとなんと74円という低価格ながら、大きさもそこそこで、けっして小さくはありません。5本一人前というのは同じものだけをそろえる必要はなくて、たとえば「ハツを2本と、レバ3本」といった具合に、合わせて5本になるように組み合わせて注文してもいいみたいです。もちろん塩、タレが選べます。
おとうさんは焼き鳥を食べ終わると、残ったビールもググッと飲み干して「ごちそうさん!」。ビールと合わせて910円。千円札でお釣りをもらって店をあとにします。店内は満席ながら、けっこう回転もいいようだし、実は2階もあるらしくて並んでいる人はいない状況です。
左側には男性のひとり客が3人並んでいるのですが、どういうわけだかみなさんマグロブツ(480円)をもらっている。マグロもこの店のおすすめ品のようで、この3人以外にも注文する人は多く、カウンター内、ちょうど私の正面のところで続々とマグロブツが用意されています。たしかにきれいな赤身ですねぇ。
それにしてもこの店はメニューが多い。刺身からやきとん、焼き物、揚げ物、炒め物とざっと数えただけでも70品ほどがずらりと並んでいます。
モツ(内臓)系のメニューが多いのもうれしいですねぇ。たとえば炒め物ではレバ炒め(370円)、コブクロ炒め(370円)、玉炒め(370円)、オッパイ炒め(370円)に“ピリカラスタミナ”と説明が入っているカシラ炒め(460円)などが並び、刺身にも魚介類の刺身に混ざってレバ刺(370円)、ガツ刺(370円)などが並んでいる。
極めつきは「ホルモン煮」と書かれた各種のメニューでしょうか。注記には「八起特製タレで煮こんだ台湾風絶品」と書かれており、タン盛(480円)、ハツ盛(480円)、コブクロ盛(480円)、ガツ盛(370円)、ミミ盛(370円)、盛り合わせ(480円)、豚王ぽ(370円)、豚足(370円)がずらりと並んでいます。まるで横浜の「味珍」のようなラインナップですが、その値段の安いこと!
「豚王ぽ」というのが豚の尻尾らしいので、これをもらってみましょうか。「すみません」と店のおにいさんに声をかけ、「これください」とカウンター上部に張られた短冊メニューのうち「豚王ぽ」を指差します。なにしろ読み方がわからないもんで。「ぶたおうぽ」と読むのかなぁ、と思いながら聞いていると、おにいさんはカウンター内の厨房メンバーに対して「おっぽひとつねーっ!」と注文を通します。なるほど「おっぽ」でいいんだ。
飲み物のほうは小徳利の燗酒(爛漫、270円)をもらうと、かわいらしい形の店名入り徳利に、ガラスの猪口で出されます。その燗酒をチビチビとやっているところへ「豚王ぽ」の登場です。これはこれは。ちょうど1本分(=1頭分)の尻尾を特性タレで煮込んで、関節のところで切り分けたものなんですね。一緒に出された小皿は味噌にお酢かな。これまた「味珍」のタレ(こちらは練り辛子とお酢)に通じるものがありますねぇ。口に含むとトロリととろける豚の尻尾。これもいいなぁ。

燗酒 / 豚の王ぽ / 王ぽのアップ
「豚王ぽ」のお皿が食べ終わった骨だけになったところで終了。ちょうど1時間の滞在は1,550円でした。うーむ。こういう店がまだまだ控えているとは。さすが赤羽ですねぇ。
・店情報
《平成18(2006)年4月30日(日)の記録》
最近のコメント