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夏だ! どじょうだ! … どじょう「どぜう飯田屋(どじょういいだや)」(浅草)

この夏はまだ泥鰌(どじょう)を食べていないことに気づき、土曜日の今日、浅草にやってきました。これまでは「駒形どぜう」(浅草渋谷)でいただくことが多かったのですが、今日は同じ浅草でも合羽橋(かっぱばし)側にある「どぜう飯田屋」です。泥鰌通(?)に言わせると、こちら「どぜう飯田屋」のほうがしっかりと泥鰌らしい味らしいのですが、はたしてどうでしょう。楽しみですね。

入口の引き戸を開けると、待ちかまえるように店のおば… いや、おねえさん^^;。後ほどわかったのですが、この店はお客に見えるところはすべておば… おねえさん軍団で切り盛りされているのです。見えない厨房の中が男性陣なのかな。

そのおねえさんに「ひとりです。」と伝えると、「はい。おひとりさま。ここで靴をお脱ぎになって、奥へどうぞ。」とにこやかに迎え入れてくれます。靴を脱ぐとすぐに渡される木製の番号札。漢数字で「六十六番」と書かれています。「奥右手にどうぞ」。店内は4人掛けと2人掛けのテーブル席が並び(ほとんどは4人掛け)、中に掘りごたつ式の席もあります。奥右手は2人掛けのテーブル。その奥側に入ると、ちょうどここが店の一番奥の右角。店内全体を見渡せるポジションですね。

席につくと「では、札はお預かりいたします」とあったかいお絞りと交換に先ほどの「六十六番」の札は持っていかれます。あとはお勘定がすめば自動的に私の靴も出てくるという仕組みなんでしょうね。

「お飲み物は?」。なにしろ泥鰌なので飲み物も勢い最初から日本酒でいきましょうか。とはいえ、今日もまたとても暑い日なので冷や(常温)でお願いします。ここの通常の日本酒は「月桂冠」(530円)。燗と常温が選べます。

すぐに出された日本酒は冷やながら徳利で供されます。そのかわり猪口はよく冷えたガラス製のもの。お酒を持ってきてくれたおねえさんに「どぜう鍋」(1,400円)を注文し、手酌でトクトクとお酒をついでまず一杯。ックゥ~ッ。はなから日本酒というのは効きますねぇ。それにしても「月桂冠」を飲むのも、この前いつ飲んだかまったく覚えてないくらい久しぶりだなぁ。なんだか意外とおいしいじゃん(失礼!)。こういう老舗のお酒なので、ナショナル・ブランドとはいえ、特別製のものが納入されてるのかなぁ。それともこれが「月桂冠」の普通の味!?

さぁ。「どぜう鍋」が出てきました。「どぜう鍋」は通称「まる鍋」。独特の浅くて丸い鉄製の鍋にまるのままの泥鰌が14~5尾、整然と並べられています。すべての卓の上にはガスコンロが設置されていて、その上に泥鰌入りの鉄鍋が置かれます。ガスコンロは自動点火ではなくて、おねえさんがマッチで火をつけてくれる仕組み。そのせいか、三つほど向こうのテーブルのおじさんはさっきから、火力調整がヘタなのか、それとも酔っているのか、何度も火を消してしまっては「すみませーん」とおねえさんを呼んでは着火し直してもらっています。そのガスの火をつけてくれながら「ゴボウ(320円)はどうしますか?」とおねえさん。おぉ、そうか。ササガキゴボウですね。泥鰌にぴったりなのでいただきましょう。「はーい。わかりました。最初から入れたほうがいいのですぐにお持ちしますね。ネギはこちらです」。刻みネギは「駒形どぜう」と同様に、この店でも無料で木の箱で出されます。よーし。いつものようにネギもたっぷりと食べるぞ!

まずはゴボウをドサッと入れて、刻みネギもたっぷりと盛り上げて、スタンバイOKだ! さっきまでの泥鰌だけのときとはうって変わって鍋が豪華に見えるなぁ。

浅い鍋はすぐに沸騰し泥鰌も食べごろになってきます。それを1尾取り皿にとって、山椒をちょっとふっていただきます。おぉ。なるほど。「駒形どぜう」の泥鰌が徹底的に下ごしらえされてどちらかというと“ふんわりとろり”の状態に仕上がるのに対し、こちらは良くも悪くもしっかりと泥鰌らしい。骨付きの小イワシをまるごとかじってるのと同じような感じで、骨もしっかりとしているし、ちょっと苦いところもあったりして泥鰌らしい味わいです。旬の時期(6~7月頃)をちょっと過ぎたものの、まだまだ体内に卵を抱えた泥鰌もいます。あぁ、よかった。なんとか卵の季節に間に合ったなぁ。

鍋のおかわりは、今度は「ほねぬき鍋」(略称:ぬき鍋、1,500円)をもらいます。おかわりはおねえさんが平皿で持ってきてくれて、その形のまま鍋に移してくれます。ただし「駒形どぜう」のような早わざ(おかわりの鍋をエイッとすべらせて、元の鍋の中に一気に中身を移すやりかた)ではなくて、ヘラのようなのを使ってゆっくりと移し変えてくれました。

さて「どぜう飯田屋」のぬき鍋といえば、上に泥鰌の卵がこんもりとのっている写真をよく見かけます。「この時期は、もう泥鰌の卵はつかないんですか?」と聞いてみると「卵がつくのは2人前からなんです。別にお出しすることもできますけど、お出ししますか?」とのこと。せっかくなのでお願いすると、小さい小鉢にけっこうたっぷりの泥鰌の卵が出てきたが、後で伝票を見るとこれがサービスではなく300円の別料金でした^^;。ふたり以上できて、2人前以上の鍋をたのむのがいいんですね。

その卵をぬき鍋の中に並べられた中骨を抜いて開いた泥鰌の上にたっぷりとのせて、お酒もおかわりです。ところで卓の上のタレが2種類あるんですけどどう違うの? 「白いほうが薄いタレで、青いほうが濃いタレです」とおねえさん。そうでしたが、これまでずっと自分の近くにある青いほう(濃いタレ)を使ってたのですが、かなり煮つまってきてるのでここからは白いほう(薄いタレ)にしてみましょう。

刻みネギも2箱目が出されて、ぬき鍋にも刻みネギをてんこ盛りにしてできあがり。開いた泥鰌にネギも卵もたっぷりとのせていただきます。んー。骨こそないものの、こいつも泥鰌らしいほろ苦さも残るしっかりとした味わいですねぇ。身がしっかりしてるなぁ。

店内は年配のご夫婦や家族連れお客さんが比率的に多いようですが、中高年の男性ひとり客もたくさんいて、それぞれ思いどおりに泥鰌やお酒を楽しんでいます。私のとなりの卓の男性ひとり客はビール(大瓶、750円)をもらったものの、あとは柳川(1,500円)と御飯(210円)、なめこ汁(400円)をもらって、すっかりお食事コース。よく見てみると食事だけのお客さんもけっこう多いようです。メニューにウナギもあって「うな重」などを食べている人もいます。

ここでお酒も3本目をおかわり。1~2本でさっくり引き上げる予定できたのに、泥鰌の卵をからめていただくぬき鍋は、けっこうボリュームがあります。なにしろ鍋にすき間ができると刻みネギを追加するもんだから、いつまでたっても鍋が空かない。たっぷり入れた卵はネギにもよく絡むので、割り下で煮たネギで卵をいただいているような感じ。ネギは奥のほうに入れて、煮えるとだんだん鍋の中に散らばった卵を集めながら手前に引き寄せていきます。そしてまた空いた鍋の奥のほうへ新たなネギを…。でもって、途中でときどき思い出したように泥鰌もいただく。ネギもおかわりして3箱目を出してもらいました。

目の前に座っている若いカップル(とはいえ30代くらいか!?)はずいぶん常連さんと見えて注文にも食べ方にもよどみがありません。まず燗酒を2本注文し丸鍋を2人前。ネギをおかわりしながらネギたっぷりで食べ終えると、燗酒をおかわりして今度はぬき鍋を2人前。それに豆腐(320円)と玉子(110円)を注文して、玉子は鍋の中央にプクンと落として仕上げていきます。豆腐は浅い鉄鍋の深さに合わせてスライスされていて、これまた注文する人の多い人気の品のようです。私もお腹に余裕があれば試してみたかったのですが、この時点でもうすっかり満腹。最後に残った粒々の泥鰌の卵を、ネギに絡めてきれいに食べ終えて終了です。

1時間半の滞在。お酒を3本に鍋を2枚いただいて5,110円でした。どぜう鍋や桜鍋など、江戸風の鍋でちょこっと飲むと、どうしてもこれくらいかかっちゃうんですよねぇ。なかなか大衆酒場というわけにはいきません。でも、たっぷりと泥鰌をいただいたので、これからの厳しい残暑が乗り切れそうな気持ちになりました。

「どうもごちそうさま」と出口に向かうと「どうもありがとうございました」とおねえさんのひとりが引き戸を開けてくれます。そのおねえさんにも「ごちそうさま」と店を出ると「どうもありがとうございました」と静かに引き戸を閉めてくれます。自動ドアなんかより、はるかにこの人間味あふれるおねえさん手動ドアのサービスがうれしいですね。

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「どぜう飯田屋」 / 入れ込みの座敷席 / お酒を冷やで

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どぜう鍋(丸鍋) / 木の箱に刻みネギ / ゴボウとネギをたっぷりと

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小皿にとって / 体内には卵 / ほねぬき鍋(ぬき鍋)

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たっぷりのはららご / 刻みネギをのせて / できあがり

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ネギに絡めたはららご / 完食! / 帰りにくれる爪楊枝のお土産

店情報

《平成18(2006)年8月19日(土)の記録》

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