今日もハツ刺し … もつ焼き「金ちゃん(きんちゃん)」(練馬)
浅草からの帰路、昨年に引き続き「麻布十番納涼祭」に立ち寄って、酒友・呑んだフルさんが手伝っているお店を訪問。売上に協力するつもりが「まぁまぁ、飲んで行って」とビールとおつまみ(揚げたて唐揚げ)をもらってしまい、まったく売上に協力できず。せめてビール1本分でもと、大急ぎで1本飲み干して、おかわりの1本を購入(といっても1本300円)し、若干の売上協力をしたのでした。
約30分ほどの激励(?)を終えて、麻布十番駅から都営大江戸線で練馬へ。練馬駅の南側はこれまた酒場がひしめく一大飲み屋街。その中でもひときわ人気が高いのがもつ焼きの「金ちゃん」です。
2列に並んだ平行カウンターの向こう側とこちら側に入口があるのは沼袋の「ホルモン」や、今はなき鷺ノ宮の「鳥芳」・阿佐ヶ谷の「ホルモン」の両店と同様。ここ「金ちゃん」の場合は駅に近い側の入口はテーブル席がずらりと並ぶ大きなフロアになっていますが、駅から遠い側の入口から入ると直線のカウンター席10席程度のみ。今日は駅に近い入口から店に入ります。
土曜日午後7時の店内はほぼ満席。入口を入るとすぐ右手の焼き台のところにいる親父さん(店主)に「ひとりです」と告げると、「じゃ、こちらに」と焼き台近くのカウンターにポツンとひとつ空いた空席を指し示してくれます。おぉ。カウンターが空いてましたか。なにはともあれ入ることができて良かった良かった。
この店はひとり客の場合はまずカウンターから埋まって、次にカウンター背後のちょっと大きめのテーブル席が入れ込みの状態でひとり客用に使われるのです。
すぐに注文を取りにきてくれたママさんにホッピー(350円)とハツ刺し(300円)を注文。ホッピーはサワーグラスに氷入りのスタイル。そのサワーグラスの7分目くらいまで焼酎が入っているので、ホッピーは3分の1くらいしか入りません。ホッピーには中にレモンスライスが1枚浮いていて、中(ホッピーの焼酎部分)をおかわりするたびに、このレモンスライスが1枚ずつ増えていく仕組みです。お勘定自体は伝票をもとに計算されるんですが、レモンスライスの数でも何杯飲んだかわかるようになってるんですね。
その濃いホッピーをひと口ふた口飲んだところでハツ刺しの登場です。ここのモツの刺身には、このハツ刺しのほかにレバ刺し、コブクロ刺し(それぞれ300円)とあるんですが、最初にハツ刺しをいただいて以来、すっかりはまってしまって他の刺身は食べてみたことがないのです。今日のハツ刺しもどうですか! プリッとかたいハツ(心臓)なので、ピリッとエッジが立っているのは当然のこととして、注文を受けてからスライスされたハツ刺しは1枚1枚がつややかに輝いて見るからにおいしそう。のせられた刻みネギを添えて、ちょいと醤油をつけて口に入れると想像どおりのしっかりとした弾力! さすが筋肉ですねぇ。
私の右側にはひとりお客さんがいて、その先はもう焼き台。親父さんが一所懸命もつ焼きに取り組んでいる姿を間近に見ることができます。ネタは焼き台のすぐ手前、カウンターの一番端っこの上にバットが置かれ、その中にずらりと並べられています。親父さんはカウンターの端っこに腰を押しつけて、自らの体重をあずけるような感じで焼き台に向かっています。ずっと立ちっぱなしの仕事ですからねぇ。いっしょに修業をされたらしい他の2店(沼袋の「ホルモン」と鷺ノ宮の「鳥芳」)は代がわりしていたり、もう閉店していたりするので、その世代で現役でがんばっているのはここの親父さんだけなのではないでしょうか。そういえば、この店もお手伝いらしき店員さんは多いものの、後継ぎといった感じの人は見かけないように思います。なんとか長く続いてほしいものです。
そんなことを考えながら飲んでいると、ちょっと手があいたらしい親父さんがフッとこちらを振り返ってバットの中のネタを並べなおします。そのタイミングでコブクロとナンコツを1本ずつ塩焼きで注文。ここのもつ焼きは1本80円で、基本的にはひと品注文すると2本ずつ出てくる仕組み。ただし、明示的に「1本ずつ」とお願いすると1本ずつ焼いてもらうこともできるのです。
バットの上のコブクロとナンコツはものすごく大きかったのに、焼きあがると普通のサイズになりました。こんなに縮んじゃうんですねぇ。ネタと見比べながら食べるというのもあまりない経験です。
ちなみに焼き物は通常のもつ焼きの他、いか焼き(80円)、とりにんにく(100円)もあって、どちらも人気が高い。野菜ものは定番のピーマン、しいたけ、ねぎ、ししとうで、これらも1本80円です。
左どなりのおにいさんはチューハイを飲み、もつ焼きをつつきながら、真剣な表情で読書中。私自身は飲んでるときはボーッとしてるので、テレビなどのようにこちらが受身でも自動的に入ってくる情報ならばなんとかなるんですが、読書のようにこちらから積極的に働きかけないと入らない情報はまったくダメですねぇ。飲んだ帰りの電車内での読書も同様です。翌日気がつくと栞(しおり)の位置は進んでいるのですが、その途中の物語をちっとも覚えていなかったりする^^;。
それよりもなによりも、酒場は大勢の人たちで時と場を共有する空間だと思うのですが、読書に励んでいる人がいるとそこだけスポッとブラックホールのような、他の人たちの存在を許容しない空間ができちゃうように思うんですよね。
閑話休題。そのおにいさん。かなりの常連さんらしく、読書をしながらもじわりじわりと飲み物も料理もなくなっていき、次にメニューも見ないで注文したのはワカメ納豆(200円)です。へぇ。そんな料理があるんだ。改めて背後のテーブル席フロアの壁にかけられた短冊メニューを確認するとたしかにあります。この店のメニューは150円ものがずらりと並んでいて、次に200円もの、300円ものと続くという安さ。これも人気の秘密なんでしょうね。ワカメ納豆は文字通りワカメと納豆が小鉢に入れられたもの。おにいさんが読書の手を休めて醤油を入れ、グリグリとかき回すと納豆とワカメが混ざり合ったネバネバ料理ができあがります。ふーん。これもなかなかおいしそうだなぁ。
まわりを見ると冷奴(150円)をつついているお客さんも多い。そうそう。冷奴もここの人気の品のひとつでしたねぇ。ワカメ納豆もさることながら、今日はさっぱりと冷奴にしましょうか。
冷奴は水平に二分割した半丁分の豆腐を八つに切ってカツオ節とおろし生姜が添えられます。以前は木製の小さなすのこのようなもので出されていたのですが、今回はお皿に盛られています。こういうスタイルの変わったのかな。この冷奴、ややしっかりとした歯応えが感じられるのがいいんですよね。沼袋の「ホルモン」の冷奴と共通するものがあります。
ワカメ納豆を食べ終えた読書おにいさんは、これまたメニューを見ることもなく「天ぷら!」と注文。出たな! 天ぷらというのは「さつま揚げ」(300円)のこと。このメニューには括弧書きで「伊予天(いよてん)」と説明が書かれています。“伊予天”というのは“伊予(愛媛県)”の“天ぷら”のこと。つまり“ジャコ天”のことを指すんですね。「金ちゃん」「ホルモン」「鳥芳」の店主は、それぞれ愛媛県出身なのだそうで、さりげなく地元のメニューを置いてるんですね。それにしても、それを「天ぷら」と、店の通し符丁で注文するとは、この読書おにいさんは相当な常連さんですね。「天ぷら」は、注文が入るとジャコ天を2枚串に刺して焼き台であぶり、それをいったん厨房に引き取ってスライスして刻みネギをのせ、おろし生姜を添えてから出されます。
さてさて。私のほうはそろそろ引き上げるといたしますか。ちょうど1時間の滞在は960円でした。どうもごちそうさま。
「金ちゃん」 / ホッピー / ハツ刺し
コブクロとナンコツ(塩) / 注文は伝票に / 冷奴
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コメント
いつも、楽しく拝見しています。私も松山出身なので松山編は、特に関心を持って見ています、このサイトで見て「金ちゃん」に行きました。この店で気に入ったのはそれぞれの内臓系の刺身とリーズナブルで量も200円でこんなにあるとはと思ったのは、「せんまい」のあえものです。作者と嗜好が似ているのでこれからも参考にさせていただきます。将来一緒に飲みたいですね。
投稿: 電気屋 | 2006.09.12 23:19
コメントありがとうございます。>電気屋さん
松山には高校(18歳)までしか住んでいなかったので、帰省時に行った数軒の酒場しか知りません。もっともっとたくさんいい酒場がありそうな町なのに、とても残念です。
投稿: 浜田信郎 | 2006.09.24 21:47