キンメダイとカワハギ … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)
毎月第2土曜日は「竹よし」の夕食会の日。「今日は寒いので、まずキンメダイのしゃぶしゃぶからいきましょうね」と、すぐに鍋が用意されます。今日は四国(高松)に単身赴任中の大常連・O島さんも帰省されていて、一緒に鍋を囲みます。
食材のキンメダイは、1尾丸ごとの大きなものがカウンター上にどーんと置かれている他、しゃぶしゃぶ用の薄切り、あら煮用のぶつ切りなども並んでいて、とても豪勢。なにしろ鮮度抜群のキンメダイなので、しゃぶしゃぶのお湯が沸くまでの間は、そのまま刺身で。うーん。白身魚なのに、ピンクの身は脂がたっぷりとのっていてトロトロです。
こうなると日本酒ですね。1杯目の生ビールは小ジョッキでいただいてたので、それを一気に飲み干して、「いっちょらい」(黒龍・吟醸)をコップ酒でいただきます。夕食会(会費4,500円、事前予約制)のときは店の中にある酒類は飲み放題になるほか、美味しいお酒、珍しいお酒をお土産に持ってきてくれる人もいて、毎回ついつい飲みすぎてしまうのです。
さぁ、お湯も沸いてきました。クツクツと小さくたぎるダシ汁の中に、ピンクの身をさっとくぐらせるると、あっという間に表面が白くなります。これを紅葉おろしを溶いたポンズ醤油で... うまぁーっ! さっきの刺身のトロトロ感もよかったんですが、ちょっと加熱したことによって、ピッと身が締まった感じと、身の持つ旨みがぐんと増したように思います。
刺身は生気が強いからか、あまりたくさんは食べられないのですが、こうやってしゃぶしゃぶにすると、いくらでも食べられそうな感じがするなぁ。
ひとしきりキンメダイのしゃぶしゃぶをいただいたところで、なおとんさんが「しゃぶしゃぶもち」というお餅を買ってきてくれました。薄いお餅は数秒でトロトロになるので、箸でつまんだままさっと仕上げていただきます。
参加されているみなさんの「おぉぉ~~っ!」というどよめきに迎えられながら登場したのは、本日のもうひとつの食材・カワハギの刺身です。青い大皿に菊花盛りされた刺身は、透明な身越しに大皿の模様が透けて実に美しい。
そしてカワハギの肝はたっぷりとひとりに一皿ずつ。各自の好みに合わせてそのままいただいたり、肝醤油(きもじょうゆ)にしてカワハギの刺身をつけていただいたりと、それはもう大ぜいたくです。
さらにこのカワハギの刺身を酢橘(すだち)と藻塩(もしお)でいただいてみると、これもまたうまいっ。うーん、お酒が止まらなーいっ。
続く大皿はキンメダイのあら煮です。最初から「あら煮を作る」と決めて、うまい具合に身の部分も残るように処理されたキンメダイのあら煮は、ほとんど「いい部分だけ寄せ集めた煮魚」と言ってもいい状態。目玉のまわりがフルフルとおいしそうな頭の部分や、しっかりとした筋肉の胸ビレの部分。さらには内臓や尻尾のまわりと、思わずみんなが無口になってしまいます。
次なる一品は本日3つめの食材、豊後水道の鯖(サバ)。これを今日はシメサバでいただきます。これは通常営業時のメニューでも大好物の品。今日のもまたプリップリですねぇ!
もともと「魚料理屋だからマグロは絶対にいいのじゃないといけない」とマグロには力を入れている店主ですが、このところ、この豊後水道のサバも「竹よし」の定番の品になってきつつあるように思います。サバというと豊後水道の関サバ、三浦半島の松輪サバ、紀伊水道の紀サバあたりが有名ですが、「竹よし」の豊後水道のサバは関サバではないそうです。
関サバは豊後水道の中でも、最も狭い部分である豊予海峡(ほうよかいきょう)で捕れたサバが、大分の「佐賀関(さがのせき)漁港にあげられた場合にのみ」使っていいブランド名なのだそうです。同じところで捕れても、対岸である愛媛の三崎側にあがると岬サバ(はなさば)と呼ばれ、また同じ大分や愛媛でも、佐賀関や三崎以外の漁港にあがると豊予サバと呼ばれたりするようなのです。「大間(おおま)のマグロ」なんかと似てるかもしれませんね。
「誰か受け取ってぇーっ!」入口の外から聞こえてきたのはママさんの声。見れば両手で大きなお皿を抱えていて、引き戸も開けられない状態。夕食会恒例のママさんの手料理は、2階のキッチンで作って持ってきてくれるのです。「はいはい」と店の中から引き戸を開けて、両手のふさがったママさんから大皿を受け取る入口近くのお客さんたち。今日は大きな鮭の切り身(焼魚)が4つのった豪勢な鮭ごはんです。カウンター近くの大常連さんたちがママさんのお手伝いをしながら、鮭の身をほぐして混ぜ合わせ、上に刻みネギを散らして完成です。
この時点で午後7時ごろ。夕食会の開始から2時間ほどがたち、シメの料理何品かを除いて本日予定のメニューも出そろいます。ここからが店主もみんなの輪の中に入っての談笑タイムなのです。
今日参加されたのは夕食会初参加のK村さんご夫妻、W辺さんご夫妻のほか、このところ通常営業のときによくお会いするK原さん、そしてもちろん大常連の黒ブタさん・金魚屋さんご夫妻や、奥様が私と同郷のA間さん、最近夕食会の会計や生ビールサーバーの交換も板についてきたしげるさんに、すでにご紹介済みのO島さんになおとんさんといった面々。カウンター上に並べられたサラダやイカ炒め、野菜の豚肉巻き(野菜はインゲンとニンジン)などをつまみつつ、自己紹介なども取り混ぜながら楽しい時間が過ぎていきます。(そして毎回、この楽しい時間を過ごすうちに、立派な酔っ払いになってしまうのでした。)
午後9時前。楽しかった夕食会もそろそろシメに向かう時間帯。キンメダイのしゃぶしゃぶのダシをひとつの鍋に集めて、キンメダイのダシたっぷりの雑炊が作られます。
そして厨房の大鍋でコトコトと作られていたのはカワハギのスープ。お椀に注ぐと透き通るスープがとても美しくて、こちらもカワハギのダシがたっぷりと出ていておいしい。お酒(特に冷酒)をたくさん飲んだ後にいただくあったかいスープがいいんですよねぇ。五臓六腑に染み渡っていく感じがします。
いつも9時過ぎを目標にしている夕食会なのに、今日はたっぷりと10時過ぎまで盛り上がってしまったのでした。今日もたっぷりとありがとうございました。いつもごちそうさま!
キンメダイ / しゃぶしゃぶ用キンメダイ切り身 / キンメダイしゃぶしゃぶ
しゃぶしゃぶの野菜 / ゴボウのサラダ / イカのオイスターソース炒め
グリーンサラダ / 「しゃぶしゃぶもち」 / 野菜の豚肉巻き
カワハギの刺身 / カワハギの肝 / カワハギを酢橘と藻塩で
キンメダイあら煮 / 取り分けた頭の部分 / 肝もたっぷり
ママさん登場 / 鮭ごはん / 身をほぐしてできあがり
豊後水道のシメサバ / キンメダイの雑炊 / カワハギのスープ
【本日の日本酒】
「いっちょらい」(黒龍・吟醸) / 「司牡丹」(本醸造) / 「吉田蔵」(大吟醸)
(かねてからご自宅にて病気療養中だった「竹よし」のママさんは、まことに残念ながら平成18年12月25日に他界されました。この日いただいた鮭ごはんが、夕食会の目玉でもあった「ママさんの手料理」の最後の一品となってしまいました。いつもおいしい手料理をありがとうございました。謹んで御冥福をお祈りいたします。)
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