ポール牧直伝のイカ鍋 … 居酒屋「ときわ」(千住大橋)
冬はおでんや鍋物でいただく燗酒がおいしい。おでんはひとりでもふらりとおでん屋さんに入っていただくことができるのですが、鍋物を1人前ずつ注文できるお店はそれほど多くない。この冬はそんな「ひとり鍋」が可能な店に行ってみたいと思っているのです。
今シーズン、これまでに中野「北国」のあつどーふにはじまって、池袋「ふくろ」のタラチリ、渋谷「鳥竹」の肝なべや皮なべ、鎌倉「長兵衛」のゆどうふ、阿佐ヶ谷「川名」の湯ぎょうざ、中野「竹やぶ」の鶏もつ鍋といった1人前から注文可能な鍋料理を楽しんできました。
そして今日はイカ鍋で有名な千住大橋の「ときわ」です。
上野で0次会を楽しんだ宇ち中さん、Sさんとともに京成線の電車に乗り込むと約10分で千住大橋。歩いて2分ほどで目指す「ときわ」に到着すると、ちょうどKさんと、その奥さんのCさんも到着して5人で一緒に店内へ。
店内は右手にL字カウンター12席、左には壁に沿って4人掛けのテーブル席が3つ並び、一番奥の突き当たりのところに詰めれば6人座れるインディペンデントな6人掛けテーブル席があり、その奥が壁を隔てて厨房になっています。あらかじめHさんが予約してくれていたので、我われは一番奥の6人テーブルに通されます。
ビール(スーパードライ大瓶、490円)をもらって乾杯すると、お通しはお新香。そうこうしているうちにHさんも到着し、本日予定のメンバー6人がそろいました。
手書きのメニューに書き出された品書はざっと65種類ほど。イカゲソワサや自家製塩辛などの300円からはじまって、高くてもマグロ刺、ブリ刺、タイ刺などの700円もの程度。それに加えてちょっとスペシャル品で活ズワイガニ(1,300円)があったり、壁に張り出された季節の鍋物メニュー(詳細後述)があったり。
まずいただいたポテトサラダ(350円)は千切りキャベツとともに出され、パセリと練りガラシが添えられています。これにウスターソースをちょっとかけていただくのが大衆酒場流ですね。
千住大橋と言えば、すぐ近くの隅田川沿いに東京都中央卸売市場足立市場がある土地。新鮮な魚介類が手に入りやすいこともあってか、近所にも「田中屋」「酒屋の酒場」「徳多和良」など、おいしい魚介類が楽しめる店が多いのです。ここ「ときわ」もそういう店のひとつらしく、ブリ刺身(700円)はツヤツヤと脂ののった大きな刺身がどーんと7切れ。こいつはやっぱり燗酒(大徳利、520円)だな。
年末年始になると新そら豆が出はじめます。ゆでたてアツアツで出されたそら豆(500円)は、出はじめの時期ならではで、皮ごとぱくりといただけるのです。春が近づくにつれてだんだんとこの皮が硬くなっていくのでした。
牛すじ肉豆腐(450円)は下町風のやや甘~い味つけでボリュームたっぷり。近くの「大はし」もそうですが、肉々した煮込みがいいですね。
麦焼酎「いいちこ」をボトル(900ml、2,000円)でもらって、さらに魚介類が続きます。アジ刺身(500円)は姿造りになっていて、ワサビとおろし生姜の両方が添えられている。アジはたたき(500円)でつくってもらうこともできます。
銀ダラ煮付け(750円)は表面は濃い照り焼きダレで覆われているものの、箸を入れて身を割ると、中はまっ白つややかでふわふわに仕上がっています。フワンとあがる湯気がまたいいですねぇ。これもうまいや。
さぁ、そしていよいよイカ鍋(750円)です。「本当にこれが1人前!?」というほどこんもりと盛り上がったイカ鍋は、白ネギ、シメジ、エノキ、春菊、豆腐などがたっぷりと盛り込まれた上に、皮が付いたまま1センチ幅くらいにスライスされた丸1杯分のイカがどーんと乗っています。このイカもまた刺身で食べられるほど新鮮なのです。
クツクツと煮えてくると、こんもりと盛り上がっていた具材がだんだん沈み込み、イカの煮えたいい香りが漂ってきます。それじゃそろそろいただきますか。イカ鍋にははじめから味がついているので、そのままいただきます。
へぇ~っ。けっこう甘い味つけなんですねぇ。壁の向こうで調理を担当している店主に話をうかがうと、この味つけはポール牧さんからの直伝なんだそうで、醤油、砂糖、みりん、酒にイカワタを溶かしているのだそうです。砂糖が入っているというのが特徴なんでしょうね。
冬場のみという鍋物メニューは白子鍋(1,000円)、湯どうふ(450円)、いか鍋(750円)、たらちり(750円)、赤魚ちり(700円)、よせ鍋(1,200円)の6種。それぞれ1人前から注文することができます。
「もう1品、鍋物をいただきましょうか」ということで、今度は白子鍋(1,000円)をいただくことにしました。出てきた白子鍋を見てまたびっくり。鍋の上にこんもりと山盛りの白子です。イカ鍋に引き続き、本当にこれが1人前!? ひとりでいただいたら、全部食べられないかもしれません。この白子鍋もイカ鍋ほどではないにしろ、やや甘めの味つけです。この「やや甘め」というのが下町の味つけのキーワードかもしれませんね。
「この店のブラックニッカ水割りボトル(300ml)が390円と安いんですよ」と教えてくれるのは歩く酒場データベースのKさん。私の知っている範囲では「やき屋」が380円+税で399円、「福田フライ」が450円なので、たしかにここが一番安いかも。さっそく1本いただいて食後のシメとします。
午後9時過ぎまで3時間半ほどの滞在は6人で9,900円(ひとりあたり1,650円)という低価格でした。うーむ、おそるべし千住大橋。おそるべし「ときわ」ですね。
「ごちそうさま」とお店の人たちにあいさつしながら出口に向かうと、カウンターでひとり燗酒を傾けてるおじさんの前には、これまでに見たどの鍋よりもさらにボリュームたっぷりのよせ鍋(1,200円)が置かれ、まさに今煮はじめたばかり。各種魚介類がたくさん入っていておいしそうですねぇ。次に来たときはこれもいただきたいですね。
出口すぐ横の壁には「東京ときわ会」の各店の短冊板がずらりと並んでいました。
「ときわ」 / ビールとお通し / ポテトサラダ
ブリ刺身 / そら豆 / 燗酒大
牛すじ肉豆腐 / 「いいちこ」ボトル / アジ刺身
銀ダラ煮付け / イカ鍋 / できあがったイカ鍋
白子鍋 / みんなで仲良くつつく / 水割りボトル
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