寒い日はおでんに燗酒 … 酒房「北国(きたぐに)」(中野)
新宿から中央線快速電車で4分(150円)、中野に到着します。しんしんと寒いこんな日(最高気温9度)はおでんに燗酒に限りますね。
中野駅南口を出て「丸井」の手前の路地を右へ。坂の途中、ジンギスカン屋さんの前の路地を左に入ると、その先の角、右手にあるのが「北国」です。
「こんばんは」と入った店内は、先客3人と少数ながら、あまり頻度よく通っていない私でもその愛称を知っているほどの大常連さんばかり。もともとお客は常連さんばかりといった感じのお店ではありますが、これだけ大常連さんばかりだとちょっと緊張します。なにしろ、昭和30年代生まれの私でも、この店に来たらほとんどの場合ペェペェの最若手ですからねぇ。
熱いおしぼりを出してくれる女将さん(スミちゃん)に、「桃川」を燗でお願いします。「じゃ、ぬるめにつけとこうね」と女将さん。この店には「桃川」をはじめ「八鶴」「新政」「剣菱」など何種類かのお酒が置いてあります。女将さんには「この人の好みはこれ」というのがインプットされているらしく、常連さんから「お酒ね」という注文が入ると、その人によって銘柄と燗か冷やかを出し分けているのです。
もちろんお日本酒だけではなくて、他の飲み物についても同じことが言えます。たとえばカウンター長辺手前に陣取るアオちゃんという大常連さんはウイスキーのハイボールが好み。もともとレモンスライス入りのウイスキー水割りしか出さないお店ながら、アオちゃんのためにサントリーの炭酸(スクリューキャップのもの)が仕入れられていて、だまって座るだけで、水で割らないウイスキーとともにその瓶入り炭酸が出されるのでした。残った炭酸はキャップを閉めて冷蔵庫で保管。なにしろ毎日いらっしゃってるようなので、残ったとして明日にはなくなっちゃいますからねぇ。
「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれるユミさん(店を手伝っている女将さんの姪)が出してくれたお通しは揚げたクワイ。「芽が出るように」という縁起のいい食べ物なのだそうです。ちょっとほろ苦い大人のつまみですね。
さぁ、そしておでんです。この店のおでんは冬期限定商品。毎年11月10日からはじまります。一巡目は玉子、豆腐、魚のすじの3品を注文。特徴的なのは玉子です。この店の玉子は殻付きのまま煮込まれているのです。殻入れ用の小皿も別に出され、食べるときにはちゃんと殻を剥いていただきます。どうしてこういうスタイルにしたのかは聞いてみたことがなくて、あくまでも私の想像ですが、玉子が割れたりして汁が濁るのを防いでるのではないでしょうか。
カウンター長辺中央部。ちょうど後に柱があって、その柱を背もたれにすることができる席に座っているのはこれまた大常連のテラちゃん。お酒をおかわりすると、カウンターの下のほうから「菊正宗」の一升瓶が出てきます。へぇーっ。「菊正宗」もあったんだ。それじゃ、私も燗酒のおかわりは「菊正宗」でお願いします。
二巡目のおでんはボールと呼ばれているイカの団子とガンモドキ。「ガンモドキはよく煮込んだのと、あっさりのがあるけどどっちにする?」と女将さん。「煮込んだほうをお願いします」と答えると、しっかりと煮込まれて茶色に染まったガンモドキを選んでくれます。最後にちょんと昆布をのせてくれて「はいどうぞ」と出てきます。
ガラリと引き戸が開いて入ってきたのも、これまた常連さん。「あとでもうひとり来るから」と入口右手のテーブル席に座り、瓶ビールからスタートです。
お店の常連さんたちで行った写真を見ながら「これだれだっけ?」と話し始めたのはカウンターの一番奥側に陣取るムラちゃん。実はユミさんのご主人なのです。他の常連さんたちが写真を回し見ながら「ほら、あれだよ。○○さんと一緒によく来る子」「あぁ、あれか。なんて名前だったっけ?」「んーと。なんだっけ。まぁいいや、あれだよ」。みんなのなんとなく納得した様子に「“あれ”で話が済むのが年を取った証拠だわ」とユミさんが笑います。
ボチボチと閉店時刻(午後10時)になるから、私はこれで失礼しますか。1時間半ほどの滞在はちょうど2千円でした。どうもごちそうさま。みなさんお先に!
お通しと燗酒(桃川) / お通しは揚げクワイ / おでん鍋
玉子、豆腐、すじ(魚) / 干支の置物 / ボール(いか)、がんもどき
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