鶏スープを肴に燗酒を … ひな鳥から揚「とよ田(とよだ)」(自由が丘)
最初に「とよ田」のことを知ったのはいつだったか。おそらく同じ自由が丘にある居酒屋「金田」にはじめて来たころだったから、今から7年ほど前でしょうか。
鶏のから揚げしかないのにいつも満席というその「とよ田」に、ぜひ行ってみたいなぁと思いつつもなかなか行動しない私が、思い立ったらすぐ行動するここっとさんにうながされてやっとやって来たのが昨年の2月のこと。
うわさに違わぬ美味しさに感動し、以来何度も通ったのですが、私よりももっとはまったのがここっとさん。最盛期(?)には二日とあけずという勢いで通っていたものでした。ここっとさんは行動も早く、しかもこれと決めたらとことん食べ続けますからねぇ。その追及心(なのか?)や恐るべしです。
そんな「とよ田」もこのところしばらくごぶさた状態。聞けばここっとさんもしばらく行ってないと言う。「それじゃ、久しぶりに行ってみますか!」ということで、しばらくぶりに今日やって来たのでした。
一足先に自由が丘に到着したここっとさんが店をのぞいて見てくれたところ、ひと組待ちとのことで、私が到着してからも10分ほど待って、午後8時前に入店することができました。
店内は10席ほどのL字カウンター席と、小上がりに4人掛けのテーブル席ひとつ(両側の短辺部分にも座れるので6人座れる)という小さな店は、今日も鶏のから揚げを求める人たちでいっぱい。なにしろここ「とよ田」には砂肝から揚げ、手羽肉から揚げ、もも肉から揚げの3品と、キュウリのお新香しかありませんからねぇ。しかも、それらが書かれたメニューもないというお店なのです。(といっても、はじめての人には「これとこれがあります」とちゃんと教えてくれます。)
今日はL字カウンターの角あたりに着席。まずはビールをもらうとアサヒスーパードライ中瓶と、お通しの玉ねぎスライス(ポン酢醤油たっぷりに、カツオ節トッピング)が出されます。
さりげなくすごいのが、「ビールをお願いします」と言っただけでスーパードライを出してくれるところ。この店にはスーパードライとサントリーモルツの2種類の瓶ビールと、それとは別に生ビール(アサヒ)があって、はじめて来た人が「ビール」と注文すると女将さんかおねえさんが「どれにしましょう?」と、先ほどの銘柄をあげて聞いてくれるのです。我われも最初に来たときはそうでした。そして、そのとき「瓶ビールでスーパードライを」と答えて以来、ここに来ると「ビール」と注文するだけで瓶ビールのスーパードライを出してくれるのでした。
店は女将さん、おねえさん、そして弟さんという家族3人で切り盛りしています。そのおねえさんが注文を取りに来てくれて、いつものようにふたりで砂肝1、手羽肉2、もも肉1をお願いします。
この店の基本は「ひとりで1コース」。つまりひとりで砂肝1、手羽肉1、もも肉1をもらうのが定番なのです。お客さんたちも、ほとんどの場合は「セットで」とか、「コースで」という注文の仕方をしているようです。
まず出てきたのは砂肝。同じくらいの大きさに切りそろえられた砂肝は、ほとんど表面の油も感じさせないほどにカラリと素揚げされ、仕上げに塩をパラパラと振って出されるというシンプルなもの。そう、この「シンプル」がこの店のから揚げのキーワードだと思います。なんでもないこの砂肝のから揚げがうまいのなんの。
食べかたのバリエーションは、まず出されたまま食べる。次にカウンターに用意された塩を振ってちょっと塩の効きをよくする。同じくカウンターに用意された七味唐辛子をふってややピリ辛にしていただく。そして、もうひとつがお通しで出された玉ねぎポン酢醤油にちょいと浸けていただくというもので、私自身はこの食べかたも好きなのです。
砂肝は下ごしらえが悪いと噛みきれないような部分が残ったりするものですが、ここの砂肝は出されるすべてがしっかりとした弾力を保った同じ食感。この状態に仕込むのは大変だろうなぁ、といつも感心しながらいただいています。
L字カウンターの角あたりからは鶏の下ごしらえの様子もよく見える。1羽分の骨付きひな鶏肉を、まず背骨のところで左右に分割し、そうやって分けられた左右を、それぞれ上半身と下半身に二分していく。そして要らない部分を掃除したり、骨の継ぎ目に包丁を入れて食べやすくしたりといった作業をして下ごしらえ完了。この上半身が手羽肉になり、下半身がもも肉になります。もちろん使わない部分も捨てるわけではなくて、後ほど出される鶏スープの出汁(だし)として活躍するのです。「捨てるところはまったくないんですよ」と女将さん。
ジャージャーと鶏肉を揚げる音が響き、2人分の手羽肉から揚げが出てきます。ここのから揚げは、から揚げと言いつつも実は素揚げ。衣はついていないのです。そして砂肝同様、手羽肉から揚げも、仕上げにパラリと塩をふっているだけというシンプルさ。
先ほども書きましたが、手羽肉というのは、ひな鶏を左右に分けた上半身部分。つまりあばら骨のあたりから首の手前までの胴の肉に、手羽の部分が手羽先まで付いている状態です。骨の継ぎ目の部分に、あらかじめ上手に包丁を入れてくれているらしく、手羽のところをひねるように持ち上げるとスムーズに解体することができるのです。
しっかりと火が通っているため、細い骨ならバリバリと気にせずいっしょに食べることができます。いや、むしろいっしょに食べたほうがおいしいのです。骨をバリバリ、皮もパリパリ、そしてしっかりとボリュームがある胸肉をワシワシといただいてる間は、我われのみならず、みーんなけっこう無口。楽しい会話をしながらお食事を、なんてシチュエーションには向いてないお店かもしれませんねぇ。なにしろ両手でガッツリ手づかみですし!
そしてもも肉から揚げ。こちらは下半身部分と言いつつも、もも肉の部分のみと言ってもいいくらいの部位。できあがりを関節のところで2分割してくれています。外側のパリッとした皮といっしょに、胸肉に比べると弾力の強いもも肉をいただきます。このから揚げ、それはもうビールが進むこと進むこと。
ひとしきりから揚げが終わったところで燗酒(菊正宗)をもらって、つまみにはお新香をいただきます。ここのお新香はキュウリのぬか漬け。古漬けがあればそれがよかったのですが、残念ながら今日は古漬けは売り切れ。浅漬けのほうをいただきます。
から揚げでビールをいただいたあと、デザート感覚でお新香で燗酒。いい流れですねぇ。
そして燗酒を少し残した状態で、シメの鶏スープを出してもらいます。これまた塩だけで味をつけたシンプルなスープなんですが、鶏の旨みがズドーンと凝縮されているのです。このスープを肴に燗酒を飲みたかったのです。ん~。んまいっ!
ゆっくりと2時間の滞在は、ビールを4本、燗酒を1本いただいて、ふたりで6,200円(ひとりあたり3,100円)でした。やっぱり「とよ田」のから揚げはいいなぁ。(それぞれの予想価格については「個人的な予想価格?」という記事をご覧ください)。
瓶ビールで乾杯 / お通しの玉ねぎスライス / 砂肝から揚げ
下ごしらえ中のひな鶏 / 砂肝もポン酢醤油でいただく / 手羽肉から揚げ
もも肉から揚げ / お新香(浅漬) / 鶏スープで燗酒
・店情報 (前回、同じときの「帰り道は、匍匐ぜんしん!」)
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