アミちゃんに夢中! … 酒亭「武蔵屋(むさしや)」(横浜・桜木町)
「アミちゃんに夢中!」と言っても私のことではありません。「武蔵屋」に居ついている猫のクロの話です。アミちゃんは「武蔵屋」を手伝っている宝塚風美女。おばちゃん(=女将)の他に「武蔵屋」の酒をつぐことができるのはアミちゃんだけなのです。
仕事を終えて、木曜日の「武蔵屋」にやってきたのは午後8時過ぎ。店の手前側のカウンター席(6席ほど)と、左手のテーブル席(4人掛けが3卓)はお客さんで埋まっているものの、奥の小上がりの座敷には2卓ほど空きがある状態。特に座敷の上がり口のところにある2人用座卓が空いているので、今日はそこで飲むことに決めました。
この2人用座卓は、2人用の座布団は置かれているものの、実際にはひとり用の箱膳くらいしかない大きさで、まるで飯事(ままごと)のテーブルのような風情なのです。高さも胡座(あぐら)をかいて座った膝の高さくらいしかなくて、その上置かれたコップにすりきりいっぱい、表面張力までお酒をついでくれるもんだから、身体のかたい人や、人並み以上にお腹の出ている人は口から迎えに行こうにも、口がコップまで届かない状態になってしまうのでした。ちなみに、座敷に置かれた各テーブルは、2人用、4人用、6人用と、その広さこそ違うものの、高さはすべて共通なので、座敷に座る場合はご注意を!
今日もいつもと変わらず玉ねぎの酢漬けにおから、しばらくしてタラ豆腐というお決まりの肴が出されます。進歩、深化、改革と、常に変わっていくことが求められる現代社会の中で、ここ「武蔵屋」の「ちっとも変わらない」という安心感、安定感はものすごい。まさに老舗大衆酒場の神髄ここにあり、といった感じです。
2杯目のお酒が入ると、納豆が出されます。これももちろん変わらぬ肴で、納豆が出ていると「この人は2杯目を飲んでるな」というのがわかるのです。そして3杯目の肴はお新香。この店はお酒は3杯限りなので、お新香が出ている人にはもうお酒はつがれません。とはいえ、ときどきおばちゃんがちょっとサービスでつぎ足してくれたりすることもあるのがうれしいところなのです。
3杯目のお酒をいただくころには、午後9時も近くなりお客さんもまばらになってきます。座敷席にいるのも、今は私ひとりだけ。そうなるとここに居ついているネコのクロがやってきて、向こうの座布団の上に気持ち良さそうに丸まります。最初は子猫でやってきたクロも、今じゃすっかり大きくなって、他の猫たちを圧倒するほどなのです。
テーブルの片付けにこちらにやってきたのはアミちゃん。通りすがりにクロに「ニャッ!」と小さく声をかけると、なんとクロが甘えた声で「ニャァ~オ」と返事するではありませんか!
「えっ! アミちゃんが声を掛けると応えるの!」と驚く私に、
「そうなのよ。私たちが呼んでも知らん顔するのに、アミちゃんには応えるのよ。明らかに差をつけるんだから」と笑うおばちゃん。
片付けものをしたアミちゃんがカウンターのほうに帰ると、クロも起きあがって後をついていきます。アミちゃんが腰を落として、膝の上をポンとたたくと、そこへピョンと飛び乗って丸まるクロ。「こっちにおいで」とおばちゃんが呼んでも本当に知らんぷりです。なにしろ子猫のときからアミちゃんにかわいがられてましたもんねぇ。
猫もこんなにも人になつくこともあるんですねぇ。改めてびっくりしつつ「武蔵屋」を後にします。約1時間の滞在は、お酒3杯とお決まりの肴5品で2千円でした。
1杯目:玉ねぎ酢漬けとおから / タラ豆腐 / 2杯目:納豆
座敷席の様子 / 3杯目:お新香 / 座敷席でくつろぐクロ
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コメント
武蔵屋野毛が誇るエクセレントな居酒屋。通い続けて35年。五杯半飲んだ記録を持ちます。人と待ち合わせしていて三杯飲んだので店を出た。中税務署の裏で(今のにぎわい座の裏)遅れてきた友人と会う。もう一度行こうと言うので本日二度目。二杯飲んで三倍目を注ぐときに爺さんにばれて半分で止められたので五杯半。今もこの記録は破られていない。
投稿: Mory | 2008.12.18 17:41