美しいオムライス … 洋食「センターグリル洋光台店」(横浜・洋光台)
文明開化の地・横浜にはバーや洋食屋など、西洋文化に端を発した飲食店も多く、しかもそれがごく普通の生活の中に馴染んでいるのです。
会社の帰りに、そんな洋食屋の1軒である「センターグリル洋光台店」にやってきました。店はタバコ屋さんも兼ねていて、入口の横にはタバコ売り場の窓口もあり、その雰囲気はまるで喫茶店かなにかのよう。
店内に入ると右手には4人用テーブルが奥に向かって4つ(ただし、奥からふたつめのテーブルは横に柱があるので3人しか座れない)、左手のタバコ売場兼レジカウンターの奥側に4人用テーブルが2つ。そしてそれら左右の間、入口から見て正面に2人用の小さいテーブルが2つ並んでいて、総席数27席。
水曜、午後8時の店内には、先客は右手2番目のテーブルに、夫婦と思しきカップルがひと組のみ。ふたりで向かい合って座り、生ビール(中ジョッキ578円)を飲みながら料理を待っている様子です。
この店の右手一番奥の席は、厨房との壁の関係か、そこだけが三方を壁に囲まれたボックス空間になっていて、くつろげそう。さっそくその席に座り「いらっしゃいませ」と迎えてくれるおかみさんに、まずは瓶ビール(キリンラガー大瓶682円)を注文しておいてから、おもむろにテーブル上のメニューを開きます。
ずらりと並んだ品々はポタージュスープ(399円)、コンソメスープ(452円)といったスープ類から始まって、魚料理はカキフライ(766円)や海老フライ(1,029円)、貝柱フライ(1,260円)などの揚げ物のみ、肉のほうはレバーカツ(714円)、メンチカツ(714円)、ポークカツ(714円)などの揚げ物と、ハンバーグ(714円)、ミックスグリル(819円)、ヤングステーキ(1,628円)といった焼き物があります。
さらにビーフシチュー(924円)やマカロニグラタン(819円)、スパゲッティミートソース(714円)、スパゲッティナポリタン(714円)、ミックスピザ(766円)、オムレツ(714円)に、ポテトサラダ(525円)、ハムサラダ(630円)などのサラダ類や、オムハヤシ(871円)、カレーライス(661円)などのごはん類と、料理だけでもその数ざっと80品。外見は喫茶店のようでも、メニューを見るとやっぱり洋食屋だなぁ、と思わせます。
そんな中から、「これぞ日本の洋食」という一品、オムライス(714円)を注文します。
日本の洋食は、西洋料理を受け入れていく過程で、日本人の好みに合うようにアレンジされてきました。カツレツ、コロッケなどがその例です。そうやってアレンジされていく中から生まれてきた、日本独自の料理のひとつがオムライスなのです。
最初にいた夫婦のところにはマカロニグラタン(819円)やビーフシチュー(924円)など、何品かが出てきました。生ビールをおかわりするおふたり。その生ビールを用意したおかみさんは、
「そういえば息子さん、受験に受かったんですって?」と話しかけます。
「えぇ、そうなんですよ。なんとか引っかかってくれまして、これでひと安心です」と奥さん。きっとこの近くに住んでいる常連さんなんでしょうね。
さぁ、オムライスが出てきました。銀色の楕円皿にのったオムライスは、その皿にちょうど合った形で作られています。その玉子の焼きあがりが美しいこと! まるでオムライスの見本のように、全体が均質な焼きあがり状態なのです。そしてそのちょうど真ん中のところに帯のようにトマトケチャップがかけられ、その上にコロコロとグリーンピースが10粒ほど。うーん。芸術品だ。なんだかスプーンでつつくのがもったいないなぁ。
入口扉が開き、入ってきたのはジャンバー姿の男性。入口脇に置かれた新聞を手にとって、空いたテーブルのひとつに座ると
「今日はミックスフライ(819円)ある?」
「いらっしゃい。あるわよ」と、おかみさんが水を出しながら答えます。
「じゃ、ミックスフライと……」
「ごはん(157円)に味噌汁(105円)ね」と、後はおかみさんが笑顔で続けます。
いつもこのパターンでたのんでるに違いありません。
ごはんは、茶碗よりは大きく、丼よりは小さい器で出されて、すっかり定食屋さんの風情です。前回、ポークチャップとともにライスを注文したときは、ごはんをお皿に盛って出してくれました。もしかすると「ライス」ってたのむとお皿で、「ごはん」ってたのむと、この小さい丼で出してくれるのかなぁ??
私のすぐ前のテーブルに入ってきたのは、私よりはやや年配といった感じのスーツ姿の男性。先ほどの男性同様、いつもここで飲んでいるらしく、慣れた感じで腰掛けると、メニューも見ないで生ビール中(578円)とキムチ(315円)でスタート。しばらくして生ビールをおかわりするとともにポーク生姜焼き(714円)を注文すると、おかみさんから「すぐに出してもいいの?」と確認が入ります。いつもはビールをもっと飲んでから、メインディッシュに入るんでしょうか。
男性客は出された生姜焼きを食べながら、生ビールをもう1杯追加し、しばらくして小ライスを注文します。「ほんとに小で足りる?」とおかみさんが2回くらい確認してから小ライスが出されるのがおもしろい。いつもものすごく飲んで、ものすごく食べる人なのかなぁ、とはじめて会った私にまで、その人の飲みっぷり、食べっぷりが伝わってきます。
すべての調理を終えた店主も厨房から出てきました。お客さんからは見えない厨房の中での仕事ながら、きちんとした洋食のコックさんの身なり。穏やかな笑顔ですぐ前の年配男性客と談笑しています。
入口扉が開いて入ってきたのは小さいふたりの男の子。
「おかあさん来てる?」とおにいさんらしい男の子が聞くと、
「来てないわよ。ここで待ち合わせなの? 入って先に注文してなさい」とおかみさん。
弟(小学校1~2年くらい)はメニューもみないで
「ボクは鶏のから揚げ!」と若どりのから揚げ(819円)を注文しながら、空いているテーブルに座ります。
兄(小学校4~5年くらい)のほうは、同じ席に座ってメニューをひととおりじっくりと見たけど何もたのみません。どうやらおかあさんを待とうとしているようです。さすがおにいさんだなぁ。
ふと気づくと、すでに店主は厨房に戻っていて、ホール側にいるのはおかみさんだけ。ご夫婦ふたりで切り盛りされてるんですね。
5分もしないでやってきたおかあさん。ワインの小ボトル(550円)とお新香(105円)をもらって飲みながら、最初からいたご夫婦と話をはじめます。近くに住んでる家族同士のようですね。
新しく入ってきたスーツ姿の若いビジネスマンも、まずは瓶ビールをもらって飲みながら、TVで流れているサッカーの試合に見入っています。きっとこのあと食事にするんだろうなぁ。
さぁ、こちらは食事も終えたので、ボチボチと腰をあげますか。ビール大瓶1本とチキンライスで、今夜は1,396円。
「どうもありがとうございました」というおかみさんの笑顔に見送られて店を後にします。
店に入ってきたそれぞれの人たちがプロの手で作られた洋食らしい洋食をいただきながら、お酒を飲んだり、ごはんを食べたり。そして、会話に割り込んだりは決してしないけど、みんなのことをちょっとずつ気遣ってくれるおかみさんがいて、それぞれの人が自分の家の延長線上のような居心地を感じることができる。まさに居酒屋もかくありたいといった感じのお店ですね。
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