ガツとテッポウの醤油焼き … もつ焼き「ホルモン」(沼袋)など
日本で一番手軽に、しかも安価に内臓料理を食べることのできるお店、それがもつ焼き屋だと思います。
かのグルメ漫画「美味しんぼ」の第1巻で、フランス人シェフに「日本人は肉の食べ方を知りませんね。一番おいしい内臓を捨てるなんて。フランスでは内臓料理は最高のレストランのメニューにのっています。内臓の味もわからないで肉の味のことを言わないでください。ハッハッハ」と笑われた日本の内臓料理ですが、最近のもつ焼き屋の深化は著しく、新鮮な串焼きはもう当たり前で、いろんな部位を刺身で食べられる店や、煮込み中心の専門店、さらには注文を受けてから大きな内臓の塊から支度をするお店と、そのバリエーションも豊かになってきました。
中央線・西武線沿線で、もつ焼き文化の牽引してきた一角が阿佐ヶ谷から発祥した「ホルモン」グループ。私の知っている範囲では、今はなき鷺ノ宮の「鳥芳」、練馬の「金ちゃん」、そして沼袋の「ホルモン」がこのグループです。これらはそれぞれは独立した別々のお店ながら、
(1)阿佐ヶ谷「ホルモン」で修業したあと店を出した。
(2)カウンターは2列の平行カウンターになっている。
(3)店主が愛媛県(南予地方)出身である。
といった共通の特徴を持っており、結果的に見れば同じグループかな、という感じなのです。しかしながら、阿佐ヶ谷「ホルモン」はかなり前に閉店し、鷺ノ宮「鳥芳」も3年ほど前に閉店。沼袋「ホルモン」も代替わりして先代の息子さんの代となり、いまや当時のままと言えるのは練馬「金ちゃん」だけかもしれません。このグループが、当時は中央線沿線や西武線沿線に他にも何店かあったのだそうです。
そして荻窪や吉祥寺に店を置き、最近は中野にも進出したらしい「カッパ」グループが小規模に展開したあと、このところの沿線の牽引車は「四文屋」グループ。中央線、西武線沿線のいろんな駅で見かける一大勢力になりました。
御多分に漏れず私自身ももつ焼きは大好きで、少なくとも週に1回くらいは食べにいかないと落ち着かないほど。それなのに先日「秋元屋」で食べて以来、2週間近くもつ焼きを食べていないので、身体中がすっかり「もつ焼き食いたぁーいっ!」というモードになっての金曜日の帰り道です。
よく行くもつ焼き屋は野方の「秋元屋」、中野の「石松」、そして沼袋の「ホルモン」の3軒。なにしろそれぞれ自宅の近くなので、ヘロヘロに酔っ払っても帰宅が楽なのです。もちろん味のほうも3軒とも屈指の名店ぞろい。こんな店が近くにあって本当に良かったと常々感じている次第なのです。
そんな中、今日は先ほども話題に上がった阿佐ヶ谷「ホルモン」グループの1軒、沼袋「ホルモン」です。
まずはビール(サッポロラガービール大瓶、490円)とお新香(今日はキュウリとカブ、100円)をもらい、レバのちょい焼き2本とコブクロのちょい焼き2本(もつ焼きは各1本100円)注文して飲み始めます。最近は、この店に来るといつもこのパターンですね。ちょい焼きは刻みネギたっぷりにおろし生姜を添えて醤油味で出されます。好みによって、醤油の代わりにポン酢醤油味をかけてもらうこともできるようです。
焼酎(210円)をもらって、梅エキスをちょろっと垂らし、2巡目のもつ焼き注文でオッパイとアブラを、それぞれ塩焼きで1本ずつ注文するのも、これまた自分の定番。
店内メニューにはハツ、ガツ、タン、タマ、カシラ、ナンコツ、コブクロ、ヒモ、レバ、テッポウ、マメ、オッパイ、アブラ、チレ、ヒラという15品のもつ焼きのほか、ピーマン、ハンペン、シイタケ、ネギ、生揚げ、うずらの5品(これらも1本100円)の串焼きが並んでいて、どれもこれも気にはなるのですが、いざ注文する段になると「やっぱりオッパイとアブラは食べとかないとなぁ」となっちゃうんですよねぇ。
「今日はタンモトとハツモトもありますよ」と店主。この店のような老舗のもつ焼き屋では、先にあげたような定番のもつ焼きしかないところも多いのですが、この店ではときどき珍しい部位も出してくれるのです。ただしそれほど数は取れないので、メニューには載せていないそうです。
焼酎をおかわりして今度は煮込み(290円)。日本らしい内臓料理のもうひとつの雄(ゆう)がモツ煮込みですよね。件の「美味しんぼ」第1巻でも、フランス人シェフに月島「岸田屋」のモツ煮込みを食べてもらって「素晴らしい仕事です」と感心されます。フランスの内臓料理とは次元が違うけれど、日本人も内臓の食べ方は知ってるんですよ、という落ちに使われるのがモツ煮込みなのでした。
ここの煮込みはシロ(腸)を中心として、いろんな部位が入っていて、よーく煮込まれています。刻みネギをたっぷりとのせてくれているところへ、一味唐辛子をササッとかけると、ネギの白、唐辛子の赤の色合いも美しい。
このくらい(ビール大瓶1本と焼酎2杯)でやめておくと、ちょうどいいほろ酔い加減なのですが、久々のもつ焼き、もつ煮込みに今日はもうちょっと飲みたい気分。3杯目となる焼酎をおかわりし、つまみのほうはいったんモツから離れましょうか。
この店で串焼き以外のメニューは最初にもらったお新香(100円)の他、月見、やっこ、トマトの3品(各250円)が用意されていて、これらもそれぞれ人気の品々なのです。今日は久しぶりに月見をもらってみますか。
月見は千切りにした山芋を小鉢に盛って、ウズラ卵の黄身を乗せて、青海苔パラリで仕上げた一品。箸でエイッと黄身をつぶして、全体をグリグリとかき混ぜると、いい粘り気が出てきます。これを納豆を食べるがごとくにズズズッとすすり込むと、トロリ感の中に、山芋のシャクシャクとした歯応えが絶妙で、まことにもっていぃつまみになるんです。くぅ~っ。うまいのぉぉ。
さぁ、最後のシメだ。最近はまりつつある醤油味のもつ焼き。老舗の「ホルモン」でも作ってもらえるかなぁ。「えーと。ガツとテッポウを1本ずつ。醤油味で焼いてもらうことはできますか?」恐る恐るたずねてみると「いいですよ」とニッコリ笑顔の店主。うゎーっ。できるんだ。やったね。
大好物ながら、この店では初となるガツ、テッポウの醤油焼きでしめくくって、2時間弱の滞在は2,560円でした。どうもごちそうさま!
焼酎3杯ですっかり勢いがついて、さらに都立家政(とりつかせい)で途中下車。「竹よし」に入ります。今日の「竹よし」は金曜日とあって活じめカワハギ(900円)、生クジラ(600円)、生メジマグロ中トロ(900円)、カンパチ(600円)、シメサバ(500円)といった刺身類もずらりと並んでいます。
そんな中から赤ナマコ(400円)をもらって燗酒(菊正宗、350円)をチビリチビリとやっていると、「秋元屋」から流れてきたなおとんさんやふじもとさんも合流して、にぎやかな夜になってきました。
「竹よし」の店主が「こんなのあるけど食べる?」と出してくれたのはカレーライス。おぉーっ。「竹よし」のカレーライス(←まかない用の裏メニュー)がおいしいという噂を聞いたことはありましたが、実物を見て、しかも食べるのはこれがはじめてですねぇ。みんなで(といいつつ大部分は私が)うまい、うまいと大喜びしながら完食です。
こうなると「竹よし」だけでは終わらず、「竹よし」の閉店後にはさらに流れて「満月」のコーヒー割り(300円)で乾杯。自宅に帰り着いたのは午前2時過ぎでした。うーむ。近くにいい店がそろってるのはうれしいけれど、ついつい深酒になっちゃうのが困りもんだよなぁ。。。
【ホルモン】
ビールとお新香 / レバとコブクロのちょい焼き / タンモトとハツモト
オッパイとアブラを塩で / 煮込み / 焼酎と梅エキス
月見 / かき混ぜた後の月見 / テッポウとガツを醤油で
【竹よし/満月】
「竹よし」の赤なまこ / カレーライス / 「満月」で乾杯
・「竹よし」の店情報 (前回) / 「満月」の店情報 (前回)
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コメント
おおっ! ホルモンの店主が醤油焼きを受け付けましたか!
アソコは変化球的な注文を中々受けてくれないんですよね~
さすがは師匠! こんど私も頼んでみーようっと!(笑)
しかし、この日は満月でのカンパイどころか、竹よしのカレーライスも
全く内蔵HDDには記録されていませんでした・・・ 反省
投稿: なおとん | 2007.03.20 13:16
はじめまして
てらまえと申します。
以前からホームページを拝見させていただいておりました。
阿佐ヶ谷・中村橋川名と都立家政剣、金ちゃんの常連?です。
本日、ホルモンに行ってきました。
ここで紹介されていたようにレバーをちょい焼きでたのんだら
とてもおいしかったです。
もしかするとお会いしてるかもしれませんね。
投稿: てらまえ | 2007.04.06 02:43