料理もたっぷり、お酒もたっぷり … 居酒屋「みまつ」(横浜・洋光台)
沖縄風の調理法をベースにしたオリジナル家庭料理。ここ「みまつ」の料理をひと口で語ると、そんな感じでしょうか。平成2(1990)年に開業したこの店を、ひとりで切り盛りしているのは女将・松堂かつ子さん。18歳で沖縄を出て以来、ずっとこちら暮らしなのだそうです。
店内はL字カウンター8~9席と、小上がりのテーブル席(4人掛け)2~3卓。木曜、午後9時前のこの時間、先客はテーブル席のサラリーマン同士らしき男性ふたり連れ一組のみ。
カウンターに座り瓶ビール(キリン中瓶、550円)を注文して飲みはじめると、お通しは切干大根煮、野菜煮、クラゲ酢の三品盛り。それぞれが小鉢に盛られてたっぷりと出されます。このしっかり、たっぷりとしたお通しが出るのも、この店の特長のひとつ。これまでも、お通しとしてサバの塩焼きが出されたり、ニシンと大根のサラダ(丸皿に山盛り!)が出されたりと、この一品でまず空腹を満たして、健康的にお酒を飲むことができるようになっているのです。
「ラムがあるけど食べる?」と女将。「食べる食べる」「2本でいい?」「うん」
最初にオリジナル家庭料理と書きましたが、店の看板に「沖縄料理」と書いているとおり、この店のメニューには沖縄料理がずらりと並んでいます。たとえばラフティ(700円)、テビチ(700円)、スーチカ(豚塩煮、700円)、ジーマミ豆腐(450円)、モズク(400円)、ミミガー(550円)、島らっきょ(600円)、豆腐よう(700円)、ゴーヤチャンプル(650円)、ソーメンチャンプル(650円)、ソーキそば(800円)、沖縄焼きそば(700円)などなど。
しかし、この店の真骨頂はメニューに並んでいる沖縄料理ではなくて、むしろ女将さんがその日その日に作る料理にあるのです。そして、その日なにがあるかは、先ほどの「ラムがあるけど食べる?」のような感じで、ほっといても女将さんが教えてくれるのでした。
焼き台で串に刺したラム肉を焼きながら、となりのコンロではなにやらクツクツと煮込んでいます。のぞき込んでみると大きな豚肉のかたまり。よーく煮込まれてプヨプヨです。「それはラフティ?」「そう。ラフティよ」と言いながら、できあがったラフティを大皿に移す女将さん。「はい、どうぞ」と、その端っこをひと口大に切って小皿で出してくれます。「わぁ、ありがとうございます」。さっそく口に入れてみると、皮の部分の弾力感のあと、脂肪のプヨンとした感じがやってきて、最後にとろけるようにやわらかい豚肉。
「これはうまいっ。皮の部分の弾力感が決め手なんですね!」
「おいしいでしょ。皮付きの豚肉がなかなか手に入らないのよ」
豚の皮は、若いころ独身寮のすぐ近くにあった(今もある)おでん屋「あわもり」で、すっかりはまって以来、大好きなのですがなかなか置いている店が少ない。皮についている毛の下ごしらえが大変だからでしょうか。件の「あわもり」では「最初に毛抜きで大きな毛を抜いて、残ったうぶ毛をカミソリで剃って」処理しているのだとか。火で炙って毛を焼けばいいんじゃないかと思うのですが「火で炙ったら、表面の毛だけが焼けて、根っこの部分(毛根のところ)が全部皮の中に残ってしまう。そうなったらジャリジャリして食べられたもんじゃない」のだそうです。
飲み物は通称・黒残波(くろざんぱ)と呼ばれている泡盛、「残波」の黒(1杯、550円)をいただきます。「残波」には白と黒があって、白が25度(600円)、黒が30度(550円)です。度数が高いほうが値段も高いのかと思いきや、そうでもないんですね。
黒残波のロックをチビチビとやりながらいただくラム串のうまいことよ。
「サラダ食べる?」「食べる」
お腹がいっぱいでない限り、すすめられるものは、ほぼいただいておいて間違いありません。丸皿に山盛りで出されたサラダは、10種類くらいの野菜の中にさっとゆでた豚肉や豚レバーなども入ったもの。「ゆですぎると脂のうまみがまったくなくなっておいしくないし、ゆで足りないとギトギトと脂っこくてしつこくなる。微妙なバランスが大事」という女将の言葉に、さすがに古来から豚肉を食べていた土地柄だけのことはあるなぁ、と改めて感心させられます。レバーもおいしいや。
泡盛を、今度は古酒(クースー)でお願いすると、「こっちにしてみる?」と黒い小瓶に入った「残波」を出してくれます。以前、古酒をいただいたときには甕から注いでくれたのですが、今は瓶入りの古酒も置いてるんですね。
そして出される料理はミミガー(豚の耳)をスライスした胡瓜や、細切りの昆布とともに和えたもの。こういう、いわゆるツマミ、ツマミした料理まで健康的そうなのが沖縄の料理のすばらしいところですよねぇ。
まだ平日(木曜日)なので早めにサクッと切り上げる予定だったのですが、料理もおいしく、泡盛もまたおいしく、女将さんとの話もはずんでついついもう1杯。うしろのテーブル席にいるふたり組も、女将さんの出してくれる料理をつまみ、ウーロンハイ(450円)をおかわりしつつ、まだまだ盛り上がっている様子です。
「ミミガーの揚げたのも食べてみる?」
テーブル席のお客さん用の揚げミミガーの準備を始めた女将さんから声がかかります。
「もうお腹いっぱい。島らっきょはない?」
「残念。今日はないのよ。天ぷらで食べる?」
「え? 島らっきょの天ぷら? 食べたことがないのでぜひぜひ」
生の島らっきょを塩でもんで1日置いておけば塩漬けの島らっきょができるらしいのですが、今日はそれができていないらしくて、生のものを天ぷらにしてくれます。その天ぷらにトッピングするようにちょっと乗せてくれたのは揚げミミガー。ありがとうございます。お腹はいっぱいながら、どんな味になるのかは気になっていたのでうれしいですねぇ。
ちょっと塩をつけて食べる島らっきょ天ぷらのおいしいこと。こういう食べ方もあったんだ!
結局、午後11時半ごろまで、3時間近く腰を据えて楽しんで、今日のお勘定は4,700円でした。あー、満腹。料理もたっぷり、お酒もたっぷりが沖縄流なのかなぁ。今度はもうちょっと早い時間にやってきて、時間もたっぷりにしなくっちゃね。
お通し三品盛り / 皮がおいしいラフティ / 泡盛「残波」(黒)をロックで
ラム串を2本 / 豚肉やレバーなども入ったサラダ / 「残波」の古酒
ミミガー和え / カウンター内の様子 / 島らっきょの天ぷら
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