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創業100年! … 居酒屋「大甚本店(だいじんほんてん)」(名古屋・伏見)

名古屋での仕事を終えて、会社の同僚とふたりでやってきたのは、地下鉄伏見駅7番出口のすぐ前にある居酒屋「大甚本店」。太田和彦さんが「この店を知らずして居酒屋を語ることなかれ」などと書かれているのを見るにつけ、「ぜひ一度行ってみなければ」と思いつづけて、はや数年。やっと来ることができました。

創業明治40(1907)年。今年で創業以来ちょうど100年という老舗は、大きな交差点の角近くにあり、上部に大きく「大甚本店」と書き出されていて、近くまで来ればもう間違えようがないほどの目立ちようです。あいにくの強風にはためく暖簾をくぐり、重厚な引き戸を開けて店内に入ると、水曜午後5時の店内はすでにお客さんでいっぱい。この店は午後4時の開店らしいので、平日の開店から1時間後で、もうこんな満席状態なんですね!

入口から奥に向かって長い長方形の店内は、入口すぐ右手に2階に上がる階段があり、そのすぐ後ろ側から店の右壁にそって、店の奥まで8人掛けや、6人掛けといった様々な大きさの長方形テーブルが店の奥まで並んでいます。そして入口の左側にはデンと賀茂鶴の四斗樽が鎮座していて、そのまわりが燗をつけたりする場所になっている。

その奥が「大甚本店」と言えば、というほどの名物である肴(さかな)の大皿・小皿がずらりと置かれた大テーブルです。本やインターネットから得た事前情報で、小皿ばっかりがたーくさん並んでるような様子を想像していたのですが、大皿もでーん、でーんと並んでいるのにびっくりです。

その大皿・小皿が並んでる奥のガラスで囲まれたような一角が厨房スペース。大きなガラス張りの冷蔵ネタケースもあって、刺身類を注文するとここで作ってくれるようです。

どっか空いてないかなぁ、とテーブルを見てみると、入口から3つめくらいの、ちょうど大皿・小皿置き場の前の8人掛けテーブルの一角に3人分くらいの空きを発見。ここに座ることにしましょう。

座るとすぐに、女将さんらしき女性が「飲み物は?」と聞きに来てくれて、樽酒(賀茂鶴)の大徳利(690円)を燗で注文します。あの四斗樽を見てしまうと飲まないわけにはいかないですよねぇ。

「あそこに並んでる小皿から、好きなのを取ってきていいんだよ」と同僚に告げると、立ちあがった同僚がまず取ってきてくれたのはエビとキュウリの酢物と厚揚げ煮。それとほぼ同時にお酒も出されます。どちらも名古屋じゃないと食べられないようなものじゃないんだけど、こういうお惣菜が燗酒にはぴったりなんですよねぇ。

ずらりと並ぶ他の料理も、奇をてらったものや、名古屋名物なんてのは特になくて里芋の煮物をはじめとする煮物類や、ホウレン草のおひたしなどの和えものなどの、本当に呑んべ好みのするものばかり。これはうれしいなぁ。

同じテーブルに先客として座っていた年配客ふたり組がお勘定をして席を立つと、店のおねえさんが「おにいさんたち、奥側に移ったら」と声をかけてくれます。テーブルのこちら側は普通の丸椅子なのですが、奥の壁際は店の奥までをズドーンと貫く畳張りのベンチシート(って言うのかな?)になっていて、壁にもたれることもできるゆったり席なのです。「そうします。ありがとうございます」とゴソゴソとカバンやコートなどを移動させはじめると「早く移らなきゃ、他の人が入るわよ」と、さっきのおねえさんが笑いながらテーブル上のお皿などを、片づけ終わったテーブルの奥側に移動させてくれます。

こんなに満席に近い状態なのに、「奥に移ったら?」なんてちらりと気を使ってくれるところがうれしいではありませんか。人気のあるお店って、こういうところが多いんですよね。

テーブルのこっち側(壁際)に座ると、大皿・小皿置き場もよく見えていいですねぇ。あ! 魚の子の煮たのが並んだ大皿がある。店のおねえさんに「魚の子の煮物をもらえますか?」と注文すると、「魚の子、どっちがいいですか?」とおねえさん。「へ? ふたつあるの? どう違うんですか?」と聞いてみると「こっちがタラコで、こっちは……、あれっ? こっちはなんだっけ?」と厨房の近くにいる親父さん(たぶん店主)にたずねるおねえさん。「んー? こっちは鯛やいろいろ」と親父さん。「じゃ、そのいろいろのほうをください」

大皿に入っているものは、注文すると小皿に盛って出してくれるんですね。

刺身も同じで、注文を受けてから引いてくれるようです。刺身などの生ものもけっこう人気がある様子。それぞれの料理がいくらなのか、よくわからないのですが、まぐろ刺身は750円、刺身・焼き魚・煮魚は1,000~1,300円ほどのようです。となりのおじさんが食べてるウニの箱盛りもおいしそうだなぁ。

フロアを切り盛りしてるのはご家族(店主夫妻とその娘さん)なのかな。厨房で料理してる人たちもいるので、自由が丘の「金田」みたいに、ご家族+何人かの手伝いの人みたいな運営なのかもしれませんね。

ひとりから、多くても3人くらいまでで入ってくるお客さんが多くて、テーブルの空席を見つけてはそこに入れ込みの相席で入っていく。店の一番奥のテーブルの上部にはテレビもあって、それを眺めながら飲んでいるひとり客も多いようです。店は神田の「みますや」の雰囲気にも似てるのですが、こうやってひとり客が入れ込みで入っていく様子は十条の「斎藤酒場」を彷彿とさせます。

まわりのお客さんたちから「鍋ね」「鍋、ふたつお願いします」と鍋の注文が相次ぐので、我われも「こっちも鍋をお願いします」と注文してみると「ひとつでいいの?」と親父さん。「えぇ。ひとつ」。

同僚は再び立ち上がって、料理置き場からさつま揚げと玉子サラダを持ってきてくれます。燗酒もおかわりをもらいましょう。この燗酒、やわらかい樽の香りがとてもいいですねぇ。

さぁ、鍋も出てきました。あらかじめ厨房で調理されてできあがった状態で出される鍋は、小さなひとり用鍋にカキ、鶏肉、シイタケ、エノキ、豆腐、白菜、蒲鉾などが入っていて、汁だけでも十分につまみになりそうなほどいい味がついています。うーん。人気があるのもうなずけるなぁ。熱々でおいしいや。

1時間ほどの滞在はふたりで3,190円(一人あたり1,600円弱)。「ごちそうさまー」と満席状態が途切れることのない店をあとにしたのでした。やぁ、やっと来ることができて良かったなぁ。はじめて入ったような感じがしないお店でした。まさに居酒屋らしい居酒屋ってことなのかな!?

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「大甚本店」 / 燗酒 / エビとキュウリの酢物と厚揚げ煮

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料理置き場あたり / 魚の子煮付け / さつま揚げと玉子サラダ

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鍋 / 鍋のカキ / 店の奥のほうの様子

店情報

《平成19(2007)年3月14日(水)の記録》

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コメント

いつも楽しく読ませて頂いております。
僕も先週土曜に名古屋へ行ったので立ち寄りました。
何時行っても混んでいますが、良い対応をしてくれるので気持ちよく飲めました、酔えました。

投稿: 小林麦酒 | 2007.04.05 17:51

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受信: 2013.08.29 22:31

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