新宿にも古典酒場あり … 焼き鳥「番番(ばんばん)」(新宿)
ゴールデンウィークの間、「近くの名店を探る」をテーマに、新しい店、久しぶりの店、行きつけの店を巡って来ました。そのときに、できれば行きたかったのに行けなかった場所のひとつが、ここ新宿エリアです。連休から1週間たった今日は、その新宿エリアに出没したいと思います。
新宿は、急速に大都会化していったからか、古風な大衆酒場があまり残っていなくて、チェーン居酒屋などの新しいお店が多い土地。呑兵衛(のんべ)にとっては、それほど居心地のいい町ではないのです。
ところが、先日発売された「TOKIO古典酒場」(創刊号)によると、そんな新宿からも、“古典酒場”として掲載されている酒場がある。店の名は「やきとり番番」。歌舞伎町の一角、さくら通りの入口近くにあるというから、このあたりか……。あっ。発見。なるほど。地下のお店なんですね。
ただでさえ新しい酒場は入りにくいのに、それが地下にあるとなると、まずふらりと立ち寄ることは、ほぼない。なにしろ、お店の雰囲気をうかがい知ることができませんからねぇ。誰かに紹介してもらうか、今回のように本の記事をたよりにするしかありません。
地下へと向かう階段の天井全面が、「やきとり」「番番」「地酒」という文字が、ずらりと書かれた電灯看板になっていて、とっても派手。本当にここが古典酒場かなぁ...
階段を降り切ると、そこに「番番」と書かれた赤ちょうちん。その右手が入口です。よいしょっと。こんばんは。
入口があるのは、左右に伸びるカウンターのちょうど中央部。そのあたりだけ、カウンターが切れていて、店の人が出入りできるようになっています。左右に伸びたカウンターは、それぞれ店の端で壁に沿って、反対側の壁のほうまで回り込んでいます。言葉で説明するのは、非常に難しい形状ながら、カウンターのみ40席ほどの店内は、ひと目でそれとわかる正しき大衆酒場ですねぇ。また細めの木を何枚か並べて造られたカウンターが、いいじゃないですか。
土曜日、午後7時半の店内は7~8割程度の入りといったところ。
右手のカウンター角近くに座って、酎ハイを注文すると、この酎ハイが生ビールの中ジョッキにたっぷりで、レモンスライスも添えられて、なんと250円! 下町もビックリの価格だよなぁ!
お通しは、醤油皿くらいのお皿に、ちょいと盛られた蒲鉾(かまぼこ)入りおひたしです。
壁のメニューを確認すると、なにしろ「やきとり番番」という店名だけあって、まずは焼き鳥をはじめとする焼き物が並んでいる。焼き鳥は、とり焼(ひな正、とりかわ、すなきも、つくね)も、もつ焼(しろ、れば、はつ、たん、かしら、なんこつ、こぶくろ)も、そして野菜焼(ねぎ、ししとう、しいたけ、ピーマン)も1本110円で、1本から注文できるようです。これもまた、新宿歌舞伎町という土地柄から考えると、けっして高くないですよねぇ。
「すみません。とり焼の4種類(ひな正、とりかわ、すなきも、つくね)を1本ずつお願いします」
「はい」と返事したのは、「番番」と店名の入った法被(はっぴ)姿のオヤジさん。ひとりだけ姿の違う、この人が、どうやらこの店の店主のようです。店は、この店主も含めて、男ばかり4人で切り盛りしているようです。
しばらくして出された焼き鳥は、いい焼き加減で、量もそこそこ。いいですねぇ。
改めて店内を見わたしてみると、客の構成は、まさに老若男女さまざまで、ひとり客もいれば、ふたり連れも多い。カウンターだけの店内なので、さすがに4人以上のグループ客はいないようです。
左どなりにいるのは、若いカップル。若いながらも常連さんのようで、店主ともチラチラと会話をしながら、飲んだり食べたりしています。右はサラリーマンふたり連れ。半ば冷めたような焼き鳥、何本かを、目の前の皿に置いたまま、談論風発です。向かい側に座るおにいさんは、ボォーッと中空をにらみながら、ときどき思い出したように酎ハイをすすっている。まさに、まさに正しき大衆酒場の光景ですねぇ。新宿にも、こんなお店があったとは!
焼き鳥以外のメニューは、煮込み(350円)や、煮込み豆腐(450円)の他、お新香(小200円)、番々奴(中華ゴマ味噌だれ、350円)、煮奴(350円)、しらすおろし(300円)、冷トマト(300円)、生野菜盛(小350円)、とん足(250円)、塩辛(350円)などなどと、呑兵衛好みのする品々が並んでいます。
魚の刺身は置いていないようですが、その代わりに鳥たたき(450円)、レバ刺し(400円)、馬刺し(700円)などが並んでいるのも、焼き鳥系の大衆酒場らしいところ。
ん? ガツ冷盤(400円)って何だろう? そもそも読み方も、わかんないや。
「すみません」と、たまたま近くに来た店主を呼び止めて、
「酎ハイ(250円)のおかわりと、あと、これください。この、ガツなんとかっての」
「はいはい。ガツれいばん、ですね」と店主。
なーるほど。“れいばん”って読むのか。まるでサングラスのような...
あとで調べてみたところ、冷盤(れいばん)というのは、中華料理の冷たい前菜のことらしいです。
出てきたガツ冷盤は、スライスしたキュウリも飾られて、まさに中華料理の前菜風。醤油風味のタレもよく合ってて、おいしい。輪切りに近いくらいの感じでスライスされたガツの弾力感もいいなぁ。
この店内でゆっくりと飲んでいると、ここが歌舞伎町の喧騒のまっただ中だということは忘れてしまいます。これは、まさに地下の酒場ならではの効能ですね。
ちょうど1時間の滞在は、2品(+お通し)と2杯で1,340円。お勘定もまた、正しき大衆酒場だなぁ。これはいい店を知りました。どうもごちそうさま!
酎ハイと、お通し / とりかわ、つくね、ひな正、すなきも / ガツ冷盤
・店情報
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コメント
こんにちは~。
番番が古典酒場、というのにちょっとびっくり。
でも30年以上営業しているのだから「古典」でいいのかもしれません。
学生時代、新宿で焼き鳥=番番でした。
歌舞伎町なのに、このお店だけは安心安全だったし、
毎週のように通っていたなぁ。
カウンターの写真、懐かしくてジーンとしました。
投稿: トパーズ | 2007.06.13 15:28
「TOKIO古典酒場」で見て行ってみたのでが、最高でした。それまではカミヤによく行っていたのですが、今はここを覗いて、混んでる時はカミヤへ行くようにしています。(カミヤも混んでますが)鳥皮だけはタレで頼みますが、後は塩で、カウンターに置いてあるみそダレで食べるのが好きです。おしんこを頼んだらきゅうりが丸ごと一本出てきました。もつ焼き以外もためしてみたいです。
投稿: なまけもの | 2007.10.01 00:13
番番の記事が載ってたので参加させてください。
学生時代から25年になります。住まいが埼玉になってからは年に2~3回になりましたが。あの「カシラ」の味は忘れません。
忘れられないといえば、昔、娘が幼稚園だった頃遊園地の帰りがけ、食事のつもりで寄った時です。
ご飯類は無かったけれど何か食べる物(娘の)くらいはあるだろと思い品書きを見渡していると、店主が一言、「ごめんね。ここはご飯物が置いてないからね‥上のコンビニでおにぎり買ってきな。ジュースもね。ここのジュース買う金でペットボトル買えるよ。」これをサラリと言ってのけたのは江戸っ子の粋というやつだったのでしょうか。
また、「汁物も必要でしょう」とサービスで煮込みをいただきました。しかし、娘が受け取る時に手を滑らせてしまい、あっという間に大騒ぎです。びっくりして半べそな娘を店主は怪我を気遣いながら「おじさんが悪かったね」といい、もう一度用意していただきました。
その時の焼き鳥の味と娘の涙目が笑顔になった時のことは忘れられません。
(ドラマのような話ですが実話です)
その娘も高校卒業です。
投稿: 焼き鳥はカシラ | 2008.01.19 14:41
コメントありがとうございます。>焼き鳥はカシラさん&みなさん
店の中に入ってしまうと、そこが新宿歌舞伎町の喧騒の一角であることを忘れさせてくれるような、すばらしい大衆酒場ですよねぇ。
年中無休で、日曜も祝日もやっているのも嬉しいところです。
投稿: hamada | 2008.01.27 15:53
こんにちは。
新宿の番番さん、いってきました。
新宿にこんな店が・・・と感慨深いですね。
新宿も探せばまだあるのでしょうね。
(樽一さんも大好きな店です!)
なんだか後追いのストーカーみたいに、浜田さんがいかれている居酒屋を訪問していますが・・・笑
投稿: M | 2008.09.09 13:05
>Mさま
このところ、Mさんのブログ「東京グルメ 居酒屋訪問記 ~銀座 六本木 赤坂 恵比寿などのレストランめぐり~」からのアクセスが多くて、とても嬉しく思っています。どうもありがとうございます。
Mさんのブログは大衆酒場から、京の和風料亭まで、ますますものすごい守備範囲になっているようで、楽しく拝見しています。
投稿: 浜田信郎 | 2008.09.15 20:04