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昭和の香りの漂う酒場 … スナック「エコー」(門前仲町)他

だるま」を後に、グルメ系ブロガーのももパパさんつきじろうさんくにさんに、酒友・呑んだフルさんも加わって、5人で「だるま」の目の前にある辰巳新道へと入ります。

辰巳新道は、戦後の復興期にバラック建ての家屋からはじまった飲み屋横丁。すべて九尺二間(くしゃくにけん)、メートル単位でいうと幅2.7m×奥行き3.6mという、昔の長屋サイズに統一された店が、30軒弱、ずらりと並んでいるのです。

こんなに狭いと、店の中にトイレを作ったりはできない。そこで横丁の中に共同トイレが設置して、どの店の客も、そのトイレを使うという工夫がされています。

横浜に移転する前は、職場がこの近くにあって、辰巳新道界隈にもよく飲みに来たものでした。同じ職場の中でも部が違ったり、課が違ったりすると、それぞれ行きつけの店が違う。ところが、なにしろトイレが共同なので、トイレに行ったときに「あれ? どこで飲んでるの?」「あ。どうもどうも。このあと、一緒にどう?」なんて感じで、知り合いにばったりと出会うなんてことも多かったのです。

こういう共同トイレがある横丁というのも、ここ辰巳新道のほか、新宿の思い出横丁、横浜の狸小路くらいでしょうか。ビル内に飲み屋街があって、トイレが共同というのはけっこうありますよね。たとえば横浜・野毛の、ぴおシティや都橋商店街、阿佐ヶ谷ゴールド街などが、そのタイプです。

そんな辰巳新道の、ちょうど中央部にあるのが、うちの職場がかつて行きつけにしていた、スナック「エコー」。さすがに職場が横浜に移転してからは、昔のようにちょこちょこ顔を出すことはできませんが、こちらに来る機会があれば、できるだけ顔を出すように心がけているお店です。

「こんばんは。5人、入れるかなぁ?」
覗き込んだ店内は、先客グループの人たちが飲んでいるところ。
「いいよ、いいよ。ちょうど帰るところだから、代わって入りなよ」と、そのグループの人たちがお勘定をしてくれて、無事に入ることができました。

「お久しぶりねぇ。元気だったの?」とママさん。なんの、それはこっちのセリフですよ。女性の年齢を言うのも失礼な話ですが、この店を、ひとりで切り盛りするママさんは、私の記憶が合ってれば、今年で76歳のはず。変わらずお元気そうでなによりです。

先ほども書いたとおり、この横丁にある店々は九尺二間の統一サイズなのですが、この店は、それを2軒分ぶち抜いた十八尺二間 = 三間二間(幅5.4m、奥行き3.6m)サイズ。その中に、元々はカウンター席とボックス席があったようですが、今はカウンターは残っているものの、全員でボックス席のテーブルを囲むスタイル。カウンターは背もたれ的に使われています。

この店は昭和の香り漂う正しき(?)スナック。

このスナックという酒場スタイルが、非常に日本的ですよねぇ。居酒屋でもなければ、小料理屋でもない。かといってバーでもないし、クラブ(踊るほうではなくて、銀座辺りにあるほう)でもない。たいていはママさんひとりか、あるいは手伝いの女性がひとり、ふたり加わる程度。カラオケは必ず有ると言っていいと思います。料理は何品かしかないけど、特にメニューはない。飲み物もビールとか水割りといった、比較的簡単なものしかなくて、これまた特にメニューはなく、いくらするのかよく分からない。

この「いくらするのかよくわからない」というところは、スナックの特徴的なところかもしれませんね。聞けば、たとえば「ビールは600円よ」とか「玉子焼は800円」というように、単品ごとの値段を教えてくれる店はあります。でも、お勘定のときには、それらの単純な足し算じゃないんですよねぇ。

ただ、地域によって大体の相場というのはあるようで、この界隈なら、飲んで歌ってひとり4~5千円程度といったところでしょうか。銀座などの都会に行くと、その倍くらいしたりする。

まぁ、この辺の鷹揚(おうよう)さがスナックの持ち味であり、いいとこなんでしょう。学生時代の部室の雰囲気でもあり、家庭の延長線上のようでもあり。凛とした雰囲気で、ちょっと緊張感が漂う酒場もいいもんですが、こういうゆる~い空気の酒場も、たまにはいいものです。

そんなわけで、スナックという業態は、あまり「こうだ」という決まりはなくて、それぞれの店に、それぞれのスタイルがあります。この店は、基本的には麦焼酎「いいちこ」のボトルをもらって、それを水割りやロックで飲みながら、話したり、カラオケで歌ったりするというスタイル。みんなの様子を見ながら、ママさんが適当に料理を出してくれたりして、ひとりあたり3千円程度といったところです。

今日も、みんなで「いいちこ」をもらって乾杯し、「今日はもうけっこう食べてきたよー」と話すと、「じゃ、軽く乾き物ぐらいを出しとこうね」と、スルメ、アーモンド、茎ワカメの盛り合せを真ん中に置いてくれます。

ワイワイと過ごすうちに、カラオケもはじまって、大盛り上がり状態へ。

乾き物がなくなりつつあるのを見たママさんは「何か出そうか?」と聞いてくれます。「何がある?」と聞くと、「そうねぇ。軽いものだったらオニオンスライスとか…」「あっ。それがいい!」と即答したのは、オニオンスライス好きの呑んだフルさん。深皿にたっぷりと盛ったオニオンスライスに、レモンスライスを何枚かのせ、その上にこんもりとカツオ節をのせて、醤油を回しかけたらできあがり。簡単なのに、おいしいよなぁ。

楽しく過ごすうち、そろそろ電車が危なくなってきたのでお開きです。今日もお勘定は5人で10,500円(ひとり2,100円)。ももパパさん、つきじろうさん、くにさん。長い時間、お付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。ぜひまたご一緒させてくださいね。

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辰巳新道の風景 / 乾き物盛り合せ / オニオンスライス

グルメ系ブロガーのみなさんと解散したあとは、呑んだフルさんとふたり新宿へ。花園神社入口にある田舎料理「川太郎」で、「兵六」常連のみなさんと再合流です。

この店も“田舎料理”という看板を掲げるものの、実態としては熊本出身の女将が、ひとりで切り盛りしている、ある意味、スナック的なお店。蕎麦焼酎「刈干」の蕎麦茶割りをいただくのが、この店の標準的なスタイルのようなので、さっそく私もそれをいただきます。

壁にかかった短冊メニューには馬刺、焼魚、のっぺ、焼なすの4品しかなくて、値段も不明。しかし、そんな短冊メニューとは無関係に、女将さんの作ったゼンマイと油揚げの煮物をスッと出してくれます。こういうところも、まさにスナック風ですね。

午前1時が閉店時刻らしい「川太郎」を出たのは2時半過ぎ。お勘定は5人で16,000円(ひとり3,200円)でした。

その後は、みんなで河岸を新宿ゴールデン街の「澤」に移して、これまた昭和の香りがたっぷりと漂う、ゴールデン街らしいスナックで、電車が動き始めるまで飲んだのでした。お勘定は5人で10,000円(ひとり2,000円)ほど。

とーっても長い一夜でした。(笑)

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ゼンマイ煮物と蕎麦焼酎の蕎麦茶割り / 「川太郎」店内 / 「澤」の水割り

・「エコー」の店情報前回) / 「川太郎」の店情報

《平成19(2007)年5月19日(土)の記録》

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コメント

本当にお世話になりました。
とても楽しい一日でした。
スナック・エコーあたりから、記憶が途切れ途切れになっています。
この後まだ飲んでいたなんてすごい!

投稿: ももパパ | 2007.06.17 12:16

川太郎行かれたんですねぇ
この店はあまりにも切なくて悲しい思い出しかありません。
私にも青春と言う時代があったんですよ。
写真で見る限り、ママは替わったようですね。
以前のママは洋子さん。熊本らしくふっくらとした美人でした。
いつも六調子のボトルを入れて、その他にも白岳なんて焼酎があってご近所のゴールデン街に行く前に利用したものでした。
いつもお酉さまの日にはこの店に行ったものでした。
まだ営業しているのを聞いて、是非近いうちに訪れてみようと思うことでした。

投稿: 徹っちゃん | 2007.06.20 21:09

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